川苔山 人気の山を不人気なルートで行く地味系登山

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東京都奥多摩町にある川苔山(かわのりやま)に登りました。
奥多摩の山の中では1、2を争う人気の山です。人気の山故に4方から多数の登山道が山頂に向かって伸びていますが、その中にはあまり省みられる事の無い不人気なルートも存在します。
冬枯れの杉林の中を延々と登る、THE地味登山をして来ました。

2015年11月17日に旅す。

川苔山と言えば
真っ先に思い浮かぶのは百尋の滝(ひゃくひろのたき)です。
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実際には百尋(およそ180メートル)もありませんが(40メートル位らしい)、この滝の存在こそが川苔山の人気を支える最大の要因であることはまず間違いありません。滝を経由する川乗橋からのルートは、この山の1番人気です。

鳩ノ巣駅からのルートもよく使われます。(下山に使用されることが多いです)
このルートのメリットとしては、比較的傾斜が緩やかな道が続くため、楽に歩けることでしょうか。
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大ダワからのルートでは、ちょっぴり危険な岩尾根歩きを楽しむことも出来ます。
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そんな多彩なルートもつ川苔山の中でもダントツに不人気なのが、古里(こり)駅から赤杭尾根(あかぐなおね)を登るコースです。
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このルートは滝も無ければ楽なわけでもない。植林された人工林が延々と続くロングルートです。

なぜわざわざこんな不人気なルートを登る気になったかと言うと・・・
ただ単にこのルートを歩いたことが無かったからです。どうせ登るなら知らない道を歩くほうが楽しそう。

そう思っていた時期が私にもありました。

8時 JR青梅線 古里駅
ホリデー快速の停まらない無人駅なので、鈍行にのって来ました。なかなか味のある駅舎です。
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ピリッとしない天気が、地味系登山のテンションを始まる前から盛り下げてくれています。

古里周辺マップ
この界隈のレジャースポットは、基本的に山か川のどちらかです。
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畑の中の急坂を登って登山口に向かいます。地元の人の生活道路なんでしょうけれど、雨上がりなんかにはちょっとした恐怖心を感じそうなくらい急勾配の道です。
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登山道の取り付き口にやってきました。
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今日は地味なルートを地味に歩くと言うことで地味なコーデをしてきました。テーマは米寿です。
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登り始めは、奥多摩エリアでは毎度お馴染みの圧倒的杉林です。杉の植樹は戦後日本の国策として進められたものですが、花粉症患者からすればこれはもはや公害です。
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杉の隙間から覗く川苔山。ゴールは遠い。
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常緑の杉林と落葉樹の自然林との、不思議な縞模様が浮かび上がっています。奥多摩の秋にありがちな光景です。
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川井駅からのルートとの合流地点まで登って来ました。どっちから登っても、所要時間に大差はありません。道標上には、赤久奈ではなく赤杭と書いてありますね。
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ルート脇に道の無い小ピークである三ノ戸山(809m)があったので、とりあえず登ってみました。どうせ先を急ぐわけでもない地味登山なのでね。
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ネームプレートと思しきものが置いてありましたが、字がかすれていて読めません。

紅葉シーズンはもう終わり、紅葉は枯葉になっていました。もう少し早くに来れば見ごろだったのかもしれません。
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歩き始めて2時間近く経過していますが、未だ一度も他の登山者に遭遇していません。もともと地味なルートに枯れ葉と言う地味成分が追加され、もはや誰からも見向きされない道が出来上がっております。
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10時20分 赤久奈山(あかぐなやま)登頂しました。尾根の名前の由来になっている山です。
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山頂の様子
頂上と言うよりは尾根上から張り出したテラスのようなスペースです。
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鬱蒼とした杉林の中から初めて視界の開けた場所に出ました。
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ここで青空が広がっていたらもう少し気分も上向いたかも知れませんが、なにやらどんよりとした空の色をしております。茶色一色の光景に食傷気味です。

こちらは川苔山のお隣にある本仁田山(1,224m)。奥多摩駅の裏山とでも言うべき好ロケーションにあり、アクセス良さからそこそこ人気のある山です。
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ススキくらいしか被写体になりそうな物を見出せないくらい、見所の無い道が続きます。
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林道に出ました。真名井沢線です。
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林道歩きは直ぐに終わり、再び杉林の道に逆戻りです。
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ルート上の脇にエビ小屋山というなんとも不思議な名前の山があるので寄り道しました。
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ぱっと見、小屋を建てられるほどのスペースがあるようには見えませんが、小さな炭焼き小屋でもあったのかな。

ビニールテープを巻いてマジックで書いただけの山頂標識がありました。まるで絵に描いたかのようなマイナーピークの光景です。
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展望は全くありません。まったく、なにから何まで地味尽くしのコースですな。
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山頂に向かって行動を再開します。途中から防火帯の中に入り視界が開けました。
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背後に展望が開けます。眼下に見えているのは青梅市の市街地かな。川苔山と言うのは、奥多摩の山の中では比較的里に近い場所にあるのですね。
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狼住所(オオカミスンド)を通過します。今では絶滅してしまったニホンオオカミの住処だったのでのしょうか。
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曲ケ谷南峰(たぶん)を通過。川苔山の山頂一帯は、地形がやたらと入り組んでいて、何がなんだかようわかりません。
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ここが曲ケ谷北峰かな(たぶん)。
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踊り平に通じるルートと合流しました。
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正面に見えているのは蕎麦粒山(1,472m)です。なんとも面白い名前をした山です。
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ゴールの川苔山はもう直ぐそこです。ああ、この地味な登山がやっと終わる。
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12時20分 川苔山登頂に登頂しました。
歩き始めてから4時間以上もかかりました。地味だし長いしで、良いところ無しの道のりでした。
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これだけ天気が悪かったのにも関わらず、富士山が見えたことだけが僅かな慰めです。
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何を被写体にしたかったのか良くわからない山頂風景。左奥の山は、東京都最高峰の雲取山(2,017m)です。
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雲行きが大分妖しくなってきたので、早々と下山を開始します。下山は「そういえば1度も行った事が無いな」という理由で本仁田山を経由して奥多摩駅へ下るルートを選択しました。
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大ダワへの分岐地点。ここを右方向に上がります。
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注意を促す張り紙が付けられていました。山と高原地図にも危険アイコンが付けられていますが、そこまで身構えるほどの道ではありません。
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岩を抱き込むように生えた唐松。
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大ダワを挟んだ向かいに本仁田山が見えました。
当然ながら、下った後に登り返さなければならないと言うことです。
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一見、断崖絶壁の行き止まりかと思うような光景ですが、道はちゃんとついています。
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下から見るとこんな感じです。
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積もった枯葉で判りにくいですが、道は割りとしっかりしています。別に破線扱いルートではないので、そこまで危険はありません。
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13時50分 大ダワに到着。
冷たい湿った香りの風が吹いてきました。経験上、この風が吹くと大体30分以内には雨が降り始めます。ここからは少しペースを上げました。
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鳩ノ巣駅へ向かう分岐を通過。エスケープするならここがラストチャンスでしたが、まだ天気が持ってくれていたので、このまま本仁田山に向かいます。
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14時35分 本仁田山に登頂です。
ペースをあげて駆け上がったので、途中の写真が一枚も残っていません。
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山頂は南側の展望が開けていますが、今日は曇っていて遠くは見えません。
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山頂のベンチで人心地ついて自撮りなどしていたいたところで、ついにタイムオーバーです。ポツリポツリと雨が降り出し、慌ててレインコートを引っ張り出します。
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防水では無いカメラは、ここでレインカバー内行きと相成りました。(故に以降写真なし)

本仁田山から奥多摩駅へと向かう道、奥多摩3大急登の一つに数えられている大休場尾根上にあります。
奥多摩3大急登がどこかと言うのには諸説ありますが、私の認識では以下の通りです。
1.奥多摩駅から本仁田山へ至る大休場尾根
2.奥多摩湖半から三頭山へ至るヌカザス尾根
3.日原から鷹ノ巣山に至る稲村岩尾根

大休場尾根は初めて通る道ですが、確かに急勾配でした。

丹沢のような階段地獄化はされておらず、キツイ傾斜の道がひたすら続きます。このルートを登りで使ったら、確実に踵が痛くなりそうです。

大体40~50分くらいで舗装道路に出ますが、そこから駅まではまだひと距離あります。15時50分に奥多摩駅に到着。雨の中をさらに歩く気にはなれず、温泉には寄らずにそのまま帰宅しました。

不人気ルートを行く地味系登山は、最後までピリッとしないまま終了です。終始テンション低めであったことが、なんとなく文章にまで滲み出てしまっておりますな。
人気の集まるルートには、必ず人気たる相応の理由があります。不人気ルートについても同様に然りです。
これから川苔山に登ろうとお考えの方に、私から言えることは一つです。
それは「川乗橋から登るべし」です。
別に赤杭尾根をこき下ろしたい訳ではないのですが、一つくらいこのルートの良いところ見つけようと努力した結果は、「推奨すべき理由はない」と言う結論でした。
強いて赤杭尾根をオススメできるのは、下山時に「今日はまだ歩き足りないなー」と感じている場合くらいですかね。ひたすら長いので覚悟して突入してください。

<コースタイム>

古里駅(8:00)-赤久奈山(10:20)-エビ小屋山(11:25)-川苔山(12:20~12:40)-船井戸(13:10)-大ダワ(13:50)-本仁田山(14:30)-奥多摩駅(15:50)

不人気コースの紹介だけして終わるのもなんなので、最後は大人気な百尋の滝の写真でお別れしようかと思います。

百尋の滝全景 夏
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百尋の滝全景 冬
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滝壺より見上げる 夏
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滝壺より見上げる 冬
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地味系登山 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. 岸 智代 より:

    長沢背稜を歩きたくて(つつじがすごいと友人に聞いたので)行ってきました。
    三峰口から入り雲取小屋泊、芋の木ドッケからスタート、意外にも道もわかりやすく里山を歩いている気分、しかし長い、同じようなところを何度も歩いて、写真で見せてもらったヘリポート、あの上で景色を見ながらお茶タイムしました。天目山への分かれ道、迷ったのですが、私76才足が棒になっていて登頂断念、良い景色の写真いっぱいありがとうございました。一杯水小屋まで8時間、(その先は前に川乗山から鳩ノ巣までおりたことがありました。)
    よこすず尾根から東日原めで9.35でした。目当てのにつつじの花は終わったみたいで花弁が散っていました。
    写真とコメントありがとうございました。大変な登山口から入ったのですね。

  2. オオツキ より:

    岸 智代さま
    コメントして頂きありがとうございます。
    雲取山から芋の木ドッケに至る道はまだ一度も訪問したことが無いので、自分もいつか歩いて見たいと思っています。
    天目山からの眺望は奥多摩エリアの中でも随一で、天目山だけを目当てに登ってもきっと満足出来る山行きになると思いますよ。

  3. 神原 成之 より:

    赤杭尾根は興味がそそられた道でした。
    今年のGWで、川苔山からの下山で歩こうかと思っていました。
    結局鳩ノ巣駅までのルートを使いましたが。
    見どころはあまりないのですね(笑)。
    しかし、面白い記事でした。有難うございます。

  4. オオツキ より:

    神原様
    コメントを頂きましてありがとうございます。
    赤杭尾根に興味を持つとは、なかなかマニアックな登山を楽しんでおられますね。ひたすら地味で長ーい尾根なので、興味本位で突入すると途中でうんざりする事になるかもしれません。物好きな方にだけおススメします。

  5. ペン生 より:

    浅い経験しかないですが「必ず人気たる相応の理由がある」というフレーズに深く共感しました。一方、不人気(マイナー)コースも「魅力はあるがアクセスやグレーディングに難があるもの」と「一般に受け入れられる魅力に乏しいもの」に大別できる気がしており、前者に当たったと感じたときは嬉しくなります。

    川苔山は新緑期に大休場尾根で登り、鳩の巣駅へ下山しました。オオツキ様の予想通り登りは踵に負担が掛かりましたが、直登しがちな積雪期のような傾斜が続き途中から一周回って面白かったです。

    • オオツキ オオツキ より:

      ペン生さま
      コメントをありがとうございます。

      端的に言って赤杭尾根は「一般に受け入れられる魅力に乏しいもの」の方に含まれるルートだと思います。物好きな人はどうぞとしか言いようがありません。

      まあ、私自身は物好きな人間なんですけれどね。