扇山-百蔵山 ヤマツツジが満開の手軽な秀麗富嶽縦走登山

猿橋駅付近から見た扇山と百蔵山
山梨県大月市にある扇山(おうぎやま)および百蔵山(ももくらやま)に登りました。
2座共に桂川の北側に連なり、大月市の制定した秀麗富嶽十二景に選ばれています。鳥沢駅から猿橋駅へとつなげる手軽な縦走登山コースとして人気があり、特にヤマツツジが咲く5月上旬から中旬ごろにかけて多くの登山者が訪れます。
ゴールデンウィークの人気の山の混雑を避けて、近場の山をゆるりと巡って来ました。

2024年5月5日に旅す。

ここ何年か、ゴールデンウィーク中は混雑する人気の山を避けて、比較的マイナーな近場の山に登ることが自分の内部では習慣化されています。と言う事で今年も近場の扇山と百蔵山に登って来ました。
扇山の山頂
どちらも中央本線の駅から直接登れる駅チカ物件です。2座繋げてて歩くことも可能で、たいへんお手軽な縦走コースとなっています。

1年を通じてそこそこ訪問者がおりマイナーとまでは言いきれない山ですが、それこそ高尾山のような大混雑に見舞われることはありません。

ゴールデンウィーク頃はちょうどヤマツツジのシーズンにあたります。2024年はツツジのハズレ年で、例年に比べるとちょっと華やかさには欠ける状態でしたが、それでも十分に目を楽しませてくれました。
扇山のツツジ新道

秀麗富嶽十二景に選ばれている事実からも明らかなように、どちらの山にも富士展望があります。絶好の晴天にも恵まれたゴールデンウィークの一日の記録です。
百蔵山から見た富士山

コース
扇山百蔵山縦走のコースマップ
梨ノ木平からスタートしツツジ新道を登り扇山へ。扇山から百蔵山まで縦走したのちに猿橋駅へまで歩いて下ります。

鳥沢駅から直接歩いてのアプローチも可能ですが、土休日限定で登山口の梨ノ木平まで行けるハイキングバスが運行されているので、往路ではそれを利用しました。

1.扇山登山 アプローチ編 富士急のハイキングバスで行く梨ノ木平への旅路

8時3分 JR高尾駅
鳥沢駅を9時に発つハイキングバスの時刻表にあわせて、いつもよりもゆっくりと始動します。東京方面からやって来た中央線快速が到着するなり、甲府行きの電車内は満員電車並みの乗車率となりました。ゴールデンウィークおそるべし。
高尾駅のホーム

8時39分 超満員の電車におよそ30分程ゆられて、鳥沢駅に到着しました。山登りの格好をした乗客が一斉にホームに降り立ちます。扇山への入山者はそこそこ多くなりそうです。
鳥沢駅のホーム

最初に目指す扇山はこの通り、駅の跨線橋の上からすでに見えています。名前の通りに、扇を広げたかのような横長のシルエットが特徴的です。
鳥沢井の跨線橋から見た扇山
駅から直接歩いてでもアプローチできますが、まあせっかくバスがあるのだから使っていきましょう。

駅前に小さなロータリーがありますが、バス乗り場はここではなく国道20号線を渡った道向かいにあります。鳥沢駅には以前はトイレが無くて大変不便だったのですが、いつの間にか公衆トイレが設置されていました。
扇山駅間のロータリー

バス停には既に結構な行列が出来ていました。この鳥沢駅9時発梨ノ木平行きのバスは季節運行で、4~7月と9~12月の土休日にのみ運転されます。
鳥沢駅のバス乗り場
1~3月が冬期運休なのはわかるとして、8月の運行も無いのは真夏に登る人がそれだけ少ないと言う事なのでしょうか。確かにそれほど標高が高い山でもないので、真夏は灼熱地獄になりますからね。

1台臨時便が出て2台体制となり、並んでいた人は全員が着座できました。連休を返上しての増便対応は、まことに有難い限りでございます。乗って残そう公共交通!
梨ノ木平行きのハイキングバス

9時12分 梨ノ木平に到着しました。若干うろ憶えですが、運賃は300円だったかな。交通系ICカードに対応しています。
梨ノ木平
ちなみに駅から直接歩くと、ここまで登って来るのにだいたい1時間くらいはかかります。

2.裏年で花付きは控えめのツツジ新道

扇山登山としては、梨ノ木平から直接登り始めるのが最も一般的であろうかと思います。今回は梨ノ木平から少し歩いた地点から取り付く、ツツジ新道と呼ばれるルートから行きます。
梨ノ木平

と言う事で始めはツツジ新道登山口に向かってしばしの舗装道路歩きです。本日はこれまでにも何度か登場している同級生の友人2人と一緒に登ります。
240505扇山-013

10分ほど歩いたところでツツジの新道の登山口にやって来ました。林道の脇に何気なくありますが、道標はしっかりとあります。それでは張り切って登山を開始しましょう。
扇山 ツツジ登山口

登り始めはまるで奥多摩のような圧倒的杉林です。何気に結構な急登で、初っ端からグイグイと標高を上げて行きます。
扇山のツツジ新道

杉林を抜けるとヤマツツジが咲いている一帯に入りました。時期的には満開のはずですが、裏年とあってかやはり全体的に咲いている花は少なめです。
扇山のヤマツツジ

例年ですとツツジのトンネルの中を潜って進むような状態になるのですが、疎らにポツポツと咲いているだけです。まあそれでも、こうして咲いていてくれただけでも良しとすべきか。
扇山のヤマツツジ
ツツジシーズンの只中であるにも関わらず、梨ノ木平から直接登る人の方が多数派と見えて、ツツジ新道を歩く人は少なめです。このルートの存在自体が余り認知されていないのでしょうか。不思議です。

背後に少しだけ富士山が見えました。この先にもっと良く見える場所はあるので、振り返っていないでどんどん進みましょう。
扇山 ツツジ新道から見た富士山

杉の樹皮が激しくささくれていますが、これは恐らく熊さんの爪とぎの後です。何故わかるのかと言うと、フンがそこいらじゅうに散乱しているからです。大月市の山は基本的にどこも、クマの目撃情報が多い山域です。
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ツツジエリアを抜けると、道は水平移動のトラバースに移りました。道の一部が谷側に向かって思いっきり斜めになっていたりするので、通行に際しては注意を要します。
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10時15分 梨ノ木平方面からの登山道と合流しました。ここまで登ってくれば、稜線まではもうあと一息です。
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3.扇山登山 登頂編 秀麗な富嶽に出会える陽だまりの山頂

杉林の中をひたすら九十九折れにジグザグと登って行く道です。面白味はありませんが、最も効率よく標高差を稼げるタイプ道ではあります。
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梨ノ木平から直接登った場合は、最初から最後までずっとこの調子の道が続きます。特別な理由でもない限り、ツツジシーズン中に登るのであればツツジ新道の方を歩くことをお勧めします。

稜線まで登って来ました。扇山は横に長いシルエットの山であるため、山頂部はかなりの広さを持っています。
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稜線を右へ少し進むと山頂で、左へ進むと百蔵山に至ります。ここから一度サクッと山頂を往復しています。
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稜線に出て以降は、多少のアップダウンはありますが、ほぼ水平移動の高速道路状態です。
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山頂が見えました。頭上が開けており、芝生の地面が広がる陽だまりの空間です。
扇山の山頂

10時40分 扇山に登頂しました。正面に富士山が見える特等席で、多くの登山者が休憩を取っていました。
扇山の山頂標識
比較的マイナーな部類に入る山だろうとは思いますが、一応は山梨百名山と秀麗富嶽十二景という二つのタイトルを保持しています。

気温は割と高めですが、空気自体は澄んでいるらしく秀麗富嶽の名に恥じない見事な富士展望を見せてくれました。やはり山梨県の山からの光景はこうでなくていけません。
扇山から見た富士山

4.意外とアップダウンの大きい百蔵山への縦走路

先ほど登って来た分岐地点まで引き返し、続いて百蔵山へと向かいます。扇山単体で引き返す人の方が多数派なのか、この先は歩く人の数がずっと少なくなりました。
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扇の上の部分を歩いているため、なかなか標高が下り始めず、しばしの間ダラダラと水平移動に近い道が続きます。
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鞍部に向かって降下が始まりました。なかなか急峻な道で、最終的に1度400メートル近く標高を落とします。ほぼ高尾山一つ分を下山するようななものです。
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下りきった地点が鞍部の宮谷分岐だと思い込んでいたのですが、しばしの間緩やかなアップダウンが続きます。何しろ最後に歩いたのは数年前なので、だいぶ記憶が怪しくなっています。
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12時15分 思いのほか歩いて、ようやく宮谷分岐まで下って来ました。
宮谷分岐

私自身は一度も歩いたことが無いルートですが、もう歩くのには飽きたと言う人はここからエスケープすることも出来ます。地図を見た限りでは、結構な急勾配の尾根を下った後に谷筋の林道でに出るはずです。
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ここからは登り返しになりますが、すぐには始まらずにダラダラとした水平移動がもう少しの間続きます。
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トラバースっぽいところもありますが、全般的に良く踏まれた明瞭な道です。いかにも健康的な趣味を楽しんでいるかのような画ヅラですが、交わされている会話の内容はとても文字には起こせないくらいに下品である。
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途中までは緩やかでしたが、扇山と同様に山頂直下はかなりの急登です。宮谷分岐からの標高差はおよそ350メートルほどあります。最後にいっちょう、気合を入れて参りましょう。
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だいぶ息絶え絶えになりつつ、急登を登り切りました。百蔵山には秋と冬にしか登ったことが無かったのですが、こんなにブナ林が綺麗な山だったのですね。
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百蔵山は台形のような形状をした山で、扇山ほどではありませんが山頂部はかなり広々としています。
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13時10分 百蔵山に登頂しました。こちらも扇山と同様に、山梨百名山と秀麗富嶽十二景の2つのタイトルを保持しています。
百蔵山の山頂

扇山から見た富士山は下の方が隠れてしまっていましたが、百蔵山からは裾野までが広く見えます。富士展望に関しては明らかにこちらの方が上ですが、何故か扇山の方が人気は高いんですよね。
百蔵山から見た富士山

東の方に目を向けると、秋山山稜、道志山塊および丹沢山地が、折り重なるようにして連なっているのが良く見えます。
百蔵山からの展望

お日様ギラギラ状態だった扇山とは違って、適度に日影もあり過ごしやすい山頂です。駅チカ物件の山としてはかなり優良な部類であると個人的には思います。
百蔵山山頂の様子

5.百蔵山登山 下山編 猿橋駅への長い道のり

十分に寛いだところで下山を開始します。下山はもと来た方には引き返さずに、猿橋駅まで直接歩いて下ります。
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眼下に桂川が見えています。猿橋駅があるのは川の対岸です。パラグライダーか何かで一気に下りたいとはいつも思うところです。
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なお対岸の山の上に見えている住宅地は、日本がバブリーな景気に沸いていた時代に作られたパストラルびゅう桂台と言う名のニュータウンです。地下トンネルとエレベータにより猿橋駅と直結しています。

斜坑エレベータで四方津駅と直結しているコモアしおつと、ほぼ同時代に同じようなコンセプトで造成された新興住宅地です。

このまま尾根沿いに進むと大月駅に下りることも出来ますが、左折して猿橋駅方面へ進路を転じます。
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それほど急でもなく、歩きやすい優等生的な登山道です。危険個所と言えるような場所も一切無いので、初心者向きの山だと思います。
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途中に一か所休憩スポットがあります。周囲が開けており、ちょっとした展望スポットです。
百蔵山登山道の好展望地

松の木の間から富士山が良く見えます。まあ山頂からも良く見えていたので、あらためてここから眺める意味はあまりないかもしれませんが。
百蔵山から見た富士山

桂川の南岸に連なる秋山山稜が良く見えます。最高地点である倉岳山でもギリギリ標高1,000メートルを越えない低山の連なりですが、何気にアップダウンが多めで、通しで歩こうとすると結構難儀します。
百蔵山から見た秋山山稜

桂川に架かる中央本線の鉄橋が良く見えています。あの橋を通過中の車窓からは扇山と百蔵山の姿が大きく見えるので、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
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下山を続けましょう。標高が下がってくると、周囲は薄暗い杉の植林になりました。里の近くにある山の宿命のようなものですな。
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途中に水場があります。生水を飲んでも大丈夫だとはどこにも書かれていませんが一口頂きました。冷たくておいしい。
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分岐が現れましたが、直進しても右に曲がっても行き先は同じ猿橋駅です。今更登り返す意味もなさそうなので、右へ入っていきます。
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水道関連の設備と思われる人工物が現れました。下山はまだまだ続きますが、土の登山道はここで終了です。
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ここからは舗装された坂道を下って行きます。登山靴を履いていると下りの舗装路は地味に足の裏にダメージを与えて来るので、なるべくなら避けたいところなんですが、道がそうなっている以上は致し方ありません。
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何故かトトロがいました。以前通った時には見かけませんでしたが、いつからここにいるのでしょう。
百蔵山のトトロ

百蔵山の天然水で冷やされた飲み物も販売されていました。残念ながらキンキンに冷えているとはゆかず、まあまあぬるかったです。
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良く見るとトトロだけではなく、まっくろくろすけもいました。それで結局のところこいつは、生き物なんですかね。
百蔵山のまっくろくろすけ

この舗装道路の下りは延々とかなり長く続きます。歩行距離で言うと、むしろ登山道を歩く区間よりも少し長いくらいです。痛い痛い、足の裏が痛い。
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振り返って見た百蔵山は、見事な台形型をしていました。山頂がかなり広々としていたことが良くわかる形状です。
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山梨県の山を歩く際のオアシス、ハッピードリンクショップでしばしの一服。
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右手には岩殿山が見えています。横から見ると、大月駅から見た時の岩々しい姿とはだいぶ趣が異なります。
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中央道の橋脚と川に架かる橋が交差して、何やら複雑な立体交差になっています。大垂水峠を越えて以降ずっと桂川の北側を通っていた甲州街道は、猿橋から川の南側に移ります。
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今でこそただの観光地と化している奇橋猿橋ですが、江戸時代には甲州街道のメインルートに架かる重要な橋でした。

あの刎木を重ねた独特の構造は別に奇をてらったものではなく、桂川の谷が深すぎて当時の技術では橋脚を立てられなかったため、必要性から生まれたものです。

橋の上から振り返ると、今日歩いて来た扇山と百蔵山が並んで見えました。
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最後に駅まで国道20号線を少しだけ歩きます。ゴールデンウィークなだけあって、かなりの交通量です。
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15時40分 猿橋駅に到着しました。この後八王子に移動し、反省会と称したささやかな祝宴を行い解散となりました。こんなゴールデンウィークの過ごし方も悪くはない。
猿橋駅

扇山と百蔵山には過去にも何度か登ったことがありましたが、いずれも秋から冬にかけての訪問で、ツツジの季節に歩いたのは自身初めての事でした。今回歩いたブナの新緑が芽吹きツツジが登山道に彩を加えるゴールデンウィークの時期は、間違いなくベストシーズンであると思います。今までなぜこの時期に訪問しなかったのか、我ながら怪訝に思えてくるほどに。
道中には特にこれと言った難所も無く、コースタイムも手頃で登りやすい優等生的な縦走コースであると思います。あらゆる人に自信を持ってお勧めいたします。

<コースタイム>
梨ノ木平バス停(9:15)-扇山(10:40~11:10)-宮谷分岐(12:15~12:35)-百蔵山(13:10~13:45)-百蔵山登山口バス停(15:15)-猿橋駅(15:40)

百蔵山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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