長野県大町市と岐阜県高山市にまたがる双六岳(すごろくだけ)と、富山県富山市との三県県境上にある三俣蓮華岳に登りました。
北アルプスこと飛騨山脈のほぼ中央に位置している山です。槍ヶ岳や黒部川源流域を目指している人に通り道として歩かれことが多い山ですが、この2座自体を目的としてあるいても十分に満足できる出来るであろう大展望の広がる頂です。
日本最後の秘境と呼ばれた地を目指し、花咲く北アルプスの真ん中を歩いて来ました。
2024年7月31日~8月1日に旅す。
時は令和6年の夏。個人的に長年の懸案事項であった雲ノ平に、ようやく訪問してきました。
雲ノ平は飛騨山脈の中でも特に奥まった場所に位置する、黒部川源流域に広がる溶岩台地です。どこから取り付くにしても容易にはたどり着けない奥地にあり、日本最後の秘境と呼ばれています。
1日では到底たどり着けない場所なので、雲ノ平を目指すには必然的に数日間をかけて縦走するとこになります。
今回は雲ノ平編の第1回目と言う事で、新穂高温泉から三俣山荘までの記録です。雲ノ平を目指すモデルコースは色々考えられますが、もっとも一般的と言えそうなのは長野県の新穂高温泉か、もしくは富山県の折立からのアプローチです。
今回私は公共交通機関利用の強みを生かして、4泊5日の行程で新穂高温泉から折立に抜けるルートを歩いて来ました。
あたかも雲ノ平の前座であるかのよう扱いをされてしまっている双六岳と三俣蓮華岳ですが、この2座だけを目当てに訪れても十分に満足できるであろう魅力の詰まった名峰です。
さらっと軽く流してしまう訳にも行かない、絶景三昧だった縦走1日目と2日目の記録です。
コース
新穂高温泉バス停からスタートし、初日はわさび平小屋で1泊。翌日は鏡平山荘と双六小屋を経て双六岳と三俣蓮華岳に登頂したのち、三俣山荘でテント泊します。
新穂高温泉を早朝に出発できるのであれば、初日に双六小屋まで進むのが一般的であろうかと思います。私は公共交通期間利用のためスタート時間がどうしても遅くなってしまうので、わさび平小屋での1泊を挟みました。
1.雲ノ平周遊 アプローチ編 電車とバスで行く新穂高温泉への遠い遠い道程
7月31日 6時13分 JR高尾駅
東京から新穂高温泉へアプローチするとなると、マイカーかもしくは毎日アルペン号の夜行バスを使う人が多いのではないかと思います。私はいつものように電車とバスを乗り継いで行きます。乗って残そう公共交通!
9時35分 松本駅に到着しました。高尾駅からここまで、乗り換えなしの1本で来ることが出来ます。・・・3時間20分かかりますけれどね。あずさですか?いいえ普通です。
午前中の時点で、松本市内の気温はすでに29度まで上がっています。今日も暑い一日になりそうです。早く涼しいであろう山の上へ逃れたい。
ここからはバスです。ロータリーを挟んで駅の向かいにある松本バスターミナルに移動します。松本駅から新穂高温泉へ直通している路線バスは無いため、一度平湯温泉を経由する必要があります。
9時55分発の高山行きのバスに乗車します。こちらのバスは事前予約制です。予約なしで当日に訪れても空席があれば乗車は出来ますが、満席なことも多いようなので予約しておいた方が無難です。
平日であるにもにもかかわらず本日も満席状態で、乗客の半分以上はインバウンドの外国人でした。
途中までは上高地に行くのと同じルートを辿るので、もはや見慣れた感のある車窓の光景が続きます。
11時30分 平湯バスターミナルに到着しました。バスを降りるなり、濃厚な硫化水素臭が出迎えてくれました。温泉入りたいなあ。
なお私はこの後4日間、風呂の無い場所で過ごすことになります。どこかで水浴びくらいは出来ると良いのですが、どうなることやら。
11時40分発の新穂高ロープウェイ行きのバスに乗り換えます。こちらは路線バスの扱いなので予約は不要です。若干うろ覚えですが新穂高温泉までの運賃はたしか910円で、バスターミナルの窓口でチケットが買えます。
平湯の温泉街を抜けて程なく、新穂高ロープウェイの鉄塔が見えて来ました。中腹から上は雲の中です。
12時27分 新穂高温泉バス停に到着しました。自宅を出発してから実に7時間半をかけて、ようやく入り口に辿り着きました。いやはや遠かった。
もっとも、この先はさらに遠いのですけれどね。なにしろ目的地は日本最後の秘境ですから。
こちらの登山指導センターで登山届を提出して行きましょう。用紙も筆記用具も備え付けられてします。
2.林道沿いの清流の宿、わさび平小屋
登山届を記入したりトイレに済ましたりとなんだかんだで時間を費やして、13時15分に行動を開始します。初日の行程は林道を歩いてわさび平小屋まで行くだけなので、ほぼ移動日のようなものです。
実は新穂高ロープウェイには一度も乗ったことがありません。公共交通機関利用者にとって、新穂高温泉はいかんせんアクセスが不便すぎるのです。以前西穂高岳に登った時も、わざわざ上高地から往復したくらいです。
ゲートの脇を通って、左俣林道を進みます。車も通れる道がしばしの間続きますが、この先は一般車は通行禁止です。
ゲートの脇にキャンプ指定地の案内図が掲げられています。この界隈のテント場はどここも基本的に、お盆などの特定日は要予約となります。事前によく確認しておきましょう。本日はまだ予約の必要がない期間です。
森の中に入れば多少は涼しいのではないかと期待していたのですが、ジメッとしていて蒸し暑く不快指数は高めです。まだ縦走初日の歩き始めだというのに、早くも汗にまみれつつあります。
直撃したらタダでは済まなそうなサイズの落石がゴロゴロと転がっています。あまり長居はせずに、足早に通り抜けてしまった方が良さそうです。
道の脇に、風穴と呼ばれている冷風が吹き出ている穴が開いています。途中で涼めるのはありがたい。ここから動きたくなくなるような心地よさです。
しばらく進むと頭上が開けました。曇り空であっても、雲越しに太陽の熱気が感じられます。カンカン照りだったら一体どうなってしまうのだろう。
なお、明日以降は雲一つない晴天になるとの予報が出ております。だからこそチャンスとばかりに飛びついたわなのけですが、暑さに苦しむことになりそうです。
途中に水場があったので、頭から水を被ってクールダウンしました。冷たいを通り越して痛いくらいの水温ですが気持ちがいい。
ほぼ平坦な林道を歩いているだけなのですが、テントと5日分の食料が詰まったでかザックを背負っているので何気にしんどいのです。明日はここへ水が加わるのでさらに重くなります。
道すがらに笠ヶ岳への登山口があります。このキツイと評判の笠新道も、いつか歩いてみたいんだよな
14時35分 わさび平小屋に到着しました。新穂高温泉から1時間少々で歩いてこれる位置にあるため、感覚的には山中泊と言うよりは前泊のようなものです。
飲み物だけではなく水に冷やした果物や野菜まで置いてある辺りが、流石は北アルプスの山小屋と言ったところです。
赤い誘惑にどうしても抗う事が出来ず、テント泊の受付をしつつ、ついでに250円のトマトを一緒に買いました。冷えていてうまし。テント泊の料金は、最近の北アルプスの標準価格になりつつある2,000円です。
水場は小屋の外にあります。アルプス天然水が無料で飲み放題です。
小屋正面の道を挟んだ向かいに小さな沢が流れていて、徳澤園みたいな感じです。せせらぎの音が心地よい空間です。
テント場は小屋の右側の少し奥まった場所にあります。テント場にトイレは無いので、小屋の屋外トイレを借りることになります。
奥へ入って行くと森の中に広々とした空間がありました。利用者はあまり多くなくいたって空いています。
ここに来て陽射しが出てきたので、日影になる木の下に本日の憩いの我が家を設営しました。
なお、わさび平小屋にAUの電波は一切入りませんでした。早々と夕飯を取った後は、テントの中で寝転んで文庫本を読んでいるうちに、いつの間にか眠りに落ちていました。おやすみなさいZzzzzzz。
3.逆さ槍で有名な絶景スポットの鏡平
明けて8月1日の5時 一夜を過ごした我が家を引き払い、本日の行動を開始します。今日は三俣山荘まで歩く予定で、行動時間は10時間近くになる見込みでいます。気合を入れて参りましょう。
まだ暗いうちから歩きだす人が多いらしく、ほぼ最後尾でのスタートです。私は基本的にご来光を見たいなどの明確な理由がないかいぎりは、いつもライトがいらなくなるくらい明るくなってから行動を開始します。
わさび平小屋を過ぎて以降も、もうしばらくの間は林道歩きが続きます。ウォーミングアップ代わりにはちょうど良い。
道の脇に僅かに残雪が残っていました。軽アイゼンは用意してきていないのだけれど、大丈夫だろうか。
渡渉がありましたが、大した水量ではなく飛び石伝いに何なく渡れました。雪解け水なので、たぶんもの凄く冷たいと思います。
小屋を出発して30分ほど歩いたところで、川の対岸へと移る大きな橋が現れました。
堰堤を土台として利用した、なかなか変わった形式の橋です。この橋を渡って進むと、奥丸山を経て槍ヶ岳方面へ至ります。
この橋の袂が双六岳方面へ向かう小池新道の入り口です。ここからようやく登山道が始まります。
双六小屋まではほぼ6時間と、結構重めの数字が掲げられています。それでは頑張って行ってみましょうか。
始めのうちは沢沿いのほぼ水平移動のような道です。名前に新道と付く登山道はロクでもない道であることが多いのですが、果たしてこの小池新道はどんな感じなのでしょうか。
少し傾斜が増して来ましたが、至って歩きやす道です。足元が綺麗に石畳状に整備されている辺りが、流石は北アルプスの登山道と言ったところです。まだ陽射しは道の上にまでは届いておらず、ひんやりとした冷たい空気が心地よい。
6時20分 秩父沢出合と呼ばれている地点まで登って来ました。比較的大きな沢を渡るのですが、しっかりと木橋が架かっていました。こう言うところも、流石は北アルプスの登山道です。
上流方向を見るとかなり大きな雪渓が残っており、そこから絶えず雪融け水が供給されています。沢水でザブザブと顔と言うか頭全体を洗いクールダウンましたが、案の定冷たいを通りこして痛い。
まだ先は長いのでどんどん進みましょう。一部ザレている場所もありますが、全般的に大変よく整備されている登山道です。
背後を振り返ると、新穂高ロープウェイの索道の先、に焼岳(2,455m)の姿が見えていました。焼岳の左後方には、乗鞍岳らしき山の姿も見えます。
ここでついに登山道上にまで陽が射して来ました。ここから先は夏の日差しに苦しめらることになりそうです。森林限界を超えた稜線上には、日影が一切ありませんからね。
背後を振り返ると、小さな谷に沿ってずっと登ってきているいのが良くわかります。胸を突くような急登個所もないし、新道らしからぬ良い道ではありませんか。
これは時期にもよるのかもしれませんが、初夏の小池新道は至る所から水が流れ出ているので、水の携行量についてはそこまで神経質になる必要はありません。途中で随時ボトルに水を補充しつつ進みます。
谷の上部まで登り詰めてきたところで、ちょっとした湿原のようになっている空間がありました。話に聞く鏡池がそろそろ現れそうな予感がします。
と思ったら、まだまだ登りが続いていました。なかなか勿体付けてくれます。
おかわりを登りきると、木道が整備された平坦な空間に出ました。
木道の脇になみなみと水を湛えた池があります。今度こそ鏡池が近そうです。
大きなウッドデッキが整備されています。自身初めて訪れた場所ですが、この景色は雑誌などのメディアで何度も目にしたことがあります。
8時15分 鏡池まで登って来ました。池に映った逆さ槍ヶ岳が見えると言う事で、あまりにも有名な場所です。果たして期待通りの完璧な光景を見せてくれました。素晴らしい!
逆さ槍ヶ岳ばかりが余りにも有名ですが、一層は逆さ穂高も見えています。穂高連峰はパノラマ銀座側から見た姿こそが至高で、裏側から見るとイマイチ迫力不足です。
朝から歩き詰めで流石に少々疲労を覚えたので、食事がてらウッドデッキの上でしばしの休憩を取りました。
4.花咲く稜線と、絶好のロケーションに立つ双六小屋
鏡池から木道を下って行くと、5分とかからない距離に鏡平山荘がありました。良いところに立ってますねえ。
カキ氷が名物なのですが、しかしすでに鏡池で長々と休憩してしまった後なので、ここは心を鬼にして素通りします。
先ほどの鏡池とは別に、小屋の隣にも大きな池があります。山荘の周囲は平坦な窪地になっており、水の溜まりやすい地形になっています。
素晴らしいロケーションにある山小屋です。ただ惜しむらくはキャンプ指定地が無いため、小屋泊のみでテント泊は出来ません。
コロナ渦以降の相次ぐ値上げラッシュもあり、ここ最近はとても山小屋泊をする気にはなれなくなってしまいました。だからこうして、クッソ重たいテント担いでヒイヒイ言いながら歩いています。
鏡平小屋を過ぎると、弓折乗越に向かって再び登りが始まります。とっくに森林限界はこえているため、当然お日様ギラギラです。・・・頑張っていきましょうか。
道の脇にニッコウキスゲがチラホラと咲いています。あまり北アルプスの山にニッコウキスゲが咲く印象が無かったので、意外な感じがしました。
直登はせずに、弓折だけの山腹に沿ってトラバースしながら登って行きます。特にキツイ坂と言う訳でもないのですが、とにかく直射差日光が厳しいと言うか暑い。森林限界を超える山では、なまじ天気が過ぎると言うのも考えようです。
右手には槍ヶ岳から穂高に至る山並みがドーンと見えています。おかげで写真撮影が捗り過ぎて、なかなか歩みが進みません。
眼下に先ほど通って来た鏡池が良く見えています。雲ノ平に辿り着く前から、もうすでに天空の楽園感があります。
暑さにだいぶ打ちのめされそうになりつつ、ようやく稜線の上まで登って来ました。
9時50分 弓折乗越まで登って来ました。笠ヶ岳方面からの登山道とここで合流します。この先は基本的にずっと稜線歩きとなります。
稜線上のハクサンイチゲは今まさに見頃の最盛期を迎えつつあり、至る所に咲き誇っていました。ここは楽園か。
弓折乗越からも、もう少しだけキツめの登りが続きます。ここを登りきると、後は双六山荘までほぼフラットな尾根歩きとなるので、頑張って進みましょう。
前方の視界が開けました。ああ良いですね。こう言う稜線歩きは大好物です。
この後に登る予定の双六岳の本体が、ここでようやくお目見えしました。
背後には笠ヶ岳へと稜線が続いています。聞いた話では、キツイと評判の笠新道を避けて、弓折乗越から笠ヶ岳を目指す人は意外と多いらしい。だいぶ遠回りにはなりますけれどね。
その名も花見平と名付けられた花咲く稜線を進みます。なんだここは、楽園か。(2度目)
黄色い花はミヤマキンバイかな。ともかく、いろいろ咲いていて百花繚乱状態です。
暫しの間、お花畑の中を歩く癒しの時間が訪れました。何なら最後までずっとこの調子だと嬉しいのですが、この後にしっかりとアップダウンがあります。
ハクサンイチゲには負けんとばかりに、チングルマも咲き誇っていました。どちらも白い花でかつほぼ同時に咲くため、割と混同されやすい気がします
左手の彼方に霊峰白山(2,702m)の姿が見えます。あちらも初夏の時期に歩くと、溢れんばかりの花々に埋め尽くされる山です。
この小屋はとにかくロケーションが素晴らしい。鷲羽岳(2,924m)をちょうど真正面に望む位置にあります。
槍ヶ岳へと続く西鎌尾根が前方を横切っています。今回の山行はあくまでも雲ノ平を目標としていますが、裏銀座コースも一度歩いていたいんだよな。歩いてみたいルートが多すぎて、最早収取が付かなくなりつつありますが。
双六山荘までの道程は、見えてからが意外と長かったです。というか、周囲が開けているため、単に遠くからでも良く見えると言うだけのような気もします。
11時15分 双六小屋に到着しました。新穂高温泉を朝一番に出発した人は、初日にここまで登って来るのが一般的であろうかと思います。私はわさび平小屋スタートなので、今日は頑張って三俣山荘まで進みます。
この双六小屋のテント場は大変人気が高く、夏の週末土日やお盆休みには熾烈な予約合戦が繰り広げられます。
明日登る予定の鷲羽岳が谷を挟んだ真向いに立っています。名前と言い姿と言い、なんとカッコいい山なんだろうか。登ってみても凄いらしいので、明日は大いに期待しておきましょう。
稜線上にある小屋なのに、水場があるのが大変ありがたい。この水は何処から引いているのだろうか。
5.通り道扱いされることが多い不遇の名峰、双六岳
ここから先はまたしっかりと登らされます。既にだいぶお疲れ風味ではありますが、別にスピードハイクがしたい訳ではないので気張らずにゆるりと参りましょう。
双六岳と三俣蓮華岳をスキップして、直接三俣山荘へ向かう巻き道も一応存在します。ですがここは当然ながら山頂を経由していきます。最高地点の土を踏むことは、ピークハンターたる者のお勤めでございます。
などと威勢よくうそぶいたのもつかの間。双六岳への登りはなかなかしんどく、早速心が折れかかっています。こんなにキツイだなんて・・・聞いてない・・・
背後の絶景を眺めてしばしの現実逃避を楽しみます。一時的に隠れていた槍ヶ岳が、再び良く見えるようになっていました。
たぶん燕岳(2,763m)がある辺りです。アルプスの女王の異名を持つ美しい山ですが、横から見るとのっぺりとしていてあまり特長が感じられません。
登り切ったと思ったらまだで、その先にようやく本当の山頂部がお目見えしました。なかなか一筋縄では行きませんな。
左手には笠ヶ岳の姿が良く見えていますが、こちら側はだいぶ雲が湧いてきています。夏山の天気なんてものは正午になる頃にはだいたいこんな状態で、むしろ今日は良くもっている方だと思います
右手には鷲羽岳と、そのさらに奥にある水晶岳(2,986m)の姿が良く見えました。水晶岳は日本百名山の中でも登山口からの所要時間が最も長く、日帰り最難関の山だと言われています。
この双六岳の稜線上から見た槍ヶ岳は、鏡池の逆さ槍ヶ岳と同じくらいには有名な光景です。あまりにも有名すぎて、自身始めて見たはずの光景なのに、どこか既視感があります。
12時35分 双六岳に登頂しました。ただの通り道扱いをされてしまう事が多く、巻き道もあるためスルーされてしまいがちな不遇の頂ですが、しかし山頂からの眺望は間違いなく一級品です。
早速周囲は眺めてみましょう。北西方向には、ここまでは全く見えていなかった黒部五郎岳(2,840m)と薬師岳(2,926m)が姿を見せました。
山頂部の巨大なカールが印象的な黒部五郎岳です。だいぶ以前から登りたい山リストに名を連ねている山ですが、雲ノ平と両方を同時に巡るのは行程的にかなり苦しいので、今回は泣く泣く計画から外しました。
こちらは北アルプスの女王こと薬師岳です。薬師岳については、折立に下山する前に立ち寄って行くつもりでいます。
北側には、この後に登ることになる三俣蓮華岳の先に、鷲羽岳と水晶岳が並んで立っています。いずれも飛騨山脈最深部の山々です。
良く見ると、水晶岳よりもさらに奥に、立山と剱岳の頭の部分だけが見えています。
東側には、燕岳から大天井岳を経て常念岳へと続く、通称パノラマ銀座と呼ばれている稜線が連なっています。このブログを書き始めるよりもだいぶ大昔に一回歩いた事あるのですが、もう記憶も曖昧なのでもう一回歩いてみたいんだよな。
槍穂高も当然よく見えます。かくも絶景が広がる山が巻き道でスルーされてしまう事もあると言うのは、何とも勿体ないことです。
南側には笠ヶ岳。とまあこの通り大変眺めの良い山なので、多少面倒でも巻き道でスルーせずに立ち寄って行くことを強く推奨します。
6.飛騨山脈のほぼ中央に立つ三俣蓮華岳
本日のお宿の三俣山荘に向かう前に、三俣蓮華岳のピークもしっかりと踏んで行きましょう。三俣蓮華岳は長野県、岐阜県および富山県の三県境界上にあり、飛騨山脈のほぼ中央に位置しています。
双六岳と同様に大変眺めの良い山で、何よりも名前がカッコいいのがポイント高しです。
双六岳の北側の斜面にも、ハクサンイチゲとチングルマが咲き誇るお花畑が広がっていました。
鞍部にかなりの大きさの雪渓が残っています。こうして常に新鮮な雪融け水が供給されることにより、お花畑が育まれている訳ですな。
ちなみに今山頂のように見えてい場所はまだ山頂ではなく、本当の山頂はもっと奥にあります。
この登り返しがまた意外としんどい。ここまの疲労の蓄積もあってか、徐々に足が前に出なくなってまいりましたぞ。
振り返って見た双六岳です。こちら側から見ると、北峰と南峰の二つのピークを持つ双耳峰であることが良く分かります。
偽ピークを乗り越えると、本当の山頂が姿を見せました。最後のもうひと踏ん張り、頑張って登りましょう。
今度こそ本当のビクトリーロード・・・のはずです。しかし初日からこんなに疲弊していて、果たして明日以降の行程を予定通りに進むことはできるのだろうか。
山頂の標柱かと思ったら、そうではなくただの道標でした。本当の山頂は右奥の細い標柱が立っているいる辺りです。
14時15分 三俣蓮華岳に登頂しました。反り返る様にして曲がった標柱が印象的な山頂です。
鷲羽岳と言う名前の由来であるところの鷲が羽を広げたような姿と言うのは、この三俣蓮華岳から眺めたの時の事を言っています。
足元に本日のお宿となる予定の三俣山荘のテント場が見えています。双六小屋に負けず劣らずな、素晴らしい立地にある山小屋です。
北西方向に目を向けると、薬師岳の手前に平坦な溶岩台地が広がっているのが見えます。こちらが今回の山行の目的地である雲ノ平です。日本最後の秘境をようやく視界内に収めました。
最大望遠で覗くと、雲ノ平山荘の赤い屋根が見えています。明日は鷲羽岳と水晶岳にのぼった後に、あそこまで歩きます。
7.三俣山荘でテント泊する
これで本日の目標はすべて達成されました。そろそろ農鳥門限を過ぎてしまいそうな時間になってきているので、三俣山荘へ急いで向かいましょう。
双六岳の東側斜面はカール地形になっており、山頂を通らない巻き道はこのカールの底を通っています。この巻き道は巻き道で、色々と見所の多そうな道ではあります。
巻き道と合流したら、あとは鷲羽岳との鞍部に向かって下って行きます。
この辺りはハイマツが深く茂っていて、何気に歩くのに難儀します。この時間になっても結構な頻度ですれ違いが発生しますが、彼らは何処を目指しているのだろうか
鷲羽岳が目の前にドーンと立ちはだかる圧巻の光景です。しかし本当に三俣山荘は良い位置に立っておりますな。
上から見ると、テント場は既に大分埋まってしまっているように見えます。フラットなスペースが残って居ると良いのですが。
小屋の近くの一等地は軒並み埋まってしまっていましたが、上の方にはまだまだ空きがたくさん残っていました。まずは受付を済ませるために、いったんテント場を通り抜けて小屋へと向かいます
15時20分 三俣山荘に到着しました。結局は農鳥門限を20分もオーバーしてしまいましたが、受付時に特にお小言などはありませんでした。テント場の使用料金は、ここでも北アルプス標準価格の2,000円です。
ちょうど小腹が空いていたので、食堂でカレーを食べたかったのですが、ラストオーダーは15時まででした。別に間に合わなくても特に小言は言われないけれど、農鳥門限はしっかりと存在していました。
テント場に水場はありますがトイレはありません。小屋のトイレを借りるのですが、テント場からはそこそこ距離がある上に、小屋内の靴を脱がないといけない場所にあるため、少々不便ではあります
カレーを食べそこなってしまったので、お湯すらも沸かさない健康的で文化的な夕食を取ります。スキムミルク(脱脂粉乳)を溶いた水にフルグラ(ドライフルーツ入りの高カロリーシリアル)を突っ込んでいるだけです。
持ち運びが容易な完全栄養食ではあるのですが、流石に5日連続で同ものを食べ続けると飽きて来るので、テント泊時の食事についてはまだ検討の余地がありそうです。
夕食を終えた後は、何するでなしにグダグダと過ごします。ちなみに、ここでもAUの電波は一切入りませんでした。
夕暮れ時の鷲羽岳の姿を写真に収めたところで、今度こそ本日のミッションは完了です。夜中に目が覚めたら星空撮影をしようと思っていたのですが、よほど疲れがたまっていたのか、翌朝まで目が覚めることはありませんでした。
日本最後の秘境雲ノ平を目指す旅は、お天気にも恵まれて最高の滑り出しをすることが出来ました。
何かと通り道扱いされてしまうことの多い双六岳と三俣蓮華岳でしたが、飛騨山脈の最奥部を見渡す山頂からの展望は圧巻です。鷲羽岳や水晶岳と比較されてしまうと若干の見劣り感は確かにありますが、日程的に雲ノ平までは手が届きそうにないと言う人は、この2座を目指して歩くだけでも十分に満足できるクォリティの名峰だと思います。
雲ノ平方面へお越しの際には、多少面倒でもぜひ巻かずに歩いてみてほしい2座でした。
<コースタイム>
1日目
新穂高温泉(13:15)-わさび平小屋(14:35)
2日目
わさび平小屋(5:00)-秩父沢出合(6:20)-鏡池(8:15~8:45)-鏡平山荘(8:50)-弓折乗越(9:50)-双六小屋(11:15~11:30)-双六岳(12:35~13:00)-三俣蓮華岳(14:15~14:30)-三俣山荘(15:20)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
とても素敵な写真を沢山ありがとうございます。
続編も楽しみにしています。
私は登山歴4年の若輩者ですが、いつもオオツキさんのブログを参考にさせて頂いています。
2年前、農鳥小屋のブログを拝見させて頂いて「農鳥小屋行ってみたい!」と思い、白根三山を登り農鳥小屋に泊まりましたが、やはり親父さんはその後引退されましたね。
その時、山小屋泊は私一人でしたので、様々なプレッシャーは有りましたが(笑)、泊まって良かったと思っています。
こんな体験を出来たのはオオツキさんのお陰です。
ありがとうございます。
今後も楽しいブログをよろしくお願いします‼
鈴木さま
コメントを頂きましてありがとうございます。
引退前の農鳥親父さんに会えましたか。今となってはそれはとても貴重な体験であったと思います。農鳥門限なんて言い回しも、やがては通用しなくなってしまう日がいつかはやって来るのでしょうね。
お待ちしておりました大型山行編。それにしても天気が、、、素晴らしいですね!今夏は週末アルプスの天気がイマイチで、個人的には多くのアルプス計画が頓挫したこともあり、写真の美しさと羨ましさ(笑)で溜息が出ました。特に三俣蓮華〜双六は過去に歩いた際ガスガスであったため、自分の記憶と絶景写真のギャップに驚きました。Day3以降も楽しみにしております。
ペン生さま
コメントを頂きましてありがとうございます。
今回の縦走では本当に天気が大当たりでした。3日目もドピーカンの絶景三昧だったのでご期待ください!