顔振峠-越上山-スカリ山 奥武蔵の里山と桜が満開の鎌北湖を巡る

飯能市 春の風影集落
埼玉県飯能市と越生町にまたがる顔振峠(かあぶりとうげ)、越上山(おがみやま)および毛呂山町にあるスカリ山に登りました。
いずれも西武秩父線と並行するように北側に連なっている尾根上にある、標高400~500メートル程の里山です。古くから人との係り合いが強い山域で、現在でも山上には林道が張り巡らされていて小集落が点在しています。春になると桜やツツジがが一斉に花を咲かせて華やかな光景となります。
桜が咲き誇る春爛漫の奥武蔵を巡り歩いて来ました。

2024年4月7日に旅す。

顔振峠(かあぶりとうげ)。この一風変わった名称の峠は、埼玉県の飯能市と越生町の境界上にあります。峠なのになぜか越生10名山の一つに数えられていたりと、名前以外にも色々と不思議な場所です。
顔振峠の茶屋
名前の由来には諸説ありますが、その中には源義経が奥州へ逃避行の最中にこの峠を通り、あまりの絶景に何度も振り返ったためという説もあります。

実際のところ義経一行の逃走ルートは北陸経由であったと考えられているため、顔振峠を通ったと言うこの伝承は眉唾物ではあります。

今回はこの顔振峠を起点に尾根沿いを歩き、桜の名所である鎌北湖まで歩いて来ました。奥武蔵ロングトレイルと呼ばれるルートの一部に組み込まれている道です。
奥武蔵ロングトレイルの登山道
道中にいくつかの小ピークを越えていきますが、全般的にアップダウンは少なめで歩きやすく、トレイルランナーの姿も多く見られるルートです。

鎌北湖では桜がまさに見頃の最盛期を迎えていました。普段は地味な山域であると見なされがちな奥武蔵が、一番美しく輝く季節です。
鎌北湖の桜
春爛漫な奥武蔵の里山を、ゆるりと巡り歩いて来た一日の記録です。どうぞ肩の力を抜いてご覧ください。

コース
顔振峠から鎌北湖へのコースマップ
西武秩父線の吾野駅よりスタートし、関東ふれあいの道のルートを歩いて顔振峠へ。峠からは越上山やスカリ山などを経て鎌北湖へと下ります。

鎌北湖で桜を眺めた後、宿谷の滝を経由して八高線の高麗川駅まで歩きます。累計標高差はさほど大きくありませんが、結構な長距離を歩く行程です。

1.顔振峠登山 アプローチ編 西武線で行く奥武蔵への旅路

6時56分 西武線 池袋駅
多摩地域在住の民にとって、奥武蔵は近いようでいて割と遠い場所です。八王子から八高線に乗っても良いですが、時間的にも運賃的にも、一度池袋に出てしまった方が結局は安がりです。
西武線池袋駅のホーム

飯能駅で西武秩父行きに乗り換えます。この先は4両編成となるため、毎度のごとくここで椅子取りゲームが発生します。悠長にホームの写真など撮っていると、当然ながら出遅れます。
飯能駅のホームに停車する西武秩父行き普通列車

8時17分 吾野駅に到着しました。かなりの数の登山者が一斉にホームに降り立ちました。吾野駅から登れる山でこれだけ人気がある山となると、一体どこだなんろう。根の権現か。
吾野駅のホーム

駅に下りた時点からすでに桜が満開です。本日は桜の名所として名高い鎌北湖を目指して歩く計画ですが、これは大いに期待が出来そうです。
吾野駅駅前の桜

2.関東ふれあいの道を辿り峠を目指す

8時25分 身支度を整えて行動を開始します。吾野駅から顔振峠へいたる道は、関東ふれあいの道に組みこまれているルートです。そのため、道標の導きに従って進めば迷う要素はありません。
吾野駅前の階段

高麗川にかかる橋を渡ります。河原にある大岩の上に弁財天が鎮座していました。今でこそ橋のすぐ隣にあるようにも見えますが、かつては川の只中にポツンとあったんでしょうね。
吾野弁財天

高麗川を渡ったら、国道299号線沿いに下流方向へと進みます。この時点で周囲に人影が無くなりました。吾野駅に降り立った大勢の登山者は、少なくとも顔振峠を目指してはいないようです。
吾野駅周辺の国道299号線

吾野トンネルが見えてきたら、その手前で左の道に入っていきます。
国道299号線の吾野トンネル

すぐにまた分岐が現れるので、標識の案内に従って県道61号線に入っていきます。
240407顔振峠-013

登り坂が始まりました。ちなみに顔振峠までの道程のうち、だいたい半分ちょっとくらいは舗装道路歩きとなります。
240407顔振峠-014

道沿いの桜が良い感じに咲いていますが、背景が青空でないのが少々残念な感じです。本日はこの後に晴れる予報となっていますが、果たし本当にここからの逆転はあるのか。
240407顔振峠-015

ミツバツツジも咲き始めつつありました。つい最近前まではミツマタやカタクリを追いかけていたのに、季節が移ろうのは早いものです。
240407顔振峠-016

やがて沿道に人家が無くなり、鬱蒼と薄暗い杉の植林となりました。奥武蔵の山と聞くと、だいたいこんな感じの景色を思い浮かべるのではないでしょうか。端的に言うと、地味であるとの印象が強いです
240407顔振峠-017

道中に水場がありました。備え付けのコップが苔まみれであまりにも汚かったので、手ですくって一口頂きました。うん、冷たくておいしい。
県道61号線の水場

このまま県道を道なりに進んでいっても最終的には顔振峠には到達出来ますが、この分岐を直進するとショートカット可能です。
240407顔振峠-019

ひょっとしてこのまま最後まで舗装道路歩きなのかとも思いまいしたが、ここに来てようやく登山道の入り口がありました。
240407顔振峠-020

関東ふれあいの道と言うだけあって、良く踏まれている明瞭な道です。前日が雨だったこともあり、地面はしっとりと濡れていました。
240407顔振峠-021

林道と付かず離れずの距離でずっと並走しています。恐らくですが、登山道の方が先にあって、林道は後からできたのでしょう。
240407顔振峠-022

そんな訳で登山道は所々で林道に寸断されており、何度か交差しながら登って行きます。
240407顔振峠-023

やがて進行方向の先に人家が見えて来ました。結構登ってきたと思うのですが、こんな山の上に集落がありましたか。
飯能市 風影の集落

3.花が満開の顔振峠

舗装された道路に合流しました。この道は登りの途中で袂を分かった県道61号線です。現在地はまだ峠ではなく、県道を横断してさらにもう少し登ります。
飯能市 風影の集落

山の上に広がる風影(ふかげ)の集落です。顔振峠といい、不思議な響きの地名が多いですね。かつてこの山上の一帯は長沢村に属していましたが、現在は飯能市の一部です。
風影の集落

奥武蔵の盟主、武甲山の頭の部分だけが見えています。武甲山の左手前の山は武川岳(1,052m)かな。なにぶんなじみの薄い山域なので、山座同定にイマイチ自身がもてません。
風影から見た

ここからは花咲く天空の集落の中を進んで行きます。まるで狙いすましたかのように、頭上には青空が広がり始めました。今日は何もかもがうまくいってしまう日か。
240407顔振峠-028

背後の展望が一気に開けます。この写真では左端のあたりに見切れてしまっていますが、富士山の頭だけが僅かに見えます。
顔振峠 摩利支天からの展望

ミツバツツジが満開です。ここよりも標高が低い地点ではまだ咲きはじめだったのですが、日当たりの違いによるものでしょうか。
240407顔振峠-029

五重塔ならぬ二重塔が立っていました。摩利支天尊を祀ったお堂です。もともとは仏教の神ですが、日本では中世期以降に護身や蓄財などの神として信仰を集めていました。
風影の摩利支天堂

事前にまったく把握していなかったのですが、この長沢摩利支天は桜の名所としてそれなりに名が知られている場所です。思いがけず良いものを見ることが出来ました。
飯能市 長沢摩利支天の桜

摩利支天から顔振峠までは5分少々の距離です。峠まで車で登って来たと思われる、ラフな格好をした観光客の姿も散見されました。
240407顔振峠-031

峠に立つ平九郎茶屋が見えて来ました。
240407顔振峠-032

9時45分 顔振峠に到着しました。こうしてわざわざ自転車ラックがある事からも察せられる通り、自転車乗りにも人気のある峠です。
顔振峠の標識

顔振峠は飯能市と越生町の境界上にあります。名前の通り山ではなく峠なのですが、何故か越生10名山の一つに数えられています。
顔振峠の越生10名山の標識

峠には現在3件の茶屋があります。その中でも一番有名であろう平九郎茶屋は、初代日銀総裁にして次期1万円札の肖像になる予定の渋沢栄一の養子だった、渋沢平九郎に由来しています。
顔振峠の茶屋
渋沢平九郎は飯能戦争と呼ばれる旧幕府軍と新政府軍との戦いに旧幕府側として参加するも惨敗し、顔振峠を越えて生越へ逃走する最中に新政府側の斥候に発見されて自刃しました。

その際に顔振峠の茶屋の女将に刀を預けたという伝説があり、それが茶屋の名称の由来になっています。

4.比較的フラットな道が続く奥武蔵ロングトレイルと、それなりに急登の越上山

まだまだ先は長いので、茶屋の自販機で買った炭酸飲料で一服したらすぐに出発します。顔振峠からは暫しの間、舗装道路歩きとなります。
240407顔振峠-035

道が大きくカーブしている地点から、再び登山道へと入っていきます。
240407顔振峠-036

いかにも奥武蔵らしい、日中でも薄暗い杉の植林帯となりました。奥武蔵ロングトレイルと呼ばれているルートに組み込まれている道です。
240407顔振峠-037
この先にも何ヵ所か展望が開ける場所はありますが、トレイルの大部分はこんな感じ道が続きます。

道の途中に諏訪神社があります。この周辺の字が阿寺であることから、阿寺諏訪神社と呼ばれています。
阿寺諏訪神社の境内

毎年10月に獅子舞が奉納のされることで有名でしたが、コロナ渦になって以降は中止されており、現在にいたるまで再開していません。舞手の高齢化も進んでいるだろうから、もう再開は難しいのだろうか。
阿寺諏訪神社

狛犬もどこか獅子風の外観をしています。秩父地方の神社には狼の意匠の狛犬が多いのですが、正丸峠によって隔てられている奥武蔵と秩父とでは、風習も異なっているのだろうか。
阿寺諏訪神社の狛犬

諏訪神社からユガテと書かれた方へ進みます。本日は立ち寄る予定がありませんが、このユガテと言うのも風影と同様の山上にある集落の名前です。
240407顔振峠-041

相変わらずの圧倒的杉林が続きます。もう時期的に花粉飛散のピークは過ぎていますが、シーズン中に歩いたら目鼻が大変なことになりそうな道です。
240407顔振峠-042

道の途中に越上山への分岐があります。ルート上からは少しずれた場所にありますが、大した距離でもないのでサクッと往復して来ましょう。
越上山への分岐

距離的には分岐地点からほぼ目の前にあると言って良い越上山ですが、割と急峻な山です。自分で言っておいてなんですが、サクっとは往復できないかもしれない。
越上山への登り
越上山(おがみやま)と言う名称の由来は拝み山がなまったという説が有力ですが、確かに仰ぎ見るような傾斜角ですなこれは。

上の方は岩場になっていました。ここは手も使いつつよじ登ります。
240407顔振峠-045

岩の上へ登ると、少しだけ展望が開けました。春らしく空気が霞んでおりモヤ―っとしていますが、方角的には都心方面が見えているはずです。
越上山からの展望
山頂には展望が一切ないので、景色を眺めながら休憩をしたい人はここで取るのが良いと思います。

一か所だけ結構危なっかしい岩場があります。これは通過してから振り返って見たところですが、両側は切れ落ちているのでこの岩を直接乗り超えます。
越上山の岩場

10時30分 越上山に登頂しました。特に何かがあると言う訳でもない地味で静かな頂です。一応はここが本日の行程における最高地点となります。
越上山の山頂

5.幾多の小ピークを越えて北向地蔵を目指す

分岐地点まで引き返して来ました。引き続き奥武蔵ロングトレイルを辿ります。
240407顔振峠-049

比較的フラットな道が続くため、トレラン向きなルートだと思います。実際に結構な数のランナーと行き交いました。
240407顔振峠-050

ここで一度林道を横断しますが、道の向かいに登山道がしっかりと続いています。
240407顔振峠-051

すぐに一本杉方面との分岐が現れました。ここでもユガテ方面と書かれてる方へ進みます。この付近の登山道は分岐が多いので、道標上に現れる地名の位置関係が頭に入っていないと、道に迷いやすいかもしれません。
240407顔振峠-052

登山道のすぐ傍らを奥武蔵グリーンラインが並走しており、この先でも何度が合流します。身も蓋も無いことを言ってしまうと、登山道よりもアップダウンがほぼ無いグリーンライン上を歩いたほうがはるかに楽です。
240407顔振峠-053

山頂だとは気が付かずに素通りしそうになりましたが、途中に大沢山と言う小ピークがありました。特に何かがある訳でもなく、ただの通り道と言ったところです。
240407顔振峠-054

薄暗かった登山道に、眩い陽の光が差し込んできました。展望が開けそうな予感がします。
240407顔振峠-055

唐突に伐採地があらわれました。見たところ防火帯と言う感じでもないし一体なんだろう。
240407顔振峠-056

脇を見ると電線が外されている鉄塔が並んで見えています。なるほど位置関係的に、恐らくここにもかつては鉄塔が立っていたのか。
240407顔振峠-057

その推測を裏付けるかのように、鉄塔の土台だったと思われるコンクリートだけが残っていました。
240407顔振峠-058
こうした山中にある送電鉄塔は、使用されなくなって以降も撤去されずにそのまま残っていることが多い印象ですが、ここでは珍しくちゃんと解体したようです。

登山道上にあるため、老朽化したら危険だと判断されたのか。

またもや、あまり山頂感はない小ピークがありました。
蟹穴山の山頂

蟹穴山と言う何とも奇妙な名称です。こんな尾根上にあるただのコブのようなピークにまで、いちいち名前を付けるのが奥武蔵の流儀であるらしい。
蟹穴山の山頂標識

蟹穴山を過ぎると、登山道は大きく標高を落とし始めました。
240407顔振峠-061

この下り坂の途中に鎌北湖方面への分岐があります。最短で鎌北湖に向かいたければここから下るのが正解ですが、本日はもう少し先まで尾根上を歩きます。
240407顔振峠-062

奥武蔵グリーンラインに合流しました。もともとあった登山道は、どうやらグリーンラインが出来た時に寸断されたようです。
240407顔振峠-063

舗装路を進むと、すぐに登山道に復帰しました。地図によればこの辺りに茶之岳山という小ピークがあるはずなのですが、どうやら標識を見落としてしまったようです。
240407顔振峠-064

小さく登って降りてしたところで、またもや分岐が現れました。ユガテ方面との分岐であるエビガ坂です。
エビガ坂

12時10分 エビガ坂に到着しました。先ほどからカニだのエビだのと、甲殻類の名前ばかりが登場するのは何故なのだろう。
エビガ坂
いつの間にか越生町からは外れて毛呂山町の領域に入っていたらしく、道標に描かれているマスコットが「うめりん」から「もろまる」に変わっていました。

ここから本日最後の小ピークとなる、スカリ山への登りが始まります。眺めの良い山であるとの前情報を得ているので、期待して行きましょう。
240407顔振峠-067
なおエビガ坂からスカリ山に至る登山道は、山と高原地図上では破線ルートの扱いとなっています。

分岐を過ぎると、木の根が露出した急登が始まりました。なるほど確かにここまで歩いて来た安心安全な道とは若干雰囲気が異なりますが、それにしたって破線扱いにするほどの道ですかねこれ。
240407顔振峠-068

急登を登り切り山頂かと思ったら偽ピークでした。
240407顔振峠-069

と言う事で最後にもうひと登りです。
240407顔振峠-070

今度こそ山頂が現れました。確かに視界が開けており開放的な空間です。
スカリ山の山頂

12時25分 スカリ山に登頂しました。これまた不思議な語感の名前ですが、由来についてはイマイチよくわかりません。標高500メールにも満たない山ですが、毛呂山町の最高峰です。
スカリ山の山頂

北側の展望が開けています。晴れて空気が澄んだ日には日光方面の山まで見えるそうですが、本日は霞んでいて遠くは一切見えませんでした。
スカリ山からの展望

ピークハンターとしてのお勤めは無事に果たされました。そろそろ本日のメイン会場であるところの、鎌北湖を目指しましょう。反対側の斜面はとりたてて急でもなく、至って歩きやすい道です。
240407顔振峠-074

サクサクと足早に下ると、奥武蔵グリーラインに合流しました。ここからはしばしの舗装道路歩きとなります。
240407顔振峠-075

これは山桜なのかな。こちらも良い感じに満開の見頃です。
奥武蔵グリーンラインの山桜

道端にはオオアラセイトウが咲き誇っていました。うーん、春ですねえ。
240407顔振峠-077

やがて道の脇に、鐘と小さなお社が現れました。
北向地蔵

13時 北向地蔵に到着しました。尾根沿いの登山道はこの先の日和田山まで続いていますが、縦走はここまでで切り上げて鎌北湖へと進路を転じます。
北向地蔵

北向地蔵の来歴についての案内板がありました。江戸時代に起きた浅間山天明大噴火と、その後の大飢饉を受けて、村の守護神とすべく置かれたものです。名前の由来は極めて単純に、北向きに置かれているからだそうです。
北向地蔵の案内板

6.鎌北湖で満開の桜を鑑賞する

北向地蔵から鎌北湖に向かって下って行きます。相変わらず分岐だらけなので、ルートはよく確認してください。道標はしっかりと整備されています。
240407顔振峠-081

下り始めて早々にまた奥武蔵グリーンラインにぶつかりました。ここは曲がらずに真っすぐ直進します。
240407顔振峠-082
奥武蔵グリーンラインも鎌北湖を目指しているため、左折して道なりに下っても目的地には辿り着けますが、登山道経由の方がいくらかショートカットできます

すぐに登山道の入り口が現れました。この辺りは林道が複雑に入り組んでいて、本当に道がわかりづらいです。
240407顔振峠-083

谷底に向かって下って行くと、遊歩道らしき道が整備された場所にでました。
240407顔振峠-084

だいぶくたびれている感じがしますが、宿泊施設らしき建物が建っています。鎌北湖の辺まで下って来たようです。
240407顔振峠-085

湖と名乗ってはいますが、鎌北湖は農業用のため池です。山に囲まれた狭い谷合にある、ごく小さな貯水池です。
鎌北湖と釣り人

桜が満開御礼とあってか、駐車場は満車状態です。湖畔の狭い路上を車がひっきりなしに往来しており、渋滞が発生していました。こんなに人気のあるスポットだったのですね。
鎌北湖の駐車場

ダムの堤体上が桜並木になっており、湖面には見事なリフレクションが見えていました。
240407顔振峠-088

桜並木があるのはこの堤体上だけです。道の両側にあり桜のアーチが出来上がっていました。
鎌北湖の桜

朝の時点では薄曇り状態の空でしたが、幸いにも綺麗に晴れてくれました。やはり桜は、青空の下にこそ映えます。
240407顔振峠-089

ダムの堤体はごく小さなもので、土を盛っただけのいわゆるアースダムです。ゲートなどの複雑な洪水調整機能は一切備えていません。
鎌北湖の堤体

桜の名所だと言うからもっとこう、湖全体が桜に囲まれているいるような光景を思い浮かべていましたが、桜並木自体は意外と小規模なものでした。千鳥ヶ淵みたいなものを想像していると、若干肩透かしを食らうかもしれません。
鎌北湖の桜

鎌北湖と言うのはあとからついた通称で、正式な名称は山根溜池と言うらしい。昭和10年に完成したとあるので、相当古くからあるダムです。
鎌北湖の案内板

お花見を終えて駐車場へ戻って来ました。鎌北湖から直接毛呂駅に向かって歩いても良いのですが、このすぐ近くに景勝地の宿谷の滝があるので、帰りがけに立ち寄って行きます。
桜が満開の鎌北湖の駐車場

7.宿谷の滝に寄り道する

駐車場の裏手にある四季の丘公園から、再び山中へと入って行きます。大した登り返しではありませんが、一応この後には山越えがあります。
240407顔振峠-094

公園内をぐるっと一周できる遊歩道が整備されていますが、そこからは外れて宿谷の滝方面へと進みます。
240407顔振峠-095

公園の裏手に登って行くと、すぐに水平移動のトラバースとなりました。
240407顔振峠-096

舗装道路にぶつかりました。ここは右へ進みます。
240407顔振峠-097

今度は左手のガードレールの切れ目に入口が現れるので、ここを下って行きます。
240407顔振峠-098

沢沿いに整備された小さな公園があり、ここでも桜が満開です。宿谷の滝には以前に日和田山へ登った際にも一度訪れたことがあり、この公園にも何となく見覚えがあります。
240407顔振峠-099

如何にも滝がありますよといった落差の階段を下ります。
240407顔振峠-100

14時30分 宿谷の滝まで歩いて来ました。高さ10メートル少々の小ぶりな滝ですが、周囲を岩の壁に囲まれた静かな空間です。
宿谷の滝

2度目なので特に何の感慨もわきませんが、せっかくなので滝撮影の定番であるスローシャッターで一枚撮影しておく。NDフィルターなんて洒落たものは無いので、めいっぱい絞っただけです。
宿谷の滝
わざわざ三脚を立てて撮影しておいてから言うのもなんですが、正直なところ私にはこうやってスローシャッター撮影した滝やら沢やらの良さがイマイチよく分かりません。

水の流れが可視化されるから云々という説明は良く聞きますが、真実を写すと書いて写真なのに、現物はこんな風には見えてないじゃん不自然だよ。と言う感想しか湧いて来ません。

8.意外に遠かった高麗川駅への道程

滝の下流は遊歩道になっています。冷たく湿った空気とせせらぎが実に心地よく、家の近所に欲しいくらいです。
宿谷の滝遊歩道

宿谷の滝は観光地化している場所なので、普段山登りをしない人でも簡単に見に来れます。遊歩道の入口には駐車場と観光トイレまで完備していました。
宿谷の滝のトイレ

駐車場の頭上を横切っているこちらの橋は、武甲鉱業ベルトコンベヤーの宿谷橋梁です。通称Yラインと呼ばれる、武甲山から日高市にある太平洋セメント埼玉工場までを結ぶ、全長23.4kmにもおよぶベルトコンベアです。
Yラインの宿谷橋梁
下に立つとゴトゴトと機械の作動音が聞こえます。Yラインの大部分は地中にあるトンネル内を通っていますが、谷間の切れ目などでこうして一部が地表に現れています。

宿谷の集落でも桜が満開の見頃を迎えていました。今回は訪問のタイミングとしては完璧でしたな。
宿谷の集落の桜

写真を撮りに来ている人の姿がチラホラとありました。ただの通り道のつもりでしたが、もしかして宿谷は割と有名な桜の名所だったりするのでしょうか。
宿谷の集落の桜

畑の畦にはつくしがニョキニョキと生えていました。うーん、春ですねえ。
240407顔振峠-108

Yラインの終点である太平洋セメントの工場が見えます。武甲山で採掘された石灰石は、地面の下を通ってはるばるここまで運ばれている訳です。現代文明はすげえな。
太平小セメント埼玉工場

ちなみに宿谷の滝から高麗川駅までは結構な距離があり、徒歩で1時間以上はかかります。路線バスなどは無いので頑張って歩きましょう。
240407顔振峠-110

途中で高麗川を渡ります。橋の上からYラインの高麗川橋梁が見えました。
240407顔振峠-111

16時5分 後半はだいぶ端折りましたが、高麗川駅に到着しました。駅前のロータリーに工事用の足場が組まれつつあり、入り口がやたらと狭くなっていました。駅舎の改修工事でもするのかな。
工事中の高麗川駅

帰りは池袋を経由せずに、八高線に揺られて帰宅の途に着きました。
高麗川駅に入線する八高線

今回そもそも奥武蔵を歩こうと思い至った発端は、鎌北湖の桜が見たいからだったのですが、ついでにあれもこれもと計画に盛り込んでいった結果、思いもよらずロングトレイルとなってしまいました。今にして思うと、スカリ山のかわりにユガテを組み込んでみても良かったかもしれません。
トレイルの大部分が展望の効かない杉林で、地味なエリアであると見なされがちな奥武蔵ですが、人里と山林とが入り混じった里山ならではの独特な景観が大きな魅力です。手付かずの大自然が残る深山とはまた一味違う、里山歩きの魅力を発見しに奥武蔵をゆるりと歩いてみては如何でしょうか。

<コースタイム>
吾野駅(8:25)-顔振峠(9:40~09:55)-越上山(10:30~10:40)-大沢山(11:25)-蟹穴山(11:35)-エビガ坂(12:10)-スカリ山(12:25~12:40)-北向地蔵(13:00)-鎌北湖(13:30~13:50)-宿谷の滝(14:30)-高麗川駅(16:05)

越上山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. アルファエー より:

    写真は文字的には真を写すと書きますが、基本的にそんなことはなく詐術として古くから論考されてきました。おおつきさんは写真がお上手なので調べてみることをおすすめします。

    • オオツキ オオツキ より:

      アルファエーさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      撮影技術のひとつであると言う事は理解したうえで、私は目で見たものを目で見た通りに写したものの方が好みです。

      • アルファエー より:

        写真ってそういうものなんですよ、三次元のものを絵にする芸術なので見たまんまとかじゃないんです そのへん知るともっときれいに撮れると思いますよ、またきれいな記事待ってます