東京都奥多摩町にある雲取山(くもとりやま)に登りました。
奥多摩の西端に鎮座する東京都の最高峰です。作家深田久弥が選んだ日本百名山に名を連ね、奥多摩の山の中でも特に人気の高い一座であります。
この雲取山、標高が2,017メートルであることから、2017年の山と言うことで今年に入ってから俄かに注目を集めています。
ひとつ流行に乗ってやろうと思い訪れた「今年最も熱い山」は、確かに熱かった。いや暑かった・・・
2017年7月16日に旅す。
今回の目的地は、今最も熱い年の山である雲取山です。
標高2,017メートルであることから、2017年の山とだとして注目を集めています。まあ、ある種のゲン担ぎですかね。
同じような理由で、2014年には標高2,014メートルの小金沢山が注目されたりしていました。
2017年になってから既に6ヶ月以上が経過し、若干の今更感が漂いつつありますが、遅ればせながら今年最も熱い山へ行ってみようかと思います。
中年男3人が行く、爽やかな要素皆無の暑い登山の幕開けです。
コース
鴨沢バス停から雲取山までを往復します。通称、鴨沢ピストンと呼ばれるルートです。
コースタイムはおよそ9時間ほど。1泊2日で歩くのが一般的で、日帰り登山としては健脚者向きです。
本当は少し変化を付けたかったところですが、日帰りしようと思うと、これ以外のルートでは少々厳しいのす。
1.雲取山登山 アプローチ編 留浦バス停から鴨沢登山口へ
7時20分 JR奥多摩駅
今日の旅は、毎度お馴染みの奥多摩駅からスタートします。
昔はここへ降り立っただけで「遠くまで来た感」にワクワクしたものです。慣れとは恐ろしいもので、最近ではすっかり見慣れた光景と化して、何も感じなくなってしまいました。
7時25分発の小菅の湯行きのバスに乗り込みます。
雲取山最寄のバス停は鴨沢ですが、このバス便は2つ手前の停留所である留浦(とずら)までしか行ってくれません。到着後に10分ほど車道を歩く必要があります。
7時までに奥多摩駅に到達することが出来るのなら、鴨沢まで行ってくれるバスがあります。
京王線沿線にお住まいの私の場合、始発を乗り継いでも奥多摩に到着できるのは7時18分なので、鴨沢行きには間に合いません。
なので、日帰りしようと思うと、実質このバスしか選択肢がありませんでした。この後の8時台のバスでは、今度は帰りの心配をする必要が出てきますからね。
8時5分 留浦バス停に到着しました。乗客のほとんどがここで下車しました。みんなお目当ては一緒のようです。
こちらは本日の同行者2名。本格的山ボーイ中年を目指す男ST君と、山をナメまくりの元スニーカ登山者HI君です。
何時の間にか登山装備を刷新して、すっかりガチハイカースタイルになっておりました。
都県境を越えて山梨県の丹波山村に入りました。雲取山は東京都の最高峰ですが、石尾根に合流するまでの登山道は山梨県内に位置しています。
境界線を越えるなり、道路の舗装状態が眼に見えて悪くなりました。東京都と山梨県の道路予算の差が如実に現れております。
奥多摩湖に架かる留浦の浮き橋。大分水位が下がっています。今年の夏は渇水になりそうですな。
なお、麦山にある浮橋はすでに外されていました。
8時15分 鴨沢バス停に到着しました。トイレはここで済ませておきましょう。10分ほどで身支度を整えて、8時30分に登山を開始します。
2.石尾根までのながーい道のり
この看板に描かれた黄色いイラストは、丹波山村のマスコットキャラクターであるタバスキーです。
丹の文字をモチーフにしているとのこと。
道路脇に咲く花々。大変良く手入れがされています。沿道の家に住む方が世話をしているのでしょうかね。
登り始めて間もないと言うのに、早くも汗が滝のように流れ出してきました。尋常じゃない暑さです。
最初からアツイぜ雲取山!
晴れとも曇りともつかない、なんともいえない空模様をしています。カンカン照りよりはましなのかも知れませんが、ともかく暑い。
標高が上がれば気温も下がるはず、と期待して黙々と坂を登ります。
9時 小袖駐車場に到着しました。車でお越しの人はここからスタートできるので多少は楽をできます。
駐車場はすでに満車で、道にはみ出すように何台も路駐しているような状態でした。年の山は大人気ですね。
登山口に到着しました。年の山であることアピールする看板が掲げられていました。
ここからいよいよ、本格的な山道が始まります。スタート地点に立った時点からすでに既に全身が汗まみれになっている中年3人は、はたして生き残ることが出来るのでしょうか。
小袖から石尾根に合流するまで、およそ2時間近い道のりの風景は、ずっとこんな感じです。
傾斜が緩く、とても歩きやすい道ですが、ひたすら長いのが特徴です。
長すぎて途中でヤになること請け合いです。鴨沢ルートで雲取山に登ろうかとお考えになっている人は、十分覚悟しておいてください。
樹木の隙間から石尾根が見えました。あそこに取り付くのが当面の目標です。
最初の水場に到着しました。鴨沢ルートには、道中に何箇所かの水場が存在するので、水の携行量についてはそこまで神経質になる必要はありません。
非常にか細い水の流れでした。500ml溜めるのにも2~3分はかかりそうな水勢です。
この水場は、夏はあまり頼りにしない方がよいかもしれません。自分たちは七ツ石小屋の水場まで十分に持つだけの水を携行していたので、ここでは補充しませんでした。
この後も、苦行のような単調な道が延々と続きます。雲取山のあまりのアツさにシビレます。
10時30分 堂所に到着しました。「どうどころ」と読みます。鴨沢ルートのほぼ中間地点といったところです。ここから先は少し道が険しくなります。
道の傾斜が増してきました。汗がとどめなく流れ続けます。アツすぎるぜ雲取山。
分岐地点まで登ってきました。
最短で雲取山頂を目指すなら直進してブナ坂方向です。ただし、それだと七ツ石小屋の水場をスルーしてしまうのでここは右に進みます。
11時20分 七ツ石小屋に到着しました。丹波山村の村営小屋です。
素泊まりのみですが、料金は4,000円ととてもリーズナブルです。いつか泊まってみたいと思いつつも、未だその機会を得られておりません。
「雲取山には一泊二日で登るのが一般的」とか自分で言っておきながら、実は日帰りで登ったことしかないという。
ここの水場は水量が豊富です。飲料用に補充しつつ、ついでに顔も洗ってスッキリしました。
何故か古くなった山梨百名山の標識が大量にストックされていました。
3.七ツ石山に寄り道
少し登ったところで七ツ石山へのルートと、ブナ坂方面への巻き道との分岐があります。
ここで「正面突破こそが正道。巻き道など邪道である。」と主張する私と、「目標はあくまで雲取である。七ツ石山などと言う雑魚に用は無い。」と主張するST君との間で、ルートを巡る意見が真っ向から割れました。
「ではブナ坂で会おう」との結論に至り、ここからはしばらく単独行です。石尾根縦走路に向かって、急坂を一気に上がります。
こちらは七ツ石山直下にある七ツ石神社です。七ツ石神社跡と言った方が正確でしょうか。すっかり廃屋と化していました。
道の脇に大きな岩がゴロゴロしています。これが山の名前の由来になった七ツ石でしょうか。
12時5分 七ツ石山に登頂しました。石尾根縦走路上のピークの一つです。
正面に本日の目的地である雲取山が姿を現しました。空はどんよりとしていますが、ガスに巻かれてはいないようで一安心です。
この光景を見たいがために、わざわざ七ツ石山を巻かずに登った訳です。当たり前の話ですが、雲取山からは雲取山の姿を見ることは出来ませんのでね。
七ツ石山を下りきったところがブナ坂です。巻き道との合流地点です。
二人とほぼ同じタイミングで到着しました。巻き道は山腹を大きく迂回するので、実のところブナ坂までの所要時間に大差はありません。
4.雲取山登山 登頂編 石尾根を進み2017年の山の頂へ
防火帯の道を進みます。風か抜けるようになり、多少は涼しくなってきました。
ヘリポートが見えてきました。山火事等の災害対応や遭難者の救助に使用されています。
ヘリポートから少し進んだところに、奥多摩小屋のテント場があります。展望が良く、人気の高いテント場です。泊まったことはありませんが。
こちらが奥多摩小屋です。七ツ石と同様に素泊まりのみの自炊小屋です。テント泊する場合もここで受付をします。
※奥多摩小屋は2019年の3月末をもって閉鎖されました。現在はテント場も使用できません。ご注意ください。
テント場からの展望はこの通り素晴らしいです。正面に見えているのは大菩薩嶺(2,057m)かな。
雲取山に向けた最後の急登が始まります。この急坂を登り終えたところにあるのが、雲取山の前衛峰である子雲取山です。
山頂直下の登り。疲れた体にムチ打ち、最後の力を振り絞って登ります。
一方のST君は必死の形相です。さあ、感動のフィナーレはすぐそこです。
13時20分 雲取山に登頂しました。鴨沢バス停からおよそ5時間で到着です。ほぼ標準コースタイム通りです。
今年最もアツイ山だけのことはあって、多くの登山者で賑わっていました。
年の山であることを記念する柱が立っていました。
どうでもいい事ですが、この柱は来年になったら撤去するのでしょうか。
年の山に登れてさぞかし喜んでいるだろうと思いきや、岩に座ったままぐったり動かなってしまいました。ここまでの長ーい登りが、よほど辛かったようで。
繰り返しになりますが、雲取山は本来一泊二日の行程で登ってしかるべき山です。日帰り出来るのはそれなりに健脚な人に限られます。
あまり安易な気持ちで日帰り登山に挑むと、きっと後悔することになります。長距離を十分に歩ける自信をつけてからお越しください。
これは雲取のお隣の山、飛竜山(2,077m)です。名前がカッコイイと言う以外には、取り立てて特記事項の無い山です。
こちらは先ほども見えていた大菩薩嶺です。奥多摩側から見ると、尖がったシルエットをしています。
雲取山の山頂は東京都と山梨県の境界でもあります。山梨県側の山頂は、避難小屋の裏手にひっそりと存在します。
5.雲取山登山 下山編 再びなーがい道を歩いて鴨沢へ~ピストンとはそういうものです
13時50分 下山を開始します。すでに精魂尽き果てている中年三人は、果たして無事に下山できるのか。
行きにはまったく気がつきませんでしたが、薄っすらと富士山が見えていました。
眼と鼻の先に陣取る鹿。食事に夢中で、人の存在など歯牙にもかけていないようです。
15時10分 ブナ坂まで戻って来ました。若者の団体さんが休憩中でした。合宿か何かですかね。
16時10分 堂所を通過。この先は傾斜が緩むので、少しペースを上げます。
かなり快調に飛ばして、堂所から1時間未満で小袖まで戻って来ました。
残念ながら、まだ終わりではないでないのですけれどね。
駐車場に停まっている車の数も少なくなっていました。そして我々徒歩組は、ここから再び登山道に突入です。
ここまで来ると、疲労も極致に達して、足取りが大分重くなってまいりました。もう一息だというのにペースが上がりません。
舗装道路の下りと言うのは、疲労した足に何気に堪えるものです。マイケルジャクソンみたいな奇声を発しながら下りました。
17時25分 鴨沢BSに到着しました。行動時間9時間20分にも及ぶ、長き行程が終了しました。分かってはいましたが、鴨沢ピストンはやはりハードです。
1時間以上待って、18時36分のバスで帰還の途につきました。
2017年の山は思った以上にアツかった。
身も蓋もないようなことを言うようですが、奥多摩エリアの山は、真夏の盛りに登るのには余り適しておりません。大量の発汗により、思った以上に体力を激しく消耗する苦しい山行きでした。
雲取山のベストシーズンは、新緑を迎える5月ごろか、もしくは秋口辺りでしょうかね。
日帰り登山としては、間違いなく健脚者向けの行程です。体力に自信のある人以外は、1泊2日で計画した方が無難でしょう。
私自身、鴨沢からのルートしか歩いた経験が無いため、次回は三条の湯経由か、もしくは秩父の三峰口側から歩いてみたいと思います。
<コースタイム>
留浦BS(8:05)-鴨沢BS(8:25)-小袖駐車場(9:00)-堂所(10:30)-七ツ石小屋(11:20~11:40)-七ツ石山(12:05)-ブナ坂(12:15)-奥多摩小屋(12:40)-雲取山(13:20~13:50)-ブナ坂(15:10)-堂所(16:10)-小袖駐車場(17:05)-鴨沢BS(17:25)
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
コメント
10月28日に日帰り登山します。写真が多くて登山ルートのイメージがつかめました。参考になりました。
コメント頂きありがとうございます。
10月下旬と言うと、奥多摩ではカラマツの紅葉がピークを迎えるころですね。雲取山登山には最高のシーズンだと思います。
鴨沢ピストンはなかなかの長丁場です。気力体力を充実させて挑んでください。
楽しく拝見させていただいてます。三条の湯、とても良い鉱泉です。ぜひ新緑か紅葉の時期に行ってみて下さい。おすすめです。
本来の趣旨とは逆かもしれないですが、オオツキ様の記事はその質の高さ故に読むだけで道中の様子までも解像度高くイメージできてしまうので、自分で行ったことのある(或いは類似の)コース以外の記事は読むのを我慢しております。しかし、本記事は自分の山行よりも先に読んでしまいました。
4月に鴨沢〜雲取山〜三峯神社を思い立ったのですが、記事内にもある7時まで奥多摩駅に辿り着かない問題に直面。その時に本ブログにノウハウがあるのでは、と思いカンニングしてしまいました。「留浦で降りる」、引き出しの多さに脱帽です。お陰で山行が実施でき、公共交通機関の使い方も大いに学ばせて頂きました。
ペン生さま
コメントをありがとうございます。
当ブログはなるべく同じ山に登ろうとしている人の参考になる様にと意識して記事を書いていますが、ある意味それはネタばらし行為でもあるんですよね。下調べが不十分だと現地で迷う心配がありますが、かといって調べすぎると今度は新鮮味が無くなるというジレンマは私自身も良く感じていることです。
容易に情報収集が出来るネット時代ならではのジレンマというか、なかなかバランスを取るのが難しい悩みどころですね。