神奈川県相模原市と山北町にまたがる檜洞丸(ひのきぼらまる)に登りました。
標高1,601メートルの西丹沢エリア最高峰です。かつては秘境の山などと呼ばれていたこともある深山でしたが、今日では乗車時間が多少長くはなるものの、バスで袂までアクセスすることが可能です。ツツジの名峰として知られ、シーズン中には多くの登山者で賑わいます。
白い花に彩どられ、最も美しく華やぐベストシーズンの西丹沢を歩いて来ました。
今回の行き先は西丹沢の盟主、檜洞丸です。
過去に何度も登っている山ではありますが、この山に白い花が咲く季節になると、毎年のように訪れたくなります。
檜洞丸のシロヤシオが見頃を迎えるのは、例年では5月も下旬頃になってからです。しかしながら、2018年の春はあらゆる花の開花時期が前倒しされており、シロヤシオも例外ではありませんでした。
まだ五月の上旬であるにもかかわらず、既に満開の時を迎えつつありました。
かつては秘境と呼ばれたこの山も、今や「これのどこが秘境だッ」と叫びたくなるくらい多くの人が詰め掛ける、非常に人気の山となっています。
近年には特にその傾向が強まり、オーバーユースによる登山道の荒廃なども問題となりつつあります。
もっとも、これはツツジシーズン限定の光景です。シーズンオフになれば、ここは行き帰りのバスが貸切状態になってしまうこともあるような静かなる場所へと戻ります。
と言うことで、秘境の山がほんの一時華やぐその瞬間を見に、はるばる西丹沢へと繰り出しましょう。
コース
西丹沢ビジターセンターより犬越路を経由して檜洞丸へ登頂。下山はつつじ新道を通って西丹沢ビジターセンターへと戻ります。
標準コースタイム7時間45分の周回コースです。
1.檜洞丸登山 出発編 激混みの西丹沢へ
7時5分 小田急線 新松田駅
西丹沢の玄関口、新松田へとやって来ました。割と頻繁に訪れている場所なので、もはやすっかりお馴染みの光景です。
新松田駅の富士展望スポットから、いつものように本日のお天気を占います。
結果はこの通り、実に素晴らしい。本日は晴天に恵まれた、良き一日になりそうです。
駅前のバス停には、かつて見たことも無いような大行列が出来上がっていました。西丹沢は、何時からこんな人気の場所になったのでしょう。
臨時便が増発されるも、当然ながら座席にはあり付けず、1時間以上の行程を立ったまま過ごす苦行を余儀なくされました。
8時30分 長々と満員のバスにゆすられて、ようやく西丹沢ビジターセンターに到着しました。
普段は下車するなり待ち構えているスタッフに登山届けの記入を促されるのですが、この日はそれもありませんでした。人が多すぎて応対が出来なくなっているのでしょう。
身支度と登山届けの記入を済ませて、8時40分に行動を開始します。
このラブリー号と言うのは一体何者なのでしょう。ググってもまったく情報が出てきません。キャンプ場の送迎サービスか何かだったのでしょうかね。
つつじ新道の入り口を通り過ぎます。本日の予定では、下山時にここへ降りて来る予定です。
本日歩こうとしている周回ルートは、つつじ新道から登り犬越路方面に下るのが一般的です。私が辿ろうとしているのは、通常の逆走コースと言うことになります。
逆走にしたことに特に深い理由はありません。犬越路からの鎖場は、登りに通ったほうが面白そうだなーと思った次第です。
林道の周囲にはキャンプ場が多く存在します。西丹沢エリアはとにかく水が綺麗な場所なので、水遊びがしたいキャンパーには良い場所なのではないかと思います。
奥へと進む登山者の群れ。西丹沢にこれだけの多くのハイカーが存在するのは、ツツジシーズン限定の光景です。
9時 用木沢出合に到着しました。ここからようやく登山道に入ります。
犬越路までは2.5km。標準コースタイムで1時間30分の行程となります。
2.西丹沢の美しき清流と深い森に触れる
登り始めは沢沿いの緩やかな道です。新緑の隙間から射す木漏れ日が実に眩い。
用木沢公園橋を渡ります。このルートを象徴するのランドマーク的な橋です。
橋からは巨大な堤を一望できます。天然の滝でもなんでもない純然たる人工物ですが、かなりの大きさで迫力満点です。
用木沢沿いの道を登ってゆきます。この沢沿いの涼しげな雰囲気こそが、西丹沢の大きな魅力です。
この圧倒的な透明度を誇る水の美しさよ。
表丹沢の塔ノ岳付近しか歩いたことが無いようでは、丹沢の真の魅力に触れたとは到底言えません。「遠い」とか「バスの乗車時間が長過ぎる」等の文句を言っていないで、一度は西丹沢へ訪れるべきです。
一度触れれば、きっとその魅力に取り付かれることでしょう。
大雨で流されたのか、やっつけな補修をされた橋を渡ります。沢沿い登山道の整備と言うのは、果てる事の無い大自然の猛威との闘いにほかなりません。
沢沿いを外れると、ガレ場の急登が始まります。何気にかなりエグイ傾斜の道です。
以前は危なっかしいハシゴが架かって場所に、いつの間にか立派な木製の階段が整備されていました。
息を切らせながら必死になって登ることおよそ30分で、峠が見えてきました。
10時5分 犬越路に到着しました。
下山に使われることのほうが多い道かと思いますが、登るとなると結構ハードです。
峠の様子。
あまり広くはありません。ベンチが3っつ用意されています。
峠に立つ犬越路避難小屋。
2005年に立て替えられた2代目の小屋です。良く手入れがされており、中は非常に綺麗です。トイレもあります。
目指す檜洞丸の姿が見えました。この先は大きくアップダウンを繰り返す尾根歩きとなります。
最初に言っておきますが、このルートは最高ですよ。
3.犬越路からの爽快なる尾根歩き
犬越路を挟んだ背後に、大室山(1,587m)がドッシリと佇んでいます。丹沢山塊の中でも一際目を引く、非常に大きな山体を持った堂々たる山です。

しばらく進むと、周囲にツツジが咲き誇るツツジロードに入りました。
群落の規模で言うと、つつじ新道よりこちらのほうが大きいかもしれません。
振り向くとヤツが居ました。西丹沢は表丹沢よりも富士山に近く、塔ノ岳山頂から見るよりも大きく見えます。
目の前に大笄(おおこうげ)が立ちはだかります。痩せ尾根や鎖場の続く急峻な山です。この山の存在が、犬越路ルートを変化に富んだ面白い道にしてくれていると言えます。
ここでようやく、お目当てのシロヤシオに初遭遇しました。期待していた通り、今まさに満開です。
満開のツツジのトンネルの中を登って行きます。檜洞丸は今まさに、最高のシーズンを迎えていました。
ここで最初の鎖場が現れました。このルート上には、全部で3っつの鎖場が存在します。一つ目は別に鎖が無くても通行できそうな、鎖いら無い場です。
鎖場を過ぎた辺りから、尾根の幅が狭まり周囲が切れ落ちてきます。
続いて2番目の鎖場です。取り立てて特記事項の無い、至って普通の鎖場です。「普通の鎖場」というのも、なにやら変な日本語ではありますが。
見下ろすとこんな感じです。手足を乗せる事の出来る突起は豊富にあり、なにも難しいことはありません。
こちらは足をかける場所がやや少なめですが、それでも特に難しくはありません。
以前にこのルートを下りに使った際には、もっと急だった印象が残っていたのですが、登りで使うと大分印象が変わりますね。なんと言うか、割と呆気ない鎖場です。
私が勝手に西丹沢標準仕様と呼んでいる鉄ハシゴがありました。同じ施工会社が整備を請け負っているからなのか、西丹沢エリアにある鉄ハシゴは、基本的にすべてこの形状をしています。
鎖場を過ぎて以降も険しさは緩みません。しばらくの間、痩せ尾根の急登が続きます。
しばしすれ違い待ちが発生します。早くも、つつじ新道から登った人たちが降りて来る時間帯になってしまったということです。
ついさっきまで目の前にあった大室山が、もうあんなに遠くに見えるようになって来ました。
犬越路ルートが下山路として推奨されている理由の一つが、この展望の素晴らしさです。登り使った場合は、この絶景に背を向けて歩く格好になります。
高度が上がるにつれて、立ち枯れしたブナと笹原の広がる、これはこれでいかにも丹沢らしい光景に変わって来ました。
丹沢山系における稜線付近のブナ林の衰退は、酸性雨の影響とも害虫や鹿の食害のせいとも言われます。面積減少は止まる事を知らず、今なお年々減り続けています。
標高1,500メートル付近のシロヤシオは、まだつぼみ状態でした。山頂直下の一帯が見頃を迎えるのは、もう少し先になりそうです。
谷向かいに我が心の名山、蛭ヶ岳(1,673m)が姿を見せました。
コバイケイソウの覆い茂る場所まで来たら、山頂まではもうあと一息です。
足元の丸太に檜洞丸の名が掘り込まれていました。芸が細かいですね。
檜洞丸の山頂直下からは、西丹沢と呼ばれる一帯のほぼすべてを一望できます。この圧倒的な山深さよ。
山頂直下最後の登りにして、丹沢名物の階段地獄が待ち受けていました。
12時55分 檜洞丸に登頂です。
西丹沢ビジターセンターを出てから、実に4時間15分もかけての到着です。つつじ新道からだとだいたい3時間くらいで登れるので、まあ結構な遠回りでしたかね。
山頂の様子
とても広々としています。木々に囲われているため、展望はあまりありません。
山頂のお社。
比較的最近に作られたものです。この山が登山の対象となったのは近代になってからのことで、古くから続く信仰などの謂れは存在しません。
こちらは檜洞丸山頂から丹沢最高峰の蛭ヶ岳へと続く、丹沢主稜の稜線です。今日はこちらへは進みません。

4.満開のシロヤシオと無慈悲なるつつじ新道
13時20分 下山を開始します。
西丹沢ビジターセンターまで最短距離のつつじ新道を下ります。
目の前に見えているこの尖がった山は同角ノ頭(1,491m)です。まだ未踏破の山なので興味深々なのですが、この日は寄り道出来る時間は無かったのでパスしました。
夜に用事があったので、どうしても帰りは15時40分発のバスに乗る必要があったのです。
犬越路ルートほどの展望はありませんが、こちらからも富士山の姿が良く見えました。
ここを直進すると同角山陵方面です。今回は素直につつじ新道へと入ります。
新道と名が付く道はどこも大抵はそうですが、このつつじ新道と言うのは、山頂への最短距離を突き進む急勾配の道です。のっけから凄い傾斜の道が続きます。
シロヤシオは葉のフチが赤く色付いているのが特徴です。この写真はその特徴を良く捉えています。
ツツジエリアが終わってしまったら、後はもう消化試合です。急勾配の坂道を勢い良く下っていきます。
途中に一箇所休憩ポイントがありますが、大勢の人が休憩中で空きは無かったので、立ち止まらずに素通りします。
標高が下がってくると、今度は山ツツジが咲いていました。こちらの見頃はもう少し先ですかね。
辺りに反響する沢の音が大きくなってきたら、急坂の終わりは近い。
14時45分 地図を持ってこなかった人に質問があることで有名な、ゴーラ沢出合まで下ってきました
ここで沢を渡ります。誰がいつ架けたとも知れない、危なっかしい丸太の渡しが置いてありました。
せっかく設置してくれた人の心意気を踏みにじるようですが、防水の靴を履いているのであれば、こんな細っこい丸太の上を歩くより浅瀬を直接渡った方が安全です。
ここまで来れば、下山はもうほぼ終わったようなものです。しばらくの間は水平移動になります。
行きに通った林道と合流しました。あとは道なりに引き返すだけです。
15時20分 西丹沢ビジターセンターに戻ってきました。
帰りも行きと変わらぬ大行列で面食らってしまいました。
行列が出来ていたのは臨時便でした。15時40分発の定期便の方で、何とか座席にありつけました。再び長い長い時間をかけて、帰宅の途に付きました。
満開にはまだ少し早すぎるかと懸念しつつの訪問でしたが、蓋を開けてみればシロヤシオは満開御礼の真っ最中でした。天気も上々で申し分なく、最高のタイミングでの訪問ができたと思います。
最後に、長くなったので一行にまとめます。
西丹沢は良いとこ一度はおいで。
<コースタイム>
西丹沢ビジターセンター(8:40)-用木沢出合(9:00)-犬越路(10:05~10:20)-檜洞丸(12:55~13:20)-ゴーラ沢出合(14:45)-西丹沢ビジターセンター(15:20)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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