扇山 中央本線のすぐ傍らに立つ好展望の里山で雪山登山

鳥沢駅付近から見た扇山
山梨県大月市と上野原市の境にまたがる扇山(おうぎやま)に登りました。
大月市内を走るJR中央本線の北側の車窓に、名前の通り扇を広げたような姿でそびえたっている山です。駅から直接登れて手軽な上に、山頂からの展望もよくこの付近一帯の山の中では特に人気の高い一座ですです。
大雪の降った翌朝に、すっかり雪化粧した近場の里山で、軽雪山登山を楽しんで来ました。

2017年1月9日に旅す。

ヒャッハー雪だー

時は1月の3連休。雪山を求めて少し遠出でもしようかと、漠然と考えておりました。そんな矢先に天気予報を確認したところ、嬉しいことに雪の方からコッチヘとやって来てくれると言うではありませんか。

前日の1月8日の夜、都内には冷たい雨が降りましたが、山の方では大雪が降ったのだとか。そういう事であれば、わざわざ遠出せずとも、近場の低山でフカフカの新雪を踏む雪山登山ができるというわけです。

と言うことで、本日は中央本線駅チカの山として知られる扇山へ行きます。梁川駅を過ぎた辺りから北側の車窓に現れる、圧倒的な存在感を持った大きな山です。その名の通り、扇を広げたような横長のシルエットをしています。

中央本線を頻繁に利用している人ならば、おそらく何度もその姿を眼にしたことがあるのではないでしょうか。
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大月市が制定した、富士展望に優れた山の称号である秀麗富嶽十二景にも選ばれた、展望の良い山です。特段の危険箇所もないため、雪の積もった状態でも比較的安全に登ることが可能です。

そんな訳で早速、白銀の駅チカ登山へ繰り出してみましょう。

本日のコース計画
扇山・百蔵山縦走のコースマップ
鳥沢駅より梨ノ木平をへて扇山へ登頂。扇山から隣の百蔵山(ももくらやま)まで縦走して猿橋駅に下る。そこそこ歩き応えのあるコースです。

1.扇山登山 アプローチ編 白銀の世界となった鳥沢駅より、徒歩で梨ノ木平登山口へ

8時40分 JR中央本線 鳥沢駅
目が覚めたら雪国だった。本当の事です。高尾駅周辺では、殆ど雪は積もっていませんでした。いきなりの景色の変化に少々驚きです。
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目指す扇山は駅のホームからすでに見えています。流石は駅チカの山。
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JR東日本は今、国鉄時代に作られた古き良き個性的な駅舎達を、無味乾燥な安っぽいプレハブ風の駅舎に置き換える改悪を順次進めています。ここ鳥沢駅もついにその餌食となってしまいました。

これが在りし日の鳥沢駅です。木造のレトロチックな佇まいが、とても良い味を出している駅舎でした。
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そしてこちらが現在の姿になります。なんと言うか、公衆トイレにしか見えません。
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しかも、トイレみたいな見た目をしているくせにトイレが無いというオマケつきです。JR東日本にはガッカリだ!
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トイレの話ばかりしていてもしょうがないので、そろそろ本題に戻りましょう。扇山に向かってまずは市街地の中を進みます。
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この通り目的地が常に正面に見えているので、まず迷う心配はありません。
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分岐には、このように丁寧に道標がついています。大月市は実に親切です。
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こちらは扇山のお隣さんである百蔵山です。今日の計画では、扇山からあそこまでを縦走することにしています。ピラミダルな立派な山容をした山ですね。
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人の顔のように見える砂防ダム。一度そう見えてしまって以来、涎を垂らしている子供にしか見えなくなってしまいました。
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横から見た小金沢蓮嶺です。見事に真っ白ですね。一番左のピークが滝子山です。
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先ほどから、一人と一匹のトレースがずっと続いています。
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トレースが無くなりました。朝の犬の散歩コースはここまでなのでしょう。この先は、ゴルフ場脇の道を延々と登ります。
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結構深く雪が積もっていそうだったので、今日は冬靴を履いてきました。しかし、これは完全に失敗でした。足首が固定されてしまう冬靴は、舗装道路を長距離歩くのには全く向いていません。

9時55分 梨ノ木平に到着しました。歩き難い靴と正月の不精と美食が祟ってか、ぜんぜんペースが上がりません。標準コースタイム以下のペースです。
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なお、鳥沢駅からここまでタクシーを使った場合、料金は大体1,800円くらいだそうです。

2.扇山登山 登頂編 新雪の低山で繰り広げられる、まさかのラッセル地獄

観音様の脇を通って登山開始です。
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山椒の里と書かれた看板を、3回くらい目にしました。そんなに強くアピールしたかったんですかね。
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始めは人工林の登りです。里山にありがちな光景ですな。
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結構傾斜がキツイ登りです。梨ノ木平からのルートは、山頂までの最短距離を突き進むため、最初から最後まで急登が続きます。
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しばらく登った所で水場がありました。
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キンキンに冷えてそうと思いきや、意外とそうでもありませんでした。地下水と言うのは、外気温の影響を受けないんですね。
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水場を過ぎると斜度が更に増してきます。九十九折れの急坂を黙々と登っていきます。
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頭上に木が無い場所だと、積雪は30~40センチくらいあります。今のところ埋まるほどではありません。
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基本的にずっと樹林帯が続きますが途中に1ヵ所展望の開ける休憩スポットがあります。正面に富士山が見えるはずですが、本日は山頂部分が完全に雲に覆われていました。
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この付近一帯はツツジの名所として有名です。5月末から6月上旬に見ごろを迎えます。標高が上がるにつれて積雪量が増してきました。膝下くらいまで沈みます。
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ぜーはーぜーはー。まさか1,000メートルちょっとの低山で、ここまで本格的にラッセルすることになろうとは・・・
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11時47分 ようやく稜線まで辿り着きました。結構しんどかった。これはワカンを用意して来るべきであったか。
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稜線上にはトレースがありました。どうやら先行者は百蔵山のほうから登ってきたようです。トレースがあるって素晴らしい。
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トレース泥棒をして快適に歩く内に、山頂が見えてきました。
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12時 扇山に登頂しました。思いのほか疲れる道程でありました。行動開始から3時間20分もかかっています。
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さあお待ちかね、こちらが本日の秀麗な富嶽です。・・・あまり秀麗でないですね。辛うじて裾野の部分がなんとなく見えています。
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これではあんまりなので、晴れている時の参考画像を置いておきます。雲が無ければこんな風に見えます。
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参考画像がすぐに出てくるくらいだからお察しの通り、この山には過去に何度か登っています。手ごろで登りやすいんですよね、この山。

山頂の様子
広々としています。富士山方向以外はあまり展望がありません。
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これがほぼ唯一の展望ポイントです。中心に見えているのが上野原の市街地。その右上には相模湖の端が少し見えます。
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ベンチも何もかも埋もれてしまっているので、雪を踏み固めて休憩スペースを確保します。
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のんびり雪中休息を洒落込もうとしましたが、尻の下が深深と冷えてきたので短時間で切り上げました。
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さて、時刻は12時過ぎ。途中でラッセルに苦戦したこともあってここまで標準コースタイムの1.5倍近く時間を要しています。

このままのペースで百蔵山まで行くとなると、日没までに戻れるかかなり微妙なところです。

そういう訳で予定を変更します。
扇山下山コース
登り使ったのは別のルートで鳥沢駅へ戻る小周回ルートを取ります。こういう行き当たりばったり柔軟な行動を取れるのも駅チカ登山の良いところです。

3.百蔵山への縦走は取りやめ、早々と下山

12時30分 下山を開始します。こちのルートには、すでにトレースがありました。
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しばらくは緩やかな稜線歩きです。ここ辺りは扇のてっぺんに該当する部分であり、殆ど傾斜の無い道が続きます。
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進むにつれて、徐々に傾斜が増して真面目に標高を落とし始めました。
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流石に下山時には滑るので、ここでアイゼンを装着しました。12本爪が必要になるような山ではありませんが、冬靴に合うアイゼンはこれしか無いので選択の余地がありません。
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犬目への分岐を通過します。左に行くと四方津駅に通じるルートを辿れます。車道歩きが長そうなのでここは素直に右へ。
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九十九折れの道を延々と下ります。
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雪が消えたり現れたりを繰り返すので、アイゼンの外し時の判断が難しいですな。こういう時はチェーンスパイクが一番です。

とここで、前方の視界が開けて絶景の予感です。
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正面の山が倉岳山(990m)。そこから稜線で繋がっている右の山が高畑山(981m)。どちらも秀麗富嶽十二景の一座です。秋山山稜と呼ばれる稜線です。
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こちらは丹沢方面。中央左寄りに見えている高い山がたぶん丹沢最高峰の蛭ヶ岳(1,673m)。
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足元には林道の切り通しがあります。写真だと高度感がイマイチ伝わりませんが、落ちると即死級の高さです。くれぐれも足元には気をつけましょう。
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林道と合流しました。山梨県の県営林道扇山線です。ここから先は駅までずっと舗装道路歩きとなります。
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林道上に富士山絶景ポイントがありました。さてどんな感じでしょうか。
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朝のどんよりとした曇り空が嘘の様に、青空が広がっていました。富士山も山頂で見たときよりは、だいぶ雲が取れています。出来れば私が山頂に居る間にこの光景を見せて欲しかったな。
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富士山に向かって歩く気持ちの良い道です。まさか下山後の林道歩きにこのようなハイライトが待っていようとは、予想外でした。
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脇が甘くないゲートに行く手を阻まれまる。ここは右の柱と斜面の隙間を通り抜けました。
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鳥沢駅まであと3kmほどあります。まだ結構遠いですね。扇山は駅から直接登れることが一つの売りになっている山な訳ですが、どのルートを取るにしてもアプローチの舗装道路歩きが結構長めです。
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大月エコの里なる施設の前を通ります。キャンプや農業体験がなどが出来るようです。詳しくは公式サイトをご覧下さい。
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大月エコの里は、関東の富士見百景に選ばれています。残りの99景がどこなのか気になる方は、これまた公式サイトへどうぞ。
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朝よりもだいぶ気温が上がってきており、麓ではすでにかなり雪がとけていました。おかげで辺り一面が水浸し状態です。
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振り返ってみた扇山です。名前の通り横に長い山なのが良くわかります。
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14時45分 鳥沢駅に戻ってきました。冬靴での長い舗装道路歩きが祟ってか、靴擦れを作ってしまいました。
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ちょうどいいタイミングで高尾行きの鈍行列車が来たので、それに乗って帰宅の途につきました。
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駅チカ雪山登山はこんな感じで終了です。この山が雪に覆われる日が年間何日くらいあるのかはわかりませんが、運よくそのタイミングに訪問できれば、さしたる危険も伴わずに雪山気分を味わえます。
今回は百蔵山までガッツリ歩くはずの計画が、ラッセルに早々と根をあげてヘタレる情けない結果に終わりました。ただ、そう欲張らずとも、扇山だけを目当てに登っても十分に満足できるだけのボリュームを持った山です。
車道歩きが若干長いですが、バスを一切使わないため、時間を気にすることなく計画を立ってることが出来ます。そんなに力まずに手軽に山歩きを楽しめる、とても良い山だと思います。

<コースタイム>
鳥沢駅(8:40)-梨ノ木平(9:55)-扇山(12:00~12:30)-大月エコの里(14:10)-鳥沢駅(14:45)

※標準コースタイムよりかなり遅めのペースです。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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