御前山 桂川沿いに立ち並ぶ4座の御前山を巡る

桂川橋から見た御前山
山梨県上野原市にある鶴島御前山(つるしまごぜんやま)、栃穴御前山(とちあなごぜんやま)、四方津御前山(しおつごぜんやま)および綱之上御前山(つなのうえごぜんやま)に登りました。
いずれも上野原市内の桂川沿いにある低山で、戦国時代にはリレー形式の烽火台が設置されていました。現在ではあまり歩く人は多くはなく、半ば藪に覆われひっそりとした山々です。
ゴールデンウィークの喧騒を避けて、近場で御前山巡りをしてきました。

2024年5月3日に旅す。

時はゴールデンウィーク後半戦。大勢の登山者で混雑するであろう人気の山を避けて、近場の上野原で里山巡りをしてきました。目的地は前々から気になっていた御前山です。
上野原駅の駅前
駅前からすでに見えている駅チカ物件です。お手軽な里山なのかというと案外そうとは言えず、かなり急峻で容易には登れない山です。

実は上野原市内には御前山と呼ばれる山が全部で4座あります。桂川の両岸に並んでおり、戦国時代には甲斐武田氏の烽火台が置かれて、北条氏に睨みをきかせる最前線でした。
桂川の両岸に立ち並ぶ上野原市の御前山
桂川をさらに上流へ遡った大月市内にも2つ御前山があり、桂川沿いの御前山は全部で6座存在します。今回は上野原市内にある4座を巡って来ました。

中央本線沿線のあまり歩かれていない里山にありがちな危険個所もあり、標高の割にはなかなか歩き応えのある行程でした。上野原御前山巡りの記録です。
四方津御前山の馬の背

マップ
上野原の御前山4座コースマップ
上野原駅から直接歩いてスタートし、桂川を上流方向へ遡りながら鶴島御前山、栃穴御前山、四方津御前山および綱之上御前山の4座を巡ります。

下山は梁川駅に下ります。御前山巡り意をしつつ駅から駅へと繋げて歩く行程です。

1.御前山登山 アプローチ編 連休中でも大きな混雑はない上野原

6時11分 JR高駅
いつもの6時14分発松本行きの鈍行列車で上野原を目指します。ゴールデンウィークにしては空いていると思ったのもつかの間、東京方面からの中央線快速が到着するなり車内は超満員になりました。
JR高尾駅のホーム

6時32分 およそ20分程の乗車時間で、上野原駅に到着しました。他の乗客たちはもっと遠い山を目指しているらしく、上野原で下車した乗客はわずかでした。
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まだ路線バスが動き出す前の時間であるため、駅前は閑散としています。ちなみに最初に登る鶴島御前山は、駅前からもう既に見えています。
上野原駅の駅前

2.急峻な岩場に囲まれた鋭鋒、鶴島御前山

6時40分 身支度もそこそこに、本日の行動を開始します。駅から桂川の下流方向へ少し歩き、右折して桂川を渡ります。
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桂川に架かる、その名も桂川橋です。上野原の市街地は桂川北側の河岸段丘の上にあるため、この辺りは駅の近くとは言っても閑散としています。
桂川橋

桂川というの山梨県での呼び名で、神奈川県内に入って以降は相模川と呼ばれます。このすぐ下流に相模湖があるため、水流は殆どんなく大きな水溜まりのようになっています。
桂川橋から見た桂川

上流方向を目を向けると、ちょうど正面に鶴島御前山の姿がありました。急登がエグイと言う評判はよく耳にしますが、確かに山頂付近がかなりの鋭角になっているのがわかります。
桂川橋から見た御前山

橋を渡るとすぐに高台の上に小学校が立っているので、その手前から右へ入っていきます。道の角には道標もしっかりとあります。
上野原市立島田小学校

上野原市と大月市にまたがる桂川流域には、桃太郎伝説が存在します。近隣の地名(犬目、鳥沢、猿橋、百蔵山および九鬼山)に由来する伝承のようです。しかしこののぼり旗は、岡山県に全力で挑戦するスタイルですね。
上野原 桃太郎誕生の地とかかれたのぼり旗

登山口に辿り付く前の街中の時点から、もりもりと急坂を登って行きます。住宅の裏手に桂川へ流れ込む小さな沢が流れており、複雑な地形なっています。
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徐々に御前山が近づいて来ました。見上げる角度の絶壁感があります。確かにこれは一筋縄ではいかなそうです。
鶴島御前山

横を向くと山に登る前からすでに良い景色です。桂川の北に連なる笹尾根が良く見えます。
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住宅地の端まで来たところで、動物除けのゲートがありました。ゲート明けて中へ入っていきます。
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すぐに登山口が現れました。何故か東京の電力を感じるプラスチック製の階段が埋め込まれた道は、入り口からいきなの急登であるように見えます。
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この先へもう少し進むと、地元の小学生が植樹を行っている学校林から登るルートがあります。そちらの方が多少は勾配が緩いのではないか期待して、先へ進みます。

林道を5分ほど進むと、学校林の入口がありました。ここから取りつきます。
鶴島御前山 学校林の入口

結論から言ってしまうと、鶴島御前山はどこから登ろうが急登です。大した違いは無いので、お好みの方からどうぞ。
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歴代の卒業生たちが、毎年こうして記念植樹を行っているようです。その甲斐もあってか、ただ立っていだけでも困難な急斜面上にも、健やかに森が育っていました。
鶴島御前山の学校林

最初の急登を越えると、木製の展望台を備えた肩のような空間に出ました。御前山では数少ない平坦地です。
鶴島御前山学校林の展望台

眼下に鶴川が合流する辺りの桂川が見えます。急登であるが故に、短時間で一気に標高が上がりました。
御前山学校林の展望台からの展望

小学生たちが植樹を行いがてら遊ぶのであろう、手作りのアスレチック遊具が置かれていました。ああ、とても良いですね。こう言う秘密基地感のある裏山が近くにある学校に通いたかったな。
御前山学校林のアスレチック遊具

整備された学校林がもうしばらく続きます。この辺りはもっと古い時代に植樹を行った場所であるようです。
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先ほどのものよりも年季が入っている感がある、第2展望台がありました。子供用のブランコが木に括り付けてありましたが、かなりの高度感があるで怖いのではなかろうか。
鶴島御前山 第2展望台

眼下に桂川の南岸にある鶴島の集落が見えています。まさに集落の裏山的な立地であることが良くわかります。
鶴島御前山から見た鶴島の集落

学校林から登山道へ復帰する箇所は、沢の上部を横切るトラバースになっていました。あまり歩かれてはいない様で、足元は崩落気味です。ここは慎重に横断します。
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最初に素通りした登山口から登ってくるルートと合流しました。
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ここから急登が再開します。というか、ここからの方がむしろ本番です。踵が痛くなりそうなりそうなエグイ急坂が始まりました。
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上の方は一部岩場になっています。真面目に手も使って、三点支持でよじ登ります。お手軽な里山ハイキングと言った感じの道ではないですぞ、これは。
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急登を登りきると、前方が開けた明るい空間に飛び出しました。
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8時5分 鶴島御座山に登頂しました。まずは上野原御前山カルテットの1座目と言ういうことで、高らかに1を掲げておきます。
鶴島御前山の山頂標識

山頂からは北側の展望が大きく開けています。地味山なのだろう思い込んでいたわけですが、予想に反して眺めの良い山です。
鶴前御前山からの展望

上流方向に目を向けると、街道筋からでは見え難い権現山稜などが良く見えています。じつはこんな展望スポットがあったのですね。
鶴前御前山からの展望

河岸段丘の上に広がる上野原の市街地がすべて見えています。駅がある川縁が、実は町はずれの郊外であることが良くわかります。
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上野原駅と上野原ICを上から見ると、段丘の崖に後から無理やり押し込んだ感がにじみ出ています。
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なぜ中央本線を崖の上に通さなかったのだろうとは思うところですが、用地買収の問題かそれとも地形の問題か。ともかく不便な位置にある駅です。

鶴川にかかる橋梁をあずさが渡る音がここまで聞こえてきます。橋の上に差し掛かってから音が聞こえるまでに若干の間が空いており、マッハ1とは意外と遅いものですな。
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3.難攻不落の岩峰、栃穴御前山

次の栃穴御前山へと向かいましょう。鶴島御前山とは尾根続きで繋がっていて、一度下山することなく縦走できます。
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高柄山方面への分岐を見送り、栃穴御前山方面へ向かいます。このようにしっかりと道標で案内されているルートであるのにもかかわらず、栃穴御前山への登山道は山と高原地図に記載がありません。
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その理由については・・・実際に歩てみればわかります。端的に言うと、一般向けであるとは言い難い道だからです。

分岐地点のすぐ隣に、ハサミ岩と呼ばれている岩があります。確かにチョキをしているように見えます。
鶴島御前山のハサミ岩

正面に高柄山の姿が良く見えます。この高柄山に限らず、秋山山稜の山は基本的にどこも桂川のある北側が急峻かつ道が崩落気味であることが多く、結構危ないルートが多い印象です。
ハサミ岩から見た高柄山

北西方向には、栃穴御前山の後に登る予定の四方津御前山と綱之上御前山の姿が見えました。両方の御前山の間に挟まれるようにして山の上にある町は、コモアしおつです。この後、あの街中を通り抜けます。
ハサミ岩から見た桂川の流域

ハサミ岩をすぎると、鞍部に向かって岩場の急降下が始まりました。安全のためのロープが張られてはいますが、側面は切れ落ちており、落ちたらタダでは済まない高さです。
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両側が切れ落ちたヤセ尾根が続きます。なるほどこれは確かに、あまり一般向けであるとは言い難いかもしれない。
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山の北側にはメイプルポイントゴルフクラブと言うゴルフ場があり、眼下にコースが見えます。どんな大当たりをしようが、流石にここまでボールが飛んでくることは無いか。
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前日が雨だった事もあり、どんな足の乗せ方をしようが絶対に滑る絶望的な状態になっていました。ここは大真面目に、ロープを掴んで背を見せた状態で慎重に下りました。
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下りでもだいぶ肝を冷やしましたが、鞍部からの登り返しではさらい凄い光景が待っていました。坂と言うよりは壁に近そうな勾配の尾根を直登します。
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トラロープが垂らされているので、ありがたく活用しながら登ります。というか、ロープの補助が無かったら多分登れないと思います。駅チカの里山にこんなエクストリームな道が潜んでいようとは、上野原市は侮れません。
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振り返るとすぐ背後に鶴島御前山の姿がありました。こうやって遠目に見る分には、そこまで険しそうには見えないですけれど、登って見ないと案外わからないものです。
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何とか山頂まで登ってきました。なかなか緊張を強いられる道程でした。逆向きに下るのは極めて危険だと思うので、必ず鶴島御前山側から歩くことを推奨します。
栃穴御前山の山頂

9時5分 栃穴御前山に登頂しました。地図で見ると距離的には鶴島御前山すぐ近くにあるのに、思わぬ苦戦を強いられました。
栃穴御前山の山頂標識

ここで北側が伐採されていて少しだけ展望があります。山頂からの眺めに関しては、鶴島御前山からの方がずっと広く周囲が見えます。
栃穴御前山からの展望

4.年季の入った栃穴吊橋で桂川を渡る

麓にある栃穴集落に向かって一度下山します。こちらの登山道は鶴島御前山方面ほどの急勾配ではありませんが、それでもやはり滑りやすいコンデションで、下るのにはかなり神経を使いました。
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そんなわけで、ここでも距離の割には結構な時間をかけて栃穴集落まで下って来ました。
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次の四方津御前山が、ちょうど真正面に見えています。一見すぐ近くにありそうに見えますが、間に桂川が流れているため対岸へ渡る必要があります。
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このまま道なりに進めば杖突橋と言う橋が架かっているのですが、多少遠回りになります。

しかし実はこの住宅の脇の小道を下ってゆくと、地図には乗っていない人道用の吊橋が架かっています。ただ、正直あまりオススメはしかねますが。
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小道に沿って桂川の崖を下って行くと、やがて前方にその橋が見えて来ました。
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その名も栃穴吊橋と言う名称です。この橋について軽く調べてみたのですが、いつ誰が架けたのかなどの来歴の情報は一切発見できませんでした。栃穴集落に住む人々が生活のために架けた橋なのだろうと想像します。
栃穴吊橋

特に通行止めの案内などはありませんが、しかしこのワイヤーの錆びっぷりです。本当に渡って大丈夫なのだろうか。
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桂川に架かる橋は基本的にどこも高々と崖の上に架かっていることが多いのですが、この橋は崖下の低い場所に架かっているため水面との比高もそれほど大きくありません。とは言っても、転落したら死は免れられない高さではありますが。
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おっかなびっくりでしたが、無事に対岸へ渡りました。この橋はそもそも管理されているのかも不明であるし、多少遠回りにはなっても杖突橋に迂回した方が無難であると思います
栃穴吊橋

再び崖の上へと戻ります。踏み跡がほとんど消滅しかかっていることからも、やはりあのは吊り橋は普段はほとんど使用されてい無いのだろうと思います。
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谷底から這い上がると、住宅地の脇に出ました。
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甲州街道を渡り、上野原西中学校の入り口から坂を登って行きます。この交差点にコンビニが一軒あるので、飲み物などの補充が可能です。
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正面を尾根が横切っているのが見えます。この道の右手に取り付きがあるらしいのですが、今のところ見当りません。
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やがてまるで取って付けたかのようなフェンスの切れ目がありました。なるほどここから取りつけと言う事らしい。本当にここなのかと疑念を抱きそうになるような入口です。
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そんな疑念を払拭するかのように、しっかりと案内がありました。ここで良いらしい。
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5.マダニと急登が立ちはだかる四方津御前山

入口からして既に藪っぽいですが、一応下草の刈払いはされているようです。それでは本日2度目の登山を開始しましょう。
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だいぶ崩れ気味ではありますが、しっかりと踏み跡が続いていました。ちなみにこの山、マダニがいます。気付いたらズボンの裾に張り付いており、慌ててズボンの裾を靴下の中に突っ込む簡易防御態勢を取りました。
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そうこうしている内に尾根に乗りました。一応踏み跡らしきのはしっかりとありますが、あまり歩かれていない雰囲気が漂っています。
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ところどころに岩が露出している個所があります。岩殿山などと同じ、桂川周辺の山で良く目にする礫岩です。
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背後の展望が開けて、つい先ほど登って来た鶴島御前山と栃穴御前山の姿が見えました。綺麗に一直線に並んでおり、烽火のリレー方式で岩殿山城まで伝達していたのであろうことが良くわかる地形です。
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前方に四方津御前山の姿が見えました。こちらの御前山も山頂直下がかなり急であるように見えます。もともとは要塞だっただけの事はあってか、どこの御前山も基本的に防御力が高めです。
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尾根上に見るからにヤバそうな箇所があります。馬の背と呼ばれている場所です。
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目の前まで行くと、両側が切れ落ちた尾根上を岩が塞いでいました。地形的に左右にどちらにも迂回は出来ないので、この上を通るしかありません。
四方津御前山の馬の背
礫岩は表面にざらつきがあって摩擦係数が高めなので、バランスを崩しさえしなければ滑ることは無いはずです。

危惧していた通りのエグイ急登が始まりました。手でつかまるものがないと、まともに立っている事すらままならないような傾斜度の斜面です。
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よりにもよって、一番急な箇所のお助けロープが切れてしまっていました。ロープには頼れないので、木の枝やら根っこやらを掴みながら、なんとか這い上がります。
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登りきると、下からも見えていたアンテナが立っていました。ここはまだ山頂ではなく、城塞だった時代の曲輪の跡であるようです。
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明らかに人工的で平坦な山頂部をさらに進んで行くと、ようやく山頂らしき場所が現れました。
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11時35分 四方津御前山に登頂しました。マダニは出るしロープが切れているしで、ここでも思わぬ苦戦を強いられました。
御前山の山頂標識
近場の山でゆるふわな登山をするつもりだったのに、先ほどから以外にキツイい山が連続いていて少々困惑しております。上野原の御前山はどこも侮れませんぞ。

烽火台だった時代には周囲が開けていたのでしょうけれど、今ではすっかりと樹木が生い茂り展望は一切りません。曲輪地形の痕跡が割とはっきり残っているので、登山と言うよりは史跡巡りであると考えた方が良さそうな場所です。
四方津御前山の山頂

6.山上の高級住宅地コモアしおつ

先へ進みましょう。反対側の登山道は特に危険個所もなく踏み跡も明瞭です。無理をして馬の背を越えて来るよりも、四方津側から登る方が無難であるかもしれない。
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最後は鉄の階段を下ります。現在地はまだ山の上なのですが、しかし前方には住宅地があるのがなんと無く見えます。
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ここは日本がまだバブリーな景気に湧いていた時代に開発された、高級住宅地のコモアしおつです。山の上を切り開いて造成されており、中央本線の四方津駅と斜坑エレベータによって直結しています。
コモア四方津の住宅地

背後に四方津御前山の姿が見えます。つい先ほどまでマダニが跋扈する藪山を歩いていたのに、突然花咲く高級住宅地に迷い込んでしまい、あまりのかわり様に困惑します。
コモア四方津から見た四方津御前山

コモア四方津の中心地であるコモアプラザです。スーパーマーケットや理髪店、歯科病院などの商業施設が一通りあります。
コモアしおつ

駅直結の斜坑エレベータ、コモアブリッジもここにあります。料金は無料で、住民でなくても利用できます。と言ってもまあ遊具ではないので、用事もないのにただ遊びで乗るのは遠慮すべきではあるとは思いますが。
コモアブリッジの山上駅

一応バス停もありますが、平日のみの運行で本数も一日に一本だけです。しかし平日の日中に一本しかないバスと言うのは、どういう人達が利用しているのだろうか。
コモアしおつのバス停

次の綱之上御前山へ向かうには、一度山を下りて大野方面へと進みます。
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7.大野貯水池を経て綱之上御前山

ということで、コモアしおつからの下山を開始します。町の中から下山すると言うのも何やら奇妙な気分ですが、実際問題ここは山の上なので一度下る必要があります。
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サクサクと足早に下って来ました。突き当りを左折すると国道20号線方面ですが、反対の右方向へ登って行きます。
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道は再び緩やかに山の上へと登って行きます。コモアしおつとの間に谷田川と言う川が流れているため、それを渡るためだけに一度下った格好です。
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ちなみにこの道を道なりにずっと進むと、中央道の談合坂SAに至ります。

左手に明らかに人工的な土手が見えます。これは大野貯水池のダム堤体です。
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この大野ダムの堤体上を歩いて渡った先に登山口があります。
大野貯水池

この大野貯水池は桂川流域で行われている水力発電用の貯水池です。もっと上流の都留市内で取水された桂川の水は、水路によって送水されてこの池に蓄えられています。
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池の先に扇山の姿がよく見えます。大野貯水池の周囲は桜の名所として知られていますが、今の季節にはもう緑一色です。
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堤体上を渡った先から、再び山中へと分け入って行います。道標上に綱之上御前山の名前はどこにもなく、かわりに御春山と案内されています。
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尾根の上まで登って来ると、立派な東屋が立っていました。この辺りはまだ観光地の領域ですが、最終的にはまた藪の中を突き進むことになるので、どうぞご安心(?)ください。
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完成当時は大野貯水池の全体が見える場所だったのかな。今では樹木が茂り一部しか見えません。
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先へ進みましょう。新緑が眩い広葉樹の森を進みます。
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よく整備されているハイキングコースですが、ここでも切れ落ちている個所があります。
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騙しピークを一つ挟んだ所で、またもや東屋の整備された山頂に飛び出しました。
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13時55分 御春山(おはんなやま)に登頂しました。ユニークな読み方の山名です。これは単なる想像ですが、御前山と同じ御の字があてられているので、読み方が訛るかなにかしただけでここも御前山だったのではなかろうか。
御春山の山頂

ここでも樹木がよく育っていて、展望は遠くの山が僅かに見えるだけです。昔はきっと眺めの良い山だったのでしょう。
御春山からの展望

御春山からは峠に向かって一度標高を落とします。大した下りではありませんが、その後に漏れなく登り返しが付いて来ます。
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登山道の脇にお地蔵さんがポツンと置かれていました。この尾根上に昔から人の往来があったことを示しています。
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14時15分 南米沢峠まで下って来ました。ここにも立派なお社が立っていました。ここから大野貯水池方面へと下る周回ルートが、御春山登山としては最も一般的であろう行程です
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ということで、ここから先はまたもあまり一般的ではない登山道の領域へと入って行きます。入り口からして既に藪っぽい雰囲気が漂っておりますな。
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一応踏み跡らしいものはしっかりとありますが、地面の柔らかさ加減からして歩く人は相当少なそうです。というか、ここを歩くのは御前山巡りをしている人くらいなものではなかろうか。
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山頂に地づいてきたところで、お待ちかねの急登が始まりました。綱之上御前山よ、やはりお前もなのか。
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4座共に一つとして簡単には登れないのには恐れ入りました。どの御前山も駅チカ物件ではありますが、しかしゆるふわではありませんでした。
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トラロープすらもなく足元が泥でツルツル状態の場所あり、なかなかに防御力が高めです。登りだからまだ何とかなっていますが、ここを降りるのは嫌だな。
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悪戦苦闘の末、ようやく山頂まで登って来ました。
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15時 綱之上御前山に登頂しました。完全に玄人向けの縦走コースでした。もっともこれは御前山に限った話ではなく、中央本線沿線にあるあまり人が入っていない山にありがちな傾向ではあります。
綱之上御前山の山頂標識

山頂からは東側だけ展望が開けています。ここまで歩いて来た3座の御前山がすべて見えました。今日の最後を締めくくには申し分のない眺めです。
綱之上御前山からの展望

コモアしおつの街並みも一望できます。ほんとこんな所に良く街をつくりましたな。
綱之上御前山から見たコモアしおつ

8.御前山登山 下山編 梁川駅へ下る

実はこの先にもう1座、斧窪御前山があるのですが、いい加減よいお時間なので今日はここまでにしておきます。反対側の登山道も藪っぽく、綱之上御前山はほとんど歩かれていない山であることが伺えます。
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ヤマツツジがポツポツと申し訳程度には咲いていますが、今年は裏年だと言うことで花付きの方はイマイチです。例年だともう少し華やかなんでしょうかね。
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半ば藪に没しかけているような山であっても、こうして山中に神社があったりして、古くから人との係り合いがある山なのだと言う事が感じられます。
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大きく洗堀された地面に枯れ葉が堆積しており、いかにもマダニがうようよといそうな環境です。長居しても良いことはなさそうなので、足早に参りましょう。
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最後は住宅の横を通り抜けると、梁川駅のすぐ裏手に飛び出しました。一番明瞭な踏み跡を辿った結果ここに辿り着いた訳なのですが、国土地理院の地図に描かれた登山道とは全く異なる下山地点です。
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はて?まあ結果として駅には着いたのだから別に良いのだけれど。

梁川駅の入り口は南側にしかありません。線路の下をくぐって回りこみます。
240503御前山-120

中央本線にはありがちな、天井に頭をぶつけそうになる局小断面のトンネルです。おまけに水路まで兼任していました。
240503御前山-121

16時 梁川駅に到着しました。なんだかんだで、ほぼ丸一日を費やした行程でした。
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満員御礼状態だった高尾行きの電車を一本見送り、その後にやって来た十両編成のオレンジに揺られて帰宅の途に着きました。
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地図を眺めていてたまたま目に止まり、軽い気持ち思いたった御前山カルテットでしたが、意外にも骨太な縦走コースでした。この日に遭遇した困難の多くは、主に登山道の整備状態に起因しているものでしたが、登山の難易度は標高では測れないと言う真理をあらためて見せつけられた格好です。
それでもなおどうしても御前山巡りがしてみたくなったというもの好きな方は、決して容易ではない道である事をご認識の上で訪問してください。

<コースタイム>
上野原駅(6:40)-鶴島御前山(8:05~8:25)-栃穴御前山(9:05~9:15)-四方津御前山(11:35~11:55)-大野ダム(13:10)-御春山(13:55)-南米沢峠(14:15)-綱之上御前山(15:00~15:15)-梁川駅(16:00)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. TS より:

    面白いルートどりですね。
    秋山山稜は一つ一つのアップダウンがけっこう急でしんどかった記憶があります。今回の4つの中だと最初の鶴島御前山しか行ったことがないので、他の3つも冬あたりに行ってみたいと思いました。なお、鶴島御前山に登ったのは約2年前ですが、その時はまだ周囲が刈り払われておらずこんな立派な標柱もなくて眺望ゼロの藪の中でした・・・

    • オオツキ オオツキ より:

      TSさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      地味山だと聞いていたのに眺めがよくて意外な感じがしていましたが、最近整備されたものでしたか。駅チカ物件なので、今後は人気の山に化けるかもしれませんね。