石丸峠から米背負峠に至る小金沢連嶺(こがねざわれんれい)の稜線を歩きました。
小金沢連嶺とは大菩薩嶺から滝子山に至る南に向かって伸びる長大な稜線です。この尾根道の最大の特徴は「富士山に向かって歩く」ことです。
まさに飽き飽きするほどの富士展望を満喫した山旅でした。
2015年7月26日に旅す。
大菩薩峠から石丸峠にまで足を運んだことのある人なら、その先に南に向かって伸びる長大な稜線を目にしたことがあるのではないでしょうか。
それこそが今回の目的地、小金沢連嶺です。
甲州市では、この稜線に甲州アルプスと言う通称を定着させようと盛んに宣伝しています。言うなれば、ここは現在絶賛売出し中の山という訳です。
小金沢連嶺は、大菩薩嶺より笹子川北岸の滝子山まで、全長30km近くに及ぶ長大な尾根です。
このルート上には、山梨県大月市が制定した秀麗富嶽十二景の山が5座も連なっています。
具体的には、小金沢山(2,014m)、牛奥ノ雁ヶ腹摺山(1,995m)、大蔵高丸(1,781m)、ハマイバ丸(1,752m)および滝子山(1,615m)です。
それはどういう事なのかというと、この稜線を歩いている間、進行方向にずっと富士山が見えていると言うことです。
富士山マニアには、垂涎モノのコースと言えるでしょう。
この尾根を一日ですべて踏破するのは、トレランでも無い限りちょっと厳しいです。今回は最後の滝子山を割愛し、石丸峠から米背負峠に至る部分を歩きたいと思います。
それでは、富士山に向かって歩く魅惑の稜線歩きへ繰り出しましょう。
8時10分 JR中央本線 甲斐大和駅
ここから栄和交通が運行する上日川峠行きのバスに乗ります。
終点まで行かない人は前のほうに乗ってください、と言うことだったので最前列の席に陣取りました。
人気の百名山である大菩薩嶺へのアクセスルートとあって、バスは満員でした。人数に応じて臨時便を出してくれるので、よほどのことが無い限りは乗り損なうことは無いはずです。
9時2分 小屋平(こやだいら)バス停に到着しました。終点(上日川峠)の一つ手前のバス停です。ここまでの運賃は950円也。
先も長いので手早く身支度を整えて登山を開始します。初っ端から笹薮の急登です。
単独登山はやめましょう。お気遣いありがとうございます、今は亡き塩山市さん。
※塩山市は平成の大合併により消滅し、現在は甲州市の一部です。
急坂を登りきると林道に出ました。あまり手入れはされていないらしく、法面が大分やられておりますな。
早速富士山が顔を見せました。今日はこの後ずっとこいつと顔を付き合わせ続けることになります。
少しだけ林道沿いを歩いたところで、再び登山道へ入りました。ここから先は傾斜も緩み、とても歩きやすい道です。
木の隙間から望む富士。このころはまだ見飽きていなかったので、見かけるたびにいちいち写真に収めておりました。
本日最初のチェックポイントでも言うべき、石丸峠が見えてきました。
9時55分 石丸峠に到着しました。笹原の広がる広々とした気持ちの良い空間です。
到着するなり、何故か脳内で今は亡き石丸電気のテーマが再生されました。
石丸~(まるまる)
石丸~(まるまる)
これから歩く小金沢連嶺の稜線です。正面に見えているのが、本日の縦走最初のピークとなる小金沢山です。
西側に目を向けると眼下の大菩薩湖と、奥には南アルプスの山々が一望できます。
南アルプスをズームしてみてみましょう。7月中旬ともなると、流石にもう残雪もなく緑々とした姿をしています。
こちらは東側の展望。正面に見えているのは雁ヶ腹摺山(がんがはらすりやま)です。旧500円札に描かれた富士山の撮影地として有名な山です。
草原の道を進みます。日差しを遮るものが何も無いので、非常に暑くなってきました。
しっとり湿っていて、コケの一族が大いに繁栄しています。奥秩父らしい雰囲気の森です。
11時 小金沢山に登頂しました。大月市の最高地点にして、秀麗富嶽十二景のなかで唯一の標高2,000メートル越えの山です。
山頂の様子
樹林に覆われており、富士山がある南側だけ視界が開けています。
それでは早速、秀麗富嶽No2の光景を見てみましょう。まあ、なんと言うか普通ですね。
先は長いので次へ行きます。隣の牛奥ノ雁ヶ腹摺山まではおよそ30分の道のりです。
この区間にはあまり標高差もなく、ほぼ水平移動のようなトレイルが続きます。
11時30分 牛奥ノ雁ヶ腹摺山に到着しました。「うしおくのがんがはらすりやま」と読みます。日本で一番長い名前の山です。
ここで再び秀麗富嶽のお時間です。小金沢山から見た時よりも、視界が広く開けていて良い感じです。
さあどんどん次へ行きましょう。お次のピーク黒岳に向かいます。
これが黒岳です。頂上までスッポリと樹林帯に覆われていて、確かに黒々として見えます。
道の脇に咲く余り可憐ではないお花。真夏の炎天下でも萎れずに咲いているだけのことあって、巨大で厳つい花が多いですね。
鞍部から登り返したところが川胡桃沢ノ頭(かわくるみさわのかしら)です。
一応、富士山が見えますが、それ以外は特に何も無い小ピークです。
12時半 黒岳に登頂しました。特に写真に収める場き光景が見当たらなかったので、途中をだいぶすっ飛ばしましたが、牛奥ノ雁ヶ腹摺山から黒岳までの道はアップダウンが多めです。
山頂の様子
樹林帯に覆われており、展望は全くありません。ここで日陰に入って弁当を広げました。
黒岳から湯ノ沢峠に向かって下ります。その途中にあったのがこの白谷ノ丸(しろやがまる)。全くのノーマークだったのですが、ここからの展望が素晴らしかった。
眼前に広がる大草原。ここは秀麗富嶽十二景には選ばれていないピークですが、眺望に関しては間違いなくここが最も良いです。
牧場か何かなのかと思うような光景です。樹林帯の中からいきなりこんな景色に飛び出したので驚きました。
下から見上げる白谷ノ丸。
時間が許せば昼寝をしたくなるような光景です。今日はまだまだ先が長いので後ろ髪を引かれつつこの場を後にしたのでした。
後ろ髪なんて無いけどな!
13時15分 湯ノ沢峠まで下って来ました。発砲注意とか、さりげなく恐ろしげなことが書いてありますな。この付近は狩猟区であるようです。
湯ノ沢峠から少し下ったところに水場があります。炎天下の中を延々と歩いて来て、3Lあった水が底を付きかけていました。ここで2Lほど補充します。
ここから大和天目温泉へ下山することも出来るのですが、今日はもう一踏ん張りして米背負峠まで行きます。
峠から次なるピークの大蔵高丸に向かって登り返します。鹿除けのゲートがありました。
湯ノ沢峠から大蔵高丸に至る斜面は小金沢山自然保存地区に指定されており、貴重な高山植物の咲き誇るお花畑が広がります。
今はもう既に花のシーズンでは無いので、一面の草原が広がっていました。
14時5分 大蔵高丸(おくらたかまる)に登頂しました。平坦で、あまり山頂っぽく無い場所です。
秀麗富嶽No3の富士山です。先っぽしか見えなくなってしまいました。
大蔵高丸から振り返って見た白谷ノ丸です。斜面の一部だけが草原状になっているのが良くわかります。
14時25分 ハマイバ丸に登頂しました。大蔵高丸からは殆どアップダウンも無くたどり着きました。
秀麗富嶽No3の富士その2です。手前に三ツ峠山が無ければ、富士山を写しているのだとはわからない状態になってしまいました。
これで予定していたすべてのピークを踏みました。下山を開始しましょう。これは下山路の途中にあった天下岩。
15時 米背負峠に到着しました。かつてはこの小金沢連嶺の尾根を挟んだ両側で、コメなどの物資のやり取りがあったのでしょうか。
小金沢連嶺の尾根筋はこの先の大谷ヶ丸、滝子山をへて笹子川の北岸へ切れ落ちて終了します。本日はもうそこまで行く時間も体力も残ってはいないので、ここで下山を開始します。
米背負峠から大和天目温泉への下山路は、やや荒れ気味な沢沿いの道でした。
どうもこの時点で既に私の頭の中は温泉ことでいっぱいになっていたらしく、下山路の写真が一枚も残っておりませんでした。
30分ちょっとで登山道は終わり、そこからは延々と舗装道路を下りました。
下山中に唯一撮った写真がこれ。大蔵隧道です。
中で曲がっているので出口の明かりが一切見えません。ライト必須です。
この後、大和天目温泉に寄り、17時10分の甲州市コミュニィバスに乗って帰還しました。
小金沢連嶺の稜線は、最初に石丸峠に上ってさえしまえば、後は高低差の少ない穏やかな稜線歩きを堪能できます。
展望も素晴らしく、何より重要なのは下山後に温泉が待っているということです。大菩薩嶺界隈に比べて余り歩く人の居ない一帯ですが、非常にオススメなコースです。
標高がそこそこ高い一帯なので、真夏の暑い盛りであったも、比較的涼しい点もポイント高しです。
今回私は米背負峠まで行く若干長めのルートを選択しましたが、湯ノ沢峠までで縦走を切り上げれば比較的コンパクトな計画にまとめることも可能です。
<コースタイム>
小屋平BS(9:00)-石丸峠(9:55)-小金沢山(11:00)-牛奥ノ雁ヶ腹摺山(11:30)-川胡桃沢ノ頭(12:00)-黒岳(12:30)-白谷ノ丸(12:50)-湯ノ沢峠(13:15)-大蔵高丸(14:05)-ハマイバ丸(14:25)-米背負峠(15:00)-大和天目温泉(16:30)
完
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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