稲包山 上越国境の静かなる頂と四万温泉を巡る

小稲包山から見た稲包山の山頂
群馬県中之条町にある稲包山(いなつつみやま)に登りました。
群馬県と新潟県の県境地帯に連なる三国山脈に属している山です。上越国境地帯の山の中でも花形的な存在である谷川連峰からは少し外れた場所にあるため、訪れる人はあまり多くない静かなる頂です。マイナーな存在ながらも、豪雪地帯の山らしく山頂付近は森林限界を超えており、大変眺めの良い山です。
新潟県側の湯沢町から群馬県の四万温泉(しまおんせん)まで、国境の山脈を越えて縦断してきました。

2023年10月8日に旅す。

稲包山と唐突に言われても、恐らく地元の人以外はどこの事であるかピンと来ないのではないでしょうか。上越国境を越えて群馬県と新潟県とを結んでいる三国峠から、さらに少し南下した地点にある山です。
平標山から見た稲包山
そんなマイナーな山に何故今回目をつけたのかと言うと・・・いつものようにエア―登山(ソファーで寛ぎながら、ぼんやりと山と高原地図を眺める行為のこと)をしていて何となく目についたからです。

特に深い理由はありません。はい。

県境の山であるため、新潟県側と群馬県側の両方に登山道があります。今回は新潟県側の湯沢町からスタートして、群馬県の四万温泉へ抜ける縦断コースを歩いて来ました。
奥四万湖
マイナーな山であるという事は先刻承知していましたが、最初から最後まで途中ですれ違った登山者がゼロ人と言うまさかの記録を打ち立てることとなりました。

登山の対象としてはほぼ無名に等しい存在ながらも、展望あり藪漕ぎあり(下山後の)温泉ありと、およそ登山というアクティビティに求められるであろうすべての要素を兼ね備えた文句なしの秀峰でした。
稲包山から見た三国山脈
隠れた名山と名高き温泉の二つを満喫してきた一日の記録です。

コース
稲包山のコースマップ
苗場プリンスホテルバス停からスタートして国道353号沿いに南下し、三坂峠を経由して稲包山へ。山頂から尾根沿いに南下し、四万温泉へと下ります。

上越国境の三国山脈を縦断しつつ、温泉に向かって歩く理想的な行程です。

1.稲包山登山 アプローチ編 新幹線で行く上越国境への旅路

6時55分 JR東京駅
上越国境地帯の山への日帰り登山を可能としてくれる魔法の乗り物新幹線で、越後湯沢駅を目指します。紅葉シ―ズンにはまだ少し早い中途半端な時期であるためか、朝の新幹線は至って空いていました。
東京駅の新幹線ホーム

8時11分 快適な新幹線の座席でうつらうつらとしているうち間に、つつがなく越後湯沢駅へと到着しました。寝惚け眼のまま、ヨロヨロとホームに降り立ちます。
越後湯沢駅の新幹線ホーム

越後湯沢駅の構内は美味しいもの誘惑であふれており、この駅で新幹線を待っているといつの間にかベロンベロンに酔っぱらって塩分過多になると言う不思議な場所です。
越後湯沢駅の構内
本日は群馬県側に抜ける計画であるため、残念ながらここに戻ってくることはありません。

意外なことにバス停には既に行列が出来ていました。恐らく大半の人は平標山&仙ノ倉山に向かうのでしょうけれど、こんな中途半端なシーズンであっても意外と登る人はいるのですね。
231008稲包山-008

最終的には座席がすべて埋まり立客も出るほどに盛況でした。ちなみに南越後観光バスは未だに交通系ICカードには対応していません。あらかじめ小銭を用意しておきましょう。
西武クリスタル行きのバス車内

9時7分 苗場プリンスホテルバス停に到着しました。予想していた通り乗客のほとんどが平標山登山口で下車し、最後は貸し切り状態でした。
苗場プリンスホテルバス停

スキーシーズン以外にこの場所へ来たのは、何気に自身初めてのことかもしれない。バブル時代の象徴的な存在と言えるリゾートホテルでしたが、華やかりし頃は遠い昔の話で、今ではすっかりと寂れてしまっています。
苗場プリンスホテル

2.林道にしか見えない国道353号の不通区間を行く

9時10分 身支度を整えて行動を開始します。ここから登山口のある三国スキー場跡までは、1時間少々の舗装道路歩きとなります。
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スキーシーズン中には満車になるであろうだだっ広い駐車場も、今の季節はガラガラ状態です。

入口まで戻っても良いのですが、駐車場内を突っ切って、このスキーブーツを履いた状態で上り下りすることを想定して作られたであろう金属製の階段を登ると、多少の近道ができます。
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主にスキー客を相手にしてるのであろう、小洒落たペンションが立ち並ぶ中を道沿い進みます。
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それも長くは続きません。二車線の道はすぐになくなり、鬱蒼とした森の中へと入って行きます。
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さてこの道、一見するとごくありふれた林道であるかのようにも見えますが、じつは国道353号線です。この先は群馬県の四万温泉に至ることになっていますが、三坂峠の前後が不通区間となっています。
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道は湯ノ沢に沿って続いています。川の両脇の木々は時期的に少し黄色く色付き始めている段階ですが、紅葉する頃に訪れたらさぞや壮観なことでしょう。
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おそらくはヒメグルミだと思われる実が割られて、中身を食べたような痕跡が残っていました。かなり堅い実なので、相当アゴの力が強い生き物でなければできない芸当です。
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・・・これは間違いなく、近くに居そうですね。まだ登山道にも入っていない段階ですが、ここで早々とクマ鈴を装着しました。

この道が間違いなく国道であること示した、おにぎり型の標識が建っていました。前述の通りこの先には不通区間があるわけなのですが、延長工事を行っている様子などは見られません。
国道353号の道路標識
優先度の低い路線であると言う事で、棚上げにでもなっているのだろうか。確かにすぐ隣に国道17号線の新三国トンネルもあるし、県境を越えるトンネルはそんな何本も必要ないと言う判断か。

行く手の左手に、垂直に切り立ったご立派な岩が立っていました。ちょうちん岩と呼ばれている岩です。
三国スキー場跡のちょうちん岩

ちょうちんですか。確かにそう見えないことはありませんが。ちょうちんよりも、もっと似ているものが他にゲフンッゲフンッ!
ちょうちん岩

ここでついに路面の舗装が力尽きました。この舗装道路の末端付近に数台分の駐車スペースが存在します。そんな大挙して大勢が訪れるような山でもないので、満車になることはまずないでしょう。
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舗装が無くなって以降も、砂利の車道がもう少しだけ続きます。ここも一応はまだ国道の扱いなのだろうか。
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道の右手に不自然に伐採されたかのような空間が広がっています。この場所にはかつて三国スキー場が存在していました。ちょうど先ほどのちょうちん岩に向かって滑走するコースだったようです。
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苗場プリンスホテルからの無料送迎バスも運行されていましたが、利用者の減少により平成16年のシーズンを最後に営業を終了しました。現在ではリフトなどの設備もすべて撤去されています。

唐突に現れた通行止めの標識が、森の中にポツンと立っていました。車道歩きはここで終了です。
稲包山登山道入口

10時10分 稲包山登山道入口に到着しました。ここから山頂までは、山と高原地図の標準コースタイムでは3時間ですが、標識には4時間と書かれています。
稲包山登山道入口の標識
はたして実態により近いのどちらなのか。張り切って行ってみましょう。

3.古道の痕跡を辿る、三坂峠への道

歩き始めて早々から、背丈を越える笹に両側を覆われた道が続いていました。マイナールートだけに藪漕ぎもありうるものと覚悟していましたが、幸いにもしっかりと刈払いが行われていました。
稲包山の登山道

水はけが余り良くないのか、道の脇の至るところから水が染み出し、そこかしこに水溜まりができているウェットな空間です。
道の脇にできた水溜まり

当然ながら足元もドロドロのグチャグチャです。足を置く場所を良く見ていないと、不意にくるぶしのあたりまで埋まったりするので注意を要します。
ぬかるんだ地面

だいぶ年季の入った丸太橋が架かっていました。大丈夫かな、腐ってはいないだろうか。
黄蓮沢の丸太橋

何とか渡れましたが、だいぶ心許ない感じです。僅かな幅でしかない沢ですが地形的に迂回が難しく、ここが通れなくなると通行不能になる可能性があります。
黄蓮沢の丸太橋

幅が広くかなりしっかりとした道径の道が続いています。今歩いているこの三坂峠に至るルート上には、かつて四万温泉と湯沢とを結んで古道が存在しました。やけに立派な道なのは、古道のルートをなぞっているからだと思われます。
稲包山の登山道
現在不通区間となっている国道353号線のルートも、概ねその古道を踏襲しています。まあ実際に開通させようとなったら、峠越えなどはせずに早々とトンネルになるのでしょうけれど。

相変わらず湯ノ沢沿いに道が続いています。森の中に轟く水が流れる音が実に心地よい。
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ここまでずっと緩やかな登りが続いていました、ここに来て沢に向かって下り始めました。
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河原まで下りて来ました。なるほどここで湯ノ沢の対岸へ渡渉しろと言う事らしい。
湯ノ沢の渡渉地点

水量の少ない今の季節ならば、何の苦労も無しに浅い部分を渡れます。川底の石にかなりヌメリがあるので、ストックを使用した方が安定します。
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しっかりとした道だったのはこの渡渉地点までです。ここからようやく登山道らしい山道に変わります。
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沢沿いを離れて、尾根に向かって急登が始まりました。ただ笹を刈っただけの一直線の急斜面で、登りはともかく下りでは難儀しそうです。
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登るにつれて、四つん這いにならないと這い上がれないような勾配になりました。所々にお助けロープが垂らされているので、それらも活用しつつよじ登ります。
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四苦八苦しつつも、なんとか尾根の上まで登って来ました。写真だとちょっとわかり難いですが、前方を横切っているのが上越国境となっている県境の尾根です。
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少し視界が開けて、笹の稜線が見えています。方角的には苗場山などがある方ですが、どの辺り山なのか見当がつきません。
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尾根の上には見事なブナ美林が広がっていました。薄っすらと黄色く色付き始めてはいますが、紅葉にはまだ少し早かったようです。やはり時期的にちょっと中途半端でしたかね。
三坂峠付近のブナ林

三国山脈の主稜線まで登って来ました。ここが群馬県と新潟県の県境であり、尾根の向こう側は群馬県です。
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ここから上信越の三国国境である白砂山(2,139m)まで稜線が続いています。人影疎らな玄人向けの縦走コースであり、このように散々脅し文句が書かれていました。
ぐんま県境トレイルの案内板

白砂山まではここから11kmと、かなり重めの数字が示されていました。トレランでもない限り、山中泊の用意なしには歩けないルートです。
ぐんま県境トレイルの道標

目指す稲包山は白砂山方面とは反対側です。今見えているのは西稲包山と言うピークで、稲包山本体は背後に隠れていてここからだとまだ見えません。
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先へ進みましょう。分岐地点からは三坂峠に向かって一度少し下ります。
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群馬県側の展望が開けました。正面奥に見えているギザギザした山は榛名山(1,449m)です。あの先に関東平野が広がっています。
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11時30分 三坂峠に到着しました。かつての古道はこの地点を越えていたと言う事ですが、現在の登山道は尾根上にあり微妙にルートは変わっています。
三坂峠
この先の四万温泉へと下るルートに至っては、現在の登山道とは全く異なるルートとなっており、その痕跡を辿ることは難しい状態となっています。

4.稲包山登山 登頂編 全方位に視界が開けた知られざる好展望の頂

峠を過ぎると、西稲包山に向かって登りが始まりました。ここでも刈払いが行われていなったら、そもそもまともに歩くことさままならないであろう笹の稜線が続いていました。
西稲包山の稜線

背後の展望が大きく開けました。ぐんま県境稜線トレイルの尾根が延々と続いているのが良く見えます。何とも素敵な稜線ではありませんか。
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山中泊が必須で踏破のハードルはかなり高そうではありますが、それでも一度は歩てみたいと思わせるような光景ではありませんか。

峠から20分程で、山頂らしき場所まで登って来ました。
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11時50分 西稲包山に登頂しました。ここには展望が無く、ただの通り道と言ったところです。
西稲包山の山頂

ここでようやく前方に稲包山の本体が現れた・・・と思いきや、今見えているのは小稲包山と言うピークです。まったく先ほどから、やれ西だの小だのと、なかなか勿体付けてくれる山ですな。
西稲包山から見た小稲包山

どんよりとした空模様ですが、幸いにも高曇りであるため遠くまでよく見えます。上州武尊山(2,158m)と日光白根山(2,578m)の姿が良く見えました。白根山の方は、山頂付近に薄っすらと冠雪していました。
小稲包山から見た武尊山と白根山

鞍部に向かって一度下るのですが、この下りが岩と根っこが複雑に絡み合っていて、何気に歩行に難儀しました。
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小稲包山に向かって登り返すと、今度こそ稲包山の本体がお目見えしました。
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この小稲包山からも、ほぼ全方位に展望が開けています。ですが稲包山の方がさらに眺めは良いので、ここでは周囲の写真を撮るのをぐっと我慢して先へ進みましょう。
小稲包山の山頂

稲包山に向かって最後の登りですが、その前に一度しっかりと下らされます。割とアップダウンは多めの稜線です。
小稲包山から見た稲包山の山頂

稲包山本体への登りも一直線に笹を刈り払っただけの急斜面でした。微妙に斜めっていて、油断すると右側に滑り落ちかねない状態です。僅かな距離ながらも何気に難儀しました。
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四苦八苦しつつ何とか肩の部分まで登って来ました。左へ進むと三国峠方面へと続いています。稲包山の山頂は上越国境の尾根上からは僅かに外れており、完全に群馬県内にあります。
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山頂への最後登りです。この山頂直下の僅かな一帯だけが綺麗に紅葉していました。
稲包山の山頂直下

最後登りを登りきると、周囲が開けた山頂に飛び出しました。これは展望に大いに期待が出来そうです。
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12時35分 稲包山に登頂しました。三国スキー場跡から2時間25分での登頂です。山と高原地図のコースタイムの方が実態に近かったようです。
稲包山の山頂
今回はしっかりと刈払いが行われていましたが、時期によっては藪漕ぎが必要になることもあるらしいので、入り口に掲げられていた4時間と言うコースタイムはそのことを加味したうえでの時間なのかもしれません。

5.稲包山山頂からの展望

それではお待ちかねの、展望の方を見て行きましょう。北東方向には上越国境を形成する三国山脈の山並みが連なります。
稲包山から見た三国山脈

真正面に見えているのは、左が平標山(1,984m)で右奥が仙ノ倉山(2,026m)です。始めて目にするアングルなので新鮮です。
稲包山から見た平標山と仙ノ倉山

遠く彼方には、谷川岳(1,977m)の二つの耳もしっかりと見えています。ここから見ると、トマの耳の手前にある俎嵓(まないたぐら)(1,863m)の存在感が凄い。
稲包山から見た谷川岳

東側の利根川流域の光景です。中央右奥に見えている赤城山(1,828m)の存在感がやはり際立っています。
稲包山からの展望

続いて南側の展望です。本日この後に歩くことになる尾根の先に榛名山の姿が見えています。
稲包山からの展望

西側のぐんま県境稜線トレイルの山並みです。何分馴染みの薄い山域なので、どれが白砂山なのかも良くわかりませんが、三県境界の白砂山をへて上信国境まで延々と連なる長大な山岳地帯です。
稲包山から見たぐんま県境稜線トレイル

浅間山(2,568m)の姿はやはりどっから見ても大変目立ちます。ちなみにぐんま県境稜線トレイルの稜線は、浅間山までずっと繋がっています。通しで歩くと何キロくらいあるのだろうか。
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足元に四万川ダムと奥四万湖の姿が見えます。今は渇水期なのか、だいぶ水位が下がっているようです。下山予定地である四万温泉はあのダムの先にあります。結構遠そうですねえ。
稲包山から見た四万川ダム

山頂に小さなお社がありました。名前からしていかにも豊穣の神をまつっていそうであるし、昔から信仰の対象となって来た山なのでしょう。
稲包山山頂の社

6.稲包山登山 下山編 国境の山を越え四万川ダムへ下る

13時10分 思いのほか素晴らしい展望を前にして少々長居が過ぎました。ボチボチ下山へ移りましょう。もと来た方には引き返さずに、このまま四万温泉を目指します。
稲包山の登山道

山頂からすこし下ると、すぐに樹林帯の中に入りました。稲包山が森林限界を越えているのは、山頂付近のごく限られた一部だけです。
稲包山の登山道
そもそも森林限界の高度を決める要因は気象の厳しさであり、中でもとりわけ冬の積雪量の多さが大きく影響します。

稲包山の場合、上越国境の尾根が冬の豪雪の大部分を受け止めてしまうため、群馬県側に向かって帯びているこの尾根上は、冬の積雪量がそこまで多くはないのかもしれません。

道中に何ヵ所か分岐がありますが、何れも送電鉄塔の巡視路です。脇に逸れずに尾根を忠実に辿るのが正解です。
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下り一辺倒ではなく小刻みにアップダウンを繰り返し、いくつかの名も無き小ピークを越えます。この辺りには特にこれと言った見所もないので、道中の模様はスパッと省略いたします。
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と言う事で場面は飛んで、前方に東屋が見えて来ました。中之条町が赤沢峠に整備した赤沢休憩舎です。
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14時 赤沢峠に到着しました。ここから尾根沿いを外れて、四万川ダム方向へ向かって降下が始まります。
赤沢休憩舎
反対側の猿ヶ京温泉方面に下ることも出来ますが、歩行距離がさらに長くなるので素直に四万温泉を目指した方が無難だと思います。

峠からは東側の展望が少しだけ開けており、赤城山とその麓に広がる利根川の河岸段丘の様子が良くが見えました。
赤沢峠からの展望

峠の先に赤沢山と言うピークがありますが、登山道はピークを踏まずに脇を回り込むようにして続いています。
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迂回が終わると、後はひたすら尾根に沿って下って行くだけです。急坂もなく至って歩きやすい優等生的な登山道です。
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稲包山への登山ルートとしては、どちらかと言うとこちらの四万温泉側からのルートが表で、越後湯沢側のルートは裏ルートと言えます。

なおこの尾根は夏になるとヤマビルが出るらしいので、訪問時期としては秋がオススメです。広葉樹の森が広がっているので、紅葉の時期に歩いたらさぞや壮観であろうと思います。

途中で林道に脱出できるポイントがありますが、とても歩きやすい尾根であるし、遠回りになるだけなのでこのまま登山道を進みます。
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最後の方で尾根を外れて左方向に進路を転じます。踏跡が枯れ葉に埋もれていて曲がるポイントが少々わかりづらいですが、目印のピンクテープはしっかりとあるので周囲をよく観察してください。
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15時30分 奥四万湖の脇にある登山口まで下って来ました。ちなみに山と高原地図だと、ちょうどこの辺りから地図の範囲外になります。この先の道順については、他の手段であらかじめ確認しておきましょう。
稲包山登山口

ダム湖の湖畔に沿って整備された舗装道路を進みます。地図を見た時には湖を眺めながら歩ける道なのだと思っていたのですが、しっかりと木々が茂っていて湖は見えません。
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ダムの近くまで歩いてきたところで、ようやく水面が見えました。やはりだいぶ水量が少ないですね。
奥四万湖

15時55分 四万川ダムに到着しました。ダム堤体の上がそのまま道を兼ねており通行が可能です。
四万川ダム

コバルトブルーの湖水が印象的な奥四万湖です。湖水は酸性度が極めて高く、魚や微生物など生存できない環境であるため透明度が非常に高いのだとか。ちなみに、中央の一番奥にピョコっと突き出しているピークが稲包山です。
奥四万湖

ダムの下流に四万温泉郷があります。四万川の渓谷に沿って連なる温泉地です。鎌倉時代から続くと言う歴史ある温泉地であり、四万の病を癒すと言うのが名前の由来なのだとか。当然、いまからひと風呂浴びて行きますよ。
四万川ダムから見た四万温泉郷
なお、このダムにエレベーターなどは無いため、ここから下までさらに歩いて下りる必要があります。

7.四万の病を癒すという名湯、四万温泉

ダム湖へと続ているこちらの道は、国道353号線です。そういうコンセプトを意図していたわけではありませんが、結果として本日の行程は国道353号線の不通区間を徒歩で越えて来た格好になりました。
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グルと大回りしてダム堤体の下まで下って来ました。四万川ダムは高さが89.5メートルある重力式コンクリートダムで、すぐ下から見るとかなりの迫力です。
四万川ダム

四万温泉には日帰り入浴を受け付けてくれる温泉宿が多数存在するのですが、どこも基本的に宿泊客がチェックインする前の15時までしか受付てもらえません。
四万温泉郷
なので20時まで営業している市営の日帰り入浴専用施設である、清流の湯を目指します。

その清流の湯ですが、四万温泉郷の中でも入り口の近くにあるため、ダムからだと結構な距離を歩くことになります。具体的に言うと、だいたい1時間くらいはかかります。
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温泉街の狭い道を、普通サイズの路線バスがノロノロと走っていました。中之条駅から概ね1時間に1~2本の頻度でバスが走っています。そのため、帰りのバス時間についてはそこまで神経質になる必要はありません。
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陽が沈んで周囲がすっかりと暗くなってしまったところで、ようやく清流の湯の入り口にまで到着しました。・・・こんなに遠いだなんて・・・聞いてない。
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17時 清流の湯に到着しました。市営の施設であると言う事で、入浴料はお安めの500円です。そのかわり、とてつもなく混雑していましたけれどね。
四万清流の湯

風呂から出ると、何時しか小雨がぱらつき始めていました。屋根も無いバス停で18時のバスを待ちます。
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30分少々の乗車時間で中之条駅に到着しました。実はこの駅が何線の駅なのかも未確認と言う山ナメならぬ旅ナメをしていた訳なのですが、JR吾妻線の駅です。
夜の中之条駅前

さてその吾妻線なのですが、運行本数は概ね1時間に1本しかありません。次の電車は19時49分まで無いやんけ。なんてこったい。そういう事なら、温泉でもっとダラダラと時間を潰せばよかった。
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しっかりと1時間以上待たされた後にやって来た吾妻線にのりこみ、帰宅の途に着くのでした。・・・帰りは新幹線を使わなかったので、さらに時間がかかりましたとさ。
中之条駅のホーム

単なる思い付きで訪れた稲包山でしたが、山頂からの眺望は予想をはるかに超えた素晴らしいものでした。帰りに温泉に立ち寄れる立地であることもポイントが高く、隠れた名峰であると思います。

夏は恐らく相当蒸し暑いであろう上に、ヤマビルや羽虫の襲撃に悩まされることになるとになりそうなので、ベストな訪問時期は秋です。湯沢町からの縦走であれ四万温泉からの往復であれ、歩行距離はそこそこ長めのロングトレイとなる点だけが要注意事項です。

上越国境の片隅にある穴場の山へ、温泉に浸かりがてら訪れてみては如何でしょうか。

<コースタイム>
苗場プリンスホテル(9:10)-稲包山登山道入口(10:10)-三坂峠(11:30)-西稲包山(11:50)-稲包山(12:35~13:10)-赤沢峠(14:00~14:10)-稲包山登山口(15:30)-四万川ダム(15:55)-四万清流の湯(17:00)

稲包山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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