十二ヶ岳 富士山麓のアスレチックマウンテン

節刀ヶ岳から見た十二ヶ岳
山梨県の富士河口湖町にある十二ヶ岳(じゅうにがたけ)に登りました。
富士五湖の一つ西湖の湖畔にそびえる富士外輪山の一つです。幾多もの痩せた岩の小ピークが連なり、低山ながらダイナミックな岩場歩きが出来る山として知られています。
ちょっとしたスリルを求めて訪れた山で待っていたのは、富士の大展望と、ちょっとしたスリルでは済まない道でした。

2016年5月3日に旅す。

富士山麓の西湖湖畔に面白い山があるらしい。

いつものように、山と高原地図の付録についている小冊子をぼんやりと眺めながら次に登る山を物色していた私が、この山の存在を認識したのは2016年初頭の事です。

詳しく調べてみると、険しい岩峰と鎖場の続くちょっぴり危険でスリリングな山だとか。また、富士山周辺の山の常として、この山も格好の富士展望台であるようです。

富士山を横目に痩せた岩尾根を歩くとか、それだけでもうアトラクション感が満載ではありませんか。

すぐに興味が沸きましたが、時は厳冬期も真っ盛りな2月中旬。登山道が凍結した状態の岩場歩きが危険なのは、分かり切っているところです。

十二ヶ岳と言う名を記憶の片隅に刻みつつ一旦計画を塩漬けにし、暖かくなってきたところで、満を持しての計画再始動と相成りました。

コース
十二ヶ岳のコースマップ
毛無山登山口BSより毛無山を経て十二ヶ岳へ登頂。帰りは桑留尾(くわるび)に下山して「いずみの湯」へ。温泉に向かって歩くという理想のコース取りが出来上がりました。

9時35分 富士河口湖駅
JR高尾駅から富士急線直通の河口湖行きがちょうどいいタイミングで出ていたので、乗り換え無しでここまで来れました。
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毛無山登山口に向かうには西湖周遊バスに乗ります。
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この周遊バスは何故かパスモ・スイカが使えません。乗客の9割は外国人で、みな乗り放題のフリーパスを提示して乗車していました。

10時10分 毛無山登山口バス停に到着しました。登山道の入り口はトンネルの脇にあります。
160503十二ヶ岳_004登山開始時刻としては遅すぎる時間ですが、公共交通機関頼みの身としては、こればかりは如何ともしがたく。

飯も食わずに家を出てきたので、軽く腹ごしらえして10時20分に登山開始です。まずは毛無山の山頂を目指します。
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どうでもいい事ですが、毛無山という名前にはとてもシンパシーを感じます。

道端に生えていたお花。植物にはあまり造詣が深くありませんが、これはおそらくリンドウです。
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新緑の登山道を登ります。良く整備されていて非常に歩きやすい道です。
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木の隙間からこれから目指す十二ヶ岳の稜線が見えました。前評判に違わず、なかなか険しそうな姿をしております。
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登山道にはまだ桜が咲いていました。この時点で標高は1,300メートルほど。
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背後を振り返ると、松と富士と言う鉄板の構図が出来上がっていました。まるで絵葉書のような光景です。
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こちらは河口湖。富士五胡の中で一番大きいと思われがちですが、実は面積は山中湖の方が大きく、湖岸の長さが一番長いのだそうです。なるほど良くわからん。
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こちらは西湖です。富士五胡の中では一番影が薄いのではないでしょうか。
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西湖の先に見えている瘤のような山は大室山(1,468m)です。樹海の真っ只中にある道も無い山です。帰ってこれなくなる可能性が大なので、間違っても登ろうなどと思ってはいけません。

十二ヶ岳の山頂が見えました。山頂直下の傾斜が結構ヤバイそうな感じですな。
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11時40分 毛無山に登頂しました。杭が折れて、山頂名プレートだけが無造作に地面の上に置かれていました。
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・・・毛が無いと言うだけの事で、山頂標識にまでこのような仕打ちを加えるとは。この国のハゲに対する非寛容さはもはや猟奇的なレヴェルです。

カメラを設置できる杭が無い&ミニ三脚忘れたにより左手を伸ばして自撮り。
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ここから尾根沿いに十二ヶ岳へ向かいます。十二ヶ岳はその名の通り、十二個の小ピークが連なる鋸のような山容をしており、-ヶ岳から順の名前が付けられています。

と言う訳でまずは最初の-ヶ岳です。毛無山からは5分ほどで辿り着きます。ピークと言うよりは、ただの稜線上の膨らみのような場所です。
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-ヶ岳から5分ほどで今度は二ヶ岳です。ここもあまりピークっぽさはありません。十二の名前にあわせるための、無理矢理感が満載です。
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今のところ道は特に険しくもなく穏やかです。小さなアップダウンを繰り返しながら、どんどん進んでいきます。
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三ヶ岳にして、ようやくピークらしいピークになりました。
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ロープの張られた岩場が現れました。この程度ではまだまだ楽勝です。
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四ヶ岳。これと言った特記事項はありません。
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手を使わないと登れないような道になってきましたよ。楽しくなってきました。この十二ヶ岳のコースが良くできているのは、後に行くほど難易度が徐々に上がってくるところです。
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岩をよじ登ったところで五ヶ岳です。
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ゴールの十二ヶ岳を視界正面に捉えました。まだ先は長そうです。
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足元に咲いた花などを愛でて、しばし緊張感を和らげます。これはキジムシロかな。
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六ヶ岳。ここも、これと言った特記事項はありません。
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七ヶ岳は、なにやら惨い事になっておりました。
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もともと七ヶ岳であったであろう場所。ビニールテープで補修をしたような痕跡が残っている辺りがまた、哀愁を誘います。
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そして八ヶ岳です。うん。どこかで聞いたことのあるような響きですね。
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そしてお次の九ヶ岳。ここからは一旦大きく下りになります。
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振り返ってみる九ヶ岳。なかなか岩々しい姿をしております。
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ロープの張られたザレ場を下ります。毛無山を出発して以来、始めて他の登山者の姿を見かけました。
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さあ、段々と険しさが増してきましたよ。とは言っても、今のところはまだ一般登山道レベルです。
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木の根っこに結び付けてあるだけのロープです。使わないほうが無難かも。
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一つ飛んで十一ヶ岳が現れました。どうやら十ヶ岳を見落としてしまったようです。
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いよいよ最後の十二ヶ岳が目の前に立ちはだかります。これまでの小ピークたちとは明らかにスケールの異なる貫禄があります。
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・・・・なんか対岸の崖にロープがたらされているのが見えるんですけど。まさかあそこを登るのか?
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十二ヶ岳の手前で、一旦V字型の谷を下ります。
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こっちも殆ど絶壁です。誰だ、この山をちょっぴり危険とか言った奴は!
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岩壁に咲く可憐なお花。たぶんイワザクラです。
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割と命がけの撮影であったことを追記しておきます。

下りきって見上げるとこんな感じです。
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別アングルです。もうこれは、あまり一般向けルートとは言えないんじゃないでしょうか。
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谷底にはつり橋がかかっていました。
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「ひとりづつ渡れ」だそうです。二人同時に渡ったらどうなってしまうのでしょう。ブルブル。
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対岸の十一ヶ岳を悠々と下る老夫婦。山のベテランと思しきお二方は、実に軽々と下っておられました。
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あの身のこなしかたを学びたい。

さあ、いよいよ登ります。この時点で、私はかなりビビっていたと言う事実を告白せねばなりません。
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ビビリまくった結果、カメラを構える心理的余裕が失われました。心理的余裕と言うか、実際問題として鎖を頼りに壁に張り付いて登るので、カメラの操作など出来はしません。

と言うことで、場面は一気に登り切った地点へとワープします。途中のシーンは一切ございません。あしからず。
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つい今しがたまで自分が命を預けていた鎖が、実は枯れ木に括りつけられていただけであったことを知って、さらにゾッとするのでありました。

十二ヶ岳から望む十一ヶ岳です。いやはや、最後最後ですごい道でした。
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崖を登りきった地点からは、御坂山地の主稜線が一望できました。
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13時15分 十二ヶ岳に登頂しました。毛無山から1時間45分で到着です。非常に密度の濃い道中でありました。
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十二ヶ岳より望む富士山と西湖。ここまでのアスレチックを乗り越えて来た者だけが目にすることの出来る光景です。
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と言いたいところではありますが、実は毛無山を経由せずとも、麓から直接ここまで登ってくることも可能です。

こちらはお隣の鬼ヶ岳(1,738m)。確かに角が2本生えているように見えます。
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麓の桑留尾が見えました。この時点で私の頭の中は既に温泉モードに切り替わりました。足早に下山開始です。
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あまりに足早過ぎて下山中の写真が残っておりません。唯一残っていたのがこの萎れかかった花の写真だけです。
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下山路は砂礫の急斜面で、下るのに割と難儀したように記憶しております。

下山後に「いずみの湯」へ寄ったはずなのですが、何も思い出せないほどこれと言った特徴の無い普通の温泉施設でした。

河口湖駅から京王5000系に乗って帰還しました。5000系の中古車両を使用しているのは知っていましたが、塗装まで京王カラーなのは始めて見ました。
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山の危険度に対する感想というのは感覚的なものであるため、人によって感じ方はマチマチです。
岩場は余り得意ではない私の感覚では、この山の危険度は「ちょっぴり」ではありませんでした。一般登山者向けとは言い難い山です。
とりあえず、高いところが苦手な人には全くオススメしません。逆に十二ヶ岳直下の絶壁を見て「楽しそう」と思う方はぜひ足を運んでみてください。この山が大変良くできたアスレチックであることは保障します。

<コースタイム>
毛無山登山口(10:20)-毛無山(11:40)-吊橋(12:50)-十二ヶ岳(13:15~13:40)-桑留尾(14:55)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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