神奈川県箱根町にある塔ノ峰(とうのみね)から明神ヶ岳(みょうじんがたけ)までを縦走して来ました。
箱根湯本駅があるすぐ脇から連なっている、箱根外輪山の北側を辿るコースです。外輪山の稜線に沿ってハイキングコースが整備されており、笹の稜線からは眺望もよく、多くの人に歩かれている定番の登山コースです
年末を迎えた箱根で、温泉と好展望の稜線歩きを楽しんで来ました。
2020年12月26日に旅す。
そうだ、箱根に行こう。
ここ何年か、年末に箱根を訪問することが自分の中での恒例行事となっております。前年の垢を綺麗さっぱりと洗いとして人間らしい新年を迎えるためにも、年末はゆったりと温泉に浸かりたいものです。
そして、温泉への訪問には登山が漏れなくセットでついて来ると言うのもまた、自分内部では一つの決まりごとのようなものです。
という事で今回は箱根湯本駅からスタートし、箱根外輪を辿って明神ヶ岳までを縦走して来ました。
本当は金時山まで足を延ばすつもりでいたのですが、イマイチ調子が上がらずに明神ヶ岳までで途中リタイアしただけの結果ではありますが。
若干雲が多めの空模様ではあったものの、冷たく澄んだ空気が気持ち良い一日でした。
今なお活発に火山活動を続ける箱根のダイナミックな光景を望みながら歩む、爽快なる箱根外輪縦走の記録です
コース
箱根湯本駅からスタートし、外輪山の縦走路に沿って明神ヶ岳まで縦走します。下山は元来た道を途中まで引き返して、宮城野バス停に下りました。
1.箱根登山 アプローチ編 小田急ロマンスカーで行く箱根への旅路
6時45分 小田急線 新宿駅
ロマンスを介さない無粋な男オオツキは、普段は箱根に行くときにも普通列車で行くことが多いです。ですが今回は珍しく特急ロマンスカーを奮発しました。
2週間にも新松田駅に行くために小田急線に乗ったのですが、その際に電車内で遭難するのではないかと思うほどに寒かったものですから。。
換気のために窓を開けているのが理由だとは思いますが、それしても同じ条件なはずの京王線の車内よりもはるかに寒かったのは何故なのでしょう??
混んでいたらヤダなあと思っておりましたが、幸いにも車内は至って空いておりました。流石に特急車両の換気装置は高性能らしく、寒さに凍えるようなこともなく快適です。
暖かく快適な車内でぬくぬくと過ごすしている間に、ロマンスカーは箱根に向かって快調に進みます。今のところはお天気の方もバッチリです。
8時24分 箱根湯本駅に到着しました。「たいして速くもないし」と言う理由で何となくロマンスカーを敬遠していましたが、特急列車の旅はやはり快適ですね
塔ノ峰の登山口は、箱根登山鉄道のガードを潜って箱根湯寮方面へ登って行ったところにあります。歩道の脇で身支度を整えて、8時30分に行動開始です。
2.知る人ぞ知る箱根のアジサイ寺、阿弥陀寺
始めからいきなりの急坂です。箱根湯本駅はすぐ裏手にまで崖が迫っている場所にありますが、その崖の上を目指して登って行きます。この場所自体がすでに外輪山の一部です。
12月末になっても、市内にはまだ僅かに紅葉の名残が残っていました。
ガードレールの外に、恐らくは旧道だと思われる平場が続いています。どこへ続いているのか大変興味がそそられますが、本題からは外れてしまうのでここは見送ります。
沿道にフォレスト・アドベンチャーなる遊戯施設があります。見るからに、これは絶対に楽しいヤツだ。体重制限とかあるのかな。
箱根湯寮まで登って来ました。日帰り入浴専用の温泉施設です。本日私が歩こうとしている行程とは逆向きに、塔ノ峰から箱根湯本駅に向かって下って来た時には、立ち寄るのにちょうど良い場所にあります。
8時45分 阿弥陀寺登り口に到着しました。道標に塔ノ峰の名はどこにも書かれていませんが、入り口はここであっています。
参道らしく、石の階段が続いています。初っ端からいきなりの急勾配で早くも息が上がります。
立派な山門まで備えています。私は今までこの寺の存在自体を全然知らずにいましたが、アジサイ寺としてそれなりに知名度のある場所です。
これは阿修羅の像ですね。笑う時には絶対「カカカカ」って言いそう。
これまた参道らしく、立派な杉並木です。参道の脇には、石仏がやたらと沢山並んでしました。
9時10分 阿弥陀寺まで登って来ました。梅雨時には一面がアジサイに覆われると言うこの場所も、冬には当然すべて枯れております。
神社の背後に見えている稜線が、箱根の外輪山です。この後あそこまで登って行きます。
例え手が汚れていない時でも、無性に手洗いがしたくなるこの手水舎(ちょうずしゃ)の不思議な魅力。
これは七福神ですかね。石像だらけの不思議な空間です。寺の関係者に石職人さんがいるのでしょうか。
謎の木彫り像まであります。なんと言うか、隠しきれないB級スポット感が溢れ出ている場所ですな。
私はもともと、マイナーなB級スポットにありがちな気の抜けた感じが大好きな人間です。よってこれは、最大限の賛辞のつもりで述べております。阿弥陀寺は大いに気に入りました。
3.箱根外輪山の末端にして箱根湯本の裏山、塔ノ峰
阿弥陀寺の裏手から、塔ノ峰への登山道が始まります。若干荒れ気味のようにも見えますが、あまり歩かれてはいない道なのでしょうか。
それでもしっかりと整備はされています。取り立てて危険と言えるような箇所もありません。
山の中にまで石像がありました。打ち出の小槌らしきものを振りかざしているこの石像は、大黒天なのかな。
ひょっとして道を間違えているのではないかと心配になるくらい、一度大きくトラバースします。大迂回の後にようやく尾根に乗りました。
あとは忠実に尾根を辿るだけです。この付近は常緑樹が多く、冬とは思えないほどに緑が濃い光景です。
樹木をかき分けるようにして登って行くうちに、割とあっけなく山頂らしき場所が見えました。
9時55分 塔ノ峰に登頂しました。箱根外輪山の末端部に位置する一座です。あまり意識して見たことがありませんが、小田原の市街地からでも良く見える山で、かつては小田原城の出城がありました。
塔ノ峰の山頂には一切展望がありませんが、明星ヶ岳方面へ少し進んだ場所に、伐採されて視界の開けた場所があります。
前方には、これから目指す明神ヶ岳方面の尾根が連なっています。この塔ノ峰は、言ってみればようやく外輪山縦走路の入口に立ったと言うだけのことでしかありません。
この頭だけが見えている、のっぺりとしたシルエットの山が明神ヶ岳です。山頂はカヤトになっており好展望が得られます。
東には神奈川県の天井、丹沢山地の山並みです。東京在住の私からすると、普段見慣れている丹沢とは反対方向から見た姿となります。
これは大山(1,252m)です。丹沢の主脈からは少し離れた位置にあり、半ば独立峰のようなものなので遠くからでも見つけやすい。
こちらは丹沢最高峰の蛭ヶ岳(1,673m)です。特に見た目に特徴はありませんが、個人的に好きな山なので、こちらもすぐに識別できます。
相模湾もちょこっとだけ見えました。相模湾に関しては、明神ヶ岳まで行けばもっと良く見えます。
4.激しくアップダウンを繰り返す、明星ヶ岳への道程
塔ノ峰から、一度勿体ないくらい大きく下ります。縦走登山とはそう言うモノです。
明神ヶ岳へ行くには、まずその手前にある明星ヶ岳を越えて行く必要があります。箱根の大文字焼が行われている山です。
下りきった所で、足柄幹線林道に合流します。ここからしばしの間、舗装道路歩きです。
前方に見えている緑々しい山は外輪山上の名もなき小ピークですが、この後あそこを乗り越えて行きます。
振り返って見た塔ノ峰です。これと言った特徴の無い、どこにでもありそうな里山の佇まいです
10時30分 明星ヶ岳の登り口までやって来ました。ここから再び登山道が始まります。
登り始めて早々に送電鉄塔がありました。森林限界未満の山歩きにおいては、送電鉄塔のあるところに好展望ありです。さて、どんな感じでしょうか。
富士山が頭だけちょこっと見えました。朝にはあんなにスッキリと晴れていたのに、だいぶ雲が湧いてきてしまっておりますな。
こちらは箱根最高峰の神山です。いまだに活発な火山活動が続く現役の活火山であり、名高き大涌谷があるのはこの山の中腹です。
やがて前方に、絶壁の様にそびえ立つ急坂が現れました。巻き道などは無いので、真っ向勝負を挑むしかありません。頑張って行きましょう。
ゼイゼイ言いながら登りきると、人の苦労を嘲笑うかのようにすぐに下りです。ええ、縦走登山と言うのはそう言うものです。
いかにも箱根外輪らしい、笹竹の藪に覆われた道になりました。この笹はハコネダケと呼ばれる品種で、刈り払いが行われていなければ、まともに歩くこともできないくらいの高密度に繁茂します。
頭上を忙しなくヘリが行ったり来たりしていました。何かを吊るして運搬しています。工事用の資材かな。
空荷なると引き返して行きます。荷物を吊るしている状態で真上を飛ばれると、何だかとても不安な気分になります。決してそんなことは無いのでしょうけれど、簡単に落ちそうに見えるものですから。
11時55分 ヘリに気を取られながら歩くうちに、いつの間にか明星ヶ岳に到着していました。
この明星ヶ岳には展望が一切なく、単なる通り道のような場所です。
何を作ろうとしているのかわかりませんが、明星ヶ岳の山頂は工事中でした。先ほどのヘリは、どうやらここに資材を運んでいたようです。
小腹が空いてきたので、ここで何をしているのかは不明な工事を眺めつつ一本立てました。
5.カヤトが広がる箱根外輪の好展望地、明神ヶ岳
12時15分 行動を再開します。当初の計画では、本日は明神ヶ岳を越えて金時山まで足を延ばすつもりでしたが、一向にペースが上がらずに時間が押して来ているので、目標を明神ヶ岳までに変更しました。
今日は何故こんなにも調子が上がらないのだろうと訝しんでいましたが、よくよく考えてみると、この週は中二日のインターバルで週に3回も登山をしていました。そりゃ疲れもしますよね。
前方の視界が開けて、明神ヶ岳の姿が見えました。金時山に次いで、箱根外輪山の中では2番人気の山です。見るからに眺めの良さそうな姿に、期待も高まろうと言うものです。
富士山は相変わらず雲隠れ中です。これは今日はもうダメなのかな。
頭上が開けた、明るくて気持ちの良いトレイルです。箱根の外輪山の中でも、歩いていて最も気持ちが良いのは明神ヶ岳付近の一帯だと思います。
遠目にはなだらかそうな山容に見える明神ヶ岳ですが、近づくにつれて次第に絶壁感が増して来ます。ここからは、まだまだ結構登ります。
12時50分 宮城野方面への分岐地点までやって来ました。金時山への縦走は中止にすると決めたので、明神ヶ岳の登頂後にまたここまで戻ってきます。
それでは張り切って、最後の登りに行ってみよう。
振り返ると、ここまで歩いて来た道程が見えました。ふむ、これは良い稜線だ。
明神ヶ岳の山頂部は横に長く、もうあと少しのように見えてなかなか頂上には着きません。割と心折設計な山です。
ここで大雄山最乗寺方面からの登山道と合流します。箱根の外側から登ってくるルートです。
山頂部のカヤト地帯に入り、視界が大きく開けました。本当はここで正面に富士山がドーンと現れて感激するところなのですが、生憎と本日は雲隠れを決め込んだままです。
谷を挟んだ真向かいに神山が見えます。この神山は、ロープウェイ山頂付近まで行けてしまうため、登山の対象と言うよりは観光地と考えるべき場所です。
最大望遠で覗くと、盛んに噴気を上げている大涌谷と、その上を横断する箱根ロープウェイのゴンドラが見えました。
山頂直下最後の登りです。ここはいつも泥濘で足元グチャグチャな場所ですが、本日は比較的ましな状態です。
振り返ると相模湾が一望できました。手前に広がる市街地は足柄平野とよばれている地域です。小田原があるのもこの足柄平野です。
再び最大望遠で覗いてみましょう。三浦半島の背後にある東京湾までもが、何となく霞んで見えます。
ようやく山頂が見えました。遠目に見えていた通りの、かなり広々とした空間です。
13時35分 明神ヶ岳に登頂しました。一向にペースが上がらず、なかなか苦しい道程でありました。
まあ、週に3回登山とか阿呆なことをして疲弊している訳でもいない限りは、特段厳しい山ではありません。比較的手頃な山です。
頭だけしか見えていませんが、山頂からの富士展望です。手前にあるポコッと突き出したピークが、当初の計画におけるのゴール地点である金時山です。
流石にこの時間からあそこまで歩こうと言う気力は、やはりありませんねえ。もう少し日が長い季節であれば気にせずに進んだかもしれませんが。
富士裾野の脇からは、ちょこっとだけ南アルプスも見えます。中央に写っているのは北岳(3,192m)ですね。何気に国内標高第一位と第二位の山のツーショットです。
そして神山。西側は雲が多めです。ちょうど箱根の上空が天気の境界になっている状態です。
6.箱根登山 下山編 縦走を切り上げて宮城野へ下山
14時 宣言した通り、金時山への縦走は中止して、元来た道を引き返します。そもそも本日は温泉の方が主目的なので、そんなに必死になって歩き続ける理由もありませんからね。
登りだと結構長くに感じられた道程も、下るとなるとあっという間です。スイスイと気持ちよく下りて行きます。
それでもすれ違う登りの人たちは、みな一様に辛そうなの表情を浮かべています。やはりこのルートは、誰にとっても心折設計なようで。
塔ノ峰からスタートするのではなく、反対側の金時山からスタートした方が幸せになれるルートかもしれません。
14時40分 宮城野への分岐地点まで戻って来ました。ここから外輪山の内側へ向かって下ります。
これと言って特記事項もない、ごく普通の登山道です。外輪山を横から登る道であるため、勾配はそれなりにキツめです。
登山道に早くも西日が差し込み始めました。時刻はまだ15時を少し過ぎたところですが、この季節は本当に日が短い。
別荘地の裏手まで下って来ました。一度舗装道路を横断しますが、下山はまだまだ終わりではありません。
まるで別荘地の隅へと追いやられたかのような道が続きます。まあ、実際に隅へと追いやらたのでしょうけれど。
バス停がある宮城野までは、もうあとひと道あります。箱根と言うと純然たる観光地のように思えますが、こうしたごく普通の市街地もあるんですね。
正面に見えているこの崩落地は、小涌谷と呼ばれています。大涌谷ほどではありませんが、こちらも盛んに噴気が上がっています。
15時45分 宮城野バス停のある国道沿いまで下って来ました。下山完了です。
ここから強羅まで登り返して登山鉄道で帰ろうか。などと考えていた矢先に、タイミングよく小田原行きのバスがやって来てしまいました。わざわざ見送るのもなんなので、素直にバスで撤収することにします。
その後は一度途中下車して、湯本温泉の和泉の湯へ。過去にも一度訪れていますが、お値段が少々高めな箱根プライスであることを除けば、文句なしに良い温泉です。
帰りは特急には乗らずに普通列車で帰宅の途に着きます。車内の気温はと言うと・・・やぱりひどく寒かったです。
こうして年末の恒例行事も無事滞りなく終了し、2021年も無事に人間らしいお正月を迎えることが出来ました。
塔ノ峰スタートの箱根外輪山歩きは、道中のアップダウンも多くなかなか歩きでのある道でした。本文中でも少し触れた通り、私が歩いたのとは反対向きに、金時山方面から湯本に向かって下って来る方が一般的です。明神ヶ岳付近は眺めも良く爽快な稜線が続き、万人向きなルートだと思います。
温泉に浸かる前の運動がてらに、魅惑の箱根外輪稜線を歩いてみては如何でしょうか。端から端までをすべて歩く必要は全くありません。
<コースタイム>
箱根湯本駅(8:30)-阿弥陀寺(9:10)-塔ノ峰(9:55)-明星ヶ岳(11:55~12:15)-明神ヶ岳(13:35~14:00)-宮城野バス停(15:45)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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