長野県茅野市と小海町にまたがる天狗岳(てんぐだけ)に登りました。
北八ヶ岳と南八ヶ岳の境界に近く、八ヶ岳連峰のほぼ中間付近に位置している山です。付近には八ヶ岳が火山であることを物語る温泉や鉱泉が点在しており、中でも日本一高所の露天風呂がある本沢温泉は有名です。
盆休みくらいはゆっくりと温泉に浸かって過ごそうと思い、テントを担いでぶらりと訪れて来ました。
2024年8月10~11日に旅す。
時は令和6年のお盆休みのこと。混みあうであろうことが分かりきっている人気の山は避けて、たまには温泉にでも浸かってゆっくり過ごそうかと思い立ち、本沢温泉へと繰り出して来ました。
日本一高所にある露天風呂で有名な温泉です。ゆっくり過ごすとか言いつつも結局は山に登っている訳ですが、それでよいのです。ここはもともと、そういうブログなのですから。
露天風呂に入ること以外は全くノープランでしたが、せっかく近くにまで来たのでついでに天狗岳に登りました。隣の硫黄岳にも近いので、本沢温泉にお越しの際はどちらでもお好みの方に登れば良いかと思います。
天狗岳に登った後は高見石小屋まで足を伸ばし、人気のメニューの揚げパンを頂きました。以前訪問した時に売り切れで食べられず、ずっと心残りだったものです。
八ヶ岳の真ん中あたりをゆるりと巡って来た2日間の記録です。どうぞ肩の力を抜いてご覧ください。
コース
小海町営バスのみどり池バス停からスタートしてして、しらびそ小屋を経由して本沢温泉まで歩きテント泊します。
翌日は東天狗岳に登頂したのち、中山を経て高見石小屋まで歩き、下山は渋の湯へと下ります。八ヶ岳を越えて東から西へ横断する行程です。
1.南海トラフ地震の巨大地震注意が発令されている中の旅路
8月10日 6時43分 JR高尾駅
小海線への乗り継ぎ時間の都合もあり、普段よりもややゆったりとした始動です。お盆休みと言うだけあって車内は最初から満員御礼状態で、甲府まではずっと立ちっぱなしでした。
東京から八ヶ岳方面まで出かけるとなれば、本来であれば三鷹駅発の始発電車で始動したいところです。
ところが本日は南海トラフ巨大地震注意なるものが発令されており、中央本線はスピードを落として運行するとのアナウンスがされています。
そうなると高尾、大月、甲府から小淵沢と乗り継ぐ始発電車リレーが繋がる保証が全くありません。やむおえず1本後の列車に乗る計画としました。その分だけ登山開始時間が遅くなってしまいますが致し方ありません。
9時45分 小淵沢駅に到着しました。時刻表の時間よりも5分少々の遅れしかありませんでした。中央本線はカーブが多いので、もともと最高速度でかっ飛ばしている区間は短いのかもしれません。
10時7分発小諸行きの小海線に乗り換えます。中央本線の始発とつながる7時45分の列車の次は、もうこの時間までありません。小海線は本数少ないです。
時刻表よりもだいぶ遅れて小淵沢駅に到着した特急あずさのとの連絡を待って、およそ15分遅れでの出発となりました。こちらも車内は満員御礼状態でした。恐るべし、お盆休み。
11時23分 松原湖駅に到着しました。この後に乗車する稲子湯行きの小海町営バスは隣の小海駅発ですが、途中で松原湖駅のすぐ近くを通ります。
普段は殆ど利用者がいない無人駅ですが、本日は結構な数の乗客が下車しました。いったいどこを目指しているのだろう。
バス停は駅からは少し離れた場所にあります。バス停までの案内図が掲げられているので、それに従って進めば問題ありません。
私は松原湖駅は2度目おじさんなので、迷うことなく真っすぐ向かいます。
坂を登って行くと、信号を渡った先にバス停があります。既に何人か並んでいる人の姿が見えます。
11時34分発の稲子湯行きに乗車します。このバスは路線バス用の車両ではないため、停車ボタンなどの設備がありません。乗車時に運転手さんに下りるバス停を口頭で伝えるシステムです。
12時14分 みどり池入口バス停に到着しました。終点の稲子湯バス停まで行っても10分少々しか違いはありませんが、ここが目的地最寄りのバス停となります。
登山口の駐車ペースは満車状態です。結構な数の入山者がいるようですが、さあ果たして本沢温泉のテント場は、お盆休みにどの程度混雑するものなのでしょうか。混んでいたら嫌だなあと、今から戦々恐々しています。
2.森林鉄道の軌道をゆく、しらびそ小屋までの緩やかな登り
軽く腹ごしらえしつつ身支度を整えて、12時25分に行動を開始します。登山開始時刻としては遅すぎるようにも思えますが、本日は本沢温泉まで行くだけなので、まあ特に問題は無いでしょう。
登り始めはしばしの間林道沿いに進むのですが、途中の九十九折れをショートカットできる登山道がしっかりと存在します。
この稲子湯ルートは過去に一度、下山で歩いた事があります。登りに使うのは初めてですが、緩やかでとても歩きやすい道であったと記憶しています。
ダートが長々と続いて、なかなか登山道が始まりません。天気はどんよりとした曇り空ですが、ジメッとしていて蒸し暑く、既に汗だく状態です。早く温泉に飛び込みたい。
ダートが尽きてようやく登山道に入りました。スタート地点の標高自体が高いため、最初から亜高山帯の苔生す針葉樹の森です。
今歩いているしらびそ小屋へと続く登山道は、かつて存在した八ヶ岳森林鉄道の軌道跡を流用しています。こうして所々に、レールが残っています。
レールは割と高価なものだと思うのですが、廃線時に回収しなかったのは何か理由があるのでしょうか。土砂災害が何かで路線が寸断されて取り残されたとか。
緩やかだった軌道跡から離れたところで、登山道は一気に標高を上げ始めました。
折り重なった倒木の表面が、隙間なく苔でコーティングされています。亜高山帯と呼ばれる一帯より標高が高くても低くてもこうはならないのが、実に不思議なものです。苔の一族が繁栄するには、ある程度冷涼である必要があるのだろうか。
分かれた軌道跡と再び合流しました。どうせならずっと軌道跡を歩ける様にしてくれれば良いのに、やはりどこかに崩落個所があるのだろうか。
軌道跡らしくほぼ水平に近い勾配の道になりました。ここまで登って来れば、しらびそ小屋まではもうあと僅かです。
13時35分 しらびそ小屋まで登って来ました。みどり池の辺に立つひっそりとした山小屋です。すぐ近くにキャンプ指定地もあります。
みどり池の先に天狗岳がドーンと見えるはずなのですが、完全に雲隠れを決めていました。正午を過ぎた時間の夏山というのは、だいたいいつもこんなものです。
3.尾根を越えて秘湯本沢温泉を目指す
しらびそ小屋を過ぎて以降もしばしの間、軌道跡の平坦な道が続きます。この辺りでは何故かレールが片側だけ残っていました。
中山峠方面との分岐地点まで登って来ました。最短で天狗岳を目指すのであればここを直進ですが、本沢温泉方面へ進路を転じます。
森の中に湿地帯が広がっており、木道が整備されています。みどり池周辺に広がるこの平坦地は、西暦で言うと887年の平安時代に起こった仁和地震により、天狗岳の山体が崩壊して土砂が流出したことにより形成されと考えられています。
先ほどはガスっていて全く見えませんでしたが、確かにみどり池から見た天狗岳の東側斜面は、大きく崩れた絶壁状態となっています。
このままずっと平坦だと良かったのですが、しらびそ小屋と本沢温泉の間には尾根が横切っており、一度しっかりと登らされます。
登りきるとすぐに下りに転じました。本当にただ尾根を横から乗り越えるだけの道です。
林道と合流しました。ここから先は温泉まで、車でも通れる道です。
車で通れるとはいっても、実質ジムニー専用道と言ったところです。一般車の立ち入りは禁止なので、本沢温泉に浸かりたかったら、自分の足で歩いて行くしか方法はありません。
14時40分 本沢温泉キャンプ場に到着しました。満杯とまではいきませんが、そこそこの混雑度合いです。お盆休みを温泉で過ごそうという考える人は、割とたくさんいたようです。
キャンプ場は小屋から少し離れた場所にあります。テント泊の受付のために、一旦キャンプ場を素通りしてこのまま小屋へ向かいます。
水場は小屋まで行かなくてもキャンプ場内にあります。冷たい水がドバドバと大量に出ていました。
小屋に向かう過程で、沢を渡渉します。以前訪れた時には木橋が架かっていたように記憶していますが、どうやら流出したらしく跡形もありませんでした。
この沢には温泉成分が含まれているらしく、飲まないようにとの物々しい警告の看板が掲げられていました。
14時50分 本沢温泉に到着しました。正午過ぎになってからの出発でしたが、何とか農鳥門限前に辿り着くことが出来ました。
テント泊の受付は、建物の中には入らずにこの売店で行います。テント泊の料金は1,000円で、露天風呂の入浴料も同じく1,000円です。しめて2,000円なり。
4.日本最高所の露天風呂に浸かる
キャンプ場まで戻って本日の我が家を設営します。あまり水はけがよくなさそうな地面ですが、雨は降らない予報なので問題は無いでしょう。
設営が終わったら、貴重品と着替だけを持っていざ露天風呂へと向かいます。聞いた話では脱衣所すらないような本格的な野湯なのだとか。さあて、どんな感じなのでしょうか。
露天風呂までは小屋からおよそ10分くらいかかります。しっかりと山道なので、サンダルではなく靴を履いて行きましょう。
そしてまさかの待ち行列が発生していました。小さな浴槽が一つあるだけなので、同時に入れるのは4~5人くらいです。
沢沿いの崖際にポツンと浴槽だけがありました。なるほど確かにこいつはワイルドだ。
なお、当然ながら混浴です。女性はあらかじめ服の下に水着を着ている人が多いようです。私はタオルで前を隠すだけの正統派(?)温泉入浴スタイルです。
白濁した湯なので底が全く見えませんが、かなり深い浴槽です。座って浸かるのではなく、中腰になって肩までつかる感じです。湯温はかなり高めで、あまり長風呂はできないかも。
浴槽からはこんな光景が見えます。正面に見えているのは天狗岳ではなく、隣の硫黄岳(2,760m)です。現在地はちょうど爆裂火口の下あたりになります。
他にも何枚か写真を撮ったのですが、軒並み裸のおっさんが写り込んでしまっているため、ブログへの掲載は見合わせておきます。令和の時代にポロリは許されませんッ。
お湯は熱いしまだまだ待っている人もいるので、長風呂はせずに短時間で引き上げて来ました。そもそも今回は、お盆休みくらいは温泉でゆっくりしようという企画だったはずなのに、あまりゆっくりはしていない様な?
お湯すらも沸かさない文化的な食事を済ませた後は、何するでなしに寝ころんで文庫本を読んでいるうちに、いつの間にか眠りについていました。おやすみなさい・・・
5.北八ヶ岳と南八ヶ岳の中間に立つ天狗岳
明けて8月11日の5時15分。本沢温泉キャンプ場は森の中にあり、ご来光が見える訳でもないため、朝はゆっくりと始動しました。
5時40分 一晩を過ごした我が家を撤収して本日の行動を開始します。と言っても実はこの後、まったくのノープランです。せっかくここまで来たのだから、硫黄岳か天狗岳のどちらかにでも登って行こうかなと、漠然と考えています。
本沢温泉の小屋まで登ってくると、どうやら朝風呂に向かうらしい人の姿がチラホラと散見されました。なるほど朝に入るという選択肢もありましたか。
美濃戸方面に抜けるとおそらく相当混雑しているだろうから、硫黄岳ではなく天狗岳を目指すことにしました。
小屋を出てしばらくの間は、沢沿いのほぼ水平移動の道です。周囲には僅かに硫化水素臭が漂っており、山の中でもしっかりと温泉らしい情緒が感じられます。
途中で沢を渡渉します。特に案内などはありませんが、この沢は恐らく毒沢の上流なので、この水は飲まない方が良いと思います。
天狗岳に向かって一気に標高を上げ始めました。結構な急登が続くので、気合を入れていきましょう。
頭上が開けて来ました。この辺りから結構あぶなっかしいトラバースになるので、足元注意です。
背後の展望が開けました。足元に広がっている平坦地が、先日に通ったみどり池などがある湿地帯です。天狗岳の山体崩壊によって作り出された地形です。
7時15分 稜線まで登って来ました。天狗岳は東と西の二つのピークを持つ山で、最高地点は左に見えている西天狗岳の方です。
鞍部から東天狗岳への登りはまあまあ急登です。登る分にはなんてことはないですが、下る際には気を使いそうな道です。
山頂の直下は崩落が著しく、工事現場のような鉄の足場が組まれていました。
7時35分 東天狗岳に登頂しました。山頂からは360度全方位の展望が開けています。早速見ていきましょう。
6.東天狗岳山頂からの展望
南側には南八ヶ岳の山々が居並びます。天狗岳は南北に長い八ヶ岳連峰のほぼ真ん中にあるため、北と南の両方が良く見えます。
硫黄岳の爆裂火口の火口壁が特に目を引きます。硫黄岳の右後方にピョコっと飛び出しているのが、八ヶ岳最高峰の赤岳(2,899m)です。
さらに右目視線を動かすと、南アルプス北部の山が連なります。左から順に鳳凰三山、北岳、甲斐駒ヶ岳および仙丈ケ岳です。
西側に目を向けると、すぐ隣に西天狗岳(2,646m)があります。前述の通り天狗岳の最高峰はこちらですが、縦走路からは少し外れた位置にあります。
北西方向には霧ヶ峰(1,925m)や美ヶ原(2,034m)などの信州の高原地帯が広がり、その背後には北アルプスの山並みが見えています。
槍ヶ岳や穂高連峰がクッキリと見えています。空気がよどみがちな夏山にしては珍しく、素晴らしい空気の澄み具合です。もっともこれは、午前中のうちだけだろうとは思いますが。
北側には当然ながら北八ヶ岳の山々が連なります。平べったい山が多く、蓼科山(2,531m)の存在感だけが際だっています。
佐久方面には雲が垂れ込めており、その上に浅間山(2,568m)が頭を覗かせていました。どこから見ても非常に目立つ、地域のシンボル的な存在です。
最後に東側の展望です。こちらには奥秩父の山々が連なります。一つ一つ山座同定しているとキリがないので詳細は割愛しますが、主要なピークの大部分が見えています。
素晴らしい展望を満喫しました。さあて、この後はどうしようかな。
7.揚げパンを求めて高見石小屋を目指す
山頂に着いた時点ではどこへ下山するのかも全くのノープランだったのですが、ふと以前訪問した際に高見石小屋の揚げパンが売り切れで食べられなかったことを思い出しました。
「揚げパンでも食べに行くか―」と言う事で、目的地を高見石小屋に決めました。
と言う事で、まずは中山峠に向かって下って行きます。北側も山頂直下は急峻な岩場です。しっかりと手も使いながら下って行きます。
すぐに分岐が現れました。どちらに下っても最終的には中山峠に行き着きますが、最短で行きたかったら直進です。
右手に稲子岳(2,380m)の絶壁とにゅう(2,352m)の頭が見えています。今日はこちらへは下りずに高見石小屋を目指します。すべては揚げパンのために。
結構急な上に、岩が散乱していて地味に歩きづらい道です。こう言う道をスイスイと下っていけるバランス感覚がある人が、本当に羨ましい。私はひたすらカメのペースでノタノタと下ります。
正面の中山が見上がる高さになりました。のっぺりしていて、山と言うよりは丘と言った方がしっくりくるシルエットです。この後に登り返します。
振り返って見た天狗岳です。こちら側から見る分にはあまり険しい感じはしない姿をしています。
9時20分 中山と峠まで下って来ました。ここから直接みどり池へと下る周回ルートを取ることも出来ます。
峠からは緩やかに登り返します。この辺りは柔らかい土の地面で、足にも優しい登山道です。
いつの間にか夏雲が沸き立って、徐々に稜線上まで迫りつつありました。朝の好展望タイムはそろそろ終わりかな。
にゅうとの分岐地点まで登って来ました。ここから先の区間は自身初めて歩く領域となります。
前方に何となく中山が見えています。鬱蒼とした針葉樹林に覆われており、見るからに展望は無さそうです。あまり期待はせずに行ってみましょうか。
登りが始まると、登山道上には再び大岩の散乱する状態になりました。いかにもなだらかで歩きやすそうな見た目に反して、意外と優しくはない道ですぞこれは。
背後を振り返えると、標高2,500メートル近い山の上とは思えない様な平坦な森が広がっていました。この北八ヶ岳の平坦な地形は、古い時代の火山活動によって形成された溶岩台地です。
9時45分 中山に登頂しました。山頂は鬱蒼とした樹林帯の中にあり、見た目通りの光景が広がっていました。
山頂には全く展望がありませんが、少し下った場所に視界の開けた展望所があります。北八ヶ岳ロープウェイを降りてすぐの場所にある坪庭ともよく似た雰囲気の岩石園です。
広々としたスぺ―スがあることから、大勢の登山者が食事休憩を取っていました。ケルンがやたらとたくさん積まれていますが、何の意味があるのだろうか。
後は高見石小屋まで緩やかに下って行くだけなのですが、表面がしっとりと濡れていて滑りやすい岩に覆われていて、非常に歩きずらい道でした。
北八ヶ岳と言うと、なだらかで歩きやすいゆるふわな登山道のイメージがありますが、先ほどから決して歩きやすいとは言い難い道が続いています。
11時 高見石小屋小屋まで下って来ました。中山からここまで標準コースタイムを大幅に超過してしまっていますが、あのコースタイムは岩の表面が濡れていない時の時間なのだと思います。
なんだかんだで結構遅い到着時間となってしまいましたが、果たして揚げパンはまだ残っているでしょうか。また食べ損なったら、ショックでしばらく立ち直れなくなりそうなものでです。
お盆休みの高見石小屋は大盛況で、ウッドデッキの上は人で溢れていました。
幸いにも揚げパンには無事にあり付くことが出来ました。以前はバラ売りもあったらしいのですが、全部入りセットのみの販売でした。きなこ、ココア、抹茶、チーズおよび黒ゴマ味の5個で1,100円なり。
どれも美味しくて甲乙つけがたいですが、強いて一番をあげるならきなこかな。ともかく前回の雪辱も果たされて満足しました。
8.渋の湯で今度こそゆっくっりと温泉に浸かる
食べるものも食べたの帰りましょう。ここから最寄りのバス停は麦草峠ですが、まだ時間もあるので渋の湯に下ることにしました。
白駒池方面への分岐を見送り、渋の湯方面へ向かいます。先ほどまでの喧騒がうそのように、ここから先はほとんど人とすれ違わなくなりました。
いかにも北八ヶ岳らしい、美しい苔の森が広がっています。南アルプスや奥秩父などの亜高山帯で広く見られる光景ですが、北八ヶ岳は登山口を出発した直後から見られるのが魅力です。
前方に先ほど越えて来た中山の姿が見えました。下から見上げると、かなり大柄な山であることが分かります。
足に優しい道だったのはここまででした。再び大岩が散乱する一帯に入りました。私がもっと苦手としているタイプの道です。こちとら少しも身軽ではないし、バランス感覚もあまり良くは無いんですよ。
あまり歩く人がいなのか、一部藪に没しかけている箇所もあり、なかなか野性味が溢れる道です。メージャールートだと思っていたのですが、そうでもなかったのでしょうか。
何とか岩地帯を突破して、ようやく人心地つきました。北八ヶ岳なんだからきっとゆるふわな道なんだろうと、自分の甘すぎる思い込みが恨めしい。
この先は沢沿いに緩やかに下って行くだけの道です。そうそう、北八ヶ岳の登山と言うのはこんな感じで良いのですよ。
13時45分 渋の湯に到着しました。ここでも標準コースタイムを超過する時間を要しました。と言うかシビアすぎませんかね。単に私がノロイだけ?
せっかく温泉に下山したのだから、当然ひと風呂浴びて行きますよ。昨日の本沢温泉の露天風呂は、あまりゆったりと温泉で寛いだ感じはしなかったので、今度こそのんびりしていきます。
温泉宿なので、日帰り入浴の受付時間は宿泊客がチェックインを始める前の15時までです。下山後にひと風呂浴びていきたいと考えている人は、この時間までに降りてこれるように計画して下さい。
タイミングが良かったのか、他の利用者はおらず貸し切り状態でした。ようやく人間らしい、ゆったりとしたお盆休みを過ごすことが出来ました。
ゆっくりくつろいで、14時55分発の茅野駅のバスで撤収します。この時間が最終便です。八ヶ岳エリアのバスはどこも最終便の時間がやけに早い事が多く、公共交通機関を使って山登りする人にはあまり優しくはない山域と言えます。
バスの車窓から、八ヶ岳の山並みが良く見えました。結局本日は最後まで稜線上がガスに覆われることもなく、絶好の登山日和でありました。
帰りは流石に鈍行ではなく特急あずさに乗り込み、帰宅の途に付きました。
お盆休みくらいは温泉に浸かってゆっくり過ごそうというコンセプトで始まったはずの2日間は、結局は普段と全く変わらなく終了しました。日本一の高所にあるという露天風呂は確かに心惹かれる場所ではありましたが、いかんせんゆったりと過ごせる感じではありませんでした。ゆったりと過ごしたかったら、閑散期の空いているタイミングを狙った方が良いかと思います。
天狗岳がある周辺一帯は八ヶ岳の中では比較的空いている穴場的な領域で、人混みを避けて静かに苔の森を散策したい人には特におススメの場所です。温泉に浸かりがてら、ゆるりと巡ってみては如何でしょうか。
<コースタイム>
1日目
みどり池入口バス停(12:25)-しろびそ小屋(13:35)-本沢温泉キャンプ場(14:40)-本沢温泉(14:50)
2日目
本沢温泉キャンプ場(5:40)-東天狗岳(7:35~8:10)-中山峠(9:20)-中山(9:45)-高見石小屋(11:00~11:35)-渋の湯(13:45)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
始めまして。
軽快な文章と素敵な写真、楽しく拝見させていただいております。
八ヶ岳と言えど、夏は暑いのですね…意外でした。また、本沢温泉が気になっていたのですが、このような場所にあるのですね。参考になります。ありがとうございます。
九部様
コメントを頂きましてありがとうございます。
下界に比べれば気温自体はずっと低いのですが、それでもまったく涼しくはなかったです。2024年の夏は異常な暑さでしたが、温暖化の進行でこれが新たなスタンダードになってしまうのかもしれませんね。