浅間山-鷹巣山-屏風山 鎌倉時代の箱根越えの古道、湯坂路を巡る

旧箱根街道の入り口
神奈川県箱根町にある浅間山(せんげんやま)、鷹巣山(たかのすやま)および屏風山(びょうぶやま)に登りました。
箱根湯元から芦ノ湖へ至る鎌倉時代の古道、湯坂路(ゆさかみち)を巡る行程です。箱根の外輪山を巡る通称ガイリーンと呼ばれるルートの中では最も展望に乏しい地味な一帯ですが、多くの史跡や石像群などが今も残る歴史探訪の道となっています。
年の暮れに箱根の史跡を辿りつつ、ついでにゆるりと温泉に浸かって来ました。

2023年12月29日に旅す。

そうだ、箱根に行こう。

自分の中では年末の恒例行事となっている箱根に訪問してきました。やはり年の最後くらいは温泉に浸かって1年の垢を綺麗さっぱり洗い流し、人間らしいお正月を迎えたいものです。

何度も足を運んでいることもあり、箱根を取り囲む外輪山上の登山ルートについては、既にほぼ歩きつくしてしまっています。今回は自身にとって最後の未踏破区間である、箱根湯本から芦ノ湖に至る湯坂路を歩いて来ました。
湯坂路の入口
湯坂路は別名で鎌倉古道とも呼ばれ、江戸時代に整備された旧箱根街道よりもさらに古い時代に使われていた道を踏襲したルートです。

さて箱根で登山をすると言ったら普通はこう、明神ヶ岳や金時山の周辺のような、笹の稜線の先に富士山がドーンと見える光景を期待するものではないでしょうか。
明神ヶ岳-金時山間の箱根外輪
こうした富士展望の良さは、箱根外輪山トレイルの魅力を語る上で欠くことのできない重要な要素です。

しかし残念なことに、今回歩いた湯坂路にはそのような絶景は一切登場しません。道の両側を背丈を越える高さの笹竹に覆われた、地味極まりない光景が延々と続きます。
箱根 屏風山の登山道
まあこれもある意味、箱根らしいと言えばらしい光景ではありますが、ガイリーン一周を完成させたいと言う確たる目的意識でもない限りは、あえてこの区間を歩いてみようという訴求力は見出しにくいルートではあります。

箱根らしい展望を拝めるのはゴールの芦ノ湖に辿り着くまで完全にお預けとなりましたが、古道巡りをしつつしっかりと温泉にも浸かって来ました。2023年最後の登山の記録です。
元箱根港から見た芦ノ湖と富士山

コース
湯坂路のコースマップ
箱根湯本駅から直接スタートし、湯坂路を辿って芦ノ湖を目指します。途中でいくつかのピークを踏んで行きますが、基本的にゴールの芦ノ湖までは一切展望が無い行程です。

1.浅間山登山 アプローチ編 ロマンスの無い普通列車で行く、箱根への旅路

5時56分 小田急線 喜多見駅
ロマンスを介さない無粋な男オオツキは、今日もロマンスカーではなく普通列車で箱根を目指します。
喜多見駅のホーム

終点の小田原で箱根湯本行きに乗り換えます。早朝の時間帯は箱根登山電車への接続がイマイチよろしくなく、寒風が吹くホームで結構待たされました。
小田原駅の箱根登山電車乗り換えホーム

7時44分 箱根湯本駅に到着しました。始発の特急ロマンスカーが動き出す前の時間にやってくるなんて、ごく少数の物好きだけだろうと思いきや、意外にも大勢の乗客が降り立ちました。
箱根湯本駅のホーム

箱根フリーパスの販売場が開くのは朝の8時以降です。普段は大勢の観光客で賑わう箱根湯本の駅構内も、この時間はまだ静まり返っていました。
箱根湯本駅の剣舞所
湯坂路を歩くつもりでいる私は始めからフリーパスを購入する予定はありませんが、観光で箱根内をあっちこっち移動するのであれば、購入した方が断然お得です。

2.湯坂城址と富士山は見えない浅間山

7時50分 身支度を整えて本日の行動を開始します。バスには乗らずに、駅から直接湯坂路の入り口まで歩いて行きます。
箱根湯本駅付近の国道1号線

今歩いているこの道は栄光の国道1号線、その名も東海道です。江戸時代に整備された五街道の中でも常に筆頭の扱いであり、今も昔も変わらない日本の主要幹線道路です。
国道1号線の標識
東海道の中でも、小田原から三島に至る箱根八里の区間と、越すに越されぬ大井川が特に難所として知られていました。何しろ昔の旅人は、基本的にすべて徒歩での移動いていたわけですから。

駅伝の中継でお馴染みの旭橋を渡ります。渋滞緩和のため昭和42年に隣にもう一つの橋が架けられて一方通行となりましたが、それ以前はこの橋だけで全ての通行を捌いていました。そりゃあ混みもするでしょう。
箱根湯本 旭橋

橋を渡ってすぐの場所に、箱根湯本の中でもっとも古くからある温泉井戸を使用していると言う、日帰り入浴施設の和泉があります。比較駅に近い場所にあるため立ち寄りしやすく、何度か入ったことがあります。
箱根湯本 和泉

駐車場の脇に、当時の井戸の跡だと言う穴が残っています。現在は流石にもう使用されてはいないようです。
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8時 湯坂路の入り口まで歩いて来ました。国道1号線の道路脇に、まるで取って付けたかのようにあります。まあ実際に取って付けたのでしょうけれど。
湯坂路の入口

和泉の駐車場のすぐ裏手を通り抜けて、山中へと分け入って行きます。
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12月ももう間もなく終わろうとしている時期なのに、まだ紅葉が僅かに残っていました。これも今年の夏が異常な高温だったことの影響なのでしょうか。
湯坂路入口付近の紅葉

進んで行くと、いかにも古道由来に道らしい、古い石畳が残る山道になりました。江戸時代に整備された旧箱根街道が須雲川沿いの谷筋にあるのに対して、鎌倉時代の古道である湯坂路は尾根筋にあります。
湯坂路の石畳

最初の急坂区間を登りきると、肩のようになっている平坦な空間にでました。尾根上の細長い空間ですが、かなりの広さがあります。
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8時45分 湯坂山に登頂しました。ここにはかつて湯坂路の往来を監視するための城が築かれていたとのことですが、現在ではその痕跡はほとんど残っていません。
湯坂山

野良猫が出没でもするのか、逆さにしたペットボトルがたくさん並べられていました。風情も何もあったものではありません。
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早川を挟んだ谷向に、箱根の外輪山が見えています。位置的に塔ノ峰と明星ヶ岳の間辺りだと思いますが、良くはわかりません。
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湯坂山を過ぎて以降はしばしの間、平坦な尾根道が続きます。だいぶ傷んでいて状態は良くありませんが、この付近にも石畳舗装が残っていました。
湯坂路の石畳

ここにも紅葉の名残がチラホラとありました。よもや年末の登山で紅葉見物が出来るとは、思ってもいませんでした。
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防火帯なのか、尾根上が広く刈り払われています。傾斜は緩くて至って歩きやすい尾根道ですが、その代わり結構ダラダラと長く続きます。
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開けているのは頭上だけで、側面は実に箱根らしく背丈を越える高さの笹竹に覆われています。おかげで展望は全くありません。
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大平台駅方面への分岐まで登って来ました。ここまで登ってくれば、最初のピークである浅間山まではもうあと一息です。
湯坂路 大平台分岐

山頂が見えて来ました。さて、少しくらいは展望があるのかどうか、あまり期待はせずに行ってみましょう。
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10時10分 浅間山に登頂しました。名前からして富士山が見えても良さそうなものですが、残念ながら展望は一切ありません。がっくし。
湯坂路 浅間山の山頂

ここにもかつては城があったと言う事で、広々とした芝生の空間が広がっていました。展望はありませんが、陽だまりが気持ち良く昼寝でもしたくなるような場所です。
浅間山の山頂

3.ほんの僅かに展望がある城址の鷹巣山

先へ進みましょう。浅間山からは、あい変わらず防火帯だと思われる道を一度緩やかに下ります。
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すぐ脇に市街地があるのが見えます。そもそも箱根の市街地と言うのは、どこも外輪山のカルデラの中にあるわけで、山間部と市街地との境界はあってないようなものです。
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鞍部まで下ってきたところで一度林道を横断します。正面に見えているのが次の目的地である鷹巣山なのですが、見るからに展望は無さそうで、登る前からテンションを削いできます。
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木の間から少しだけ展望が開けて、天下の秀峰こと金時山(1,213m)の姿が見えました。
浅間山付近から見た金時山
本日は雲一つないみごとな快晴であるし、金時山へ登っていれば今頃さぞや素晴らしい光景を眺めることが出来たことでしょう。それを一体なんだといって、こんな展望も何もない地味な湯坂路を歩いているのか。

最後の未踏破区間を埋めるためなのですけれど、なにもわざわざこんなに天気が良い登山日和に歩くことはなかったかもしれない・・・

鷹巣山へ登り返します。結構な急登ですが、長くは続きません。一気に登ってしまいましょう。
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山のマークが描かれた標識が立っていますが、既に文字が擦れてしまっており、何が書いてあったのかは読み取れません。山火事注意とかでしょうかね。
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背後の展望がちょこっとだけ開けて、小田原付近の海が見えました。これが鷹巣山でほぼ唯一の展望です。
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あっさりと山頂が見えて来ました。
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10時45分 鷹巣山に登頂しました。ここもやはり城址で、北条氏の城が建っていたとのことです。江戸時代の時点ですでに失われていあたらしく、痕跡と言えるほどのものは残っていません。
鷹巣山の山頂標識

ここでもやはり開けているのは頭上だけでした。どこまでも地味な湯坂路です。
鷹巣山の山頂標識

鷹巣山を過ぎて以降も、周囲の光景は変わらず防火帯が続いています。湯坂路について、ガイドブックには人気のハイキングコースであると書かれていたのですが、今のところ人影はまばらであまり人気があるようには見えません。
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湯坂路から少し外れた場所に飛竜の滝という名勝があるらしいのですが、立ち寄るとルートからは外れて一度下山してしまうようなので、訪問は見送ります。
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ここで再び、国道1号線と合流しました。ここから先はしばしの間、舗装道路歩きとなります。
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バス停もあるので、もう歩くのに飽きたと言う人はここで離脱も出来ます。この時点で、本日予定していた工程のおおよそ半分くらいです。
湯坂路入口バス停

4.国道の脇にひっそりと立ち並ぶ、元箱根石塔群

現在の国道1号線は江戸時代の旧箱根街道とも異なる道筋を辿り、駒ヶ岳と二子山の間を縫うようにして続いています。ここも駅伝の中継でよく目にする場所で、国道1号線の最高地点がある辺りです。
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このまま舗装道路上を歩き続けても良いのですが、途中から道路の脇に遊歩道が整備されています。
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陽当たりが良い浅間山の山頂では薄っすらと汗ばむような陽気でしたが、日影にある遊歩道は凍えるような寒さで、地面は凍結していました。
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道の脇に相当年季が入った石塔が立ち並んでいました。前述の通り、江戸時代の旧箱根街道は湯坂路とは異なる道筋を辿っていたので、少なくともこの石塔はそれ以前の時代に作られたものだと言うことになります。
元箱根の石塔

来歴を示す案内板がしっかりと設置してありました。この石塔は鎌倉時代から室町時代にかけて作られたもので、国指定の史跡にもなっているとのこと。
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ここで遊歩道は地下トンネルをくぐり、国道1号線の反対側へと移動します。
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トンネルの内部には、しっかりと照明まで灯っていました。それほど大勢の観光客が訪れる人気のスポットだとは思えませんが、ずいぶんとお金がけておりますな。
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トンネルを抜けると、岩をくりぬいて作られた多数の石仏が出迎えてくれました。鎌倉時代にに作られた磨崖仏群で、全部で二十五体あることから二十五菩薩とも呼ばれています。
元箱根の磨崖仏群

こちらは溶岩石を切り出して作られたと言う宝篋印塔です。
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この二子山の周辺はかつて、地中のいたるところから噴煙が立ち上る不毛の地であり、湯坂路を行き交う旅人から恐れられていました。これらの石仏群は、そうした旅人たちの守り神として作られたものです。
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遊歩道の脇に精進池と呼ばれる池があり、かつては周囲を一周できたらしいのですが、現在は笹竹の薮に覆われて通行不能です。道標が、どう見ても道があるようには見せない藪の中を指していました。
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と言う事で一周することはできませんが、精進池を横目にしながら進みます。見たところ流入河川も流出河川も無い水溜まりのように見えますが、冬でも枯れることなく水を湛えています。
精進湖

ここで再び国道の下をくぐるトンネルがありました。この先に六道地蔵なる大仏様がいるらしいので、寄り道して行きましょう。
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六道地蔵は他の石像のように野ざらしではなく、屋根付きの建物の中に置かれていました。
六道地蔵

覆堂の前に立つと、ちょうど目が合うようになっています。なんと言うかその、そんな睨まないでください。。。
六道地

お供え物用であるかのように見せかけて、ちゃっかりと最高金賞を取ったとこを宣伝している日本酒が置かれていました。なんと言うか、商魂がたくましいですな。
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少し引いた位置から見た精進池の全容です。背後に見えているのは、芦ノ湖からロープウェイで登れる駒ケ岳です。
精進池

5.旧箱根街道のお玉ヶ池と甘酒茶屋

さて、このまま真っすぐに国道1号線を辿って行けば、ゴールの元箱根港に到達します。しかしガイリーンと呼ばれている箱根外輪周回ルートの完全踏破を完成させるためには、ここから国道1号線を外れて屏風山方面へ向かう必要があります。
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この一見すると道標風の外観をした落石注意の看板は、真鶴半島などでも目にしたことがあります。
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隙間に無理やり通したかのような道を進みます。この辺りはおそらく、湯坂路とも旧箱根街道とも違う後年に作られたであろう連絡路です。
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今度は山火事注意の標識です。伊豆箱根エリア界隈では、注意喚起のための標識もすべて道標風の外観にするのがスタンダードなのだろうか。
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林道に合流しました。地図を見たところ、すぐ隣にお玉ヶ池なる池があるはずなのですが、まだ姿は見えてきません。
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道標も何も立ってはいませんが、右側へ下っていける横道がありました。これがきっとお玉ヶ池に通じている道なのだろうと言う事で、下りてみます。
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やがて腐りかけた木橋が架かった水路にぶつかりました。ふむ、これはどう見てもオフィシャルなルートではなさそうですね。しかしせっかくここまで下りて来たのだから、危なっかしい橋は渡らずに水路を直接渡渉してみましょう。
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水路を渡ると、池のほとりに出ました。足元はぬかるみになっており、やはり公式なルートではなかったようです。
お玉ヶ池

薄汚れた水溜まりなのかと思いきや、意外にも透明度の高い池です。写真だとちょっとわかり辛いですが、凄い数の小さい魚が泳ぎまわっていました。
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道へ引き返して先へ進むと、案の定池への入り口は別にしっかりと存在していました。少々早とちりが過ぎたようで。
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先ほど池を眺めた場所の対岸には、しっかりと散策のための木道が整備されていました。
お玉ヶ池の散策路

見事なリフレクションで二子山が水面に反射していました。とても風光明媚な隠れスポット的な池ですが、このお玉ヶ池と言う名称には悲劇的な由来があります。
お玉ヶ池のリフレクション
江戸で奉公していたお玉さんと言う女性が、故郷へ逃げ帰ろうとして箱根の関所破りをするも発見されてしまい、その後処刑されました。

それを哀れんだ地元の人々が、もともとはなずなが池と言う名前だったこの池をお玉ヶ池と改名したのだとか。

お玉ヶ池から二子山の脇をグルっと回り込むようにして一度下ります。ブラインドカーブが続く曲がりくねった道で交通量も結構多めですが、しっかりと歩道があるので歩行者にも安心です。
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この下り坂の途中を、湯坂路よりも後年の江戸時代に作られた旧箱根街道が横断しています。箱根八里に昼猶闇(ひるなほくら)き杉の並木とうたわれている通りの光景が広がっていました。
旧箱根街道の入り口

より古い時代の道である湯坂路の方は、ハイキングコースとして現代によみがえりましたが、旧箱根街道の方はごく一部の区間しか残っていません。ルートの一部が現役の道路と被ってしまっているためです。
旧箱根街道の案内板

旧箱根街道尾入口からさらに下って行くと、屏風山ハイキングコースの入り口が現れました。展望が皆無の藪山であるとのことですが、ガイリーンのコースの一部に組み込まれてしまっているため、無視するわけにもゆきません。
屏風山ハイキングコース入口
半ば消化試合的な屏風山登山に取り掛かる前に、この先に甘酒茶屋と言う江戸時代からある茶屋があると言うので、一旦素通りしてもう少し先まで道なりに進みます。

間が悪いことに何やら工事中のようですが、茅葺屋根の建物がありました。かなりの人気あるスポットであるらしく、駐車場は満車状態です。
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13時 甘酒茶屋まで歩いて来ました。せっかくの機会だから甘酒の一杯でもと思ったのですが、まさかの待ち行列が発生中でした。流石に甘酒一杯のために待つ気にはなれず、写真だけを撮ってこの場を後にしました。
箱根 甘酒茶屋

6.登っても特に良いことは無い、地味なる屏風山

屏風山の登山口まで戻って来ました。展望がないことを知っているためか、始めからテンションがやや低めですが、今はともかくガイリーン一周を完成させましょう。
屏風山ハイキングコース入口/-

まるで奥多摩のような圧倒的杉林の中を、涸れ沢にそって登って行きます。
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上の方へ登って行くと、一面が苔生すウェットな空間になりました。地表を流れる水流こそ見えませんが、どうやら伏流している水の流れがあるのかな。
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朽ち果てて自然に還ろうとしているテーブルとベンチがありました。だいぶ以前に整備されて以降は、ずっとほったらかしにされているようです。ごく一部のもの好きくらいしか登ってこなさそうな場所ですからね。
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須雲川を挟んだ向かいの尾根が見えます。地理的に言えば本来はあちらの尾根こそが箱根の外輪山であるのですが、尾根上を箱根ターンパイクと言う有料道路が占拠しており、歩行者の侵入は禁止されています。
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仕方がないのでその代わりとして、湯坂路と屏風山がガイリーンのコースに組み込まれたと言う経緯であるようです。本当の意味での箱根外輪山一周は出来ないと言う事ですね。

山頂に近づくと、道の両側が笹竹に覆われたいつもの箱根の山の光景になりました。この笹竹はその名もハコネダケと言う名称で、火山性の土壌を好んで生育します。
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山頂が見えて来ました。あははははは、これはまた画に描いたかのような地味山ですねえ。
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13時45分 屏風山に登頂しました。須雲側沿いから見上げると屏風のような姿をしているのが、名前の由来であるあるらしい。
屏風山の山頂
留まっても何も得るものはなさそうな山頂なので、到着して早々ですが先へ進みます。

ここにもかつては山城があったとのことで、山頂部は平坦な空間が続いています。と言っても、一面が笹竹に覆われてしまっていますけれどね。
箱根 屏風山の登山道

ここまで歩いてきてようやく、木の隙間から富士山がお目見えしました。やはりどう考えたって、箱根の山からの眺めにはコイツが必要不可欠なんだよな。
屏風山の登山道から見た富士山

この後は箱根町港に向かって下るのだけなのですが、最後の下り区間はかなりの急勾配です。反対向きに登るのは結構しんどそうです。
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ここでもやはり続く笹竹ウォールが道の両側を囲んでいます。屏風山は最後の最後まで地味山を貫き通しました。
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市街地が見えて来ました。やはりどう考えても、この屏風山は完全に余計な蛇足だったと思います。
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国道1号線と合流しました。あとは箱根町港まで歩くのみ。
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14時40分 箱根町港バス停に到着しました。ここから先は過去に歩いたことがある区間となるため、これにてガイリーンの完全踏破は完成しました。
箱根町港バス停

7.芦ノ湖から富士山と海賊船の箱根らしい光景を眺める

ここまで延々と歩き続けて、ようやく芦ノ湖に富士山と言う箱根らしい光景を拝むことが出来ました。富士山は頭の辺りしか見えていないけれどね。
箱根町港から見た芦ノ湖と富士山

そして駒ヶ岳。冷え固まった溶岩ドームであることが一目でわかる姿をしています。箱根というのは巨大なカルデラであり、外輪山の内側はもともとは火口だったと言う事になります。
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その火口の中に街があり、これだけ大勢の観光客が出入りしている訳です。よくよく考えてみると、かなり危うい場所なのではなかろうか。

江戸時代の箱根と言えば、真っ先に思い浮かぶのがこの関所でしょう。箱根は多くの西国大名が参勤交代で通行する東海道の要衝であり、徳川幕府の厳重な監視下にありました。
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江戸時代における関所破りはかなりの重罪扱いで、捕まると原則として磔の刑に処されました。お玉さん可哀そう・・・

せっかくだから関所跡の観光でもして行こうと思ったのですが。まさかの有料でした。有料と言ってたかだか500円ですが、なんだか興が削がれてしまい結局は見物しませんでした。
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帰路は元箱根港から出ているバスで撤収するつもりでいるので、歩いて移動します。この箱根町港と元箱根港は隣接していて、歩いて連絡可能な距離ではあるのですが、名前が似ていて非常にややこしいのが難点です。
箱根町港バス停

さっくり言うと箱根関所と箱根駅伝ミュージアムがあるのが箱根町港で、箱根神社があって富士山の眺めが良いのが元箱根港です。それぞれ乗り入れているバス系統が異なるので、間違えないように注意を要します。
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先ほど箱根町港から眺めた時には三国山の背後に隠れていた富士山も、元箱根港まで歩いて来るとこの通り良く見えます。
元箱根港から見た芦ノ湖と富士山

ちょうどよく海賊船が入港してくるタイミングでした。インバウンド需要で大盛況らしい様子が、ここからでも良く見て取れます。
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駒ヶ岳に抱かれた港へと、音もなく滑り込んで行きました。
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芦ノ湖の光景を写した写真としては最も定番であろう、この富士山と湖上の鳥居が写るアングルは、元箱根港からの光景です。
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15時10分 元箱根港バス停に到着しました。バス停の周囲には外国人の姿しか見当たらず少々面くらいました。日本人観光客は一体どこへ消えてしまったのだろうか。
元箱根港

箱根旧街道線のバスで撤収します。行き先案内表示にK系統と書かれている路線がそれです。
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8.天山湯治郷でひと風呂浴びる

奥湯本入口バス停で途中下車します。お目当ては天山湯治郷の温泉です。
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箱根の温泉は基本的に宿泊施設がメインで、日帰り入浴できるの施設の数は実は意外と少なめです。天山温泉は数少ない日帰り入浴専用の施設となっています。
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ひがな湯治天山とかよい湯治一休と言う、二つの入浴施設があります。さっくり言うとひがな湯治天山はお食事処や休憩スペースを備えた屋内風呂で、かよい湯治一休は露天風呂のみです。
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露天風呂のかよい湯治一休の方に入ったのですが、脱衣所から洗い場まですべてが屋外にありました。クッソ寒い!

と言う事で真冬の季節に訪問するのならば、普通に屋内のひがな湯治天山の方が良いと思います。

一風呂浴びたら、バスは待たずに箱根湯本駅まで歩いて戻ります。だいたい徒歩で30分少々くらいの距離です。
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車道沿いに歩いていても最終的には駅に辿り着きますが、途中でショートカットできる山道もあります。ありがたいことに、しっかりと街灯もありました。
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湯本まで下ってくる頃には、周囲はすっかりと暗くなっていました。なんだかんだでまる一日を費やした行程でした。
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朝の静けさが嘘のように、夕方の箱根湯本駅は大混雑していました。もう完全にコロナ渦前の光景に戻った感があります。
箱根湯本駅

行きと同様にロマンスの無い普通電車に乗り込み、帰宅の途に着きました。
箱根湯本駅

湯坂路は登山と言うよりは、どちらかと言うと史跡巡りの色合いが強いルートでした。基本的に展望はまったくありませんが、要所ごとに見どころとなるものがしっかりと存在するため、道中で退屈することはありませんでした。
箱根で登山がしたいと思ったのであれば、湯坂路を歩くよりは明神ヶ岳や金時山の一帯を歩く方が断然楽しめると思います。古の道を辿る史跡巡りがしたい人か、もしくはガイリーン周回を完成させたいと言う人におすすめのコースでした。

<コースタイム>
箱根湯本駅(7:50)-湯坂山(8:45)-浅間山(10:10~10:25)-鷹巣山(10:45)-湯坂路入口(11:00)-精進池(11:55)-甘酒茶屋(13:00)-屏風山(13:45)-箱根町港(14:40)-元箱根港(15:10)

屏風山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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