田代山-帝釈山 関東と東北の境界上に連なる高層湿原と花の名峰

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福島県南会津町、桧枝岐村および栃木県日光市にまたがる田代山(たしろやま)と帝釈山(たいしゃくさん)に登りました。
帝釈山脈と呼ばれる、関東地方と東北地方の境界上にある山系に属している深山です。田代山の山頂は広大な高層湿原となっており、雪解けとともにワタスゲやオサバグサを始めとする多種多様な高山植物が花を咲かせます。尾瀬国立公園に含まれており現在では登山者に人気の山ですが、かつては到達すること自体が困難な知られざる存在でした。
梅雨時の貴重な晴れ間を突き、遠路はるばる南会津の秘境の山を巡って来ました。

2023年6月18日に旅す。

田代山は福島県と栃木県の境界上に連なる山岳地帯の懐深くにひっそりと立つ深山です。近隣にある会津駒ヶ岳と同様に、山上に高層湿原帯が広がるなだらかな山容の山です。
田代山の弘法沼
田代(たしろ)とは田を作れそうな所と言う意味で、湿原のことを指す言葉としても使われます。田代と名付けられているくらいですから、田代山山頂に広がる湿原はかなりの規模のものです。

田代山が属する帝釈山系は、深山と言う言葉がこれ以上ないくらい当てはまる山深い奥地にあります。田代山登山における最大の核心部と言えるには登山口までのアプローチで、未舗装のダートが10kmほど続く林道を通る必要があります。
栃木県道・福島県道350号の未舗装区間
基本的には車の無い奴お断りな僻地と言える場所にある山ですが、東武鉄道の早朝特急と貸切シャトルタクシーを組み合わせたツアーが存在し、一応は公共交通によるアプローチも可能です。

現地到着時間がかかなり遅くなってしまうので、あまりゆっくりと湿原を巡ることはできませんが。

田代山の湿原を巡った後は、大展望が広がるお隣の帝釈山まで足を伸ばします。尾瀬国立公園の片隅にある秘境めいた2座の山を巡って来た一日の記録です。
帝釈山の山頂

コース
田代山と帝釈山のコースマップ
猿倉登山口から田代山を経て帝釈山までを往復します。標準コースタイムで6時間と少々のお手軽な行程です。登山口に降り立つことが出来さえすればできればね。

1.田代山&帝釈山登山 アプローチ編 秘境会津南部への遠き道程

中年二人と乗せた車が、夕暮れ時の東北自動車道を快調に進みます。田代山へは公共交通機関によるアクセスも可能と言えば可能なのですが、色々と制約事項も多く面倒なので今回は僻地専門登山家の友人に車を出してもらいました。
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田代山登山口がある猿倉の駐車場はあまり収容台数が多くはなく、花の季節には争奪戦が繰り広げられると言う事前情報を得ていたため、前日の内に前乗りしようと言う算段です。

西那須野塩原インターを降りたら、あとは国道352号線をひた走ります。
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高速を下りた後がまた長い。途中までは、南会津の秘境の村として名高い桧枝岐村に向かうルートと完全に同じです
国道352号線

湯ノ花温泉と書かれた分岐が現れたところで左に入って行きます。この道は栃木県道・福島県道350号栗山舘岩線と呼ばれているルートですが、現在栃木県側が通行止めとなっており通り抜けはできない状態です。
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最後は未舗装のダートが約10kmにわたって続きます。田代山は登山口へのアプロ―チが最大の核心部である言われている所以です。
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あんまりスピードを出すとパンクする危険があるので、20km以下の速度でゆっくりと参りましょう。

21時30分 猿倉登山口の300メートル手前にある駐車スペースに到着しました。ここにはトイレがあるので、前乗りするなら登山口の駐車スペースではなくこちらに停めるのがオススメです。
田代山の駐車場
晴天の週末には激しい争奪戦が繰り広げらると言う駐車場ですが、流石に前乗りする人は少数派らしくこの時点では至って空いていました。

沢沿いの谷合にある駐車場ですが、頭上が開けていて満天の星空が広がっていました。少だけ星空撮影をした後は、翌日に備えて早々と就寝しました。
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2.ブナの美林の中を歩む小田代原への登り

明けて6月18日の5時
身支度を整えて行動を開始します。まずは砂利舗装の道なりに猿倉登山口へ移動します。車を移動させても良いのですが、まあたかだか300メートルしかないのでここから歩きます。
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朝5時の時点で昨夜よりも駐車台数は増えてはいましたが、まだ全然駐車可能な状態でした。溢れてしまうのはもう少し遅い時間帯になってからのようです。
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道なりに5分少々歩いたところで、猿倉登山口の駐車スペースが現れました。こちらもまだまだ余裕のある状態でした。だいたい7~8時頃に到着する人が多いのかな。
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前述の通り、この県道の栃木県側は現在通行止めとなっており、通り抜けはできない状態です。だいぶ前から現在通行止め状態が続いているらしく、カーブミラーも撤去されています。もう復旧は諦めてしまっているのだろうか。
栃木県道・福島県道350号の通行止め

田代山を含む帝釈山系は、平成19年に尾瀬国立公園に編入されています。尾瀬ヶ原からはだいぶ距離がありますが、広義にはここも尾瀬の一部と言う扱いです。
田代山 猿倉登山口

田代山までなら往復で4時間程度のルートであるため、実にお手軽山であると言えます。登山口に降り立つことが出来さえすればね。大事な事なので2度言いました。
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登り始めは沢沿いの道です。今はまだ少し肌寒いくらいの気温ですが、山頂の湿原帯は頭上が開けているため、おそらく暑さに苦しめられる事になるでしょう。
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まだ朝日が差し込み始める前の時間であるため周囲は薄暗く、思いっきり被写体ブレしてしまった。心とISO感度には常に余裕も持たせないといけませんね。

見上げる高さのブナの巨木です。林相が美しい森ですね。新緑も素晴らしいですが、きっと紅葉シーズンに訪れても良い感じだと思います。
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ようやく登山道に朝日が差し込み始めました。本日は梅雨時には貴重な晴れ予報となっていますが、同時に猛暑日になるとの予報も出されています。まだ涼しい午前中の内にスパッと登ってスパッと降りて来たいところです。
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豪雪の地帯の山に見られる、雪の重みに負けて横向きに伸びた樹木が目立ちます。
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帝釈山系のある南会津地方の一帯は冬には相当な積雪があり、特別豪雪地帯に指定されています。その豊富な雪融け水によって、山頂に巨大な湿原が形成されている訳です。

要所ごとに丸太製のベンチがあったり、登山道は全般的にたいへん良く整備されています。かつての秘境も、今や押しも押されぬ人気の山ですからね。
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ムラサキヤシオがポツポツと咲いていますが、もう終わりかの状態でした。もう少し標高の高い一帯にはまだ残っているかもしれません。期待しておきましょう。
田代山のムラサキヤシオ

イワカガミはまだ咲き始めです。こうして次々と見頃の花がバトンタッチされて行くので、訪問時期に関わらず常に何らかの花は咲いている考えて問題ありません。だてに花の名峰とは呼ばれていません。
田代山のイワカガミ

登山口からそれほど標高差の大きい山ではありませんが、短距離で登り上げるため割と急登が続きます。長くは続かないので一気に登ってしまうのが良いと思います。
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背後の視界が開けて来ました。視界内に人工物が全く見あたらず、相当山深い場所であることが良くわかります。右奥に見ているのは位置的に栃木県の高原山(1,795m)でしょうか。
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急登と登りきると、木道が整備された平坦な空間が広がっていました。ここはまだ山頂ではなく、最後にもうひと登り残っています。
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だいぶ年季の入った木道で、既に土に還りつつありました。シーソー状態に動く場所もあるので、歩く際には注意を要します。
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6時10分 開けた草原状の場所が現れました。小田代と呼ばれている、山頂からは少し下った場所にある小湿原です。
田代山 小田代

ワタスゲが凄いと聞いていて期待していたのですが、今回の訪問は時期が少々早すぎたらしく、まだポツポツと疎らにしかありませんでした。ピークの時期は6月の下旬から7月の頭頃にかけてで、湿原全体がワタスゲに覆われます。
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2023年のお花前線は全てが前倒し進行だったので、ワタスゲも例年より1週間くらいは早いのではないかと考えていたのですが、どうやら少し勇み足であったようです。

3.田代山登山 登頂編 山頂に広がる大湿原帯の弘法沼

小田代まで登ってくれば、田代山の山頂はもう目の前です。下から見ると普通の山にしか見えませんが、あの上には真っ平な湿原広がっているらしい。
小田代から見た田代山の山頂

ここでもそこそこの急登です。最後にもうひと登り、頑張って登りましょう。
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左手には日光連山の山並みが良く見えました。田代山は福島県と栃木県との境界上に跨っており、距離的には日光のすぐ近くにあります。まあ、間に山間部が横たわっていて、行き来するのはそう簡単ではないのですけれどね。
田代山から見た日光連山

前方の視界が開けました。どうやら山頂に着いたようです。
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周囲の展望も開けます。晴れてはいますが、気温が高めなためか、何となくモヤーとしていますね。
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とても山の上の光景とは思えないような、広々とした湿原が広がっていました。なんの事前情報もなしに訪れたら、景色の変化にさぞや驚くだろうと思います。
田代山の湿原

最盛期にはこの湿原全体がワタスゲに覆われて、おまけにニッコウキスゲまで咲くらしい。しかし今回はやはり早すぎたらしく、緑々と茂った草原が広がっていました。うーん、残念!
田代山の湿原
田代山のワタスゲシーズンは時期的に梅雨と重なってしまうため、晴天を日を射止めるのはなかなか難しいものがあります。今回はその貴重な晴れの日であることから飛びついたのですが、結果的にまだ時期尚早でした。

なかなか思うようにはならないものですね。

チングルマもまだ咲き始めで疎らにしか咲いていません。それでもこうして僅かに見れただけでも良しとすべきか。
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高層湿原らしくいくつかの池塘が点在しており、カエルが大合唱していました。こちらは田代山で最大の大きさを持つ池塘で、弘法沼と呼ばれています。
田代山の弘法沼
日本全国津々浦々に数多くの伝承を残している弘法大師こと空海ですが、田代山に本人が直接訪れたと言う伝承はありません。

この地に頻発していた天候不順を鎮めるために、高野山から招かれた僧が当時は道すらなかった田代山に登り、山頂にお堂を立てて弘法大師の木像を祀ったと伝えられています。

視界の先に見ているのっぺりとしたシルエットの山は、会津駒ヶ岳(2,133m)です。あちらも田代山と同様に、山頂に湿原帯のある山です。
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6時40分 何処が最高地点なのかは良くかりませんが、湿原の真ん中に山頂標識が立っていました。なので、一応はここに立った時間を登頂時間であると言う事にしておきましょう。
田代山の山頂標識

湿原全体を覆いつくす一面のワタスゲとはいきませんでしが、こうして一部には咲いている個所がありました。しかし本当に何度見ても不思議な存在ですよね。
田代山のワタスゲ

陽当たりの問題なのか、こうして一部にだけ密集して綿毛化していました。ピーク時の光景を見てみたかったですが、しかしそうそう都合よく週末に晴れてくれるとは限らないし、訪問のタイミングを見極めるのはなかなか難しいところです。
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チングルマとタテヤマリンドウもまだ咲き始め。田代山のベストな訪問時期と言えるものは、もう少し後の7月の頭頃になろうかと思います。
田代山のチングルマとタテヤマリンドウ width=

イワカガミは良い感じに見頃でそこかしこに咲いていました。イワカガミは割と花期の長い花の印象です。
田代山のイワカガミ

なんと言ったら良いのか、ひたすらだだっ広い空間です。信じられますか、ここは山の頂上なんですよ。
田代山山頂の湿原

湿原の端まで歩いて来ました。グルっと一周できるように木道が整備されていますが、一旦ここで湿原から外れてお隣の帝釈山を目指します。
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湿原を外れた木道は、鬱蒼とした樹林の中へと続いていました。この湿原になっている場所と樹林帯との境界は、いったいどのようなメカニズムによって作り出されるのでしょうか。交じり合わずにきっかり分かれているから不思議です
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7時5分 田代山避難小屋に到着しました。別名で弘法大師堂とも呼ばれています。ここが弘法大師の木像が置かれたと言う場所だったのでしょう。チップ制のトイレも併設されています。
田代山避難小屋
田代山だけで満足したと言う人は、ここまでで引き返すのがよいかと思います。まだ歩き足りなければ、帝釈山を目指しましょう。ここから往復でおよそ2時間と少々です。

4.オサバグサが咲く帝釈山への道程

避難小屋から、帝釈山との鞍部に向かって一度下ります。地図を見た感じだと、ほとんど水平移動のようなものだろうと思っていたのですが、思いのほかしっかりと下らされました。
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この帝釈山と鞍部の一帯がオサバグサの群生地となっています。オサバグサはケシの仲間の多年草で、亜高山帯の針葉樹林に生息しています。
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まるでぺんぺん草を思わせるような、小さくて可憐な花です。帝釈山を象徴する花で、毎年6月初頭の山開きの時期になると、桧枝岐村側の登山口である馬越峠でオサバグサ祭りが開催されています。
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祭りと言っても何かイベントがあるわけではなく、山開きの記念バッジがもらえるだけのようです。

鞍部まで下ってくると、小さな沢が流れていました。これだけ山頂に近い位置であってもしっかりと水流があるあたり、湿原の泥炭層がもつ保水力の大きさが良くわかります。
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羊歯類がびっちりと生い茂る、しっとりとしてウエットな空間です。ひんやりとした空気が心地よい。
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しっかりと大きく下ってしまった以上は、当然ながらしっかりと登り返しさせられます。帝釈山は田代山よりもわずかに標高が高いため、下ってしまった分プラスアルファの登り返しが待っています。
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山頂付近のムラサキヤシオはまだまだ見頃の盛りで、そこかしこに花を咲かせていました。ムラサキヤシオはヤシオツツジの中では生息域が最も北寄りで、おもに東北地方の山に咲きます。
帝釈山のムラサキヤシオ

なだらかな山容だった田代山とは違い、帝釈山の方は岩が多めでハシゴがかけられている場所もあったりして、そこそこ険しい道程です。
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ハシゴを登ると、背後の展望が大きく開けました。南会津の圧倒的な山深さ加減が良くわかる光景です。
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先ほど通って来た田代山の姿も良く見えます。テーブルマウンテンとまではいきませんが、なだらかな広い山頂部を持つシルエットです。
帝釈山から見た田代山

亜高山帯の山に咲く花の代表格と言えるシャクナゲも、そこかしこに咲いていました。関東地方の山のシャクナゲシーズンはもう既に終了してる時期ですが、東北地方の山ではまだまだ見頃です。
帝釈山のシャクナゲ

手も使わないと登れない道です。田代山はそれこそピクニック気分でも登れてしまうような山でしたが、帝釈山の方はしっかりと登山らしい登山が出来ます。
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最後は尾根を微妙に外したトラバースになりました。片側が切れ落ちているのでここは慎重に。
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眼下に川俣檜枝岐林道が見えます。桧枝岐村側から馬越峠にアクセスする際に通ることになる林道です。猿倉登山口以上に難儀するアプロ―チであるようですが、一応は一般車の通行も可能です。
帝釈山から見た川俣檜枝岐林道

山頂が見えて来ました。いかにも眺めが良さそうで期待が高まります。
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8時 帝釈山に登頂しました。田代山に比べると人気は今一つであるようですが、帝釈山系の主峰にして日本二百名山にも名を連ねている一座です。
帝釈山の山頂
今でこそ山頂のすぐ近くにまで林道が伸びて比較的簡単に登ることの出来る山ですが、かつては近づくことさえ困難を極める秘境の山でした。

山頂からはほぼ全方位の展望が開けています。北西には田代山からも良く見えていた会津駒ヶ岳が大きく横たわります。あちらはまだまだ残雪たっぷりのようですね。
帝釈山から見た会津駒ヶ岳

西の遠くに見える雪を被った山並みは、新潟県の山々です。中央に見えているのが越後駒ヶ岳(2,003m)かな。
帝釈山から見た越後駒ヶ岳

こちらは特徴的なシルエットで一目でそれとわかる尾瀬の燧ヶ岳(2,356m)です。帝釈山も尾瀬国立公園内にある山なわけですが、尾瀬と名乗るにはやっぱり少し離れすぎているように思えます。
帝釈山から見た燧ヶ岳

この頭だけピョコっと飛び出しているのは日光白根山(2,578m)です。関東地方最高峰の肩書を持つ山だけに、周囲の山の中でも文字通り頭一つ抜けた標高を持っています。
帝釈山から見た日光白根山

南には日光連山ファミリーの山並み。角度的にちょうど男体山だけが見えておらず、お父さんだけハブられ状態です。
帝釈山から見た

眼下に、昨夜真っ暗な中をひた走った県道350号のある谷が良く見えました。本当によくもまあこんな所に道を作ったなと、感心させられます。
帝釈山から見た飯豊連峰

だいぶ霞んでしまっていますが、遠くにまるで蜃気楼か何かのように浮かんで見える山並みがあります。方角的におそらく飯豊連峰であると思われます。
帝釈山から見た飯豊連峰
飯豊連峰はだいぶ以前より登りたい山リストに名を連ねていながら、未だに訪問が叶っていないわが悲願の山です。いかんせん交通アクセスが悪すぎて、3日以上のまとまった休みでも取らないことにはたどり着けないのですよ。

なかなかどうして満足度の高い寄り道でありました。スルーされてしまうことも多いようですが、田代山へお越しの際は是非ともここまで足を伸ばすことを強く推奨します。
帝釈山の山頂

5.田代山&帝釈山登山 下山編 ふたたび湿原を散策し、猿倉登山口へと戻る

秘境南会津からの絶景を心行くまで満喫して、十分に満足しました。そろそろ下山に移りましょう。
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猛暑日になるとの予報の通り、お日様ギラギラでだいぶ気温が上昇してきました。前乗りしてまだ涼しい早朝の内に登ってしまったのは大正解であったようです。
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道中のオサバグサを愛でつつ、もと来た道を田代山へと引き返します。
帝釈山のオサバグサ

鞍部の樹林帯の中は、まだ涼しくて良い気持ちです。直射日光があるかないかで、体感温度はこれだけ違ってくるものなんですね。日傘でもさしながら歩けば良いのだろうか。
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約束されていた田代山へ登り返しです。いつものように「こんなに下ったっけか」とボヤきつつ登ります。
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9時20分 田代山避難小屋に戻って来ました。山頂に滞在した時間を含めて、2時間15分ほどの寄り道でした。
田代山避難小屋

ここから湿原散策第二ラウンドの始まりです。案内にしたがい周回ルートを取ります。
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こちらの木道は一車線しか存在せず一方通行です。この光景だけを見ると確かに尾瀬的ですね。ええ、私の中でのイメージでは木道イコール尾瀬ですとも。
田代山の湿原

コバイケイソウの葉に混じって、ここでもワタスゲがポツポツと疎らに綿毛化していました。
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まだ開きはじめですね。完全に綿毛化すると、ほぼ真ん丸の状態になります。
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ワタスゲ最盛期の光景を見てみたかったな。そうそう気軽に来れる場所ではありませんが、これはいつかまた再訪しなくてはいけませんねえ。
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一周して湿原の入口に戻って来ました。湿原はこれで見納めです。ありがとう田代山。いつかまた来ます。
田代山の湿原

危惧していた通り、お日様カンカン照りで気温が上昇した登山道は灼熱地獄と化していました。頭上から降り注ぐ日光だけでなく、温められた地面からの熱気が何気に辛いものがあります。
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樹林帯まで下って来たら、もう後はひたすら下山と言う作業に取り組むのみです。
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往路ではスルーしていましたが、途中に水場があります。帰路では立ち寄って、顔をザブザブと洗ってクールダウンしました。冷たくて気持ちがいい。
田代山の水場

11時 猿倉登山口に戻って来ました。登山開始から6時間ほどの山行きでした。
田代山猿倉登山口

早朝の時点ではまだいくらか空きがあった駐車場でしたが、戻って来たら路上にまで車があふれていました。週末には争奪戦が繰り広げらると言う情報は正しかったようですな。
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11時5分 スタート地点の駐車スペースまで戻って来ました。こちらも当然満車状態で、トイレの前にまで車が止まっていました。
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6.田代山登山 帰還編 東京への遠き道程

なにやらすっかりやり切ったかのようなムードが漂っていますが、まだ核心部のダート林道の下りが残っております。往路と同様に、20km以下の徐行でゆっくりと下ります。
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林道を抜けたあともひたすら長い。それでも、こんな立派な道路が出来る以前の時代の苦労に比べれば、まだ全然楽なんでしょうね。
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なかなか珍しい3連装のおにぎり標識です。これは3つの国道のルートが重複している区間であることを現している訳ですが、それはつまるところ、この周囲には他に通り抜け可能な道が存在しないことを意味しています。
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帰りの道中にある塩原温泉福の湯に立ち寄って汗を洗い流して行きます。以前に高原山に登った時にも立ち寄ったことのある場所です。
塩原温泉福の湯

その後は幸いにも特にひどい渋滞に巻き込まれることもなく、東京への帰還の途に着きました。
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ワタスゲシーズンの最盛期にはまだフライングで若干の不完全燃焼感もありますが、長年の懸案の一つであった田代山にこうして無事に訪問することが叶いました。

最大の難所と言えるのはやはり現地へアプローチで、ことに公共交通機関の利用を前提とした場合は相当厄介な場所です。それでも湿原を埋め尽くすワタスゲの大群生を見てみたいと思う方は、覚悟を決めて赴きましょう。

訪問の手間に見合うだけの満足度が得られる山であることは保証します。

<コースタイム>
駐車場(5:05)-猿倉登山口(5:10)-小田代原(6:10)-田代山(6:40)-田代山避難小屋(7:05)-帝釈山(8:00~8:25)-田代山避難小屋(9:20)-猿倉登山口(11:00)-駐車場(11:05)

帝釈山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. たまのみすまる より:

    待ってました!ついに田代山登頂ですね。いつ行かれるのかと楽しみにしていました。
    というのも同じ車も買えない貧乏人環境意識高い系の人間としてこの「車の無い奴はお断り」の地にどうやってアプローチするのか興味津々だったのです。
    (30年ほど前に刊行されたガイドブックには
    「湯の花温泉から猿倉口まで徒歩で往復10時間。車の場合、未舗装のダートが17k、早春にはスコップ、ツルハシ必携」なんて書いてありました)
    ツアーに参加すれば簡単なんでしょうけど、行動時間に余裕が無さすぎるんですね。
    それにしても今回の記事を読んでますます行ってみたくなりました。いつか2日くらいかけてヒルクライムとやらで挑戦しようかなと思っています。

    • オオツキ オオツキ より:

      たまのみすまるさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      東武のツアーだと猿倉登山口の到着時間が10時50分で、帰路の便は16時30分発だと言うの事なので、田代山だけなら十分ですが帝釈山まで行くのは時間的にかなりシビアです。・・・帰りのバスに乗り損ないでもしたら最後、一体どうなってしまうのやらです。

      今回私は日和って車を出してもらってしまいましたが、自転車のヒルクライムでこの山に登ったら、それこそ本物の環境意識高い系ハイカーですね。ご健闘をお祈ります!!