福島県西郷村にある赤面山(あかずらやま)と栃木県那須塩原市にある三本槍岳(さんぼやりだけ)と中大倉山(なかのおおくらやま)に登りました。
関東地方と東北地方の境界上にまたがる那須連山の北端付近に位置している火山です。大勢の登山客で賑わう茶臼岳や朝日岳の喧騒からは一転して、あまり訪れる登山者はいない静かな山域です。三本槍岳から東に延びる尾根上にある中の大倉山には、日本国内で最大級のシロヤシオを群生地があります。
見頃のピークからは少し外れてしまったものの、圧巻のシロヤシオ大群生を満喫してきました。
2023年6月4日に旅す。
赤面山は那須連山と呼ばれる山域の北の外れに位置する山です。那須連山は栃木県と福島県の境界上にまたがっていますが、赤面山は完全に福島県内にあります。
さほど知名度が高いといえないマイナーな頂ですが、北関東と東北地方との境にある山だけに、両方の山域の特質が入り混じった独特の景観が広がります。
北関東の山と言えば忘れてはいけないのがシロヤシオです。赤面山に至る登山道上にもかなりの規模の群生地が存在します。さらに圧巻なのが赤面山と谷を一つ挟んだ向かいにある中大倉山で、日本国内でも最大級のシロヤシオ群生地となっています。
2023年のシロヤシオは10年に一度の当たり年などと言われるほどのもので、ピークを少し過ぎた時期の訪問であったにもかかわらず、見事な咲きぶりを見せてくれました。
福島県の甲子温泉からスタートし、那須連山の北の外れを巡り歩いてきた一日の記録です。
コース
新甲子バス停よりスタートして青少年自然の家を経由して赤面山へ。赤面山から那須連山最高峰の三本槍ヶ岳に登頂します。三本槍ヶ岳からは中の大倉尾根を下り、中大倉山を経由して北湯温泉入口バス停に下ります。
那須連山の中でも比較的マイナーな一帯を巡る、歩き応えのある行程です。
1.赤面山登山 登頂編 福島県側の那須連山への玄関口、甲子温泉
6時15分 JR東京駅
那須連山は関東地方の北の果てに位置しており、それなりに遠い場所ですが、都内発でも日帰り登山は可能です。そう、魔法の乗り物新幹線を使えばね。
当然ながら運賃は相応にかかります。
快適な新幹線の座席でうつらうつらとしている間に、車窓に日光連山が見え始めました。流石は新幹線です。高いけれど早い、早いけれど高い。
7時43分 新白河駅に到着しました。この駅で下車したのは自身初めてです。白河は福島県の南端にあり、東北地方の玄関口とでもいうべき場所です。
目指す那須連山はこの通り駅の窓から見え・・・ませんな。ちょうどホテルの建物が邪魔をしていました。しかし東横インは本当どこにでもありますね。
白河と言えば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが白河の関所でしょう。2022年に仙台育英高校が優勝するまで、甲子園の優勝旗が一度も越えたことがなかったとか言われていたやつです。
白河の関は実は江戸時代の関所ではなく、もっと古い時代に設けられていたものです。主に蝦夷が関東地方へ南下してくるのを防ぐのが目的で、関所と言うよりは砦と考えた方が良いものでした。
市公認のご当地キャラがいました。この何のひねりも感じられない直球のネーミングセンスは、個人的に嫌いではありません。
8時発の新甲子温泉行きの路線バスに乗車します。駅前には立派なバスタ―ミナルがありますが、周囲は人影もまばらで閑散としていました。
結局私の他に乗客が現れることはなく、安定の貸し切り運行となりました。甲子温泉側から路線バスを利用して那須岳に登る人は、圧倒的に少数派であるようです。
市街地を抜けて山間部に入ると、車窓に目指す那須連山の姿が見えて来ました。初めて目にするアングルなので、何だか新鮮です。
那須岳は関東地方の山であるイメージが強いですが、栃木県と福島県の境界上に跨っており、東北地方の山でもあります。
8時34分 新甲子バス停に到着しました。実際はバス停ではなく、みやま荘と言う温泉旅館の前に乗り入れます。ここまでの運賃は790円でした。交通系ICカードには対応していません。
甲子温泉行きの路線バスは現在1日に4往復運行されていますが、このまま利用者が減り続ければ路線そのものが消滅してしまう可能性もあります。そうならないためにも、乗って残そう公共交通!
・・・私は日本バス協会の回し者ではありません。
2.ルートがわかり辛いパノラマ展望所への道程
8時35分 身支度を整えて行動を開始します。以前はこの先にある高原ホテルまで路線バスが乗り入れていたのですが、ホテルの廃業に伴い現在は新甲子止まりとなっています。
ということでその高原ホテルまで、しばしの間は舗装道路歩きとなります。ジリジリと降り注ぐ陽射しで、早くも薄っすらと汗ばんできました。今日は一日暑くなりそうです。
10分ほど歩いたところで、廃業した那須甲子高原ホテルまでやって来ました。
当初は反対向きにここをゴール地点に歩くつもりで計画を温めていたのですが、下山予定地で温泉に入れないことが判明したため、急遽甲子温泉スタートに切り替えた次第です。
案内表示が本日空室ありのままになっていました。
甲子温泉はかつて日本がバブリーな景気に沸いていた時代に栄華を極めた温泉地でしたが、現在はすっかりと廃れてしまってます。今も営業を続けてている宿は、先ほどのみやま荘を含めた2軒しか残っていません。
高原ホテルからさらに少し先へ進むと、道の左側に登山口が現れました。
きびたきの森トレーニングコースとだけ書かれた標柱が立っていました。赤面山とはどこにも書かれていませんが、入り口はここであっています。
入口から右方向へ進むと、トレーニングコースは途中でぐるりと進路を反転して元来た方向へ戻り始めます。このUターン地点に剣桂ハイキングコースと書かれた案内が立ているので、今度はそれに従い脇道へと入って行きます。
ここにも赤面山の名前はどこにもありません。ここまで何の案内もないのは想定外です。甲子温泉スタートで赤面山を目指す人と言うのは、そこまで少数派なのでしょうか。
エゾハルゼミが大合唱する新緑の森を進みます。そもそも道があっているかどうかすら分からないと言う一点を除けば、実に気持ちの良い登山道です。
途中からはブナ林に変わりました。あまり歩かれてはいない道らしく、倒木が散乱していました。
最初の登りを登りきると、建物の裏手に飛び出しました。この建物は青少年自然の家という施設の一部です。ちなみに、ここまで来てしまうと行き過ぎです。少し引き返しましょう。
この何を現しているのかは不明な36と書かれた標識の脇を右に入って行きます。
この辺りの道順は、GPSアプリなどを使っていないと少々わかり辛いかもしれません。少なくとも、5万分の1スケールの山と高原地図をいくら眺めたところで、サッパリわかりませんでした。
相変わらず道があっているのか半信半疑に進むと、広々と開けた草原に出ました。放牧場か何かかな。
と思ったら第1スキー場と書かれていました。見たところスキーと言うよりは、子供のソリ遊びがメインのファミリーゲレンデと言ったところでしょうか。
ここまで歩いてきて、ようやく標識上に赤面山の名前が現れました。道を間違ってはいなかったようで一安心です。
そしてどうやらスキー場の端に沿って進むのが正解であったようなのですが、目の前に道があったものだから、ついついそちらに迷い込んでしまいました。
この付近には青少年自然の家の歩道が複雑に入り組んでおり、もはやどこがどうつながっているのかよくわかりません。コース全体がかかれた案内板か何かは無いのでしょうか。
9時40分 だいぶ迷って同じ場所を行ったり来たりしたりしましたが、何とかパノラマ展望台と呼ばれている地点まで辿りつきました。
かつてはパノラマが広がる場所だったのかもしれませんが、周囲の木々が育ってしまい今はもう展望がありません。落葉した後の冬シーズン中には、また少し違った光景が見られるのだろうか。
3.シロヤシオが咲く尾根道を行く
ここまでで既にだいぶ時間を空費してしまったので、少し足早に先へ進みましょう。ちなみに現在地は福島県内なのですが、足元が笹薮に覆われた登山道の雰囲気は北関東の山の雰囲気そのものです。
道標に導きに従い、赤面山登山道コースと書かれた方へと足を踏み入れます。この道標、できれば甲子温泉からずっとあって欲しかったな。
3と書かれた標識が掲げられています。どこが起点なのかは不明ですが、これは現在地が赤面山の3合目であることを現しているようです。
パノラマ台から緩やかに谷底に下って行くと、やがて沢にぶつかりました。
登山道は沢の対岸に続いているため、ここで渡渉します。渡渉地点の目印となるピンクテープなどは見当たらなかったので、渡りやすそうな場所を適当に見繕って渡りました。
対岸にある林道らしき道は、大きく崩れてしまっていました。ここからでは登れなかったので、沢沿いに下流方向へ少し進んだ地点から強引によじ登りました。
10時15分 林道脇にある登山口までやって来ました。青少年自然の家の領域となっているのはここまでで、この先は純然たる登山道となります。
ここまで標準コースタイムに対して、だいぶ時間が押してしまっていますね。本日の行程は、帰路のバス時間を考えると時間にあまり余裕はなく、この先は少しばかりコースタイムを巻いていく必要がありそうです。
急登と言うほどではありませんが、登山道に入るなりのっけから結構しっかりと登らされます。この赤面山に至る尾根上にシロヤシオの群生地があるらしいのですが、果たしてどんな状況でしょうか。
この訪問日のちょうど前日の夜、台風第2号の影響により関東地方の全域に大雨が降りました。
ヤシオツツジの花はもともと雨風にはあまり強くないので、昨夜の大雨でシロヤシオが壊滅的な被害を受けてしまっているのではなかろうかと、先ほどから戦々恐々としています。
10時50分 中間点と書かれた標識が立つ地点まで登って来ました。写真だとちょうど数字が隠れてしまっていますが、ここが5合目地点です。道に迷う要素が無くなって以降は、結構良いペースで登ってこれました。
5合目を過ぎたあたりから、恐れていた事態が現実のものとなってしまいました。足元に落花した大量のシロヤシオが散乱していました。やはり昨夜の大雨には耐えられませんでしたか。なんてこったい。
ほんの僅かな生き残りだけが、ポツポツと枝に残っているような状態でした。
ドウダンツツジも今がちょうど見頃です。こちらは特に雨の影響はなかったようで、そこかしこに咲いていました。
スキー場方面と書かれた分岐のある地点まで登って来ました。この先はスキー場のゲレンデ跡を辿る道と、このまま森の中を進む道に分かれます。
ゲレンデ跡を歩いたところで直射日光に晒されて暑いだけなので、このまま森の中を進みます。
この地面を埋め尽くすまでに大量に散ってしまった花弁の数を思うに、最盛期にはさぞや壮観であったことでしょうね。もう後2~3日前の台風が来る前に訪問出来ていれば・・・ぐぎぎぎぎ。
それでも標高が上がるにつれて、生き残っている花の数が徐々に増えて来ました。やはり標高の低い一帯にある、既に終わりかけの状態にあった花の方が、大雨の影響をより強く受けてしまったのでしょう。
そいう事であれば、もっと標高の高い一帯には、まだまだ多くの花が落ちずに生き延びているかもしれません。
ゲレンデ跡を行く道もすぐ隣を並走しており、何ヵ所かに行き来できる場所があります。
樹木がないため、背後の展望が開けています。気温が高めであるためか、少しモヤーっと霞んでいます。
道が藪っぽくなって来ました。ヤシオツツジが咲いていたり笹薮に覆われていたりするのは、いかにも北関東の山的な雰囲気です。
足元がぬかるんでいる場所には、木道が整備されていました。比較的マイナーなルートであると思われますが、しっかりと整備はされています。
期待していた通り、標高が上がってくるにつれて、ほとんど無傷で生き延びているシロヤシオもチラホラと現れるようになりました。素晴らしい。
しばしのシロヤシオロードを楽しみます。全盛期に間に合っていればもっとすごい光景を見れたのでしょうけれど、今はただこうして残ってくれていたことに感謝しましょう。
11時55分 青少年自然の家分岐と呼ばれる地点まで登って来ました。ここまで登ってくれば、赤面山まではもあと一息と言ったところです。
4.赤面山登山 登頂編 那須連山を一望する好展望の頂へ
分岐を過ぎると、周囲に背の高い樹木が少なくなって来ました。森林限界が近いようです。
シロヤシオに変わって、今度はムラサキヤシオがポツポツと目につき始めました。ムラサキヤシオはアカヤシオやシロヤシオの生息域よりも北寄りの、主に東北地方の山で多く見られます。
遂に森林限界を超えて、周囲が開けました。この先は直射日光に晒され続けることになるため暑さを覚悟していましたが、気温自体が低めなためか意外にもあまり暑くはありません。
森林限界を超えた灌木帯に広がる景色は、いかにも東北地方の山的な雰囲気です。北関東と東北の境界にある山だけに、両方の山の雰囲気をしっかりと兼ね備えているのが面白いですね。
スタート地点の白河の街並みが見えました。両側を山に囲まれた回廊状の平地が続いており、関所を設けるのには格好の場所であったことが良くわかります。
続いて前方に、茶臼岳(1,915m)と朝日岳(1,896m)が姿を見せました。那須岳における花形的な存在であり、今頃は多くの登山者で賑わっていることでしょう。それに比べて、我らが赤面山のなんと静かな事よ。
ちなみに本日は甲子温泉をスタートしてから、まだ一人の登山者ともすれ違ってはいません。どれだけ人気の無いルートなんでしょう。
樹林帯を抜行けたことにより、風が出てきて半袖では少し肌寒いくらいになって来ました。暑さの心配をして水を少し多めに持ってきていたのですが、完全に杞憂でしたな。
稜線まで登ってきたところで、これまでとは桁違いの強風に晒されました。そういえば確かに那須岳は、強風の通り道として名高い場所でしたっけか。さささ、寒いんですけれど。
北側の谷を挟んで向かいに見えているこの山は、旭岳(1835m)です。別名で赤崩山とも呼ばれており、その名の通り山頂部が大きく崩れています。一般登登山道扱いではありませんが、一応は登れるらしい。
12時20分 赤面山に登頂しました。山頂まで登って来て、ようやく初めて自分以外の登山者の姿を見かけました。どこまでも静かな頂です。
そんなマイナーで不人気な赤面山ですが、山頂からの展望は圧巻です。こうして那須連山の山並みを間近から眺めることが出来るか格好の展望台です。
眼下に見えているこちらの山は中大倉山です。マウントジーンズ那須スキー所がある山で、なんでも日本国内で最大規模のシロヤシオ群生地があるのだとか。本日はこの後、下山時に立ち寄る予定でいます。
あちらも当然大雨の影響を受けているでしょうから、ここまでの道中で目にした状況からして、正直あまり期待はできそうにありませんけれどね。
5.赤面山分岐から三本槍岳を目指す~そこに最高地点があるから
先へ進みましょう。まずは鞍部に向かって一度下ります。尾根は緩やかで、それほど大きくは下りません。この辺りの光景は、いかにも東北の山的ですね
鞍部の一帯はシャクナゲの藪になっていました。花の方はもうほとんど終わりかけです。それよりも、道の両脇からシャクナゲの枝に往復ビンタされて痛い。
シャクナゲの枝はとても丈夫で、まるで鞭のようにしなう性質がります。アザミと並んで、藪の中で最も遭遇したくないやつの筆頭格です。
鞍部から振り返って見た赤面山は、見事なおっぱい型をしていました。そういう通称で呼ばれていたりするのではなかろうかと思い調べてみましたが、それらしい呼び名は特に無いようです。
赤面山山頂から大して下ってはいないとは言え、鞍部まで下ってくると結構な絶壁感がありました。山腹に取って付けたかのような道が続いているのが良く見えます。
見た目通りになかなかの急登です。それではいっちょう、気合を入れて参りましょう。
最初の急登を登りきると、ほぼ水平移動のトラバースに移りました。足元は単に笹薮を刈っただけの道で、思い切りナナメっていたりするので注意を要します。
ムラサキヤシオが咲いていますが、まだ大半が蕾の状態です。ちょうどシロヤシオシーズンが終わる時期にうまい具合にバトンタッチされたかのように咲き始めるのが面白いですね。
振り返って見た赤面山は、やはりどこから見ても東北地方の山そものと言った姿をしていました。関東地方との境界ギリギリの位置にあるの山なのにね。
頭上に見えているこの大きな岩は、その名も大岩と言います。この大岩との直接対決を避けたいが故のトラバースだったらしく、大岩の脇を抜けるなり、道は再び標高を上げ始めました。
13時20分 赤面山分岐まで登って来ました。右へ進むと三本槍岳方面で、左へ下ると先ほど見えていた中大倉山に至ります。
ここから三本槍岳をサクッと往復する計画でしたが、帰りのバス時間を考えると時間的には既に結構押してしまっています。計画通りに続行するか、それとも三本槍岳はキャンセルしようか。
暫し逡巡しましたが、続行を選択しました。最高地点の土を踏むことは、ピークハンターたる者のお勤めでございます。
分岐から5分少々登ったところで、スダレ山なる小ピークがあります。遠くから見ると、バーコード禿のおじさんの頭部のように見えたりするのでしょうか。
正面に、いつの間にか視線と同じくらいの高さになった朝日岳の姿がありました。実は秋と冬にしか登ったことが無いと言う偏った経験しかなく、グリーンシーズンの那須岳を見たのは自身初めてのことです。
朝日岳の奥に茶臼岳も並んで見えています。那須岳登山と言われたら、普通はこの2座を中心に巡るのが一般的です。
登りきると、とても山の上であるとは思えないような広々とした平坦な空間が広がっていました。清水平と呼ばれている場所です。正面の右奥に見えているのが、目指す三本槍岳です。
三本槍岳は那須連山の最高峰なのですが、茶臼岳や朝日岳に比べると何故かあまり人気がなく、スルーされがちです。
朝日岳方面との分岐地点まで歩いて来ました。那須岳におけるメジャールートに乗ったわけなのですが、もう時間が遅いからなのか、それとも単に三本槍岳に人気がないからなのかはわかりませんが、辺りには人影もなく閑散としていました。
ここで一度、鞍部に向かって下りが入ります。足元は水浸しの泥まみれ状態でした。以前に登った時も同じような状態だったので、ここは常に水が染み出している場所なのでしょう。
鞍部へ下った後は当然登り返しです。時間も押しているので、半分駆け足のようなペースで一気に登りました。
14時 三本槍岳に登頂しました。前述の通り那須連山の最高地点であり、栃木県と福島県の境界でもあります。ここは関東地方であり、同時に東北地方でもあるわけですな。
かつてこの山頂は会津藩、那須藩および黒羽藩の境界となっており、領地境界の確認を行うために各藩の代表が集まって槍を立ていたのだそうです。それが山名の由来となっています
西側には通称裏那須と呼ばれる稜線が連なっています。一度は歩いてみたいと思いつつ、未だに訪問が叶っていません。裏那須エリアはいかんせん、交通アクセスが絶望的に悪すぎるのですよ。
北側には福島県の会津地方山並みが広がります。流石にこの時間ともなると、だいぶ雲が湧いてきてしまいましたな。
猪苗代湖とその背後に立つ磐梯山(1,816m)の姿が、薄っすらと微かに視認できます。
最後に茶臼岳と朝日岳です。東側から見た朝日岳はあんなにもカッコいいのに、裏側から見るとまるでオデキか何かのようなとっても残念な姿をしています。
この通り大変素晴らし眺めの山頂です。何故かスルーされてしまうことが多いようですが、那須岳登山へお越しの際は是非とも三本槍岳まで足を伸ばしてみてください。期待を裏切らない展望に出会えますから。
6.中の大倉尾根を下り、国内最大規模のシロヤシオ群生地マウントジーンズスキー場へ
ピークハンターとしての務めは無事に果たされました。僅かな滞在時間で山頂を後にします。
始めから約束されていた帰路の登り返しを、足早にクリアーしていきます。
14時40分 赤面山分岐まで戻って来ました。三本槍岳を1時間20分程で往復してきた計算になります。山頂に滞在した時間を含めて、ほぼ標準コースタイムとトントンの所要時間でした。
分岐から中の大倉尾根をまっすぐに下ります。傾斜が緩めで遠目には大変歩きやすそうに見えた尾根でしたが、土壌の保護のためなのか地面に金網が張られていて地味に歩きにくい下りです。
何も考えずに歩いていると、靴底が網に引っかかって前方につんのめりそうになります。
金網地帯を抜けて樹林帯の中まで下ってくると、シロヤシオ様がまだたくさん咲いていらっしゃいました。あの大雨に耐えて生き延びてくれていましたか。
花弁がだいぶ地べたに落ちているので、雨の影響があったこと自体は確かですが、それでもなおこれだけ生き延びるほどに大量に咲いていたと言う事なのでしょう。
分岐地点が現れました。最短で北温泉方面へ下山したいのならばここを右ですが、直進してシロヤシオ群生地があるマウントジーンズ那須スキー場方面へと進みます。
うおぉぉぉぉぉぉー沢山咲いているー!・・・いかんいかん、興奮のあまり少しばかりおかしなテンションになりました。すでに諦めかけていた状態からの思わぬ大逆転に、おっさん思わず大興奮です。
あの嵐のような大雨を経てもなおこれだけ咲いているとは、流石は日本最大規模の群生地です。返す返す、最盛期のタイミングに訪問できなかったことが悔やまれます。こんなものじゃなく、もっとすごかったと言う事でしょう。
シロヤシオは別名で五葉躑躅(ゴヨウツツジ)とも言うらしい。しかしどう見ても黄金ではないような?
シロヤシオ群生地の先に居並ぶ那須連山の姿を眺められます。本当は足元の一面が白い花に埋め尽くされていたのでしょうけれど、まあ贅沢は言うまい。これだけ残ってくれていたことに感謝しましょう。
この付近一帯が中大倉山の山頂と言う事なのでしょうけれど、山頂部の全体がマウントジーンズ那須スキー場の敷地となっています
スキー場内のそこかしこに、これでもかと言わんばかりにシロヤシオが咲いています。確かにこれほどの規模の群生地は、他ではお目にかかったことがありません。
15時35分 マウントジーンズ那須のゴンドラ山頂駅まで歩いて来ました。ここが那須であることをアピールする巨大アルファベットのモニュメントが置かれていました。
このスキー場のロープウェイはグリーンシーズン中にも観光運転を行っており、山登りをしない人でもシロヤシオ群生地を見に来ることが出来ます。
下りのロープウェイの営業時間は15時30分までとのことです。・・・ちょうど5分前の出来事ですね。まあ、もともと北温泉へ歩いて下る計画で、利用するつもりはありませんでしたが。
7.那須岳登山 下山編 北温泉経由でバス通りまで下る
さあ、いい加減良いお時間なので撤収しましょう。帰路の最終バス時間を考えると、既にバッファ無しのギリギリ状態です。
スキー場エリアを抜けて、北湯方面へ下ります。登山道に迷い込んでしまう観光客が後を絶たないのか、道を塞ぐように2重の立て看板が立っていました。
北湯方面からの登山道は、緩やかでとても歩きやすい道でした。これ幸いにと、西日が射しこみ始めた森の中を、半分駆け足のペースで下りました。
谷底まで下ってくると、大きな川にぶつかりました。北温泉はこの川の対岸にあります。
まるで工事現場にある足場のような橋が架かっていました。もともとこうなのか、それとも橋が流されてしまい応急的に架けたものなのだろうか。
16時15分 北温泉に到着しました。川沿いの谷合にひっそりと佇む秘湯の温泉です。映画版テルマエロマエの撮影地なったことで一躍有名になりました。
ここでひと風呂浴びて行っても良いのですが、そうすると確実に最終バスは乗り逃していまうので、ここからさらに6kmほど歩いて那須湯本まで歩く必要が生じます。
流石に今からプラス6kmも歩くのはかったるいので、ここでの入浴は諦めます。
北温泉があるのは川沿いの谷底であるため、バス通りに戻るには当然ながら登り返しとなります。意外と急勾配な道をしっかりと登らされまました。ゼーハーゼーハー。・・・登り返しがあるだなんて・・・聞いて・・・ない。
良い感じに息絶え絶えになりながら足早に登り返すと、駐車場がありました。車で北温泉にお越しの人は、ここから歩いて谷底まで下って行く必要があります。
駐車場の脇に、駒止の滝なる滝が見えるらしいデッキ状の鑑瀑台が整備されています。もうまったく時間に余裕は無いのですが、せっかくの機会なので見ていきましょう。
手すりから見下ろすと、眼下の谷底に小さく滝が見えました。なるほど確かに、上から眺めるしくらいしか出来そうにない場所にあります。
落差はおよそ20メートルほどあります。周囲を広葉樹林に覆われいるため、この滝を鑑賞するベストシーズンと言えるのは紅葉の季節です。駐車場が埋まってしまうほど多くの人が見物に訪れます。
駐車場からバス停までの道もまた、微妙な登り勾配となっていました。半分駆け足のようなペースで大急ぎで進みます。
16時35分 北湯入口バス停に到着しました。那須ロープウェイ発の最終便がこのバス停を通るのは16時42分です。最終バスの7分前と言う綱渡り状態でのゴールでした。
時刻表よりほんのわずかに遅れてやってきたバスで撤収します。混んでいるかと思いきや、意外にも車内はガラガラ状態でした。最終便ギリギリに撤収する登山者と言うのはは少数派なのでしょうか。
那須湯本バス停で途中下車して、鹿ノ湯に立ち寄って行きます。シャワーもカランも無いような昔ながらの湯治場ですが、過去にも何度か来ていて個人的にお気に入り温泉です。
湯本バス停からは19時台までバスがあります。なので、仮に那須ロープウェイ発の最終便に乗り損なったとしても、ここまで歩いてくればバスはあります。
終点の那須塩原駅まで下りて来たころには、周囲はすっかりと夕闇に包まれていました。今日もたくさん歩いて大満足です。
那須塩原駅発のガラガラに空いているなすの号に乗り込み、帰宅の途に着きました。
1週間前に訪問できていれば。今回はそんな悔いが残った山行きでした。無残にも地べたに散ってしまっていたシロヤシオの花弁の多さを思うに、最盛期にはさぞや凄まじい咲きぶりであったことでしょう。
甲子温泉側から那須岳に登る人は驚くほどに少ないようですが、道中の森の雰囲気は素晴らしく、赤面山のからの眺めも良さも含めて良ハイキングコースであると思います。バス時間が少々シビアですが、最も一般的であろう那須ロープウェイからのルートとはまた違った魅力があります。
今回はシロヤシオシーズンを狙っての訪問でしたが、那須登山の本番であり大混雑することが必至の、紅葉シーズンにこのルートを歩いてみるのも良いかもしれません。メインルートの喧騒から離れた、静かなる那須を味わってみたい人にお勧めです。
<コースタイム>
新甲子バス停(8:35)-パノラマ展望台(9:40)-中間点(10:50)-青少年自然の家分岐(11:55)-赤面山(12:20~12:45)-赤面山分岐(13:20)-三本槍岳(14:00~14:15)-赤面山分岐(14:40)-中の大倉岳(15:35)-北湯温泉(16:15)-北湯入口バス停(16:35)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
この夏に那須エリアは初訪で有名どころ中心に登ったのですが、その中で三本槍岳〜北温泉を歩きました。赤面山分岐から赤面山側を眺めた時は笹漕ぎにでもなってそうな印象でしたが、記事拝見すると意外に青少年の家周辺以外は良好な状態だったのですね。
ところで秋仕様になったブログヘッダーの写真はどこの山でしょうか。
ペン生さま
コメントをありがとうございます。
赤面山は白河高原スキー場跡から登るのが最も一般的で、青少年の家から歩く人は極めて稀であるようです。茶臼岳や朝日岳の喧騒が嘘のように静かで良いところでしたよ。
ヘッダの写真は高妻山(に登る途中の尾根)から見た妙高山と火打山です。