雨飾山 圧巻の紅葉にもえる、はしけやし君の耳

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長野県小谷村と新潟県糸魚川市にまたがる雨飾山(あまかざりやま)に登りました。
糸魚川静岡構造線は挟んで北アルプスの後立山連峰と向かい合うようにして立つ、猫の耳と称される特徴的な姿をした双耳峰です。人里から遠く離れた山深い場所にあり、山中にはほとんど斧鉞の入ったことの無い原始の森が広がります。なかでもとりわけ、中腹付近に広がるブナ林は圧巻のスケールです。
紅葉最盛期の真っ赤にもえた深山を巡って来ました。

2020年10月21日に旅す。

雨飾山は長野県北端の新潟県との境界上にある山です。日本列島を南北に縦断する糸魚川静岡構造線が、日本海とぶつかる地点の傍らにあります。
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特徴的なシルエットをした山ではありますが、標高は2,000メートルにも満たず、付近にある山の中でも特に目立った存在ではありません。

すぐ近くに、後立山連邦と言う登山界における花形的山域が控えていることもあり、雨飾山はかつて登山の対象としてはほとんど顧みられない、ほぼ無名な存在でありました。

そんな雨飾山も、今では駐車場から車が溢れ出してしまうほどに大勢の登山客が詰めかける、人気の山となっています。
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その理由は一にも二にも、日本百名山の著者である深田久弥が、特にお気に入りの一座としてこの山を紹介したからにほかなりません。

これだけ大勢の登山者が詰めかけるとなると、もはや深田久弥が登った当時のような深山の趣などは微塵にも感じられません。しかしそれでも、この山が放つ魅力は今もなお健在です。
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私が訪れたのは、まさしく紅葉シーズンの真っ盛り。雨飾山の中腹に広がるブナ林は、金色に輝き真っ赤に燃え上がっていました。

貫入岩体と呼ばれる独特の地形と、そこに広がる圧巻の紅葉。晴天にも恵まれた、会心の山行きでありました。
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多大な手間と時間をかけて遠路はるばる訪れた、日本海が見える山への遠征記をお届けします。

コース
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雨飾高原バス停よりスタートし、雨飾山を往復します。雨飾山登山としては最も一般的な行程です。公共交通機関の利用を前提とした場合は、他に選択肢はありません。

序章 雨飾山登山 計画編

さて、雨飾山は長野県の北の果てと言って良い場所にある山ではありますが、一応は公共交通機関によるアプローチが可能です。小谷(おたり)村の村営バスにより、温泉のある麓の雨飾高原まで乗り入れることが出来ます。
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7時半に南小谷駅を出発する始発バスに乗ることさえ出来れば、日帰り登山が十分に可能です。よって考えるべきことは、どうすればこの始発バスに乗ることが出来るかという一点に絞られます。

都内発の場合ですと、普通に朝自宅を出発したのでは、始発のバスにはまったく間に合いません。となると、夜行バスで現地入りするか、もしくは7時半までに南小谷へ到達することの出来る場所で前泊するしかありません。

そもそも、この雨飾高原行き村営バスの出発地は栂池高原であり、南小谷駅は単に途中の経由地です。
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栂池高原であらば、アルピコ交通が運行する新宿~白馬線の夜行バスでアクセスすることができます。という事で、当初はプランAとして夜行バスでのアプローチを真っ先に検討していました。

私が雨飾山登山を計画していたのは、平日の水曜日です。しかし何とも間の悪いことに、この新宿~白馬線は夏と冬の間は平日にも運航されていますが、春と秋は週末のみの運行となります。

という事でこのプランAは早々と頓挫しました。であるならば、お次はプランBです。朝の7時半までに南小谷駅へ行くことの出来る場に前乗りします。

ちなみに松本駅からだと、始発電車に乗っても7時半には間に合いません。という事で、松本よりもさらに先の信濃大町に前泊することを考えました。
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これで決まりかと思いきや、このプランBも頓挫します。例のGoToなんちゃらの影響なのか、信濃大町駅周辺の宿が軒並み満室であったためです。

ならば逆に、北の新潟県側から南下して現地入りするのはどうでありましょう。糸魚川駅からであれば、7時半までに南小谷に達することは可能です。そして肝心の宿の空室はと言うと・・・ありました。
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という事でプランCに決定しました。糸魚川に前泊し、そこかから南小谷へ向かいます。

まったくなんでこう毎度毎度、私の立てるアプローチ計画と言うのは、ギリギリの綱渡り状態になっていまうのでしょうか。・・・直前になってから決めるからですよね、はい。

1.雨飾山登山 アプローチ編 糸魚川で前宿泊し、長野県最果ての小谷を目指す

10月20日 20時 JR東京駅
という事で仕事を終えて帰宅してから、大急ぎでパッキングを済ませて東京駅へとやって来ました。北陸新幹線の金沢行き最終列車に乗車し、糸魚川駅へと向かいます。
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22時30分 糸魚川駅に到着しました。降り立つなり、思わず身震いするような寒さです。
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駅前にはすでに人影もなく、閑散としていました。糸魚川の夜は早い。
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地図を見た感じだと、ここからはほぼ目と鼻の先と言えるほど近くに日本海があるはずなのですが、既に真っ暗であるため全く見えません。

まあ海は、明日の朝に少し早起きして眺めて行くことにしましょう。

本日の宿はこちらです。駅前ロータリーの目の前にあり、迷う要素が皆無の駅チカの宿です。少々古い建物でしたが、客室内は至って快適でした。
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明けて10月21日 5時30分
宣言していた通り、駅とは反対方向の海へとやって来ました。展望台らしきものがあるので、登ってみます。
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ちょうど良く、朝焼けが始まりつつあるタイミングでした。空が良い色に焼けて来ましたねえ。
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目の前には日本海の大海原。日本海と言うと荒波のイメージが強いですが、この日は至って穏やかに凪いでいました。
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もう何年前のことになるか思い出せもしませんが、私は生まれて初めて日本海を目にしたときに、太平洋とでは海の色がまるで違う事に驚いた記憶があります。

明るく透き通った青色している太平洋に対して、日本海は飴色でどこか陰鬱なイメージが付きまといます。同じ海なのに、一体何が違うのでしょうか。

視線の先に居並ぶのは、北信地方の山々です。
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これから目指す雨飾山もこの通り良く見えました。猫の耳と称される双耳峰であるのですが、糸魚川方面からだと角度的にちょっとわかりにくいですね。
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町から山頂が見えるという事は、逆に山頂からも糸魚川の街並みが良く見えるという事です。さてどんな風に見えるのか、今から楽しみです。

糸魚川はヒスイの産地として有名で、街中にはヒスイの名を冠した施設が多く見られました。なんでも海岸の砂浜を探すと、割とゴロゴロ見つかったりするらしいです。
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6時1分発の南小谷行き始発電車に乗車します。大糸線の南小谷から北はJR西日本の管内となります。非電化区間であるため汽動車での運行となります。
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始発列車には誰も乗っておらず、安定の貸し切り運行です。本日は平日な訳ですが、早朝に大糸線で通勤する人はいないようですな。
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どうでも良いことですがこの車両、駅に停車するたびに「チリリリーン、キッチョキッチョキッチョ」という音を鳴らすのですが、この音には一体どんな意味があるのでしょうか。

・・・と、文字に起してもサッパリわかりませんね。録音でもしておけばよかったか。

大糸線は、糸魚川静岡構造線に沿った急峻な谷底をひたすら進みます。この谷は、行政上ではなく地理上の西日本と東日本の境界です。
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両側が崖に囲われており、通行が可能なのはこの谷底に沿った僅かな平地のみです。道路も鉄道も川も、すべてがこの谷底の回廊上に所狭しとひしめいています。

ふたたび雨飾山の姿が見えました。登山口のある雨飾高原はこの山の南側にあるため、このまま南下して大きく回り込みます。
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深田久弥はこの雨飾山の姿を見て、後に再婚して夫人となる女性に「左の耳は僕の耳、右ははしけやし君の耳」と語ったそうな。「はしけやし」とは「愛しい」と言う意味の古語です。

流石は文筆家らしく、素晴らしいセンスの口説き文句です。私も一度くらいは、そんな気の利いた言葉を囁いてみたいものです。

7時22分 南小谷駅に到着しました。ここは、青いJR(西日本)と緑のJR(東日本)の境界の駅です。この先の東日本管内は電化されており、運行は完全に分断されています。
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7時30分発の雨飾高原行きのバスに乗車します。乗り換え時間にあまり余裕はないので、トイレは前もって済ませておいた方が良いでしょう。
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この路線は小谷村の村営バスですが、業務委託しているらしくアルピコカラーのバスが停車していました。

バスは中谷川沿いの急峻な道をかっ飛ばし、グングンと標高をあげて行きます。終点の雨飾高原バス停は、標高1,000メートル地点にあります。
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8時10分 雨飾高原バス停に到着しました。ここまでの運賃は850円です。交通系ICカードには対応していません。
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登山開始前のアプローチの時点で、すでに途方もない記事の尺を費やしてしまいました。雨飾山の遠さ加減が何となく伝わったかと。

2.温泉を横目に雨飾高原キャンプ場へ

バス停からも、山頂がちょこっとだけ見えました。あの場所まで標準コースタイムで4時間30分の行程となります。頑張って行きましょう。
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バス停からから登山口がある雨飾高原キャンプ場まで、しばしの舗装道路歩きです。ウォーミングアップ代わりにはちょうど良い距離です。
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バス停から5分程の場所に、雨飾高原露天風呂があります。なんでも完全に屋外にある、なかなかワイルドな野湯であるそうですよ。当然ながら、帰りに立ち寄って行きます。
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ちなみに本日の行程は、標準コースタイム通りのペースで歩いていると、最終バスの時間的に温泉に立ち寄れる時間はありません。よってひと風呂浴びたければ、少しばかり巻いて行く必要があります。

巻くことのできた時間が、そのまま入浴時間となる算段です。

露天風呂からさらに進むと、雨飾荘と言う一軒宿の温泉旅館があります。アプローチだけに一日を割くことが出来る日程の余裕があるのであれば、ここに前泊して登るのが最もスマートな雨飾山登山の計画であろうかと思います。
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地図を見ると、雨飾荘の先から舗装道路を外れて近道できる登山道が描かれていますが、入り口らしき場所を見つける事が出来ません。薮に埋もれてしまっているのかな。
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結局分からなかったので、そのまま道沿いに進みました。

谷向の山腹に見えてる紅葉が、凄まじいことになっておりますな。まるで、山全体が燃え上っているかのごとき光景です。
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ここでようやく、雨飾山の姿を真正面に捉えました。確かに猫の耳の様にも見えます。
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太宰治を筆頭に、明治から昭和にかけての文豪と呼ばれる人には度し難いレベルの人間の屑が多くいますが、我らが深田久弥もまたその例に漏れず、なかなかの外道です。

先ほどの「はしけやし君の耳」という言葉は、難病に苦しむ奥さんを一人家に置き去りにして、小谷温泉へ不倫旅行に来ていた際に発せられた言葉であったりします。

文学と言う道を極めんと欲するものは、安っぽい人間性などはかなぐり捨てる必要があるのでしょうか。

やがて分岐が現れるので、右折して雨飾高原キャンプ場方面へと進みます。ちなみにここを直進すると、鎌池と言う紅葉の名所があります。
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本当は鎌池にもよって行きたかったのですが、下山後の温泉と両方を同時に巡ることが出来るだけの時間的猶予が無かったため、泣く泣く計画からは外しました。

雨飾高原キャンプ場の駐車場からあふれたのだと思われる車が、多数路上駐車されていました。すでにかなりの数の入山者がいるようです。
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平日ですらこの様となると、週末土日にはいったいどういう事になっていまうのでしょうか。

9時 雨飾高原キャンプ場に到着しました。車でお越しの人はここまで入ってこれます。ここからようやく登山道が始まります。
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キャンプ場に設営されているのは、見たところ山岳用のテントだけであるように見えます。なるほど、ここでキャンプしつつ前泊するのまた一つの手であるわけですな。。
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なお、キャンプ場の売店に雨飾山の山バッジが置かれているので、バッジコレクターの方は忘れずに立ち寄って行きましょう。値段は確か600円だったかな。

登山口から山頂までは3時間30分の行程となります。それではいっちょう、気合を入れていきましょう。なにせ、少しは巻かないと温泉に入れませんからね。
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3.紅葉に燃える山肌と、圧倒的な規模のブナ林を行く

登山開始早々から少し下ります。この後はしばしの間、谷に沿った水平移動が続きます。。
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人気の山らしく、木道なども整備されています。深田久弥がこの山へ登った当時は、道らしい道も存在せず、地元の猟師の案内でなんとか登れたのだとか。
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水平移動の終了地点まで歩いて来ました。ここから一気に標高をあげて行きます。
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始めからいきなりの急登です。この雨飾高原コースは最後まで急登一辺倒なわけではなく、急な場所と緩やかな場所を繰り返すしつつ登る、メリハリの効いたコースとなっています。
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少し登ったところで、登山道上を覆う木々が黄金色に輝き始めました。紅葉がピークを迎えている標高に到達したようです。
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ナナカマドも良い色に紅葉しています。紅葉の王様と言えばやはり楓なのでしょうけれど、個人的にはこのナナカマドの赤が一番好きです。
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いつしか周囲には、ブナの姿が目立つようになりました。それしても凄まじい紅葉ですね。山全体が光り輝いているようです。
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見上げる高さのブナの巨木が立ち並びます。かつて目にしたことの無いようなサイズ感です。そもそもブナと言うのは、こんなにも大きくなる木でありましたか。
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ブナは紅葉してもあまり赤くはならず黄色くなるイメージでしたが、雨飾山のブナは赤みを帯びた色に染まっていました。それだけ日中と夜の温度差が極端に大きいのでしょう。
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9時45分 ブナ平まで登って来ました。雨飾高原コースの最初のチェックポイントと言った所です。
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その名の通りのブナの巨木に囲われた平坦地です。このスケール感は写真ではイマイチ伝わりませんが、ともかく凄いのです。(語彙力)
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これはイメージ通りのブナの色ですね。陽当たりによって色の付き方が違ってくるのでしょう。
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豪雪地帯の山らしく、雪の重みにまけて横向きに延びた樹木の姿が目立ち始めました。森林限界に近付きつつある証です。
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ここまでずっと続いていた登り坂が終わり、道が平坦になりました。紅葉最盛期の標高を越えたらしく、周囲は落葉が始まりつつあります。
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ここまで来て、ようやく目の前に山頂部がその姿を現しました。見上げる岩の大岩壁です。まだまだ結構な標高差が残っておりますな。
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眼下の谷底にある河原に、人の姿があるのが見えます。どうやら、一旦あそこまで下って行くようですね。
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谷底から登りは、かなりの急勾配であることが何となく見て取れます。これは、後半戦も一筋縄では行かなそうな気配ですぞ。
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という事で、危なっかしい崖際のトラバース路を下り、谷底を流れる沢まで下って来ました。
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橋は架かっていないので渡渉します。秋も深まった今の季節は、水量も少なくて一跨ぎです。雪解け直後のシーズンだと、渡渉に難儀することもあるかもしれません。
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10時30分 荒管沢に到着しました。雨飾高原ルートにおける、第二のチェックポイントです。頭上には迫力満点の岩の岸壁が立ちはだかっていました。
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雨飾山は、貫入岩体と呼ばれる変わった成り立ちによってできた山です。山体は溶岩石の一種であるヒン岩でできていますが、しかし雨飾山は火山ではありません。

付近にある妙高山などの別の火山で作られた溶岩石が、プレートの運動により下から押し出されて地表に突き出した事により形成されています。

この尖った岩の裏手にあるのが山頂です。この岩の壁はすべて、地面の下から押し出された貫入岩体です。
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流石にここを直登は出来ないと見えて、この後登山道は右側の斜面から回り込んでいくことになります。

4.最後の急登を乗り越え、山頂部に広がる笹平へ

10時45分 小休止を終えて行動を再開します。なお、水を取れるのはこの荒管沢が最後になるので、携行量に不安がある人はここで補充していきましょう。
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遠目に見えていた通りの、容赦のない急登です。手も使いつつ、這い上がるようにして登って行きます。
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長年の風雨と登山者の土足により、すっかり道がえぐれていました。この湿った赤土が剥き出しの地面は、下りでは滑りやすそうです。
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ここで遂に、森林限界を突破しました。一気に背後の展望が開けます。
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ここまで歩いてきた山肌は、まるで燃えているかのように真っ赤でした。そうそうお目にかかれないレベルの、凄まじい紅葉ぶりです。
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中央奥に見えているひと際背の高い山は、戸隠連峰最高峰の高妻山(2,353m)です。初めて目にするアングルなので、なんだかとても新鮮です。

森林限界を超えたことにより、登山道上には岩場が目立ち始めました。
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ヤセ尾根上にハシゴがかかっている場所もあります。特に難しい要素はありませんが、高度感はそれなりにあります。
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なお、このハシゴはアサヒビールの提供だそうです。・・・すまぬ、私は麒麟ビール派なんだ。
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谷を挟んだ向かいに立つこの山は金山(2,245m)です。金山の山頂までの道のりは、雨飾山に登るよりもはるかに長く険しいのだそうです。
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金山の背後にひょこりと頭を出しているのは、頚城(くびき)山塊の新潟焼山(2,400)と火打山(2,462m)です。妙高山は背後に隠れてしまっており、雨飾山からでは見えません。
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糸魚川静岡構造線の谷を挟んだ向かいには、北アルプスこと飛騨山脈の山並みも見えます。これは、山頂からの眺望にはかなり期待できそうです。
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11時50分 急登を登り切った所で、広々とした平坦地に飛び出しました。笹平と呼ばれる場所です。
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山の上には、名前の通りの笹原が広がる平坦部が広がっていました。豪雪の山ならではの光景です。
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5.雨飾山登山 登頂編 後立山連邦を目の間に望む大展望の頂

笹平まで登ってくると、ここまでずっと見えていなかった日本海方面の展望が開けます。
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昨夜の宿泊地である、糸魚川市の街並みも見えました。地形的に、ここに集落が形成されるのは必然だと言える場所です。
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この笹原が思いのほか広く、なかなか山頂部に取り付けません。周囲に遮蔽物が一切なくなったことにより、冷たい風が吹きつけてくるようになりました。
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先ほど通って来た荒管沢が真下に見えます。下から見上げていた稜線上を、今まさに歩いているわけですな。
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さあいよいよ、山頂直下最後の登りです。ラストスパート行ってみよう。ちなみにこの最後の斜面は、日陰な上に風にも吹かれて、かなり寒かったです。
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振り返って見た笹平です。この笹原の中を突っ切る登山道が、まるで女性の横顔のように見えると言うことから、女神の横顔と呼ばれています。
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確かに言われてみれば、横顔の様にも見えなくもないかな。世の中には想像がたくましい人がいるものですね。

ようやく山頂が見えました。
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12時15分 雨飾山に登頂しました。後立山連峰の標準仕様(?)である、黄色い山頂標識が立っていました。
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山頂の様子
北峰と南峰の二つのピークがあります。もっとも、両ピークの間は距離がとても近いため、あまり双耳峰っぽくはなく、実質一つの山頂のようなものです。
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山頂からは、ほぼ360度前周囲の展望が開けます。目の前には北アルプスは後立山連峰の山並みです。
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まずは白馬三山です。位置的にほぼ真正面にあります。
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続いて右から順に唐松岳(2,696m)、五竜岳(2,814m)そして鹿島槍ヶ岳(2,889m)です。人気絶大の何れも劣らぬ秀峰達です。
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さらに南に目を向けると、槍ヶ岳(3,180m)から乗鞍岳(3,026m)に至る、北アルプス南部の山々が連なります。すでに冠雪して、白くなりつつありました。
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南には、雨飾山のお隣さんである大渚山(1,566m)の姿がありました。こちらも紅葉が凄まじいことになっておりますな。
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北側には日本海の大海原です。
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最後に西側。笹平のむこうには頚城山塊の山並みが連なります。
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足元は断崖絶壁です。雨飾山は、全方位のどちらから見ても、急峻な山であることが良くわかります。
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6.雨飾山登山 下山編 温泉に想いを馳せて、紅葉の中を足早に駆け下る

12時50分 名残惜しいですが、温泉に入る時間が無くなっても困るので、ボチボチ下山に移りましょう。
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朝には雲一つない快晴だった空にも、正午にはいかにも秋らしい筋雲が湧いて来ました。終日に渡り、最高の天気に恵まれた一日でありました。
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下山では、割とあっさり笹平まで戻って来ました。
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ふたたび、この圧巻の紅葉の中へと舞い戻って行きます。
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登るときはなんという事もなかったヤセ尾根ですが、下山時はそれなり高度感もあって少々怖い道です。家に帰るまでが登山です。焦らず慎重に参りましょう。
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お助けロープの力も借りつつ、急坂を安全第一に下っていきます。こういう急な場所で、焦ってコースタイムを巻こうとするのは禁物です。
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14時10分 荒管沢まで戻って来ました。ここまでは極めて順調なペースです
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西日が差し始める時間帯の谷底は、もうすっかりと日陰になっていました。陽が当たらないと、身震いするような寒さです。
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ここからはしばしの間、憂鬱なる時間が始まります。そう、登り返しです。
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こんなに急な下りだったっけかと文句を言いつつ、えっちらおっちらと登り返します。
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西日に照らされた山頂部は、往路で見た時とは全く異なる雰囲気を放っていました。
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すっかりと傾てしまった日差しが、逆光気味に登山道に差し込み始めました。秋の日はつるべ落としと言う言葉通り、だいぶ日が短くなってきましたね。
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14時50分 ブナ平まで戻って来ました。今のままペースで行けば、温泉に立ち寄る時間は十分に捻出できそうです。この調子でサクサクと参りましょう。
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この圧巻のブナ林は、西日に照らされた姿もまた美しい。
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あまり時間がないのに、それでもついつい足を止めてシャッターを切ってしまいます。帰宅後に見返したら、この日一日だけで500枚近くも写真を撮っていました。いくらなんでも撮り過ぎました。
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山全体が光り輝いています。普段は下山など退屈な消化試合と考えがちな私ですが、この日は最後の最後まで楽しむことが出来ました。
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急坂は終了。このあとに残すところは平坦な道のみです。
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再び木道地帯を戻ります。
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15時30分 雨飾高原キャンプ場まで戻ってきました。最後の最後にちょこっとだけ登り返しがありますが、まあ大した高さではありません。
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車でお越しの人達は、達成感に満たされる瞬間であることでしょう。しかし我らが公共交通機関勢は、まだひと道残っております。
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赤みを帯び始めた西日に照らされた雨飾山の姿を写真に収めて、本日のミッションは終了です。さあ、後は風呂だ風呂。
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結局帰りにも地図上に描かれた近道を見つけることが出来ず、トボトボと道なりに下りました。
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16時15分 雨飾山荘まで戻って来ました。
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頑張って急いで下山したかいもあって、30分以上の入浴時間を確保することが出来ました。宣言通り、温泉に立ち寄って行きますよ。
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ちなみにこの露天風呂には、料金は特に決まっておらず、脱衣場に設置された箱に任意の協力金を入れて下さいと言う方式です。

ちょうど、山バッジを買ったときのお釣り400円がポケットに入ったままだったので、そのまま協力金箱に投入しました。

脱衣場と言っているのはこれかーい。申し訳程度の目隠ししかなく、道からは丸見えです。屋外で素っ裸になる事に抵抗がある人には、少々辛いかもしれません。
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しかし、書いていてふと思ったのですが、そもそも屋外で素っ裸になる事に全く抵抗がないと言う人は、果たしてどのくらいいるのでしょうか。

当然カランなども一切なく、浴槽があるだけです。昔ながらの素朴な山の出湯の姿ですな。
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16時50分 ゆったりと湯にもつかってスッキリしたところで、スタート地点の雨飾高原バス停へと戻ってきました。
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17時9分発の最終バスに乗り込みます。ここで運転手さんより衝撃の一言が。「もうガスが無くなりそうなので途中で給油します」と。・・・なんだと。
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ちなみに、南小谷駅でのバスから電車への乗り換え時間は、もともと7分しかありません。バスの給油と言うのは、7分以内に終わるものなんでしょうか??

結局バスが駅に到着したのは、電車が出発する2分前の事でありました。転げ落ちるように階段を駆け下り、なんとか間に合いました。
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ちなみに、この電車を乗り逃してしまうと、もうこの日の内には東京に帰りつけません。まったく、最後の最後までハラハラさせてくれます。

その後は信濃大町で一度乗り換えて、松本駅へ。松本駅から最終列車の特急あずさに乗り込み、帰宅の途に付きました。
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かくして、多大なコストを費やして遠路はるばる敢行された雨飾山への遠征登山は、大満足の内に幕を下ろしました。決してアクセスが良好とは言い難い僻地にある山ではありますが、その手間に十分すぎるほど見合うだけの素晴らしい山でありました。山頂からの眺望も秀逸ですが、この山のハイライトと言えるのは、何よりも中腹に広がるブナ林です。紅葉も素晴らしかったですが、新緑の頃に訪れてもきっと素晴らしい光景に出会えることでしょう。
深田久弥ががほれ込んだと言うのにも納得の、文句なしの秀峰であると思います。

<コースタイム>
雨飾高原BS(8:15)-雨飾高原キャンプ場(9:00)-ブナ平(9:45)-荒管沢(10:30~10:45)-笹平(11:50)-雨飾山(12:15~12:50)-荒管沢(14:10)-ブナ平(14:50)-雨飾高原キャンプ場(15:30)-雨飾高原露天風呂(16:20~16:50)-雨飾高原BS(16:55)

201021雨飾山-119

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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