八ヶ岳連邦の縞枯山(しまがれやま)と茶臼山(ちゃうすやま)に登りました。
北八ヶ岳に広がる非常になだらかな山容を持つ山で、その名の通りシラビソの縞枯れ現象に覆われています。北八ヶ岳ロープウェイを使用すれば1時間で山頂に到達することが可能であり、比較的手軽に雪山を体験することが出来る、格好の入門コースとなっています。
雲ひとつ無い快晴のもと、冬山の雰囲気を存分に堪能してきました。
2017年1月28日に旅す。
北八ヶ岳と言えば、雪山初心者が訪れる鉄板の入門コースです。
このエリアは比較的なだらかな山容を持つ山が多い上に、標高2,200メートル地点まで労せず運んでくれる北八ヶ岳ロープウェイの存在が、この山域を初心者向けたらしめています。
私のような、ガチの雪山に登れるスキルなど全く持ち合わせていないお気楽な週末登山家が、単独行でも安全に登れる雪山となると、そこはやはり初心者向け入門コースしかないわけであります。
北八ツの雪山入門の中で最も定番といえるのは北横岳(きたよこだけ)です。特に危険な箇所もなく、北八ヶ岳ロープウェイの山頂駅から1時間少々で登頂できます。
しかし、コースタイム的にあまりにもモノ足りない感じがしたので、今回は北横岳のお隣の山である縞枯山から茶臼山へ周遊するコースを計画しました。それでもコースタイムは4時間あるかないか位です。
お手軽ながらも、山頂からの眺めは圧巻です。真っ白に染まった中部山岳地帯の眺めを、存分に楽しんで来ました。
コース
北八ヶ岳ロープウェイの山頂駅から、縞枯山と茶臼山を周回します。
1.北八ヶ岳登山 アプローチ編 鈍行列車で行く信州への旅路
6時41分 JR中央本線 高尾駅
松本行きの鈍行列車に乗り込み、茅野(ちの)駅に向かいます。え、特急あずさ?なにそれおいしいの?
流石に松本まで通しで鈍行に乗って移動する人間は余り居ないと見えて、甲府駅を過ぎるころには車内はもうガラガラ状態でした。
車窓より望む甲斐駒ケ岳の勇士。どの方向から見ても、この山のイケメン度は圧倒的だと思います。特急の通過待ちで長々と駅に停車するので、写真撮影が大いに捗ります。
9時23分 茅野駅に到着しました。高尾駅より33駅。所要時間にして2時間41分かかりました。まあ大半は寝ていましたけれどね。。
バスターミナルで北八ヶ岳ロープウェイ行きのバスチケットを購入します。片道運賃は1,250円ですが、往復券が2,300円で買えるので200円ほどオトクです。
時刻表をチェックします。次のバスの発車時刻は10時20分で、まだあと1時間もあります。
今回特急あずさに乗らなかった直接の理由はコレです。あずさに乗ろうが乗るまいが、どのみち7時55分のバスには間に合わないので、それならばとのんびり鈍行にゆすられて来たと言うわけです。
幸いなことに、7人掛けのロングシートであっても、何の問題も無く熟睡できてしまう体質なのでね。
都内から日帰りで北八ヶ岳に訪れようとする者からすると、7時55分のバスは早すぎで、10時20分のバスでは逆に遅すぎます。
9時台に発車するバスがあれば日帰りの利用者がもっと増えると思うのですけれど、この時刻表設定の背景には「日帰りするな。長野に泊れ。長野にもっと金を落とせ。」という、アルピコグループからの強いメッセージが込められているのでしょう。
待ち時間が1時間もあるので、茅野駅の駅舎にある展望台に登って見ます。
展望台から、本日歩く予定の北八ヶ岳の山々が一望で来ました。見事に冠雪していますね。ワクワクしてきました。
北口の駅前広場には、SLが展示されています。当然見に行きました。
C12型と呼ばれる、比較的小型の蒸気機関車です。これには思わず大興奮です。男と言うのは、いくつになってもSLが大好きな生き物なのです。
この後は、駅舎内の立ち食い蕎麦屋で軽く腹ごしらえをして時間を潰しました。
発車10分前にバス停に戻ってきたら、行列が出来上がって大変なことになっていました。油など売らずに素直に並んで待っていれば良かったのに大失敗です。おかげで1時間以上もの道を立って行くハメに。
11時30分 北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅に到着しました。この時点で既に標高は1,700メートル以上あります。
ロープウェイは通常20分間隔で運転されていますが、今日は混雑していると言うことで10分間隔の運転に変わっていました。
11時50分の便に乗れました。窓際に陣取り、カメラを構えてハシャギまくりるオヤジである。
男と言うのは、いくつになってもロープウェイが大好きな生き物なのです。
こちらは本日登る予定の縞枯山です。いかにも北八ヶ岳の山らしい、のっぺりとした緩やかな山容です。
こちらは北横岳です。雪山初心者向けの定番中の定番の山です。ロープウェイを使えば、1時間ほどで山頂に立てます。
蓼科山(たてしなやま)も良く見えました。諏訪富士の異名を持つ名峰です。確かに富士山型の山容をしております。
乗客の9割はスキーorスノボーの滑走組です。登山者は少数派でした。
12時 坪庭に到着しました。時刻が正午になったところで、ようやく出発地点に立てたわけです。北八ヶ岳は遠いいですね。
自宅を出発してからは、既に6時間以上が経過しております。
ロープウェイの最終便は16時だから、現地に留まることの出来る時間は4時間しかありません。まるでラバウルから出撃してガ島上空で空戦する零戦のようです。
・・・わかりにくすぎる例えでしたかね。
2.縞枯山登山 登頂編 みごと樹氷が立ち並ぶ白銀の世界の頂へ
見事な樹氷が出来上がっていました。ロープウェイから降り立つなり、別天地の様相です。・・・寒さの方も別天地でしたが。
こちらは北横岳方面へ続く道です。今日はこっちには行きません。
雨池峠方面に向かいます。目指す縞枯山の名称は道標上にありませんが、道はこっちであっています。
コレですよコレ。期待していた「いかにも雪山っぽい光景」がいきなり眼前に現れてテンションが一気に上がりました。
それにしてもみごとな樹氷です。食べたら美味しそうだと思うのは私だけでしょうか。
一応ワカンも用意してきていますが、トレース上を歩く分には必要なし。ただし、道を外れると途端に膝の上まで埋まります。
八丁平と呼ばれる場所までやってきました。とても山の上とは思えないような、広々とした平原が広がっている場所です。
八丁平に立つ縞枯山荘。通年営業の小屋です。北八ヶ岳が雪初心者向きとされている理由の一つとして、冬期にも営業している山小屋が多いことがあげられます。
八丁平から見上げる縞枯山です。名前の由来となっている、縞枯現象が起きている様子が見て取れます。
縞枯れ現象とはその名の通り、オオシラビソなど針葉樹林の一部分が帯状に枯死する現象です。枯死した木の下からは新しい幼樹が生えて来て、森そのものが世代交代します。
その発生のメカニズムは、未だに良くわかっていません。
縞枯山への取り付きまでやってきました。ここでアイゼンを装着します。
樹氷の中を登ります。ついつい上を見たまま歩いてしまいますが、道から外れると即踏み抜くので油断なりません。
山頂までの標高差は200メートルあるかないかくらいしかありませんが、結構な急登です。とは言っても、前爪が必要になるほどの傾斜ではなく、軽アイゼンでも十分だと思います。
13時 縞枯山に登頂しました。全然山頂っぽくないところに標識が立っており、見落としそうになりました。
縞枯山の山頂部は前長500メートルにおよぶ平坦な回廊状になっています。ここからの光景が圧巻でした。
正面には南八ヶ岳の山々が居並びます。一際高い二つの突起が見えますが、右が阿弥陀岳(2,805m)で左が八ヶ岳最高峰の赤岳(2,899m )ですかね。
こちらは中央アルプスです。南アルプスに比べて、顕著に目立つピークがあまり無いため山座同定が難しい。
そして北アルプスです。まるで絶壁か何かの様に一直線に並んでいます。
中部山岳地帯の只中にある八ヶ岳からは、このように南北中央のすべてのアルプスを一望することが出来ます。
振り返ってみる北横岳。こちらも展望が良さそうな姿をしていますね。
小さいながらエビの尻尾が出来ていました。これが大きく育つのは、2月中の旬頃でしょうか。
素晴らし眺望の場所ですが、強風が吹き抜けて猛烈に寒いという事実も付け加えておきます。
3.好展望地の茶臼岳展望台から、南北中央すべてのアルプスを見渡す。
山頂の回廊を抜けると一旦樹林帯に入ります。とりあえずは風をしのげてほっと一安心です。
森を抜けると目の前に茶臼山がありました。左に展望台があると言うのでそちらに向かいます。
大きな岩がゴロゴロしている場所にでました。あそこが展望台のようです。
13時20分 縞枯山展望台に到着しました。ここの方が、山頂よりも山頂っぽい空間です。
山頂からは全く見えなかった北側の展望が得られます。中心に写っているのは浅間山(2,568m)です。僅かに噴煙が上がっているのが見えました。
展望台より望む縞枯山。こうしてみると、のっぺりしていてピークが何処なのか分かり難い山ですね。
縞枯れ部分に入ると視界が一気に開けます。こういう頭上が開けている場所は、たいてい吹き溜まりなっているので、踏み抜きに要警戒です。
再び森の中へ。縞枯現象の中を突っ切るため、森の中へ出たり入ったりを繰り返します。
13時55分 茶臼山に登頂しました。ご覧の通り展望は全くありません。ここにも展望台があるのでそちらへ移動します。
と言うことで、山頂から10分とかからない距離の場所に、展望台があります。この展望台こそが、本日の行程におけるハイライトでも言うべき場所です。
南、中央、北アルプスを同時に視界に収められる場所って実は余り無いんじゃないでしょうか。日本列島の一番太い部分の圧巻の光景です。
南八ヶ岳の山々。見るからに急峻な岩峰が立ち並びます。比較的なだらかな山容の山が多い北八ヶ岳とは、佇まいの雰囲気からしてまるで違います。
ここは強風の吹きつける場所らしく、雪があまり積もっていません。
縞枯山と北横岳のツーショットです。なだらかな溶岩台地が広がっているのが良くわかります。
御嶽山のアップ。噴煙は見えませんでしたが、未だに山頂付近の立ち入り規制は解除されていません。
4.北八ヶ岳 下山編 五辻を経由して、スタート地点のロープウェイ山頂駅へ
持ち時間も残り少なくなってきたので、名残惜しくも下山を開始します。
茶臼山の山腹より望む縞枯山です。本当に縞柄になっていて面白いですね。
14時50分 五辻まで下ってきました。その名が示す通りの、北八ツを巡る登山道の交差点となっている場所です。
ここからロープウェイ駅までは緩やかな登り基調の道です。踏み抜き多発で何度もコケそうになったので、アイゼンは外してワカンを装着しました。
ロープウェイ山頂駅が見えてきました。最高の雪山ハイクもまもなく終了です。
15時30分 ロープウェイ山頂駅に戻って来ました。正味3時間半ほどの、短いけれど充実した山行きでありました。
ついて早々に15時40分便の入場受付が始まったので、慌ててワカンを外して乗り込みます。
満員だった行きと違い、帰りの便はガラガラでした。利用者の大半は滑走組なので、下りのロープウェイを使う人は小数派なようです。
極寒の地から暖かいラウンジの中へ入って、最初にとった行動がソフトクリーム購入とか、我ながら意味不明すぎます。
バニラとコケモモ味のミックスをチョイス。程よくすっぱくて美味しかったです。
バスの発着時間まではまだ間がありましたが、行きの教訓で早々と列に並びました。おかげでゆったりと座って帰れました。
縞枯山は雪山入門コース定番と言うことだけのことはあって、危険箇所も特になくそれでいて雪山の雰囲気だけは存分に味わうことの出来る、文句なしの良コースでした。今回はわざわざ12本爪のアイゼンを用意していきましたが、軽アイゼンとストックだけで問題なく歩けます。あらゆる人に自信を持ってオススメします。
危険箇所はまったく無いとはいっても、ここが標高2,500メートル近い高山帯であることに違いはありません。一度天候が悪化すれば、大自然の猛威が容赦なく降りかかることになります。天気予報を事前に良く確認し、晴天が約束されている日に訪れましょう。晴天下であれば、さしたる労も無く最高に良い思いが出来ることでしょう。
<コースタイム>
ロープウェイ山頂駅(12:00)-縞枯山荘(12:25)-縞枯山(13:00)-茶臼山(13:55)-五辻(14:50)-ロープウェイ山頂駅(15:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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