埼玉県皆野町と東秩父村にまたがる大霧山(おおぎりやま)から秩父高原牧場まで歩いて来ました。
比企三山と呼ばれる山郡に属し、秩父地方の展望がよいことで知られた山です。大霧山から北に向かって伸びる尾根上には高原台地が広がり、放牧場として利用されています。
この秩父高原牧場にあるポピー畑には、公称1,500万本ものシャーレーポピーが栽培されており、開花シーズンになると多くの見物客で賑わいます。
高原の斜面を紅く染める、天空のポピー畑を満喫して来ました。
2018年5月27日に旅す。
今回は外秩父山地にある秩父高原牧場に行って来ました。実際に放牧場として使用されている他に、乳製品手作り体験学習などが行える施設も併設され、観光地としての一面も持っている場所です。
この秩父高原牧場の西側斜面で、シャーレーポピーの栽培が行われています。例年だと5月中旬から6月上旬頃にかけて、満開の見ごろを迎えます。
シャーレーポピーとはヒナゲシの園芸種で、別名で虞美人草(グビジンソウ)とも呼ばれます。
開花する時期に合わせて、毎年天空のポピー祭りが開催されます。ポピー祭りの開催期間中は、軽食を販売する出店などが出店し、シャトルバスの運行も行われます。
近年ではその人気が沸騰し、会場付近には大渋滞が発生します。
そこで今回は隣接する大霧山へ登り、そこから尾根沿いに徒歩で移動して会場入りする計画を立てました。これぞハイカーの特権と言うわけです。
と言うことで、大霧山登山自体はもやはオマケの様な扱いで、天空のポピー畑へと繰り出します。
コース
経塚バス停から旧定峰峠を経て大霧山へ登頂。そこから尾根に沿って北上し天空のポピーへと向かいます。下山は二本木峠をへて内出バス停へと下ります。標準コ-スタイム4時間ほどの、とてもお手軽な行程です。
ちょうどバスの無い時間に下りてしまったので、下山後に道の駅和紙の里まで歩きました。
1.大霧山登山 出発編 小川町から東秩父村を目指す
7時12分 東武東上線 池袋駅
おはようございます。本当は7時ちょうど発の小川町行き乗りたかったのですが、電車の時間を10分間違えると言う実にしょうも無いアクシデントにより、始まりからいきなり計画に狂いが生じました。
8時27分 1時間ちょっとの乗車時間で、終点の小川町駅に到着しました。
小川町に降り立ったのは自身初です。どうやらユネスコの文化遺産に登録されたと言う和紙が、小川町における観光資源の目玉であるようです。
駅構内に巣を構えた燕が、慌しく飛び回っていました。こんな電気機器の上に営巣しちゃって、ショートしたりしないのでしょうか。
当初の予定通りであれば、8時14分発の白石車庫行きバスに乗るはずでした。まあ乗れなかったものはしょうがありません。次のバスは9時12分発です。10分の遅れが1時間の遅れに・・・なんてこったい。
と言うことで、ベンチすらないバス停で待つことおよそ40分後に、ようやく次のバスがやって来ました。
ポピー祭り効果なのか、座席がすべて埋まって立客も出るほど盛況でした。
9時50分 経塚(きょうづか)バス停に到着しました。駅からの運賃は640円です。スイカ、パスモには対応していません。小銭を用意しましょう。
沢沿いを上り詰めた場所にある、典型的な山間の集落といった佇まいの場所です。
2.大霧山登山 登頂編 里山の穏やかな道を登る
登山口はバス停のすぐ脇にあります。ところで、このCPと言うのは一体何のことでしょう。チェックポイント?
※これは外秩父七峰縦走ハイキング大会のチェックポイントです。全長42キロものコースを歩く過酷な大会です。
登り始めはしばしの舗装道路歩きです。まず沢沿いの道を登ってゆきます。
道の脇にモミジイチゴが沢山実っていました。上品な甘さでとても美味しい。
水の流れる音と言うのは、何故こんなにも聞くものの心を落ち着かせるのでしょうか。
沢が近いおかげか、しっとりウエットな感じのする冷たい空気に満たされています。ようするにとても気持ちが良い。
暑くも寒くも無い快適な気温です。ちょうど今くらいの梅雨入り直前の季節が、里山歩きには最も適している時期ではないでしょうか。もう少しすると、羽虫の襲撃に悩まされるようになりますからね。
道端に咲いていたニガナの花。なお、私が記している花の名前は、基本的にすべて後ろに(たぶん)が付きます。図鑑を見ているだけなので。
ブンブンブン蜂が飛ぶ♪
苦菜(ニガナ)などと言ういかにも苦そうな名前の花なのに、蜜は甘いのでしょうか。
どうも私は「木漏れ日に照らされた新緑」と言う画が好みらしく、気がつくと同じような写真ばかり何枚も撮ってしまいます。
10時45分 旧定峰峠に到着しました。
多くの人が休憩していました。一見ハイカー風で無い格好をした人もいます。目的地は同じか。
ちなみに、現在の定峰峠はここから少し南に離れた場所にあり、そちらはへは車で上がれます。
峠の様子
ここは秩父盆地と外秩父と呼ばれる一帯との境界に当たる場所です。それゆえに、古くから人の往来があったのでしょう。
ダイダラボッチの伝説と言うのは、どれもスケール感が凄いですね。
私が聞いたことのあるエピソードの中でも最大なのは富士山にまつわるものです。ダイダラボッチが砂山遊びをして出来たのが富士山で、砂を掘った場所が甲府盆地であるという。
登りきると平坦になります。登山道脇は放牧地となっており、鉄条網に囲まれています。
放牧地の向こうに比企三山の残り2座である笠山(左)と堂平山(右)の姿が見えました。
笠山は通称「おっぱい山」とも呼ばれており、比企郡に住まう男子中学生達の憧れの的になっているとかいないとか。確かにそう見えないことも無いかな。
しばらく平坦な道が続いた後、最後に山頂直下で大きく登ります。
登山道には渋滞が発生していました。これはポピー効果なのか、それとも普段から人気のある山なのでしょうか。
11時15分 大霧山に登頂しました。昔は全く展望の無い山だったそうですが、今では西側斜面の木が刈り払われており、秩父盆地の方向の展望が開けます。
山頂の様子
そこそこの広さがあります。大勢のハイカーが所狭しと休憩していました。
こちらは簑山(みのやま)(587m)です。山頂付近が美の山公園として整備されており、人気のハイキングスポットとなっています。
正面には両神山(1,723m)の姿が微かに見えます。この日は空気が霞んでしまっていて、遠望は全然駄目でした。
南には言わずと知れた秩父のシンボル武甲山(1,304m)の姿も。
北側の展望。
空気が澄んでいる日であれば、遠く日光の山々や尾瀬の燧ケ岳なども見えるそうです。
3.大霧山から天空のポピー祭り会場へ
いつまでも霞んだ風景を眺めていてもしょうがないので、ちゃっちゃと次へ行きましょう。
山頂にポピー祭りの案内役と思われる人が立っており、「ポピー山はこっちです」と声かけをしていました。
・・・まあ、伝えんとすることは伝わるのだから、それで良いのかも知れません。それでも「ポピー山なんて名前の山はないぞぉー」と叫びたい衝動に駆られるのは、私の人としての器が小さいからなのでしょうか。
粥仁田峠に向かって尾根伝いに下っていきます。よく整備された歩きやすい道ではありますが、それでもスニーカーで歩くのは止めておいた方が良いです。
これは何でしょう。パッと見ではアジサイの仲間のようにも見えますが。
目指すポピー祭り会場が見えました。なんと言うか、すごく赤いです。
高原牧場入り口バス停から登って来るルートと合流します。小川町からではなく秩父側からアプローチした場合は、ここから登ってくることになります。
程なくして粥仁田峠(かゆにたとうげ)に到着です。ダイダラボッチが粥を煮た場所ですね。
峠から真っ直ぐに続いている山道もあり一瞬迷いますが、ポピー祭り会場へ向かうには、二本木峠登山口と書かれた方に進むのが正解です。大霧山を背にした状態から見て右側です。
峠から舗装道路を下って行くと、橋場バス停から登ってくる道と合流します。
大霧山には一切興味が無く、ポピー畑に直行したいと言う人は、橋場バス停から上がってくるのが最短です。ここで言う最短とは、シャトルバスを使わない前提での最短です。
道脇に蛇苺が大量に実っていました。
突然道端にしゃがみこんで蛇苺撮影を始めるおっさんを、先ほどの集団が怪訝そうな目で見つめていました。
蛇苺に毒は無いので、食べようと思えば食べられます。美味しくはありませんが。
一見酸っぱそうに見えますが、酸味はまったくありません。極めて薄い甘みだけがほんのわずかに感じられます。種のブツブツが何時までも口の中に残るので、不快な後味です。
視界の開けた場所に出ました。ポピー祭り会場は、ここから西側に500メートル程下った所にあります。
会場に向かう道は、惨い渋滞を起こしていました。渋滞などお構い無しに颯爽と脇を通り抜けて行けるのは、己の2本の足だけで進むハイカーの特権です。
会場が見えてきました。仮設駐車場には車が溢れています。ポピー山は大人気ですね。
4.斜面一帯が赤く染まる天空のポピー
視界一面に赤い絨毯が広がります。1,500万本も植わっているあって、圧倒的なスケール感です。
赤い花が圧倒的に多いですが、ピンクや白のものも少なからず混ざっています。
あまりにも赤々しすぎて、色飽和を起こしてしまっていますね。赤は飽和を起こしやすいと言いますが納得です。
アップで見ると結構グロイ。少し引いて鑑賞したほうが、美しく感じられると思います。。
こちらはピンクの固体。真っ赤な花と違って、アップで見ても可憐なイメージは崩れません。
数は少ないですが、真っ白な固体もあります。
花弁や茎を見るとなんとなくわかるかもしれませんが、シャーレーポピーはケシ科に属しています。つまりはアヘンの原料の仲間ですな。
この1,500万本の花は、咲き終わった後にはどうしているのでしょう。牛やヤギに喰わせても大丈夫なんですかね。
大変美しい光景なのですが、それゆえに端のほうに圧倒的に美しく無いモノが写り込んでしまっているのが、返す返す残念でなりません。
天空のポピー祭り開催者の皆様におかれましては、仮設トイレの設置場所にはもう少しご配慮を願いたく。
ぐるっと回って今度は下段を歩きます。先ほどまでの見下ろすアングルから、今度は見上げるアングルです。
天空のポピーを写した写真で中でも一番良く見かけるのは、この丘を見上げたアングルです。
赤すぎて目がチカチカする。これも色飽和してしまっていますね。
下の方はピンクの花の割合が多めです。これはこれで綺麗ですが、やはりポピーと言うと赤のイメージのほうが強いですかね。
最後に会場を見下ろした一枚を。ぐるっと一周しただけなのに、結局1時間以上も滞在していました。
5.彩の国ふれあい牧場でヤギと戯れる
心ゆくまで堪能しました。会場を後にし、尾根の上まで登り返します。
振り返ってみる大霧山。今回は完全にオマケ扱いでしたが、空気の澄んだ日に登ればきっと高い満足が得られる山だと思います。
思わず二度見しそうになる放牧的な道標を過ぎると、まもなくふれあい牧場が見えてきます。
この彩の国というキャッチコピー、埼玉県内のあらゆる場所で目にしますが、よほど出来に自信があるのでしょうか。
ふれあい牧場内にはヤギが放し飼いにされており、文字通り触れ合うことが可能です。まあ、ヤギと言うのは基本的に物凄く獣臭いので、とりあえず私は触れ合わずに眺めるだけにしました。
まだらな模様をしています。ハイジのユキちゃんのイメージが強すぎるせいか、小ヤギといわれると真っ白なのを思い浮かべてしまいがちですが。
羊も居ましたが、柵の向こう側で触れ合えない場所です。いかにもヤル気なさそうに寝ていました。
6.大霧山登山 下山編 バスのご利用は計画的に
下山を開始します。このまま県道沿いに二本木峠まで行き、そこから内出バス停へ下ります。
この舗装道路歩きがまた、結構長かったりします。所々でこのように展望の開けている場所があるので、歩いていて退屈はしません。
14時40分 二本木峠に到着しました。ここから尾根沿いを外れ、降下が始まります。
舗装道路を外れて登山道に入ります。思わずほっとする瞬間です。ソールが硬めの登山靴を履いていると、舗装道路の下りと言うのは足の裏に地味にダメージを与えるんですよ。
傾斜の緩い歩きやすい道です。一瞬の出来事だったので写真は撮れませんでしたが、ここで不意に野生動物が目の前を横切りました。パッと見、狸っぽかったような。
何度か林道と交差しながら下っていきます。まあこれも、里山らしい光景ですね。
突然、畑の中に飛び出しました。大丈夫なんですかこの登山道。野菜ドロボーだと勘違いされたりしないですよね。
サクサクと気持ちよく下って、あっという間に麓の集落が見えてきました。
田植えを終えたばかりの田んぼ脇を通ります。周囲はカエルの大合唱でした。
15時30分 内出バス停に到着しました。時刻標を確認したところ、15時台のバスは25分。・・・5分前の出来事ですね。
そして次のバスは16時25分です。1時間後か。
こんなベンチすらないような場所で1時間も待ってられるかい。と言うことで、道の駅まで歩いてゆくことにしました。
と言うのも、往路のバスには道の駅止まりの便が何本か存在したので、逆向きなら道の駅発というのもあるんじゃないかなーと期待した次第です。
結構遠くてダレて来ました。とりあえず道端の花など写してしばし気分転換です。これはタチアオイかな。
これはオオキンケイギクですね。もとは外来種で、野生化したものが大繁殖して問題になっています。
16時5分 道の駅和紙の里ひがしちちぶに到着です。
そしてせっかく頑張って歩いたのに、結局この時間帯に道の駅発のバスは存在しないのでした。バス代がいくらか浮いただけだあ。
東秩父村のマスコットキャラクターである、わしのちゃんを見れただけで良かったのだということに、とりあえずはしておきましょう。
その後現れたポピー効果で超満員のバスに、何とかスペースを作ってもらって乗り込み、帰宅の途に付きました。
天空のポピー訪問期は、なにやら必要以上に長距離を歩きまくって幕を下ろしました。車で直接行くことの出来る場所ではありますが、近年ではその人気がジワジワと高まりつつあり、惨い道路渋滞に巻き込まれる可能性が大きいです。普段から山歩きをする人であれば、徒歩で向かうのは良い選択肢なのではないかと思います。ついでにヤギとも触れ合えて一石二鳥です。
今回はすっかりオマケ扱いの大霧山ですが、比較的簡単に登れてしかも展望良好と、良い事尽くめの山です。登山初心者向けの山としてもオススメできます。ガッツリ歩きたい人は比企三山縦走などを計画してみるのも面白いかもしれません。
<コースタイム>
経塚BS(9:55)-旧定峰峠(10:40)-大霧山(11:15~11:25)-粥仁田峠(11:50)-天空のポピー(12:10~13:20)-ふれあい牧場(13:45~14:10)-二本木峠(14:40)-内出BS(15:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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