神奈川県の秦野市、松田町、山北町の境に位置する鍋割山に登りました。
東丹沢の主峰塔ノ岳の西側に位置し、山頂の鍋割山荘で販売される鍋焼きうどんが有名です。人気の山だけに登山ルートも多数ありますが、その中には丹沢最長の鎖場をもつ人影疎らな険路もあります。
山頂のうんどんに思い馳せながら、雨山峠を経由するマイナールートを登って来ました。
2017年2月25日に旅す。
うどんが食べたい。
こんにちは。先週登った伊豆ヶ岳で浅見茶屋のうどんを食べ損なって以来、うどんへの悶々とした欲求不満に苛まれる1週間を過ごしたオオツキです。
東京近郊にお住まいの登山好きの人にとって、うどんと言われて真っ先に思い浮かぶのは鍋割山ではないでしょうか。え?私だけですか。そうですか。
鍋割山荘の鍋焼きうどんと言えば、丹沢エリアにおける定番中の定番メニューです。と言うことで今日は鍋焼きうどんを食べに鍋割山に登ります。
私にとって鍋割山というのは、塔ノ岳に登ったついでに、うどんを食べにちょっと足を伸ばすところと言うイメージがあります。
実際、大倉尾根の金冷シからのルートしか歩いたことがなく、鍋割山自体を目的地に登るのは今回が自身初めてです。
実は前々から気になっているルートがありました。鍋割山に西側から登るルートです。
毎度お馴染みの山と高原地図を見ると、この狭い範囲内に「迷」と「危」の注意喚起のアイコンが合計7つも並んでいます。
コレだけを見ると、この辺り一帯は物凄い危険地帯なのではないかと思えてきます。7つですよ7つ。
そこで、今日はこの道がどれほど危険なのか、実際に歩いて検証してみようかと思います。
コース
寄(やどりき)BSより雨山峠を経由して鍋割山に登頂。うどんを食べたのち後沢乗越から栗ノ木洞、櫟山を経て寄BSへ戻る。コースタイムおよそ7時間の周回ルートです。
一般的に鎖場は登りより下りの方が難しいので、危険アイコン地帯が登り来るようにルートを設定しました。
1.鍋割山登山 アプローチ編 寄バス停から水源林管理棟へ
7時49分 小田急線 新松田駅
丹沢エリアへは京王&小田急の私鉄コンビで来れるため、交通費が安く済んでとても助かります。
7時55分発の寄行きバスに乗車します。乗客はすべて登山者で、乗車率は6割前後といったところでした。
新松田を出ておよそ30分ほどで終点の寄バス停に到着しました。
まずは寄水源林管理棟まで舗装道路を歩きます。左を流れているのは中津川です。今日はこの川の源頭部まで遡って行くことになります。
沿道には河津桜が満開を迎えつつありました。ソメイヨシノより1ヶ月早くに開花する早咲きの桜です。
この辺りの字は稲郷と言うようです。笹郷のほうがシックリ来そうな光景と化しておりますが。
廃キャップ場の脇を進んでいきます。この日は眩いばかりの冬晴れで、この様な白飛び写真を大量生産してしまいました。
寄大橋の脇を通過します。この先の秦野峠林道へと通じている道です。
9時 やどりき水源林管理棟に到着しました。この辺り一帯は神奈川県尾の水源林となっており、遊歩道が整備されています。案内ツアーなどもあるようです。
※冬季(12月~2月)の間、ツアーは休止しています
2.寄沢沿いの道を登り雨山峠へ~クマと道迷いにご注意を
水源林の遊歩道に沿って進みます。よく手入れがされた園地ですが、周囲に人の姿は全く見当たりません。
道迷い多発地帯であることを警告する看板がありました。なにしろ警告アイコン7つ地帯ですからねえ。
おまけに熊まで出るらしい。このイラスト、なかなか良い味がでています。
9時15分 身支度を都と終えて登山開始を開始します。登り始めは、まるで奥多摩のような杉の植林が続きます。
奥多摩ファンの方には大変申し訳ないのですが、この「奥多摩のような道」という表現は誉め言葉ではありせん。見ているだけで目鼻がムズムズする。
幸いなことに、杉林の道はそんなには長く続きません。直ぐに沢沿いの道に出ました。
沢を渡渉します。橋は一切架かっていないので、渡りやすそうな場所を適当に見繕いましょう。
沢から見上げた正面の光景です。
中央左よりの鞍部が本日最初の目的地である雨山峠。真ん中の突起が茅ノ木棚沢ノ頭。右の鞍部が鍋割峠。右端の山が最終目的地の鍋割山です。
このルートは何度も渡渉を繰り返すことになります。渡るべき場所には、このように案内板が設置されているので、迷うことはありません。
ピンクテープも過剰なまでに付けられています。よく周りを見ながら歩けば、迷うことは無いかと思います。
ガスで視界不良だったり、日没が迫って暗くなっていたらあっという間に迷子になりそうですが。
登るにつれ、沢は徐々に急峻さを増して行きます。道標はありますが、道と呼べるものはあって無いようのものなので、歩き易そうな場所を見繕いながら登ります。
なにやら凄い高さの梯子が出現しました。季節柄止む終えないのでしょうけれど、アイゼンの歯の跡が無数に刻みつけられていました。
崩壊気味の道を進みます。整備の努力は絶えずされているのでしょうけれど、崩壊の速度に追いついていないようです。
沢筋から一度離れて、再び杉の植林帯に入りました。森の中に、丹沢名物のテーブルみたいな椅子がありました。
ご存じでない人のために解説しておくと、このテーブルのような物体は腰掛けるためのものではなく、上の乗って休憩するためのものです。
理由は、休憩中に山ビルに襲撃されるのを避けるためです。コレがあるということは、この辺りも夏になればヒルが出没すると言うことです。
この沢沿いに鍋割峠まで直接登り上げる破線ルートもあります。遭難多発地帯であるようですが。今日は素直に正規ルートを通って雨山峠を目指します。
正規ルートといっても、こちらも十分に荒れていました。斜面が崩落して道が殆どなくなっています。
通過後に振り返ってみるとこの通り。道と言うか、もはやただの斜面ですね。
このように紛らわしい支谷が幾度無く現れます。目印は必ずあるので、集中力を切らさないように、よく周囲を観察しながら歩きましょう。
道迷時の保険としてガーミンのGPSレシーバーを常に携行していますが、幸いなことにコレのおかげで命拾いするような状況に陥ったことはありません。今やただのログ記録装置と化しています。
人の手が殆ど入っていない沢の源頭部付近には、独特の雰囲気があります。
私は本格的沢登りなどやったことの無い人間ですが、この雰囲気に魅せられる気持ちはなんとなくわかる気がします。
峠が見えて来ました。前日に少し雪が降ったらしく、日陰の岩の表面にかすかに白く積もっていました。
11時10分 雨山峠に到着しました。ここまでずっと集中力を要する不明瞭な道が続いたので、精神的に疲れました。
雨山峠から見た鍋割山です。まだ意外と距離があります。
この世に空腹に勝る調味料は存在しないと言います。
今日私が鍋割山を目指している理由は、言うまでも無く鍋焼きうどんを食べるためです。鍋焼きうどんを最高のパフォーマンスで賞味するためには是非とも腹ペコ状態で山頂に到着したいものです。
3.鍋割山登山 登頂編 鎖場を乗り越え山頂を目指す
登山再開です。ここからいよいよ危険アイコンまみれの一帯に突入します。
玄倉川の谷を挟んだ向かいに、丹沢最高峰の蛭ヶ岳(1,673m)が見えました。
何故か昔から、私はこの山が大好きです。蛭ヶ岳が見えただけで異常にテンションが上がります。見えてはいるのに中々気軽には行けない山代表と言ったところでしょうか。
さて、いよいよ鎖場が出現です。写真だとわかり難いですが、最初の鎖は下りです。ここは特に難しい要素はありません。
降りるとすぐに2番目の鎖が登場です。薄っすらと雪か被っていてヤな感じです。
特段難しくはありませんが、2段に分かれていて結構長い鎖場です。
こちらが2段階目。ステップがしっかりしており、別に鎖が無くても通行は可能です。
振り返ってみると結構高度感があります。
先ほど「鎖が無くても通行は可能」とか偉そうなことを言いましたが、鎖がなかったらたぶんそのまま帰ると思います。
栗ノ木棚沢ノ頭を通過します。やたらと名前が長いと言う点以外には、取り立てて特徴も無い痩せ尾根上の突起と言ったところです。
いよいよ最後の鎖場です。ここでこの日はじめて他の登山者に遭遇しました。
この鎖場は非常に長いです。足元は風化した花崗岩で、登っている矢先からパラパラと音を立てて崩れ落ちていきます。
登りきって振り返る。
写真だとイマイチ高度感が伝わらないですね。登りで使う分にはいいですけれど、正直この道を下山には使いたくありませんな。
12時15分 鍋割峠を通過します。途中の鎖場で自撮したりして遊んでいせいか、大分時間が掛かってしまい標準コースタイムを下回るペースです。
登り斜面上から振り返ってみる西丹沢の山々。右が大室山(1,587m)。左が檜洞丸(1,601m)。
檜洞丸から蛭ヶ岳へと連なる丹沢主稜の稜線も一望できます。見ての通りの激しくアップダウンを繰り返す道で、かなりの険路です。
12時35分 鍋割山に登頂しました。スタートとしてから4時間近くかかりました。雨山峠ルートは、緊張感があって楽しいコースだったと思います。
山頂からは相模湾が一望できます。まあ、眺望に関しては塔ノ岳よりは一段劣りますあkね。
ではいよいよ、本日の主たる目的である鍋焼きうどんへ行って見ようかと思います。お値段は1,000円です。大人気なので待ちが発生します。名前を書いて呼ばれるまで待ちます。
※この当時は1,000円でしたが、その後値上げを繰り返し、現在は1,500円になっています。
うどん、卵、えのき、なめこ、ほうれん草、ネギ、なると、厚揚げ、カボチャのてんぷらが入っています。これだけで十分お腹一杯になるボリュームがあります。1週間越しの念願がかなって大満足です。
このうどんは、当初は「鍋割山で鍋焼きうどん」と言う単なるダジャレで提供が始まったものでしたが、その後人気に火がついてしまい、今では鍋割山になくてならない存在となっています。
芝生の上ではうどん休憩中の人が沢山いました。鍋割山の日常光景です。
4.鍋割山登山 下山編 栗ノ木洞と櫟山を越えて、スタート地点の寄集落へ
満腹になったところで下山開始です。今見えている尾根に沿って下っていきます。
視界の開けた気持ちの良い道です。すぐに樹林の中に入ってしまうけれどね。
後沢乗越までの道はかなりの急坂です。この道、下山にしか使ったことがありませんが、登るのは辛そうです。
正面にこれから超える栗ノ木洞(くりのきどう)(908m)が見えます。登り返しが結構キツそうですね。
14時20分 後沢乗越に到着しました。大倉に下山するなら左です。今日は正面の寄へ戻るルートへ進みます。
側面がガレた痩せ尾根の道です。もうあと数年で通行不能になってルート変更されそうな気がします。
対岸から見たときにある程度覚悟はしていましたが、結構キツイ登りです。
先ほどまで居た鍋割山の山頂はガスに飲み込まれていました。際どいタイミングだったようです。
14時45分 栗ノ木洞に登頂しました。まあ、この山は基本的に通り道ですよね。ここを目当てに登る人はまず居ないでしょう。
山頂の様子
樹林帯の中で展望は全くありません。ベンチすらないような場所なので、さっさと次へ行きましょう。
この先の櫟山(くぬぎやま)が好展望地らしいので、休憩はそこで取ることにして前進を続けます。
15時 櫟山に到着しました。尾根上に張り出したテラス状の場所で、あまりピークっぽくはありません。
下山を再開します。ここから寄までの道は、特段面白みも無いごく普通の登山道が続きます。
一度林道に出ますがまだ終わりではありません。再び登山道に突入します。
茶畑より寄集落の全景が見渡せます。山間の小ぢんまりとした場所です。
この黄色い花は蝋梅(ロウバイ)です。こちらはもう満開シーズンは終わり、散りかけた状態でした。
寄では、毎年1月下旬から2月上旬にかけて、蝋梅祭りが行われます。今年は先週まででもう終わってしまっていたようです。
16時10分 スタート地点の寄バス停に戻ってきました。日中の時間帯であらば、おおむね1時間に1本はバスがあります。
さしたる待ち時間もなく、16時35分のバスに乗って帰宅の途に着きました。
地図を眺めていて、なんとなく興味が沸いて登ってみた雨山峠ルートですが、とても楽しめました。
沢沿いの不明瞭な道を登り上げて行く緊張感や、源頭部での静まり返った独特の雰囲気。そして最後にはスリリングな長い鎖場。
このルートでは人の多い表尾根などでは決して味わう事のできない、非日常のアドベンチャーを体験できます。
決して万人向けとは言えないルートではありますが、ある程度山に慣れている人であればきっと楽しめることでしょう。
あまり歩かれていないルートのようですが、非常にオススメです。
<コースタイム>
寄バス停(8:20)-水源林管理棟(9:00)-雨山峠(11:10~11:20)-鍋割峠(12:15)-鍋割山(12:35~13:30)-後沢乗越(14:20)-栗ノ木洞(14:45)-櫟山(15:00~15:15)-寄バス停(16:10)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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