長野県千曲市と筑北村にまたがる冠着山(かむりきやま)に登りました。
長野盆地の西南端に位置し、古くから月見の名所として知られている山です。棄老伝説が残っていることから、別名で姥捨山とも呼ばれています。麓には重要文化的景観に指定されている姨捨の棚田が広がります。
車があればそれこそ1時間未満で登れてしまう山ですが、冠着駅から姨捨駅までを繋げて歩いて来ました。
2024年6月11日に旅す。
冠着山は長野盆地と上田盆地の間の、千曲川の傍らに立つ山です。別名で姥捨山とも呼ばれており、名前の通り棄老伝説が残る山でもあります。山頂からは眼下に長野盆地を一望することが出来る好展望地です。
たまたま楢山節考を読み直していてふと興味が湧いたのが訪問のきっかけだったのですが、後から調べたら楢山節考の舞台のモデルになったのは現在の山梨県笛吹市の辺りで、冠着山のことではなかったようです。
下山後は月見の名所として名高い姨捨の棚田に寄り道します。かつて松尾芭蕉が訪れて歌を詠んだと伝わる景勝地で、千曲川を見下ろす山腹に作られた階段状の水田が広がります。
公共交通機関の利用を前提とすると、行程の大部分が舗装道路歩きとなってしまう点だけがイマイチいただけませんが、登山と言うよりは半分物見遊山のような気分で訪問しました。
そこで待ち受けていたのは、まったく予期していなかった県道の通行止めでした。遠路はるばる新幹線まで使って訪問したと言うのに、すごすごとは引き下がれません。さあどうするオオツキ。
コース計画
篠ノ井線の冠着駅よりスタートし、冠着山の山頂近くを通っている県道沿いに登ります。登頂後はそのまま北上し、途中で姨捨の棚田に立ち寄りつつ姨捨駅まで歩きます。
冠着山を越えて駅から駅へとつなげる行程です。もっとも、計画通りには事が運びませんでしたがね。
1.冠着山登山 アプローチ編 新幹線で行くさわやか信州への旅路
6時52分 JR大宮駅
贅沢に新幹線を使って長野駅を目指します。冠着山は長野市にお住いの人からすればサクッと登れる近場の里山カテゴリーに属している山だろうと思いますが、東京から行こうとするとなかなかの遠出となります。
8時6分 長野駅に到着しました。さわやか信州にまで来れば少しは涼しいかなと期待したのですが、東京と大して変わらない蒸し暑い空気が出迎えてくれました。今日も暑くなりそうです。
続いて篠ノ井線(しののいせん)に乗り換えます。長野駅と松本駅を結んでおり、長野県内の移動において極めて重要な幹線です。
中央本線と直通運転しているため普段あまり意識していませんが、実は塩尻駅から松本駅の区間も篠ノ井線の扱いです。
8時58分 ゴール予定地の姨捨駅を一旦通り越して、冠着駅に到着しました。何気に難読と言うか、振り仮名が振られていないと読めなさそうな駅名です。
平成25年にリニューアルされたという、簡素な駅舎です。筑北村内にある唯一の鉄道駅ですが、もともとは信号場だったとの事で、市街地の中心からはかなり外れた場所にあります。
2.県道494号通行止。繰り返す、県道494号通行止
9時 身支度もそこそこに本日の高度を開始します。冠着駅から直接歩いて冠着山に登る人は圧倒的に少数派だろうと思いますが、しっかりと道標による案内がありました。
ちなみに本日歩こうとしているルートは、全行程の8割5分くらいが舗装道路歩きです。いつものハイカットの登山靴を履いてきてしまいましたが、後から思えばローカットの街歩き用の靴を履いて来るべきだったかもしれない。
文字が擦れて何と書いてあるのかは読めませんが、いかにも年季の入っていそうな石碑が置かれています。冠着山は相当古い時代から信仰の対象になってきた山なので、この道はおそらくかつての参道でもあったのでしょう。
Y字路にぶつかりました。直進しても一本松峠経由で冠着山に至ることが出来ますが、最短距離で行きたければここを右に入ります。
段々畑が連なる長閑な田園の光景が広がります。多分干し草の匂いなんだろうと思いますが、田園地帯特有の空気が心地よい。
気持ちの良い道ではあるのですが、頭上が大きく開けているため先ほどから直射日光が暑くてかないません。はやく日影の樹林帯に逃げ込みたい。
沿道にアヤメがポツポツと咲いています。山の中に咲いていると鹿に食われてしまうため、案外人里の方が生育に適した環境になりつつあるのではなかろうか。
棚田地帯をすぎると、ようやく日影が現れて人心地つけました。まだ6月の上旬だと言うのに、すでに真夏のような陽射しです。この調子では、今年の夏の暑さはどういう事になってしまうのだろうか。
道の脇にため池がいくつも並んでいます。先ほどの段々畑に水を供給するためのものでしょう。
ため池を横目にしながら登って行くと、全面通行止と書かれた案内と共に警備員が立っていました。車両に対するものだろうと思いきや「今工事しているので徒歩でも通れません」と言い渡されてしまいました。えぇ、マジですか。
そういうことはここまで登って来る前に言ってくれと言いたくなる場面でしたが、後からよくよく見返してみると、先ほどのY字路のところにしっかりと案内が出ていました。
私が勝手に、歩行者を除く車両に対する案内だろうと早合点してしまっていただけの事でした。なんてこったい。
通れないものは致し方ありません。予定変更です。
一度冠着駅まで戻り、水色で示した永井ダム経由のルートで登りなおします。一本松峠経由で登れないかと一瞬考えましたが、通行止めの範囲がどこまでなのかイマイチはっきりしないので、大事を取って大きく迂回します。
なお冠着山は山と高原地図の範囲外なので、国土地理院地図とにらめっこしてリカバリルートを策定しました。
いつまでもアナログなことやってないで、いいかげんスマホのGPSアプリか何かを導入すれば良いのでは無いかという気がしなくもありませが、しかしこれで良いのです。ここはもともと、そういうブログなのですから。
やれやれと肩をすくめつつ、もと来た道を駅まで引き返します。まったく朝っぱらから同じ道を登ったり下りたり、一体何をしているんでしょうね。
3.永井ダムを経て冠着山登山道入口を目指す
駅の前を素通りして、道なりに下って行きます。通行止めを最初から把握していればこんな余計な行ったり来たりは必要なかったのですが、いかんせん下調べ不足でした。
特に道標も何もありませんが、この道が3角形になっている交差点から左に入って行きます。
長閑な田園光景の中を進みます。気温はさらに上昇を続けており、のっぴきならない暑さになって来ましたぞ。水たりるかな・・・
自転車のヒルクライムのコースにもなっているらしい。なるほど、確かに大部分が舗装道路歩きなのだから、折り畳み自転車を持ち込むという手もあったか。
背後にまだ雪を被った北アルプスらしき山並みが見えていますが、見慣れないシルエットの山ばかりでイマイチよくわかりません。北葛岳とか不動岳などがある、北アルプスの中では比較的地味な辺りでしょうか。
やがて前方に、スノーシェッドらしき覆いが現れました。本来の用途ではないでしょうが、陽射しを遮ってくれるのなら大歓迎です。
結構な急勾配の登り坂です。スノーシェッドの中には当然歩道などはなく、車が通り過ぎる時に少し怖い感じがします。
シェッドの外に出て以降も、ヘアピンカーブが連続する急な上り坂がしばしの間続きます。
やがて道の左側に、冠着山登山道入口と書かれた標識がありました。ここから取りつけるのかな。
と思ったら、入ってすぐに通行止の案内がありました。道の両脇の植物の育ち具合からして、この道は長らく使用されていなさそうな感じです。
徒歩でならあるいは通り抜けできるのかもしれませんが、あえて冒険する意味も無いのでここは見送ります。
と言う事で分岐を見送り道なりに進むと、今度は右側に小さなダム湖が現れました。永井ダムです。
堤体の上を歩けるようになっているので、せっかくなのでちょっと見物していきましょう。
エメラルドグリーンの水を湛えた小さなダム湖です。これは農業用のため池で、特に名前などは付けられていないようです。
古びた遊具が雑草に覆われていました。水辺の憩いの公園として整備したものの、ほとんど利用されることもなく忘れ去られたのでしょうか。
行く手にトンネルが現れたところで、左の脇道に入っていきます。ここから先はかなり道が分かりづらいので注意を要します。
ぐるっと右へ回り込みトンネルの上を通ったところで分岐が現れました。道標などはありませんがここは左です。
道なりに少し登ったところで再び左折するのですが、この入口がぱっと見では分岐のように見えず、かなりわかりづらいです。見落とさないように、常に左側に注視しながら歩いてください。
とここまで解説しておいてからふと思ったのですが、私と同じルートを歩いて冠着山の登ろとする人は、はたして存在するのだろうか。
入口こそかなりわかりづらかったですが、林道らしき明瞭な道が続いていました。すでに車両は通行しなくなって久しいらしく、道は草に覆われて自然に還りつつありました。
道なりに進んで行くと、左側からやって来た道と合流しました。地図を見た限り、この道はダムの手前にあった冠着山登山道入口とつながっているようです。
土の道を歩けたのも束の間で、舗装道路歩きが再開です。なお、ここから先もまだまだ長いので、覚悟しておいてください。
またもや冠着山登山道入口と書かれた道標が立っていました。先ほどから入口ばっかりですな。
封鎖された休憩所らしき建物と、簡単な案内図が立っていました。かつてはここも、冠着山登山におけるメジャールートだった時代があったのでしょうか。
4.冠着山登山 登頂編 善光寺平を一部する好展望の頂へ
看板が倒れてしまっていますが、ここにも通行止の案内がありました。しかしそんな物はなくとも、ここへ突っこんで行こうと思う酔狂なドライバーはそういないでしょう。
ここからようやく本格的に冠着山登山が始まる訳なのですが、代り映えしない景色の林道をひたすらグネグネと登り続けるだけです。読者の皆様を退屈させるの忍びないので、道中の様子はスパッと省略します。
頭上に空が見えて来ました。周りが見えないのでなんと言えませんが、結構な高さまで登ってきたように感じられます。
冠着山の山頂近くをかすめている長野県道498号線と合流しました。こちらの県道も通行止の案内と共に封鎖れており、どこもかしこも八方塞がりな状態です。
この合流地点から冠着山に取り付けます。標識には行き先は冠着山ではなく反射板と書かれており、どうやらオフィシャルな登山道ではなくバリエーションルートであるようです。
ここまで登って来た道もバリルートのようなものだし、今更気にしてもしょうがないのでこのまま進みましょう。
取り付き部分はかなり強引な感じでしたが、尾根に乗ると明瞭な踏み跡が続いていました。
周囲が開けて、電波反射板が現れました。なるほどこれが標識に書かれていた反射板か。
眼下に千曲川が見えます。正面の奥に見えているのは湯の丸高原辺りかな。晴れてはいますが、気温が高めなためかかなり霞んできました。
反対側には北アルプスの山並み。見えているのはちょうど燕岳がある辺りだと思います。
反射板と過ぎると、目に見えて踏跡が不明瞭になりました。と言うか、そもそも道ではないただの尾根を歩いている状態です。
山頂の直下はかなりの急勾配で、笹を掴みながら強引によじ登って行く状態です。うーむこれは、横着せずに正規の登山道の入口まで周りこむべきであったかもしれない。
四苦八苦しつつ這い上がって行くと、ようやく空が見えて来ました。
正規の登山道と合流しました。私が登ってきた尾根への案内は一切ないので、やはり登山道の扱いではなかったようです。
13時10分 冠着山に登頂しました。途中まで無駄に行ったり来たりしたタイムロスもあり、当初の予定よりも2時間近く遅れての登頂です。いやはや疲れました。
冠着山の山頂に立つ冠着神社です。古事記に登場する、日本神話の月読尊 (つくよみのみこと)を祀った神社です。
友愛と書かれた石碑が置かれています。某元総理大臣の寄贈品か。
ここまでの道程は正直微妙な感じでしたが、山頂からの眺望に関しては一級品です。眼下には善光寺平こと長野盆地が広がり、その先に北信五岳の山々が連なります。素晴らしい。
このビルが林立している辺りが長野駅の周辺かな。山と市街地の近さが、いかにも長野県らしい光景です。
足元に長野自動車道の姨捨サービスエリアが見えています。下山後に脇を通る予定です。
だいぶ霞んでいますが、遠くに見えている尾のギザギザしている山は戸隠山(1,904m)と高妻山(2,353m)かな。どちらも古くから修験の山として名高い存在です。
後立山連邦の白馬三山も良く見えます。まだまだ残雪がたっぷりと残っており、名前の通りの白さです。
5.冠着山登山 下山編 坊城平いこいの森キャンプ場経由で姨捨方面へ
もうだいぶ時間も押してしまっているので、ボチボチ下山に移りましょう。篠ノ井線の姨捨駅を目指して下って行きます。
姨捨山登山としては坊城平いこいの森キャンプ場から登って来るのが最も一般的なルートらしく、登山道はよく整備されています。
山頂から少し下って来た地点に、草むらに没しかけている展望所らしき建物がありました。
山頂からは見えなかった東側の展望が広がります。眼下を流れる千曲川と、その先の上信国境地帯の山々が一望できます。
これは上田盆地かな。信濃の国の四つの平には数えられていませんが、山間にかなりの広さの平坦地が広がっているのが分かります。
分岐が現れました。ここを左へ進むと、林道を歩かずにショートカットできる登山道があったらしいのですが、途中に崩落個所があるらしく現在は通行止となっています。
調べた限り何年もずっと通行止のままらしいので、既に復旧を断念してしまっているのかもしれません。
という訳で、いこいの森キャンプ場方面へと下って行きます。なかなかの急勾配ですが、道はしっかりしていて歩きやすいです。
下山路の途中に冠着十三仏なるものがありました。せっかくのなので寄り道していきましょう。
13体の仏像が並んでいる光景を想像していたのですが、そうではなく天然の石に仏の名前を付けただけという変わった趣向です。どうでしょう、釈迦如来様に見えますかね?
やがて森の中に、キャンプ場のバンガローらしき建物が見えて来ました。
14時30分 坊城平いこいの森キャンプ場まで下って来ました。車でお越しの人は、ここまで入って来ることが出来ます。キャンプ場スタートなら、それこそ1時間とかからずに登れてしまう手軽な山だと言えます。
しかし我ら車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーにとっては、まったく手軽ではない山です。坊城平いこいの森まで乗り入れている、バスなどの公共交通機関は存在しません。つまり、ここからはまた林道歩きです。
下り始めてすぐに分岐が現れました。どちらへ下っても下山は出来ますが、姨捨駅に向かう場合はここを左に進みます。
麓までは結構な距離があります。こうも一日中林道ばかりを歩いていると、流石に少々ダレて来ましたぞ。
所々に眺めの良い場所もありはしますが、それでもやはり全般的には単調です。と言う事で道中の模様についてはここでもスパッと省略いたします。
通行止めになっている登山道の入口がありました。既にだいぶ草に没しており、道のあった痕跡そのものが消滅しつつありました。ここを通れるとかなりのショートカットになるのですけれどね。
ようやく麓の集落まで下って来ました。と言っても、この後まだまだひと道ありますけれどね。
2両編成の篠ノ井線が走っているのが見えます。篠ノ井線の線路はこの先ですぐに、一本松峠の下付近をトンネルで貫いています。
正面に御麓(みろく)と言う名前の小さな集落があります。すぐそこにある様に見えますが、間に小さな川が流れているため一度集落の下の方まで下って橋を渡る必要があります
普段から主に車で移動しているであろう現地の人にとっては大した迂回でもないでしょうが、徒歩の人間にとっては結構な距離です。簡易的なものでいいから、橋をかけてくれい。
こんなちっぽけな川を渡るだけのために、思わぬ大迂回をしました。良く地図を見返すと、どうやら動物除けのゲートを通った直後くらいに川の対岸へ行ける横道があったようなのですが、今となっては後の祭りです。
余計に下ってしまった分プラスアルファを登り返して、篠ノ井線の踏切を渡ります。
続いて頭上高くを行く長野自動車道の橋脚の下を潜ります。長野と松本間については概ね篠ノ井線と同じルートを辿っていますが、用いられた土木建築技術に隔絶の差を感じます。まあ、作られた年代が全然違いますからね。
おかしいな。下山しているはずなのに、先ほどから何故か激しく登り返しさせられている。姨捨駅自体が登り坂の途中にある駅なので、駅に至る道も必然的に山道になってしまうのです。
登り坂の途中で振り返ると、冠着山の姿が良く見えました。付近一帯の山の中でもかなり目立ち、古くから信仰の対象になって来たのも納得です。
先ほどは下をくぐった長野自動車道の、今度は上を渡ります。登ったり下りたり忙しないですな。
地形の問題で真っすぐな道を通すのが難しいのか、長野自動車道の両側を行ったり来たりします。
山頂からも見えていた、姨捨サービスエリアの脇まで歩いて来ました。高速バス乗り場の入り口があるのでちょっと覗いてみましょう。
帰りに丁度良い時間帯のバスがあったら楽だなあと思ったのですが、そもそも東京方面に直通しているバスは運行していませんでした。
車に乗って来てもいないのにSAの中を歩くと言うのは、何やら妙な気分です。
ちょうど小腹が空いて来たので、お食事処で長野名物のソースカツ丼を頂いて行きます。長野名物と言っても、ソースカツ丼は南信の伊那地方の名物で、北信の長野市とは無関係なんですけれどね。
SAからも冠着山の姿が良く見えました。山頂からSAが見えていたのだから、当然逆もまたしかりな訳です。
6.姨捨の棚田とスイッチバックの姨捨駅
後は駅へ下るだけなのですが、その途中で有名な姥捨ての棚田を見物していきます。
踏切まで下って来ました。駅へ向かうにはここを左へ入るのですが、一度踏切を渡って直進します。
この踏切の下に棚田が広がっています。前方に棚田のビュースポットらしい高台が整備されているので登ってみましょう。
文部科学省の予算で立てたらしい、立派な案内板が立っていました。
と言う事でこちらが姨捨の棚田の光景です。斜面上に棚田が連なり、その先に善光寺平が広がっています。なるほど確かにこれは、画になる光景です。
棚田の先に冠着山の山頂も見えています。かつて松尾芭蕉が、この田んぼの水面に映った月の姿を詠ったらしいのですが、流石に月が登ってくる時間までは待機できないな。
「姨捨の棚田 月」というキーワードでグーグル画像検索をすると、良い感じの写真が沢山出て来るので興味がある方はどうぞ。
見るべきもの見たので、駅へと向かいましょう。姨捨駅は大変珍しいスイッチバック構造をもつ駅です。ちょうど長野行きの電車が出発するタイミングだったので、このまま見物します。
駅から出て来た電車は、ポイントを通過したところで一度線路上に停車します。ポイントの切り替え後に、また元来た方向へ戻って行きます。
そして駅の右わきから下って行きます。線路の途中にスイッチバックがあるのではなく、駅へ入線する時にだけバックするという大変ユニークな構造です。
踏切の上から線路を見たところです。左奥が姨捨駅で、右側の線路が長野方面です。
同じく踏切の上から反対側の松本方面を見たところです。ちなみに姨捨駅には停車しない特急電車は、切り返さずにそのまま真っすぐ素通りして行きます。
17時25分 姨捨駅に到着しました。なかなか立派な駅舎を備えていますが無人駅です。
ホームにあるベンチが外向きに設置されています。さあ、重要文化的景観の棚田を存分に眺めなさいと言う、JR東日本からの粋な計らいなんでしょうか。
先ほど見物してきた姨捨の棚田は、この通り駅のホームから良く見えます。
駅名標に書かれている線も、スイッチバックの形が正確に図式化されてしました。なかなか芸が細かい。
そうこうしている内に、長野方面から松本行きの電車が登って来ました。山岳鉄道並みとまではいきませんが、かなりの急勾配を登っているのが良くわかります。
長野盆地と松本盆地の間には山岳地帯が横たわっており、その2つの盆地を結んでいる国道19号線は、山間部を切り裂くように流れている犀川に沿って作られています。
川沿いではない場所を通る篠ノ井線はどうやってこの山間部を越えているのか疑問だったのですが、どうやっても何も単に頑張って登っていただけなんですね。
折り返して駅のホームに入って来ました。踏切があった辺りに駅を作れば、いちいちこんな面倒なことをなことをしなくても済みそうなものですが、そうしないのはスペースの問題か何かでしょうか。
成り行きで松本に来てしまったので、帰路は新幹線ではなく特急あずさに乗り込み帰宅の途に着きました。
大部分が舗装道路歩きとなるコースであったため、登山と言うよりは半分観光のような気分で訪れた冠着山でしたが、通行止により思いもよらず長距離を歩くこととなりました。この記事が公開される頃にはすでに工事は終わっているので、今なら当初計画のルートの通りに歩けます。
公共交通機関を使って登る人はほとんど存在しなさそうな冠着山ですが、姨捨の棚田見物を行程に組み込むことができるので、電車を使って登るのも悪くない山だと思います。なお舗装道路きがかなり長くなるので、訪問の際はローカットシューズの着用を推奨します。
<コースタイム>
冠着駅(9:00)-通行止地点(9:50)-冠着駅(10:20)-永井ダム(11:10)-冠着山登山道入口(12:00)-冠着山(13:10~13:50)-坊城平いこいの森(14:30)-姥捨SA(16:35~17:05)-姨捨駅(17:25)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
クニの山だ!
自分自身の育ちは東京ですが、親戚はほぼみな北信に散在、子供の頃から夏冬春の長い休みには大概この近くで過ごしてました。
東京から向かうと冠着山トンネルが長かったこと、麻績や姨捨の駅の景色が寂しかったことが、子供心に印象強かった。
祖母がいよいよ危なくなった頃、
「おい、来いよ」
と叔父にクルマで連れ出され、
「元気な頃にな、ばあちゃん連れてここまで月見に来たんだ」
とボロボロ泣きながら田毎の月の石碑の近くを歩く叔父貴の後ろを黙ってついて歩いたことがあります。
貫徹さま
コメントをありがとうございます。
私も育ちは東京ですが、母親の実家がある岩手県の岩手山には強い思い入れがあり、クニの山という感覚はとても良くわかります。大人になってから登ってみると、当時とはまた違った多くの発見があると思いますので是非。
こんばんは
前の方のコメントに便乗する形で失礼します。
オオツキさん,ルーツは岩手にありましたか。
私も妻が岩手人なので,岩手にはよく行っています。
岩手の姥捨ての里といえば,遠野のデンデラ野ですよね。途中から遠野を思い浮かべながら読ませていただきました。
棚田,美しいですね。のんびり行ってみたいです。
さん太さま
コメントをありがとうございます。
子どもの頃の夏休みは毎年岩手で過ごし、砂鉄川で泳ぎ覚え、室根山で山登りの楽しさを知りました。生まれ故郷ではありませんが、間違いなく原風景の一つです。