鳥海山 日本海の傍らに広大な裾野を広げる花の名峰

御浜から見た鳥海山
山形県と秋田県の境界にまたがる鳥海山(ちょうかいさん)に登りました。
日本海のすぐ傍らに広大な裾野を広げる、独立峰の火山です。その大きく秀麗な山容から出羽富士の異名を持ち、地域を代表する極めて象徴的な存在の山です。日本海に面している立地上、冬は豪雪となり、初夏の季節が訪れると多くの高山植物が一斉に花を咲かせます。
初夏のベストシーズンを迎えた花の名峰で待ち受けていたのは、容赦なく照りつける日光による酷暑の世界でした。

2021年7月18日に旅す。

鳥海山は別名で出羽富士とも呼ばれ、周囲の平野部から仰ぎ見た際に非常に目を引く存在です。かくも里に近くて目立つ山を古人達が放って置くはずもなく、鳥海山は古くから山岳信仰の対象となってきた霊山でもあります。
酒田付近から見た鳥海山
日本海を目の前に望む立地にある鳥海山には、西高東低のいわゆる冬型の気圧配置化において、とてつもない量の雪が降り積もります。

東北地方の山々が遅い初夏の季節を迎えると、冬の豪雪がもたらす豊富な雪解け水により、数多くの高山植物たちが一斉に花を咲かせ始めます。
花満開の鳥海湖
まだ多くの残雪が残る山肌に、緑の草木と色鮮やかな花々一斉に芽吹き始める初夏の季節は、鳥海山が最も美しく輝く瞬間です。

登った経験のある人々が、口をそろえて素晴らしかったと称賛するこの鳥海山には、私も前々から興味津々でありました。しかし如何せん東京からは遠すぎて、なかなか日程の都合が付かずに、これまでずっと後回しになっていました。

今回、ようやく満を持して訪問してきました。

豪雪地帯の山である鳥海山の森林限界高度は極めて低く、スタート地点である標高1,160メートルの鉾立登山口からして、すでに頭上が開けています。
鳥海山 鉾立登山口
そのため鳥海山の登山道には、最初から最後まで日影が一切ありません。

念願かなってようやく訪れた山で待ち受けていたのは、恐るべき酷暑の世界でした。暑さにすっかりと打ちのめされ、ヘロヘロになりながら花の名峰を巡って来た記録です。
御室小屋と新山

コース
210718鳥海山-map
鉾立登山口よりスタートし、外輪山を巡りながら最高始点の新山に登頂します。下山は千蛇谷を下ってスタート地点の鉾立登山口へ。

標準コースタイム8時間50分の骨太な行程です。

1.鳥海山登山 アプローチ編 特急いなほで行く酒田への遠き道程

7月17日 15時12分 JR東京駅
鳥海山は東京から途方もなく遠い場所にあります。アプローチの手段をどうすべきかについて、いくつか比較検討してみた結果、現地近くに前泊するのが最も妥当であると言う結論に達しました。
210718鳥海山-005
という事で本日は、新幹線と在来線特急を乗り継いで、遠路はるばる前泊地である山形県の酒田を目指します。まずは上越新幹線とき号で新潟駅へと向かいます。

なお、バスタ新宿発の酒田行き夜行バス便は存在します。ありはするのですが、到着時刻が遅いため、翌日の始発の乗り合いバス時間にどうしてもつながりません。

そんな訳で、夜行バスで交通費を安くあげることは諦めて、鉄道でのアプローチを選択した次第です。

そういえば何気に、越後湯沢駅よりも先まで乗車するのは自身初めての事です。長岡駅を過ぎたあたりから、車窓に弥彦山(634m)の姿が見えて来ました。
長岡駅付近から見た弥彦山
弥彦山は深田久弥が日本百名山のあとがきで「名山には違いないが絶対的な標高が足りなかった。」と、わざわざ言及していた山です。確かに平野の只中にあるからか、低山らしからぬ存在感がある山ですね。

17時4分 新潟駅に到着しました。いかにも雪国らしく、駅舎の屋根がドーム型をしていました。まるでスノーシェッドの中に居るかのような光景です。
新潟駅の新幹線と在来線特急の乗り換えホーム
この後は、羽越本線の特急いなほに乗り換えるわけですが、いなほの利用を考えている人に一つ大切な伝達事項があります。

東京駅で切符を購入する際には、券売機のメニューから「新幹線から在来線特急に乗換」を選んで切符を購入しておきましょう。そうすると、この乗り換え専用の改札を通ってスムーズに乗り換えが出来ます。

また、特急料金がいくらか割引されます。

いなほは、日本海沿岸に沿って新潟駅から秋田駅を結んでいる特急列車です。何気にかなりの長距離を走る路線です。
新潟駅に停車する特急いなほ

座席にチケットホルダーなる謎のアイテムが装備されていました。使い方は至ってシンプルで、このように特急券を挟んでおくと車掌さんが検札に来た時にスムーズに見せられます。
特急いなほのチケットホルダー

新潟の田園地帯を抜けると、何時しか車窓には日本海が見えるようなりました。沖合に見えているこの島は、始めは佐渡なのかと思っておりましたが、どうやら粟島(あわしま)と言う島であるようです。
特急いなほの車窓から望む粟島

日本海に夕日が沈む。いなほは大変素晴らしい車窓風景を望める路線ですが、冬には大陸からの強風や大雪の影響をモロに受ける立地にあるため、しばし運休に見舞われます
特急いなほの車窓から望む夕日

19時22分 酒田駅に到着しました。酒田市は庄内空港と酒田港を有する、山形県庄内地方における最大の都市です。
酒田駅のホーム

その割には、駅前はかなり閑散としていました。東北地方の都市と言うのは基本的にどこも自動車社会なので、酒田市の中心は駅前ではないのでしょう。
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もう少し到着が早かったら、酒田港の市場まで行って海鮮丼でも食べたかったところではありますが、流石にこの時間ともなると、もうどこも営業はしていないことしょう。

なお、コンビニをお探しの人は、駅前の通りを右折して5分ほど歩くと1軒あります。

本日のお宿は、駅から徒歩5分の好立地にあるこちらです。素泊まり一泊2,800円と言う、思わず二度見しそうになるような破格の値段でしたが、さあてお部屋はどんな感じなのでしょう。
酒田ステーションホテル

客室の造りは至ってシンプルで、まさに寝るためだけの最低限の空間と言ったところです。こちらもそれ以上のものは一切求めていないので、前泊するにはうってつけの場所だと言えます。
酒田ステーションホテル
なお部屋は4階でしたが、古い建物なのでエレベータ―がありません。しかしそんなことは、2,800円と言う破格の料金を前にすれば些末な問題でしかありません。

2.乗合バス鳥海ブル―ライナーで鉾立登山口へ

明けて7月18日 5時20分
早朝の酒田駅よりお早うございます。ここから羽越本線の鈍行列車で、乗り合いバス鳥海ブル―ライナーの出発地である象潟駅(さきかたえき)へ向かいます。
酒田駅のホーム
さてここで、公共交通機関を利用して鳥海山に登る方法について簡単に解説しておきましょう。

大きな山だけに、鳥海山には実に多くの登山道が存在しますが、公共交通機関を利用を前提とした場合は、鉾立登山口から登るのが最も一般的です。

鉾立登山口へアクセスする方法は二つあります。一つ目が秋田県の象潟駅から出ている乗合バス鳥海ブルーライナーに乗る方法。もう一つが山形県の遊佐駅(ゆざえき)から出ている鳥海山乗合タクシーに乗る方法です。

どちらも基本的に事前予約制で、料金にも大きな差はありません。ただし、鳥海ブルーライナーの方が始発便の発車時間がおおよそ1時間早いので、日帰りを考えているのであれば鳥海ブルーライナーの方を推奨します。

詳細は後述しますが、乗り合いバスを利用した鳥海山日帰り登山は、コースタイム的に結構ギリギリです。よって、1時間の差はかなり大きいと言えます。

朝靄の影響なのか、かなりボンヤリとしていますが、車窓に薄っすらと鳥海山の姿が見えて来ました。
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6時12分 象潟駅に到着しました。途中で県境を越えるため、象潟駅があるのは秋田県になります。
象潟駅のホーム

前日に予約してあった乗合バスの鳥海ブルーライナーが、既に駅前に待機していました。第一便は6時20分の発車です。鉾立登山口までの運賃は3,000円です。
像潟駅前に停車する鳥海ブルーライナー
ちなみに、東京駅からこの象潟駅に直通している、エクスプレス鳥海号という夜行バスが存在します。

これを利用するとで鳥海ブルーライナーとうまくつなげることも可能だったのですが、生憎と今年はコロナ渦により、エクスプレス鳥海号の運転は見合わせとなっていました。

2021年は、お盆休み期間中限定で運行するとのことです。

乗合バスは鳥海ブルーラインひた走り、鉾立登山口に向かって高度を上げて行きます。今のところ頭上は、雲一つない快晴であるように見えます。
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6時50分 鉾立登山口に到着しました。鉾立は300台もの収容台数を持つ大型の駐車場を備えているほか、レストハウスなども完備した鳥海山登山のベースとなる場所です。
鳥海山 鉾立駐車場

登山口の時点で既に標高は1,160メートルほどあり、駐車場からの眺めはなかなか壮観です。登山をする気は無い人が観光目的で訪れても、十分に満足の出来る場所だと思います。
鳥海山 鉾立からの眺望

なお、山頂はスタート地点から既に見えています。登り始めてもいないうちから言うのもなんですが、早くもこの日一日の勝利を確信してしまうような素晴らしい天気です。
鉾立から見た鳥海山
この晴天こそが後の苦難のもととなってしまう事を、この時の私はまだ知りませんでした。。

本日の行程は至ってシンプルです。この案内図に赤線で書かれている通りの道をたどって山頂を往復します。標準コースタイムで言うと8時間50分程の行程となります。
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帰りの乗り合いバスの時間は今から9時間30分後の16時20分です。余裕とまでは言いませんが、途中で標準コースタイム未満のペースにまで失速しない限りは、十分に戻ってこれるはずです。

3.緩やかな登りだが、容赦なく照りつける太陽に苦しめられる御浜小屋への道

軽い腹ごしらえと身支度を整えて、7時10分に行動を開始します。
鳥海山 鉾立登山口

登り始めからしばらくは、コンクリートで舗装された道です。ウォーミングアップ代わりにはちょうど良いかな。
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道の両脇がナナカマドに覆われているので、紅葉シーズにはさぞや壮観な光景を拝めることでしょう。

登り始めてから10分としないところで、展望台と銘打たれた場所にやって来ました。道が舗装されているのはここまでです。
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眼下に広がるのは、秋田県にかほ市の光景です。山に囲まれた小さな平野の先には、日本海の大海原が広がります。
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眼下に今朝通って来た象潟が見えます。この小さな半島のような突端地形は、かつて鳥海山の噴火によって引きおこされた山体崩壊により生じた大量の土砂が、海へと流れ込んで形成されたものです。
鳥海山から見た象潟

視線を先に向けると、まるで海上に山が浮いているかのように見えます。位置的に言ってこれは、男鹿半島の寒風山(355m)なのかな。
鳥海山から見た寒風山

目の前に奈曽渓谷と呼ばれる大きな浸食谷が口を開けています。深いところでは落差が500メートルにも呼ぶV字峡です。豪雪の山の雪解け水が作り出した圧巻の光景です。
鳥海山 奈曽渓谷

登山道はこの奈曽渓谷のフチに沿うにして続いています。何となく察しは付いていた事ではありますが、最初から登山道上に日影は一切ありません。くれぐれも日焼け対策をお忘れなく。
鳥海山 象潟口コースの登山道

しかし本当にでっかい山ですねえ。東北の山の雄大なスケール感に奮えます。
鳥海山 象潟口コースの登山道

石畳舗装が施された、緩やかな勾配の道が続きます。本来であらば、とても歩きやすい道であると評するところなのですが、容赦なく照りつける太陽を前に、早くも大粒の汗が噴き出して来ました。いやぁー暑い暑い。
鳥海山 象潟口コースの登山道
ちなみにこの日の山形市の最高気温は37度で、熱中症の特別警戒警報が出されていました。なんでも、今年一番の暑さであったとのことです。

私は週末の晴天の予報を見て、これはチャンスとばかりに飛びついたわけですが、ここまでの暑さであるとは全くの想定外でありました。

ここで登山道上に初めて雪渓が現れました。ここぞとばかりに、雪解け水を頭からかぶってクールダウンしました。冷たくて気持ちがいい。
鳥海山 象潟口コースの雪渓

初夏の東北地方の山においては、雪渓のあるところにお花畑ありです。という事で、早速チングルマの群生が出迎えてくれました。
鳥海山のチングルマ

雪のとけ具合によって開花のタイミングが変わるらしく、既に綿毛化しているものもありました。
チングルマの綿毛

チングルマの群れの中に、しれっとイワカガミが紛れ込んでいました。どちらも、高山植物の花としては定番中の定番と言える存在です。
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ここまでずっと緩やかな道が続いていましたが、少し傾斜が増して来ました。いっちょう気合を入れていきましょう。
鳥海山 象潟口コースの登山道
実のところ、あまりの暑さに気合を入れるどころか、既にバテ始めているという体たらくであった訳ですがね。稜線まで出でたら、多少は涼しくなるのでしょうかね。

先行きに一抹の不安を覚える、苦しい立ち上がりです。

汗だくになりながら、なんとか急坂を登りきると、大きく開けた平坦地に飛び出しました。
鳥海山 賽の河原

8時15分 賽の河原に到着しました。象潟口コースにおける最初のチェックポイントです。
鳥海山 賽の河原
まだ登り始めてから大して時間もたっていないタイミングですが、早くもバテつつある事からたまらずに最初の休憩を取りました。

山と高原地図では、この場所に水場のアイコンが描かれていますが、恐らくはこの沢水の事を言っているのだと思われます。飲むのであらば、浄水器を使うか煮沸した方が良いと思います。
鳥海山 賽の河原の水場
まあ、トリハロメタンに汚染されている東京の水道水よりはよほど安全なのかな。

さて、いつまでもグッタリとしているわけにはまいりません。行動再開です。相変わらずの、石畳舗装の道が続きます。
鳥海山 象潟口コースの登山道

チングルマロードがなおも続く。今歩いているこの道も、ごく最近までは雪の下に埋もれていたのでしょう。
鳥海山のチングルマ

少し登った地点から見下ろした賽の河原です。上から見ると、小さなU字の谷になっていました。
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地図上には道が描かれていない雪渓の上を横断している人の姿が多く見られました。残雪期限定のバリエーションルートと言ったところでしょうか。
鳥海山 象潟口コースの雪渓

海上の彼方に小さな島が浮かんでいるのが見えます。飛島と言う名の有人島です。
鳥海山 象潟口コースの登山道

賽の河原からの急坂を登りきると、道が平坦になり展望が大きく開けました。
鳥海山 象潟口コースの登山道

朝方よりも霞が取れてきたらしく、男鹿半島が緩やかな弧を描いている様が良く見えました。
鳥海山から見た男鹿半島

眼下に、ここまで通って来た象潟と鉾立が一直線に並んで見えました。ここまで真っすぐに登ってきたのだという事が、大変よくわかる光景です
鳥海山 象潟口コースの登山道0

やがて前方に、鳥居と小屋があるのが見えて来ました。
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9時 御浜小屋に登頂しました。鳥海湖の傍らに立つ山小屋です。
鳥海山 御浜小屋

4.百花繚乱の鳥海湖と花の稜線を行く

目の間にドーンと鳥海湖が姿を見せました。鳥海山の7合目に位置するカルデラ湖です。
鳥海湖

鳥海湖の周辺はまさに百花繚乱状態で、多種多様な花々が所狭しと咲き乱れていました。実に素晴らしい。
鳥海湖周辺のお花畑
鳥海湖周辺のお花畑

チングルマやイワカガミなどと並ぶ高山植物の大定番、ハクサンフウロが咲いていました。個人的に、昔からとてもお気に入りの花です。
鳥海山のハクサンフウロ

鳥海湖の周辺は、いつまでもボーとしていたくなるような空間です。しかし、帰りのバス時間が決まっている身としては、そう言う訳にも参りません。観念して行動を再開しましょう。
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御浜と呼ばれている1,700メートルのピークに向かって、稜線上を緩やかに登ります。
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鳥海湖を横目にしながらゆるゆると登る。いかにも夏らしい雲が湧いてきておりますね。ちょうどこの雲の向こうに月山(1,984m)があるはずなのですが、まったく姿は見えません。
御浜から見た鳥海湖

北東の彼方に見えているこの立派な山は、恐らく岩手山(2,038m)だと思います。東北地方の山と言うのは、標高こそさほど高くありませんが、一つ一つが大きくてとてもよく目立ちます。
鳥海山から見た岩手山

稲蔵山の先には男鹿半島。うーん、絶望的なまでに暑いと言う点を除けば、絶好の登山日和なんですけれどなぁ。
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真っ白なシャクナゲが咲いていました。これはハクサンシャクナゲと言う種類です。
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御浜の山頂に到着したところで、鳥海山山頂部の全容をようやく視界に捉えました。こうして見ると、まだまだ先は長そうですな。
御浜から見た鳥海山

この針山のようにギザギザしている場所が、鳥海山の最高地点である新山です。その名の通り、西暦1801年に発生した噴火の際に形成された、新しい山頂です。
鳥海山の山頂部
まさに溶岩ドームそのものと言った見た目をしておりますな。

中心にある新山を取り囲む様にして、外輪山の稜線が並んでいます。本日はこの後、この外輪山に沿って歩く予定です。・・・こうして見た限り、結構アップダウンが激しそうですね。
鳥海山の外輪山

御浜からは、一旦鞍部に向かって下ります。帰る際の登り返しのこと思うと気乗りしませんが、道がそうなっている以上は従うしかありません。
御浜から見た鳥海山

ちょっと下るだけかと思いきや、意外としっかり下ります。
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下り切った所が御田ヶ原分岐です。先ほどからずっと緩やかな道であるにも関わらず、全然コースタイムを巻くことが出来ていません。もうすっかりバテております。暑いんだよぉぉぉッ!
御田ヶ原分岐

この御田ヶ原分岐付近のチングルマ群生がまた素晴らしい。チングルマ畑状態です。
鳥海山 御田ヶ原分岐付近のチングルマ群生地

一度下ってしまった以上は、その先に待ち受けているのは当然ながら登り返しです。
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白い花はすべてチングルマなのかと思いきや、ハクサンイチゲも混ざっていました。ぱっと見では違いが分かり難い。
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外輪山の取り付き地点が近づいていて来ました。やはりアップダウンはそれなりに激しそうですね。
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足元を見ると、かつて山体崩壊を起こした際の大な形跡が残っていました。ここにあった土砂が丸ごと流れ出したのだとなると、相当な量でしょうな。
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10時15分 外輪山・千蛇谷分岐まで登って来ました。この先は、このまま外輪山に沿って進むルートと、谷底に下って雪渓の上を歩くルートに分岐します。
鳥海山 外輪山・千蛇谷分岐

コースタイム的には、谷底を歩くルートの方が少し短いようです。私は登りはこのまま外輪山を進み、下山時に谷底を歩く予定です。
外輪山・千蛇谷分岐から見た千蛇谷分の雪渓
谷底には、まだまだかなりの量の雪が残ってました。流石は豪雪地帯の山です。

5.幾多のアップダウンを乗り越えながら進む外輪山のお鉢巡り

では張り切って、お鉢巡りへと繰り出しましょう。実のところ既にバテバテで、ちっとも張り切ってなんかいませんでしたが、こうして無理にでもテンションをあげて行かないと、暑さに負けてしまいます。
鳥海山 外輪山の登山道

背後を振り返って見ると、小さく鳥海湖の姿がみえました。いつの間にか、ずいぶんと遠くまで歩いたものです。
鳥海山 外輪山の登山道

唐突に開けた場所に飛び出しました。
鳥海山 外輪山の登山道

文殊岳と言う名の、外輪山上の小ピークです。広くて休憩向きの場所ではありますが、しかし直射日光を避けるすべは一切ありません。
鳥海山 文殊岳

アップダウンはなおも続く。臆するな、要は気合いだ気合。と、半ば無理やり自らを奮い立たせつつ歩きます。
鳥海山 外輪山の登山道

右手の眼下に小屋があるのが見えます。湯ノ台口コースの滝ノ小屋です。こちら側から登るの楽しそうですね。
鳥海山 外輪山から見た滝ノ小屋

姿は見えませんが、すぐ近くを飛んでいるらしいヘリコプターの爆音が聞こえます。さてはついに誰かが熱中症で身動きできなくなったのか。
鳥海山 外輪山の登山道

やがて稜線の下から、秋田県の消防防災ヘリコプターが姿を見せました。ちなみに、このヘリコプターは「なははげ」という名称です。悪い子はいねが~。
秋田県の消防防災ヘリコプター

野次馬は程々にして先に進みましょう。山頂の直下にある御室小屋が見えて来ました。
鳥海山 外輪山から見た新山と御室小屋

11時15分 伏拝岳に到着しました。ここが外輪山コースにおける最後のチェックポイントと言ったところです。ゴールは近い。
鳥海山 伏拝岳

と思ったら、まだまだ結構なアップダウンが残っていました。もっとこう、花咲く楽園のようなゆるふわな山を思い浮かべていたのに、鳥海山はなかなか一筋縄ではいきませんぞ。
鳥海山 外輪山の登山道

ゴールに近づくにつれて、道の険しさも増して来ました。
鳥海山 外輪山のハシゴ

この辺りはもう無我の境地で、ひたすら足だけを前に出し続けました。
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御室小屋との標高差が、もうほとんど感じられなくなりました。
鳥海山 外輪山から見た御室小屋

下からは見えていなかった新山の裏側には、残雪がびっちりとこびり付いていました。まだこんなにも雪が残っていたことに驚きです。
鳥海山 新山の雪渓

11時45分 七高山分岐まで登って来ました。このまま直進すると外輪山の最高地点である七高山に至りますが、もうだいぶ時間も押してきているので、外輪山を極めるのは割愛して新山方面へ進路を転じます。
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6.鳥海山登山 登頂編 大岩が散乱する鳥海山の最高地点、新山の頂へ

新山へ向かうには、まずいったん外輪山から谷底へと下ります。足元がグズグズのガレ場の急坂で、大変崩れやすく神経を使います。
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下りきると、お次は雪渓のトラバースです。ちなみに、今回私はアイゼンは持ってきておりません。まだこんなにも雪が残っているとは、正直思ってもいなかったものですから。
鳥海山 雪渓のトラバース

それでは新山へのアタック行ってみよう。
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どうやら本来の登山道はまだ雪の下にあるようです。という事なので、登れそうな場所を見繕って、キックステップで強引に雪渓をよじ登ります。
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登りだから何とかなりましたが、ここを降りるのであれば、アイゼンが無いと危険だと思います。

溶岩ドームの山頂部は、大岩が大量に散乱していて、最早どこが道なのかよくわからない複雑な地形をしていました。なお、ストックは邪魔になるので、あらかじめ収容しておいた方が良いと思います。
鳥海山 新山の山頂

胎内くぐりと呼ばれているらしいルートをよじ登ります。ザックが引っかかってしまい、意外と登るに難儀しました。ザックは御室小屋にデポしてくるべきなのかもしれません。
鳥海山 深山の胎内くぐり

悪戦苦闘しつつ登るうちに、ようやく最高地点らしき場所に辿り着きました。
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12時15分 新山に登頂しました。いやはや、思いのほか苦戦を強いられた道程でありました。よもやここまで暑いとはね。
鳥海山 新山の山頂

夏雲が沸き立ってきており、周囲は良く見えませんでしたが、それでも長年ずっと焦がれ続けていた山だけに感無量です。やっとここに立つことが出来ました。
鳥海山の山頂
見ての通り、山頂部は岩が散乱する隙間だらけの空間なので、くれぐれも落とし物をしないようにご注意ください、財布やスマートフォンなどを隙間に落としてしまおうものなら、回収不能となる事は必至です。

7.鳥海山登山 下山編 迫りくるタイムリミットに追われた、慌ただしき下山行

さて、残念なことに今の私には登頂の余韻に浸っていられる時間はもうありません、登りで思わぬ苦戦をしたことにより、すでにかなり時間が押しています。
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という事で、僅かな滞在時間で山頂を後にします。
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下山は残雪の無い南側のルートを選びました。どちらのルートであっても、所要時間に大差はありません。
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12時45分 御室小屋まで下って来ました。ここで山バッジを購入しつつ、念のため飲料水を1L追加しました。担いできた分を含めると、これで合計5Lにもなります。どれほど暑かったのかご理解いただけるかと。
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12時55分 御室小屋を辞去し下山を開始します。すでにコースタイムを巻きながら歩かないと、乗り合いバスの時間に間に合わない状態です。さあ、かっ飛ばしていきますよ。
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・・・しかし、それがいけなかったのです。途中で右足の太ももが攣ってしまい、しばし登山道脇で悶絶する事となりました。
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山で足の筋肉が攣ってしまうのは、脱水症状を起こしかけている危険な兆候です。水分は十分すぎるだけ接種していたつもりいましたが、あまりにも急激に汗をかき過ぎて、吸収が追い付いていなかったのかもしれません。

何とか痛みが治まってきたので、下山を再開します。こんな体たらくで果たしてバスに間に合うのか。焦燥感に駆られつつも、無利をすれば再び足が攣ってしまいかねないので、ゆっくりと雪渓を下ります。
鳥海山 千蛇谷の雪渓

ガスって視界不良になってきましたが、雪渓上には正しいルートが色でマーキングされており、その導きに従えば迷うことはありません。
鳥海山 千蛇谷の雪渓

無事に雪渓歩きの終了地点まで下って来ました。しかし、ここから思わぬ伏兵が待ち構えていました。
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・・・登り返し・・・だと・・。しかもこの期に及んで意外とエグイ登りです。まあ、谷底を歩いていたのだから当然と言えば当然なんですけれどね。
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14時 ヒイヒイ言いながら、何とか外輪山・千蛇谷分岐まで戻って来ました。
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しかし残念ながら登り返しまだ終わりではありません。御浜クンさぁ、空気読もうよ。
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ボヤいていても始まりません。ともかく何とかこいつを乗り越えなくてはいけません。
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御浜小屋が見えてきました。これでもう、登り返しはお終いなはずです。
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14時55分 御浜小屋まで戻って来ました。小屋の売店で500mlのスポーツドリンクを1本補充し、最後の気合を入れます。
鳥海山 御浜小屋
これで、この日一日で消費した水の量は合計で5.5Lとなりました。これは過去最高記録を更新したのではなかろうか。

ここまで来ればもう後は消化試合のようなものです。またもや攣りそうな気配の足をなんとかなだめすかしつつ、最後の下りを一気に駆け抜けました。
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振り返って仰ぎ見た山頂部からは、ガスが取れつつありました。どうやら私は、日中の一番雲が多いタイミングに登頂してしまったようですね。
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16時10分 鉾立登山口に下山しました。乗合バス発車時刻の10分前と言う、実に際どいゴールでありました。危ない所だった・・・
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私が到着した時点で、既に乗合バスが待機していました。本当はカキ氷の一つでも食べて一息入れたい気分ではありましたが、そのまま車内へと乗り込みます。

冷房が良く効いた快適な鳥海ブル―ライナーに揺られて、無事に象潟駅へと戻って来ました。
象潟駅の駅前ロータリー

象潟駅のホームから見た鳥海山は、日中のガスがまるで嘘のようにスッキリと晴れ渡っていました。本日、御室小屋に宿泊する人は、さぞや素晴らしい夕焼けを拝めることでしょう。
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やはりどう考えても鳥海山は、一泊して登るべき山ですよね。

帰路は往路をのまま逆向きに辿ります。17時30分発の特急いなほに乗り込みます。
象潟駅に入線する特急いなほ

車窓から鳥海山に別れを告げます。さらば鳥海山。確かに素晴らしい山でした。とっても暑かったけれどね!
遊佐駅付近から見た鳥海山

鳥海山は実にアツかった。いや暑かった。
初夏の鳥海山が素晴らしい山であることに疑念を挟む余地は一切ありません。しかし同時に、最初から最後まで一切日影の無い灼熱地獄であると言う事実についても、言及しない訳にはまいりません。快晴の日に登るのであれば、十分な暑さ対策を講じてから訪問してください。
鳥海山は日帰りで慌ただしく往復してしまうには、あまりにも勿体ない山です。山小屋で一泊して登った方が幸せになれると思います。まだ涼しい早朝の内に登山を開始して、正午になる前には山小屋へ入るのが理想の行程であると思います。そうすれば、日本海に沈む夕日を眺めることも出来て一石二鳥です。
初夏の花々も実に素晴らしかったですが、紅葉もまた見事であるという事であるので、季節を変えてまた訪問してみたです。秋であれば、ここまで極端な暑さに苦しめられることもないでしょうから・・・

<コースタイム>
鉾立登山口(7:10)-賽の河原(8:15~8:30)-御浜小屋(9:00~9:10)-御田ヶ原分岐(9:40)-外輪山・千蛇谷分岐(10:15)-伏拝岳(11:15)-新山(12:15~12:25)-御室小屋(12:45~12:55)-外輪山・千蛇谷分岐(14:00)-御浜小屋(14:55)-鉾立登山口(16:10)

210718鳥海山-120

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. じゅん より:

    こんばんは!ランキングから来ました!

    海の青や、山の緑に囲まれると心が綺麗になりそうですね!!

    • オオツキ オオツキ より:

      じゅんさま
      コメントをありがとうございます。

      「心が洗われる」とはよく言ったもので、日用生活でなにか嫌なことがあったとしても、綺麗さっぱり忘れてしまような光景でした。山は良いものですよー。

  2. タム より:

    昨年まで東北にいたのですが、鳥海山には登れずじましでした。いつかは行く予定です!
    今回のオオツキさんのブログで、その思いが強くなりました。

    • オオツキ オオツキ より:

      タムさま
      コメントをありがとうございます。

      登山を趣味として嗜んでいるのであれば、鳥海山は絶対に登るべき一座です。首都圏からだと、ひたすら遠いのが難点ですが、絶対に後悔はしないと思います。