ウトウの頭-酉谷山 奥多摩の深部、タワ尾根と長沢背稜を日帰りで巡る

ウトウの頭
東京都奥多摩町にあるウトウの頭と酉谷山(とりだにやま)に登りました。
奥多摩と呼ばれる領域の中でも最も奥まった一帯に位置する、タワ尾根と長沢背稜を巡る行程です。タワ尾根は一般登山道扱いではない、いわゆるバリエーションルートと呼ばれるルートですが、一部に不明瞭な場所もあるのの危険個所は少なく、比較的多く歩かれているルートです。
日原を起点にして、タワ尾根尾を登りヨコスズ尾根を下る周回ルートで、奥多摩最深部を慌ただしく日帰りで巡って来ました。

2021年6月26日に旅す。

warning!
タワ尾根は一般登山道ではない、バリエーションルートです。
・過去に道迷い遭難が多発している場所です。事前にしっかりと調査と準備を行い、万全の状態で登って下さい。
・薄っすらとした踏み跡はありますが、ルートは全般的に不明瞭で、道標などの案内は一切ありません。必ず詳細な地形図を携行して下さい。
・ごく一部の場所を除き、基本的に携帯電話の電波は入りません。GPSレシーバーの携行を強く推奨します。

酉谷山は奥多摩と呼ばれる領域の中でも最深部に位置する山です。東京都と埼玉県の境界である、長沢背稜上に位置しています。
ウトウの頭付近から見た酉谷山
特に何かがあると言う訳でもない至って地味な山ですが、それだけに深山幽谷の雰囲気を味わえる一座です。

しかしよくよく地図を見てみると、タワ尾根を経由して登れば、日帰りでも十分に長沢背稜まで届くのではなかろうか。そう考えて今回再訪してきました。

タワ尾根は、日原鍾乳洞のある付近から長沢背稜に向かって伸びている尾根です。この尾根の途中にはウトウの頭と呼ばれる小ピークが存在し、静かな山を好む物好きたちな登山者達にひそかな人気があります。
天目山から見たタワ尾根
尾根上のルートは一般登山道扱いではない、いわゆるバリエーションルートです。奥多摩のバリエーションルートとしては比較的多く歩かれており、だいたい4~5時間の登りで長沢背稜に到達できます。

奥多摩最奥の地の尾根上には、ほとんど人とすれ違うことのない静寂な空間が広がっていました。とても東京都とは思えないような深山を巡り歩いて来た一日の記録です。
霧の長沢背稜

コース
210626ウトウの頭-map
東日原バス停からスタートし、一石山神社からタワ尾根に取り付きます。ウトウの頭を経て長沢背稜を歩き、奥多摩最深部の酉谷山へ。

下山は一般登山道のヨコスズ尾根を下り東日原に戻ります。標準コースタイムおおよそ10時間の、骨太な行程です。

1.ウトウノ頭登山 アプローチ編 東京都最果ての地、日原を目指す

6時3分 JR立川駅
本日の登山計画は極めて長丁場となるものです。ホリデー快速が動き出す時間帯では始動が遅すぎるため、始発電車を乗り継いで参ります。
立川駅の青梅線ホーム

終点の青梅駅で奥多摩行きの電車に乗り換えます。なおこの先は4両編成となるため、混雑時には椅子取りゲームが発生します。
青梅駅に停車する奥多摩行きの電車
悠長に駅のホームの写真を撮っていた私は、この椅子取りゲームに見事に出遅れました。奥多摩と言うのは、梅雨時であっても意外と賑わうものなんですね。

7時20分 奥多摩駅に到着しました。おや?本日は曇りの予報だったのに、なんだか晴れていませんか。
多くの登山者で賑わう朝の奥多摩駅

駅前のバス乗り場から、東日原行きのバスに乗車します。川乗橋行きの臨時便が増発され、2台目の出発でした。
奥多摩駅前に停車する東日原行きのバス
令和元年に発生した台風19号による路肩崩壊の影響により、長らく小型バスによる運行が続いていた日原方面行きバスですが、ようやく通常サイズのバスに戻っていました。

途中の川乗橋バス停には、臨時便に乗っていたのであろう大勢の登山者で賑わっていました。川苔山は相変わらずの大人気ですな。
川乗橋バス停

7時50分 終点の東日原バス停に到着しました。現在、日原から鷹ノ巣山方面には登ることが出来ない状態が続いているため、終点まで乗車していた登山者は至って少数でした。
東日原バス停

バス停から見た日原集落の光景です。信じられますか、ここ東京都なんですよ。かくも険しき山間部であるにも関わらず、江戸時代からすでに集落が存在していたと言うから驚きです。
東日原バス停からの光景

2.石灰岩の大岩壁を目の前に望む、タワ尾根の取り付き地点、一石山神社

8時 身支度を整えて行動を開始します。日原鍾乳洞方面に向かって道なりに進みます。
日原の集落

程なく前方に、日原のシンボルである稲村岩が姿を見せました。石灰岩でできている岩山で、山頂の稲村岩神社からは、日原集落の全容を見下ろせます。
日原集落内から見た稲村岩

その稲村岩ですが、現在は登ることが出来ません。令和元年の台風19号による登山道崩落により、稲村岩を経て鷹ノ巣山に至るルートは今なお通行禁止状態が続いています。
日原の鷹ノ巣山登山口
もともと人気の高かったルートであるにも関わらず、一向に復旧されることもなくこれだけ長期にわたって通行止めの状態が続いていると言うのは、よほど修復が困難な規模で大きく崩落してしまっているからなのでしょうか。

登山口脇の花壇に、ニッコウキスゲとよく似た花が咲いていましたが、これは何でしょう、オクタマキスゲ?いや、そんな花は存在しないか。
210626ウトウの頭-015

真下から見上げた稲村岩はなかなかの迫力です。天気は曇り予報だったはずが、見事な青空が広がりつつあり、気温が上がって暑くなってまいりました。本日は苦しい登山になりそうな予感です。
日原の稲村岩

崖際の片道1車線分しかない道が続いています。本当に、こんなところにまでよく道を作りましたな。
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鍾乳洞バス停まで歩いて来ました。平日にはここまで路線バスが入って来ますが、週末の土日は渋滞を避けるためにバスは手前の東日原止まりとなります。
日原の鍾乳洞バス停

日原川にかかる橋を渡って直進します。左へ曲がった日原林道は、天祖山や雲取山方面へと続いています。
日原林道の分岐地点

視界が何となく薄っすらと白ずんで見えます。まだガスと言うほどの標高ではないし、これは霧が発生しているのか。
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やがて前方に駐車スペースと建物が見えて来ました。
一石山神社の駐車場

8時25分 一石山神社に到着しました。日原鍾乳洞の向かいにある神社です。タワ尾根の取り付きは、この神社の裏手にあります。
日原の一石山神社 width=

神社の裏手には、燕岩と呼ばれている石灰岩の絶壁が屹立しています。鍾乳洞と呼ばれる洞窟は、石灰岩質の地層にしか形成されません。この場所がかつては海底に存在していたことの証でもあります。
一石山神社と燕岩

3.序盤から怒涛の急登が続くタワ尾根の取り付き

道標の案内等は一切ありませんが、この建物の右横にある小径がタワ尾根への取り付きです。それではいっちょう、張り切ってまいりましょう。
一石山神社 タワ尾根の登山口

続いてこの落石防止柵の間を左にぐるっと回りみます。直進してしまうと行きどまりなのでご注意ください。一応は踏み跡らしきものがありますが、かなり分かり難いです。
一石山神社のタワ尾根の取り付き

初っ端からいきなりの急登です。登り始めが一番急なのは、奥多摩の山に多く見られる傾向ですが、このタワ尾根もまた例外ではないようです。
タワ尾根の登山道

上向きのアングルだとわかり難いかもしれませんが、横から見るとこの傾斜度です。この急勾配の尾根を、ジグザクと九十九折れに登り上げて行きます。
タワ尾根の登山道

破線ルートとはいいつつも、踏み跡は割と明瞭でしっかりとしています。このように階段などもあり、意外と多く歩かれている道であることが窺えます。
タワ尾根の登山道

登り始めて早々からいきなりの急登にすっかりと打ちのめされたところで、急登の終わりが見えて来ました。
タワ尾根の登山道

9時10分 ベンチのある場所まで登って来ました。よもやバリエーションルート上にこんなものがあろうとは、想定外です。
タワ尾根のベンチスペース
最初の登りですでにグロッキー状態になりかけていたので、まだスタートして早々ではありますが、小休止して軽くエネルギー補給しました。

一時の安らぎのような、緩やかな道です。この後すぐにまた急登が始まりますがね。
タワ尾根の登山道

巨大な石灰岩の岸壁が道の脇に立っていました。この付近がちょうど、燕岩の上部にあたる場所になります。2万5千分の一スケールの地形図を見ると良くわかりますが、登山道は崖記号の合間を縫うようにして続いています。
タワ尾根の石灰岩

再び始まるエグイ登り。前日の雨で足元はぬかるんでおり、地味に歩きづらい道です。このルートを、下りでは使いたくないですね。
タワ尾根の急登

ちょっとした岩場もありますが、まあ特に難しくはありません。ただし、濡れていると滑るので、慎重に参りましょう。
タワ尾根の登山道

9時30分 急坂を登り切った所で尾根に乗りました。地図によれば、この場所が一石山と言うピークであるようですが、山頂標識は見当たりませんでした。
タワ尾根 一石山
私が見落としたと言うだけで、どうやら手製の標識は存在するようです。この付近には六ツ石山や七ツ石山と言った名称の山が存在しますが、ここが元祖なのでしょうか。

ここまで登ってくれば、急登はひとまずお終いです。この先は気持ちの良い尾根歩きが続きます。
タワ尾根の登山道

尾根上には見事なブナの原生林が広がっていました。紅葉シーズンに訪れたら、きっと素晴らしい光景が見られることでしょう。来て早々ですが、これはまた季節を改めて再訪する必要がありそうですな。
タワ尾根の登山道

驚くべきことに、こんな山奥の僻地にまで杉の植林が存在しました。流石は奥多摩と言ったところでしょうか。こんな奥地では、搬出にかかるコストを考えたら、絶対に採算なんかとれないでしょうに。
タワ尾根の植林帯

依然として頭上に青空が広がっており、眩い木漏れ日が射しこんでいます。本日は始めからガッスガスの中を歩くことを覚悟してきていたので、これは嬉しい誤算です。さあて、いつまで持ってくれるかな。
タワ尾根のブナ林

足元にギンリョウソウが咲いていました。そんなど真ん中に咲いていたら、踏まれてしまうぞい。
タワ尾根のギンリョウソウ

10時 広々とした空間が現れました。地図によれば人形山と呼ばれている地点です。例のごとく、標識がどこにあるのかよくわかりませんでした。
タワ尾根 人形山
この辺りはやたらと地形が複雑でルートが分かり難いので、注意を要します。基本的にはずっと尾根の左に沿って進んでいくのが正解です。

踏み跡がかなり頼りなくなってきました。この付近は尾根の幅が広く、はっきりとした一本の道筋は存在しません。尾根筋を外さないように進みます。
タワ尾根の登山道

再び広々とした空間が現れました。あまりピークっぽくはない場所ですが、山頂標識らしきものが見えます。
タワ尾根 金袋山

10時25分 金袋山に登頂しました。凝ったデザインのお手製の山頂標識です。
タワ尾根 金袋山の手製標識
しかし金袋というと、やはりアレの事なんですかね。中にタマが二つ入っているヤツ。

何故か山頂標識が二つありました。こちらの目立たない標識がある方が最高地点のように見えます。
タワ尾根 金袋山

4.ウトウの頭 登頂編 手製標識が有名な、タワ尾根の静かなる頂

金袋山を過ぎて以降も、道中の景色にはあまり変化がありません。相変わらず、ブナ林に覆われた緩やかな尾根道が続きます。
タワ尾根の登山道

ここに来て、ようやく予報の通りに空が雲に覆われ始めました。谷向に見えているこの山は天祖山(1,723m)なのかな。
タワ尾根から見た天祖山

緩やかに登り返したところで、再び広々とした小ピークが現れました。
タワ尾根 篶坂ノ丸

10時55分 篶坂ノ丸(すずさかのまる)に登頂しました。またもや手製の標識です。ここがウトウの頭の手前にある最後の小ピークとなります。
タワ尾根 篶坂ノ丸
この場所で、この日はじめてとなる自分以外の登山者の姿を見かけました。やけに軽装な初老の男性で、ヒョイヒョイとテンポよく登って行ってしまいました。あれはきっと、奥多摩の仙人か何かに違いない。

タワ尾根はここまでずっと登り一辺倒が続いていましたが、初めて大きく下ります。
タワ尾根の登山道

前方に大きく盛り上がったピークの姿が見えて来ました。どうやらあれがウトウの頭であるようでうすな。かなりの急登が待ち受けていることが予想される光景です。
タワ尾根の登山道

鞍部まで下って来ました。相変わらずはっきりとした道筋と呼べるものが無い、幅広の尾根が続いています。
タワ尾根の登山道

谷向いにある天祖山が、かなり大きく見えるようになりました。山腹にある石灰岩鉱山の採掘面も何となく見えます。
タワ尾根から見た天祖山

予想していた通りのエグイ登りが始まりました。当然ながらお助けロープなどの補助は一切ありません。滑り落ちないように十分注意してまいりましょう。
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急登を登りきると、まるで伊豆半島の山を思い起こすような、やたらとグネグネした木に覆われた場所にでました。どうやら、ここはまだ山頂ではないようです。
ウトウの頭周辺のタワ尾根

足元にびっしりと苔生した、やたらとウェッティな空間です。先ほどまでとはいきなり森の雰囲気が変わったので、地形的にガスが発生しやすく常に湿度の高い場所なのかもしれません。
ウトウの頭周辺のタワ尾根

ここまで登って来て、ようやく長沢背稜の姿が視界に入りました。別名で都県境尾根とも呼ばれており、この尾根の向こう側は埼玉県の秩父地方です。
タワ尾根から見た長沢背稜
朝方の青空が嘘の様に、頭上がすっかりと暗雲に覆われておりますな。

これまでの緩やかな尾根筋とは打って変わって、ウトウの頭の周囲のタワ尾根は、ギザギザとしたヤセ尾根状となっていました。一部に切れ落ちている場所もあるので慎重に。
ウトウの頭周辺のタワ尾根

ギコギコと結構激しくアップダウンします。雰囲気的には長沢背稜の天目山の周辺に近い感じがします。
タワ尾根から見た長沢背稜

何度か登って降りてを繰り返したところで、ようやく山頂らしき場所に辿り着きました。これはまた、いかにも玄人好みのとびっきりに地味な場所ですねえ。
タワ尾根から見た長沢背稜

11時40分 ウトウの頭に登頂しました。ここまで、取り立てて危険と思えるような場所はありませんでした。ルートを見失わない限りは、特に難しくはないかな。
ウトウの頭の山頂
なおウトウと言うのは渡り鳥の海鳥で、北海道や岩手県に沿岸部に大規模な繁殖地が存在します。奥多摩に繁殖地があると言う話は一切聞きませんが、この名前はどうしてついたんでしょうかね。

ウトウの頭と言えば、有名なのがこの焼き物で出来た手製の標識です。標識に描かれているこの鳥がウトウです。
ウトウの頭の山頂標識

標識は何故か二つあります。下段にあるこちらの方が新しいようです。裏面には、作者と思われる人物の名前がローマ字表記で彫り込まれていました。
ウトウの頭の山頂標識
前々から一度見てみたいと思っていたこの標識を、直に見ることが出来て大満足です。何ならもう、今日はこのまま下山しても良いかなあと思ってしまうほどに。

5.奥多摩最深部へと続くタワ尾根の終盤

11時55分 つい思わず達成感に満たされそうになってしまいましたが、本日の行程全体で言うと、現在地はまだ折り返し地点ですらありません。軽くエネルギー補給を済ませて、ボチボチ行動を再開します。

ウトウの頭からは一度大きく下ります。道標などの案内は一切ないため、地形図と薄い踏み跡だけが頼りです。
ウトウの頭の山頂直下
なお、この先はさらに道が不明瞭となります。間違った方向へ進んでしまうことが無いように、現在地をよく確認しながら注意深く進みましょう。

これから向かうの酉谷山の姿が見えました。長沢背稜上にある小ピークであり、位置的に奥多摩の山の中でも最も深い場所にあります。
ウトウの頭付近から見た酉谷山

酉谷山の山腹に、小さく酉谷山避難小屋の姿も見えました。4年前に長沢背稜へ訪問した際には、あの小屋に宿泊しました。
ウトウの頭付近から見た酉谷山避難小屋

鞍部まで下って来ました。この先はしばらくの間は痩せている一帯が続きます。気を引き締めてまいりましょう。
タワ尾根の登山道

道が少し藪っぽくなって来ました。バリエーションルートらしくなってきましたよ。
タワ尾根の登山道

大岩が尾根を塞いでいました。尾根を忠実に辿ることが難しくなってきたところで、登山道は南に大きく迂回します。
タワ尾根の登山道

この迂回路は、思いのほか大きく下ります。どこかで道を間違えて、下山するルートに入ってしまったのではないかと心配してしまうほどに。
タワ尾根の登山道

この迂回路の入り口に気が付かずに、岩尾根上を直進してしまって進退窮まる道迷いの例がとても多いようです。過去には死亡事故も発生しています。
タワ尾根の岩場
常に良く周囲を観察し、少しでもでもおかしいと感じたらその時は引き返しましょう。面倒だとばかりに闇雲に前進を続けてしまうのは、バリエーションルート歩きにおいて一番やってはいけない行為です。

下ってしまった以上、その後に待っているのは当然登り返しです。この登り返し地点がまた、ルートが非常に分かり難いです。正面の岩を避けるように、左側から回り込みます。
タワ尾根の岩場

最後は手も使うような登りでした。もしかしたらここは正解ではなく、他にもっと登りやすい道筋があったのかも。
タワ尾根の岩場

登り返した所で、左側から現れたモノレール軌道と合流しました。
タワ尾根のモノレール

この先はしばしの間、モノレールと共に歩む道となります。長らく緊張を強いられる不明瞭な道が続いていたため、傍らに人工物があると言うだけで、妙な安堵感を覚えます。
タワ尾根のモノレール

全長は1.8km近くあるらしい。いったいどこか起点なのかは知りませんが、どうせならお金を取って登山者も運んでくれませんかねえ。
タワ尾根のモノレール
周囲の森に伐採されたような形跡は見られませんが、一体何のために作ったものなのでしょうか。

このモノレールが、尾根上の最も広くておいしい所を占拠しているため、意外と歩くのに邪魔です。何度かレールを跨いで左右を行ったり来たりしながら進みます。
タワ尾根のモノレール

割とあっけなく終点までやって来ました。再び人工物の姿が全くない世界へ逆戻りです。
タワ尾根のモノレール終点

ここで遂に、始めから約束されていた未来である、ガスの中へと突入しました。本日は最初からこの状態もあり得ると覚悟していたので、むしろここまで良く持ってくれました。
霧のタワ尾根

やがて前方を横切る尾根が見えて来ました。長かったタワ尾根歩きが、終わる時がやって来たようです。
長沢背稜のタワ尾根の分岐地点

12時45分 長沢背稜の稜線にのりました。歩き始めてから4時間20分で、無事にタワ尾根を登り切りました。
長沢背稜のタワ尾根の分岐地点

6.酉谷山登山 登頂編 ガスに包まれた奥多摩最深部の頂

ここからは一般登山道扱いの道となります。この長沢背稜自体、十分すぎるほどの山深い僻地と言えるわけですが、それでも一般登山道の領域に入ったと言うだけ、ほっと安堵間に包まれるから不思議なものです。
長沢背稜の登山道

長沢背稜の登山道は、アップダウンも少なくとても歩きやすいトレイルです。到達自体が困難な奥地ではありますが、このような石垣などもあってかなり丁寧に整備されています。
長沢背稜の登山道

道の下の方から水が流れる音が聞こえます。水辺へと降りる踏み跡のようなものもなんとなく見えます。山と高原地図には特に水場の記載がありませんが、どうやらここで水が取れるようです。
長沢背稜の湧き水
本日は暑くなる事を見越して十分過ぎる量の水を携行していたため、特に偵察はしませんでしたが。

一部に崩落しかけている場所もありはしますが、基本的に長沢背稜に危険な場所は無いと考えて問題ありません。
長沢背稜の登山道

平坦な道をサクサクと快調に飛ばして、行福のタオと呼ばれる酉谷山の山頂方面と巻き道の分岐地点まで歩いて来ました。
長沢背稜 行福のタオ
酉谷山には過去にも一度登頂しており、ピークハントそのものはもう正直どうでも良かったのですが、しかしそう滅多に来れる場所でもないので、せっかくだから登頂していきましょう。

ガスがかなり濃くなってきました。まるで奥多摩最深部の山にふさわしい雰囲気を、演出をしてくれてるかの如くです。
霧の長沢背稜
流石にここまでの疲労がたまって来たのか、もうあと一息だと言うのに、徐々に足が前に出てこなくなってきました。

息絶え絶えになりながらもなんとか足を進めるうちに、ようやく山頂が見えて来ました。
酉谷山の山頂

13時40分 酉谷山に登頂しました。いやはや遠かった。最深部の山と言う肩書は伊達ではありませんでしたな。
酉谷山の山頂

山頂の様子
特に何かかがあるわけでもない、ひっそりとした地味で静かな空間です。晴れていれば、木々の間から少しだけ富士山が見えます。
酉谷山山頂の様子
この静かなる山頂でしばしゆったりとした寛ぎを・・・と言いたいところではありますが、奥多摩の最深部に位置している山に、宿泊の用意もなにも無しに正午を過ぎた時間にいる。

この客観的事実を前にしてしまうと、あまりゆっくりとくつろいでもいられません。名残惜しくはありますが、ここからは怒涛の駆け足下山が始まります。

7.一杯水を異目指して、霧の長沢背稜を駆け抜ける

13時55分 僅かな山頂滞在時間でしたが、酉谷山を後にします。この後は長沢背稜縦走路を進み、一杯水を目指します。
酉谷山の山頂直下

酉谷山から下って来た鞍部が酉谷峠です。このまま尾根沿いに進むことも出来ますが、長沢背稜の縦走路は峠から奥多摩側へ少し下った山腹を通っています。
酉谷峠
この酉谷峠の付近は、非公式のテント場となっています。正規のキャンプ指定地ではないため、あくまで避難小屋からあぶれてしまった際の緊急時の利用が大前提です。

ちなみにこの場所は、酉谷山避難小屋の水場の真上にあたる場所であるため、まかり間違ってもこの付近で立小便や野グソをしてはいけません。

面倒でも、避難小屋まで下ってトイレを借りるか、もしくは始めから携帯トイレを用意しましょう。

という事で峠から縦走路へと下って来ました。この縦走路との合流地点の直下に酉谷山避難小屋があります。
酉谷山避難小屋の入り口

4年前に一度泊った懐かしの小屋です。小さいけれど、とても綺麗で快適な小屋でした。現在この小屋はコロナ渦という事で、本当の緊急時以外には宿泊が禁止されています。
酉谷山避難小屋
いつかまた、大手を振って泊まれる状態になったら再訪したいな。

さあ、後はもう帰るのみ。と言葉で言うのは簡単ですが、日原は遥か彼方です。半分駆け足のようなペースで参ります。
長沢背稜の登山道

どこからアプローチするにしてもとても遠い長沢背稜ですが、一応は途中にある七跳尾根からエスケープすることが可能です。
長沢背稜の七跳尾根分岐
この尾根を下った先にある小川谷林道は現在、公式には通行止め扱いとなっています。車両は通れませんが、徒歩での通行は可能であるようです。

平坦で歩きやすい道が続きますが、中にはこのような桟橋で岩場をトラバースする場所もあります。霧で表面がしっとりと濡れている木道は、滑りやすくて心臓に悪い。
長沢背稜の木製桟橋

ハナド岩まで歩いてきました。長沢背稜きって好展望地であり、個人的にとてもお気に入りの場所であるわけですが・・・
長沢背稜 ハナド岩分岐

デスヨネー。
ええ、始めから何も期待していませんでしたとも。晴れていれば、正面に石尾根とその先にある富士山が良く見えます。
長沢背稜 ハナド岩

気を取り直して先へ進みましょう。お次は天目山方面と巻き道への分岐地点です。天目山は奥多摩エリアでも有数の好展望地でありますが、本日は始めから望みゼロであるため、訪問は割愛して巻き道へ進みます。
長沢背稜 天目山分岐

この巻き道は何気に初めて歩いたかもしれません。足場の幅がかなり狭めなので、たとえ先を急いでいてもここは走らずに歩いたほうが無難だと思います。
長沢背稜 天目山の巻き道

前方に避難小屋の姿が見えて来ました。想定していたよりも30分近く早い到着です。これは思った以上に良いペースで歩けましたな。
一杯水避難小屋

15時40分 一杯水避難小屋に到着しました。自分の内部では筋肉ハウスにそっくりだと評判の場所です。そんなこと言ってると歳がばれるぞ。
一杯水避難小屋
この時間からであらば、東日原発最終バスの一本前の17時22分の便にも十分間に合いそうです。そういう事であらば、休憩は取らずにこのまま下山を続行します。

8.酉谷山登山 下山編 勝手知ったるヨコスズ尾根を駆け抜ける

一杯水からの下山ルートであるヨコスズ尾根は、過去に何度か登り下りしたことがあり、道中の様子には通暁しています。全般的に幅広で緩やかな尾根道であり、非常に歩きやすいルートです。
ヨコスズ尾根の登山道
コースタイム的にはバッファが一切ないギリギリの時間ですが、ヨコスズ尾根の下りであれば多少は巻くことも出来るだろういう目算です。

一ヵ所だけトラバース地帯がありますが、通行時に注意を要するのはここだけです。目論見通りにテンポよくサクサクと下っていきます。
ヨコスズ尾根の登山道

ヨコスズ尾根名物(?)の「一度グレたけれど、その後はまっすぐに更生した杉」です。大変目立つので、通るたびについ毎回写真に収めてしまいます。
ヨコスズ尾根の曲がった杉

最後まで失速せずにサクサクと下り続けて、無事に日原まで戻って来ました。こんなに明るいうちに戻ってこれるとは、思っていませんでしたよ。
ヨコスズ尾根の登山道入り口から見た日原集落

ちょうどタイミングよく、帰路の私を運んでくれるバスがやって来るところでした。
日原集落を走る西東京バス

17時15分 東日原バス停に帰還しました。今日もたくさん歩いて大満足です。
東日原バス停
この時間帯になっても、バスは意外と混んでいました。鍾乳洞見物帰りの人たちうでしょうかね。

最終バスになる事を覚悟していたのに、蓋を開けてみれば、思いがけず日没前に奥多摩駅へ戻って来ることが出来ました。
奥多摩駅の駅舎
もえぎの湯へ立ち寄ろうかとも思いましたが、最後の最後に全速ですっ飛ばした反動なのか、すっかり足が萎えてしまいその気力がなくなりました。

全身をアルコールティッシュで拭って、着替えだけを済ませてこのまま撤収します。

アドベンチャーライン仕様の青梅線に乗り込み、帰宅の途に付きました。
奥多摩駅に停車する青梅線

奥多摩最深部を巡る慌ただしき日帰り登山は、こうしてつつがなく終了しました。時間的に最終バス時間のギリギリになる事を覚悟していまいたが、長沢背稜に乗って以降は大きくコースタイムを巻くことが出来ました。
タワ尾根には一部に急峻な場所があるものの、全般的に傾斜が緩やかな場所が多く、突出した難所は存在しません。技術的に言えば難しくはありませんが、ルートが不明瞭な場所が多く存在し、やはり一般登山道とは一線を画したルートであると思います。経験の浅い登山者が安易な気持ちで入山することは推奨しません。しっかりとした準備をした上で挑戦してください。
長沢背稜に乗って以降は、よく手入れのされた気持ちよく歩けるトレイルです。決してそうそう気軽に行ける場所ではありませんが、この奥多摩という地の奥深さを味わいに、その最深部まで足を運んでみては如何でしょうか。
なお、ご覧いただいた通り頑張れば日帰りは可能ですが、あまりにも余裕がない行程となるため、一泊して歩くことを推奨します。

<コースタイム>
東日原BS(8:00)-一石山神社(8:25)-一石山(9:30)-金袋山(10:25)-篶坂ノ丸(10:55)-ウトウの頭(11:40~11:55)-酉谷山(13:40~13:55)-一杯水避難小屋(15:40)-東日原BS(17:15)

210626ウトウの頭-110

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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