金峰山 五丈の岩を頂く奥秩父山塊の主峰

瑞牆山から見た金峰山
山梨県甲府市と長野県川上村の境にある金峰山(きんぷさん/きんぽうさん)に登りました。
奥秩父主脈上に位置するこの山、かつてはアクセスの容易ではない深山でしたが、大弛峠まで車道の開通した今では都内から手軽に日帰り登山が可能な山となりました。
今回はあえて大弛峠からではなく、みずがき山荘から登るロングルートを歩きました。

2016年6月4日に旅す。

秩父山塊の深部に存在する金峰山は、鉄道末端駅から遠く離れた場所にあります。
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この山に一番簡単に登頂する方法は標高2,360メートル地点の大弛峠(おおだるみとうげ)から登る方法です。
ここからであれば山頂までは僅かに2時間ちょっとで到達できます。

このルートはかつて「車の無い奴お断り」の取り付き口でしたが、今では塩山駅から乗り合いタクシーが運行されるようになり、私のような車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーでも気軽に利用出来るようになりました。

今回私はあえてこのルートではなく、瑞牆(みずかき)山荘からアクセスするルートで登りました。
富士見平から金峰山へ至る岩の稜線を歩いてみたかったからです。
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このルートを往復した場合の標準コースタイムは8時間半です。
一方、朝一番のバスが瑞牆山荘に到着してから最終便が瑞牆山荘を発つまでの時間は6時間半しかありません。

トレランに片足を突っ込むくらい必死になれば日帰りできないことも無いかもしれませんが、余りにも慌しいので富士見平で一泊する計画を立てました。

あわよくば翌日に隣の瑞牆山にも登ってやろうという欲張りなプランです。

9時50分 瑞牆山荘
JR中央本線の韮崎(にらさき)駅から車に揺られることおよそ50分でここまでやって来ました。
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本当は路線バスで1時間以上かかるのですが、今日は乗客が多かったため臨時便扱いの乗り合いタクシーに乗ることが出来ました。料金はバスと変わらない2,060円也。

タクシー運転手のおじさんは地元山梨の出身らしく、運転中にも溢れんばかりの郷土愛を熱く語ってくれました。
曰く「日本の標高1位から3までの山はすべて山梨にある。1位は富士山、2位は北岳、3位は間ノ岳だ。」と。

そう語るおじさんの表情はとても誇らしげです。乗客の皆さんもニコニコしながら聞いています。

よかった。どうやらこの車内に静岡県民は一人もいないようです。
※富士山最高地点の剣ヶ峰は静岡県内にあります。

金峰山は甲斐では「きんぷさん」と呼び、信州側では「きんぽうさん」と呼ぶのだそうです。おじさんは当然ながら「きんぷさん」と呼んでおりました。

帰路のバス時刻をチェックです。もっとも日帰りではないでそんなに神経質になる必要はありません。
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山ツツジが満開に咲き誇っておりました。
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遠くから眺める分にはキレイですが、接近すると虫の巣窟です。

富士見平まで50分。
取り立てて特徴の無い普通の山道が続きます。
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10時40分 富士見平小屋に到着。
ここでテント場の受付をします。幕営料は1,000円です。
富士見平小屋

本日の寝床を手早く設営。
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アライテント エアライズ1でございます。

テント場の様子

テン場は森の中にあります。結構奥行きがあって広いです。100張りくらいいけるかな?
富士見平小屋のテント場

背中が軽くなったところで張り切って金峰山へ向かいます。
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いかにも奥秩父らしい、地味な通好みのシブい光景が広がっていました。
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シャクナゲの群落地が現れました。
金峰山のシャクナゲ
金峰山のシャクナゲ
金峰山のシャクナゲ
狙ってきたわけではありません。たまたま満開の季節だったようです。

木によって結構色に個体差があります。これはピンク味が強い固体ですね。
金峰山のシャクナゲ

11時55分 大日小屋までやって来ました。
富士見平小屋が管理する無人小屋です。宿泊したい場合は富士見平小屋で受付を済ませてくる必要があります。
大日小屋

大分老朽化が進んでいるように見えます。
正直、あまり泊ってみたいとは思わないです・・・
大日小屋

水場も存在します。
岩の上を、か細い清水がチロチロと流れているような状態でした。
大日小屋の水場

次なるチェックポイントの大日岩まであと30分。
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鎖場がありました。別に使わなくても登れる程度の傾斜です。
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濡れてたり凍っていた時用の鎖ですかね。

ほぼ真っ白のシャクナゲ
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岩々しい山肌になってきました。これが大日岩ですかね。
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再び鎖場
今度のは使わないと通行困難でした。
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惚れ惚れするような大岩です。
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12時20分 大日岩に到着
山頂まであと1時間50分。結構遠いいですね。
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木の隙間から金峰山山頂の五丈岩が見えました。
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大日岩から砂払ノ頭の稜線に出るまでは、樹林帯の急登です。

砂払ノ頭の頭までやって来ました。ここからは森林限界を超えて迫力の岩尾根歩きが始まります。
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山頂へと続く岩の稜線。まるで鋸の歯のようです。
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明日登るつもりでいるお隣の瑞牆山(みずがきやま)の全容が見えました。
地味なシブイ山の多い秩父山塊において、極めて強い個性を放っている山です。
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これは千代の吹上と呼ばれる大岩壁です。
千代の吹上
名前の謂れは、昔々ここから滑落した千代さんなるお嬢さんが、谷底から吹き上げる強風に巻き上げられもとの位置に戻ってきたと言う伝説によります。

人を巻き上げるほどの力があるかどうかはさておき、確かに強い風が吹き付けてきます。

千代の吹上を見下ろす。
千代の吹上
あまり身を乗り出して見ていると、チビりそうになるので程ほどにしておきましょう。

岩場の稜線を進みます。
特別に難しいと言うことはありませんが、さりとて簡単でもない道が続きます。あせらず慎重に登りましょう。
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ハイマツが生えていました。高山帯にしか存在しない植物です。
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金峰山の標高は2,599メートルあります。アルプスを除く地域にある山の中ではかなりの高い方に部類します。

金峰山荘の分岐点まで登ってきました。このまま稜線沿いに山頂を目指します。
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世界遺産のアイツが雲間から頭だけを僅かに覗かせていました。
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五丈岩のてっぺんにん登っている人の姿がハッキリと視認できました。
そして、空にはなにやら暗雲が立ち込めてきております。
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振り返ると、歩いてきた稜線が、今まさにガスに食われようとしている最中でした。
山頂に着くまで保ってくれ。
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鳥居と五丈岩
金峰山の記念撮影スポットとしてはド定番のアングルです。
五丈岩

少し引いた場所から見た五丈岩。
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沢山の人が登ろうと取り付いています。結構難しいらしく、途中で断念する人の姿が多く見られました。

かく言う私はと言うと・・・

登るつもり満々でここまで来たのですけれど、つい先ほど岩場でコケて肘を擦りむくという大惨事に見舞われすっかり意気消沈してしまい、挑戦は中止しました。

14時 金峰山登頂
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心なしか覇気のない顔をしているのは、擦りむいた肘の痛みに耐えているからです。
いや、さっさと処置をしろよと。

山頂付近はゴツゴツとした岩場になっています。くれぐれも転ばないように気を付けましょう。
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山頂からみた五丈岩
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ちなみに、金峰山の標高は2,599メートルということになっていますが、それは五丈岩のてっぺんの高さです。
私が今居る山頂標識のある場所は2,595メートルだそうです。

山頂は狭くてスペースが無いので、上ってきたのとは反対側の稜線で休憩を取ります。
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キャップをあけた途端、マキロンが空に向かって大噴出してびっくりしました。
気圧の差によるものでしょう。

山頂から眺める瑞牆山
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先ほどガスが山頂にまで到達してしまったようです。視界不良になってきました。

長野県側の展望。
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こっちはまだ晴れてますね。白く光って見えるのは水を引いたばかりの水田です。

ガスが一瞬晴れました。
ここまで歩いてきた岩の稜線が一望できます。中々の迫力です。
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下山は金峰山荘に寄り道をしました。ここで金峰山の山バッジ(500円)を購入。
金峰山荘

山荘から見上げる金峰山山頂。
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あとは下るだけです。
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なにやら天候が妖しくなってきたので足早に下山します。
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17時 我が家に戻って来ました。
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明日は晴れてくれることを願いつつ早めに就寝しました。

深夜2時頃に、テントを叩く激しい雨の音で目が覚めました。
森の中に張ったテントでこれだけの音がするということは結構な大雨のようです。

翌朝の8時ごろまでテントの中で粘りましたが、結局雨は降り止みませんでした。
瑞牆山は断念して、雨の中テントを撤収して帰途に付きました。

やけにアッサリと撤退を決めたのには理由がありまして、実のところ瑞牆山には既に登ったことがあるのです。
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このあと、増富ラジウム温泉ぶらり旅編をお送りしても良かったのですが、せっかくなので以前に瑞牆山へ登ったときの様子を軽く紹介しようかと思います。

瑞牆山はその見た目の通り、非常に急峻な山です。
とは言っても、特別な登攀技術など無くても登ることは可能です。
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山頂はからは視界を遮るもののない360度のパノラマが広がります。
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人気の百名山とあって、狭い岩場の山頂は沢山の人で溢れかえっていました。
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瑞牆山から見た金峰山。
記事の冒頭に掲載した写真です。瑞牆山で撮影しました。
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五丈岩もこの通りクッキリと見えます。
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こちらは瑞牆山のシンボルである大ヤスリ岩。ロッククライミングのゲレンデとしても有名です。
瑞牆山の山頂から見た大ヤスリ岩
棒ヤスリのように見えることが名前の由来なのだとか。
・・・ヤスリに見えますか??

瑞牆山の裏手にそびえる小川山。
破線ルートしか存在しないと言う非常にマニアックな山です。
瑞牆山の山頂から見た小川山

まるでキノコのような岩の群れ。
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これは南アルプスかな。
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言うまでも無く世界遺産のアイツ。
瑞牆山から見た富士山

これはたぶん八ヶ岳連邦最高峰の赤岳(2,899m)。
1瑞牆山から見た赤岳
この山に登ったのは2014年の秋です。

カメラを山に持ち込むようになって間もないころで、この当時の私は、やたらとズームを多用したがる悪癖がありました。

こうして改めて見ると、イマイチな写真ばかり撮っておりますな。
・・・イマイチな写真ばかり撮っているのは、今でもあまり変わらないか。

最後に、帰りのバスの車窓から望む瑞牆山。
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遠巻きに見ても、この山はかなり異質な姿かたちをしております。

金峰山に瑞牆山。どちらも奥秩父山塊の名だたる名峰であり、甲乙付けがたい魅力を持っています。
金峰山の砂払ノ頭から山頂まで連なるの岩の稜線は、期待を上回る大迫力でした。
今回の山行きでは少し残念な天候でしたが、森林限界を超える高さを持つこの山は、一流の展望と適度な登り応えを兼ね備えています。
瑞牆山も非常に魅力的な山です。簡単過ぎず、それでいて難しすぎもしない岩場の登りは、程よいスリルと達成感をもたらしてくれることでしょう。登りきった御褒美の展望もまた素晴らしいの一言に尽きます。
どちらの山も非常にオススメです。やはり富士見平に一泊して両方登るというのが一番良いのではないでしょうか。

<コースタイム>
みずがき山荘(9:50)-富士見平小屋(10:40~11:05)-大日小屋(11:55)-大日岩(12:20)-金峰山(14:00~14:40)-金峰小屋(15:00)-富士見平小屋(17:00)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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