山梨県北杜市と長野県富士見町にまたがる権現岳(ごんげんだけ)に登りました。
八ヶ岳連峰の南部に位置している岩峰です。街道筋からの距離が近く比較的アクセスが容易であることから、冬期にも良く登られている山です。八ヶ岳の南端付近にある山の中では最も標高が高いため、山頂からは全方位に展望が開けています。
三ツ頭の急登を乗り越えて、白一色に染まった南八ヶ岳の大展望を満喫してきました。
2023年2月26日に旅す。
権現岳は南北に長い八ヶ岳連峰の南部に位置している山です。南端付近にある山の中では最も標高が高く、中央本線の車窓から眺めた際にも大変目を引く存在です。
山頂に到るルートは複数存在しますが、中でも天女山登山口から三ツ頭を越えて行く大泉口コースは、危険個所が少ないことから冬期にもよく登られています。
技術的な難所こそあまりありませんが、三ツ頭に至るまでの道程は急登に次ぐ急登が続きます。登りの標準コースタイムは実に5時間30分にも及びます。冬期の権現岳はひたすら体力勝負の山です。
冬の八ヶ岳における入門編が北横岳や縞枯山、初級編が蓼科山や編笠山だとすると、権現岳は中級編と言ったところです。
評判通りの急登に打ちのめされてだいぶヘロヘロにはなりましたが、終日に渡って晴天に恵まれた会心の一日でした。白一色に染まった南八ヶ岳の大展望を思う存分に満喫してきた一日の記録です。
コース
天女山入口ゲートから三ツ頭を経由して権現岳を往復します。冬の権現岳登山としては最も一般的な行程です。
往路は天女山入口ゲートまでタクシーを使いましたが、帰路は小海線の甲斐大泉駅まで歩て下りました。
1.権現岳登山 アプローチ編 始発電車リレーで行く八ヶ岳山麓への旅路
4時35分 JR三鷹駅
始発電車で行動を開始すべく、朝っぱらから自転車でやってまいりました。足首がほとんど曲がらない冬靴を履いた状態で自転車をこいだのが、何気にこの日一番の核心部であったかもしれない。
三鷹駅から高尾、大月、甲府と始発電車をリレーして行きます。乗り換え時間がかなりシビアなので、テキパキと行動しましょう。私にとっては最早すっかり慣れっこな行程です。
7時26分 小淵沢駅に到着しました。三鷹駅発の始発電車を乗り継ぐと、実はこんなに速い時間に小淵沢駅に降り立つことが可能です。このことを知って以来、八ヶ岳がずっと身近な存在になりました。
駅の窓から、目指す権現山の姿がちょうど正面に見えました。雪を頂いて真っ白な姿に期待が高まります。空は雲一つない快晴で絶好の登山日和です。
さてここで、冬の権現山に公共交通機関を利用してアプローチする方法について解説しておきましょう。
天女山登山口の最寄り駅は、小海線の甲斐大泉駅です。駅から登山口まで乗り入れている路線バスなどはないため、駅から直接歩いて行くか、もしくはタクシーを呼ぶことになります。
甲斐大泉駅は無人駅で、駅前にタクシーは常駐していません。よって、タクシー利用の際は事前予約が必須となります。歩いた場合はだいたい1時間くらいはかかるようです。
今回私は珍しく奮発して、小淵沢駅から直接タクシーで向かいました。小淵沢駅には常時タクシーがいるので、この場合は特に事前予約は必要ありません。
料金的には甲斐大泉駅からタクシーを呼んだ場合よりも割高になりますが、小海線乗り換えのための待ち時間が発生しないため、より早くに現地に降り立てます。
本日の行程はコースタイム的に結構シビアであるため、少しでも行動開始時間を早めるためにお金で時間を買いました。
7時50分 天女山入口ゲートに到着しました。ここまでの料金は確か5,000円ちょうどだったかな。甲斐大泉駅からなら1,500円くらいだそうです。
結構な数の車が路上駐車されていました。権現山への入山者はかなり多いようです。
無雪期にはこの先にある天女山の駐車場まで車で入ることが出来ます。冬はゲートが閉鎖されているため、ここがスタート地点となります。
2.天の河原に至る序盤の肩慣らし
身支度を整えて8時ちょうどに登山具を開始します。登山道の入り口は、ゲートの先へ進んですぐの左側にあります。
雪の多い時期だと登山口の時点からすでに雪があったりするらしいのですが、今のところは全く雪がありません。足元の土はコチコチに凍結しており、ありえないくらいに寒い。
登り始めて早々ですが、早くも周囲が開けそうな予感です。眺めが良くなるのは良いのですが、それは同時に風の影響を受けることも意味しています。
今の時点からこれだけ寒いとなると、吹きっ晒しの稜線上に出た時にはどうなってしまうのだろうか。
8時20分 天女山まで登って来ました。かつて八百万の神々がこの山に集まって会合を開き、天女らが舞いを舞ったという伝説に由来しています。大泉口コースにおける最初のチェックポイントと言ったところです。
広々としており、周囲に展望が開けています。無雪期であれば車で登ってこれてしまう場所であるため、登山の対象と言うよりは観光地としての色合いが強い場所です。
甲斐駒ヶ岳(2,967m)がちょうど正面にあります。左奥には北岳(3,193m)が頭だけを僅かに覗かせていました。
先ほどの場所は展望台で、本当のピークは奥にひっそりとありました。
観光地らしくトイレまでもがしっかりと完備していますが、冬期閉鎖中でした。
山頂のすぐ裏手に駐車場があり、無雪期だとここからスタートできます。見方によっては、ここまで来てようやく登山口に立ったとも言えます。
権現岳まではあと6.8kmです。天女山から権現岳山頂までの標高差はおおよそ1,200メートルほどあるので、丹沢の大倉尾根と同じくらいの強度ですかね。権現岳の方が標高が高いぶんだけ空気が薄くなるので、単純に比較はできませんが。
道標上にさりげなく山梨百名山アピールがされていました。言われてみれば確かに、権現岳は山梨百名山くらいしか肩書がない山です。
天女山を過ぎて以降も道の上に雪はありませんが、凍結している個所が徐々に増えて来ました。
駐車場から10分程登ったところで、再び開けた場所が見えて来ました。
8時35分 天の河原まで登って来ました。天女山で舞を舞った天女が、身を清めたと言う伝承のある場所です。
河原を名乗ってはいますが、実際のところ川は流れていません。ザレ場になっており、周囲の展望が開けています。
富士山がドーンとよく見えました。左に見えている山はニセヤツの異名を持つ茅ヶ岳(1,704m)です。本物から見た偽物ですね。
甲斐駒ヶ岳の隣に鋸岳(2,685m)が良く見えます。まさに名前の通りのギザギザな山容をしています。流石にこの山を冬に登るもの好きはそう滅多にいないでしょう。
ついでに北岳を最大望遠で覗いてみましょう。白い輝くバットレスが荘厳で神々しい。
3.三ツ頭へと続く急登地獄
まだまだ先は長いので、いつまでも景色を見ていないでそろそろ行動を再開しましょう。天の河原までの道程は言ってみればウォーミングアップのようなものであり、権現岳登山はここからが本番です。
足元にチラホラと雪が現れ始めたので、ひとまずはチェーンスパイクを装着します。12爪アイゼンを履くのは、この先の急登に差し掛かってからで充分です。
ベンチの置かれた広場があり、前方の視界が開けました。正面に見えているのは三ツ頭と呼ばれるピークで、目指す権現岳は右奥です。うーん、遠いいなあ。
三ツ頭に取り付くまでは、しばしの間ほぼ水平移動の道が続きます。この辺りは来る嵐の間の静けさと言ったところです。
林の中にテントが何張かありました。ここに前泊してご来光登山を狙ったのかな。
お待ちかね(?)の急登が始まりました。ここから先は三ツ頭に至るまで、緩むことのない急登一辺倒が続きます。いっちょう気合を入れて行きましょう。
程なく標高2,000メートル地点を越えました。急登なだけに、短時間でみるみると標高が上がって行きます。
雪もだいぶ深くなってきたので、ここで12本爪アイゼンに履き替えます。足取りはだいぶ重くなりましたが、前爪のおかげでずっと歩きやすくなりました。
笹が茂った、先の見えない急坂がひたすら続きます。展望も一切なく、この辺りが体力的にも精神的にも一番辛い頑張りどころです。稜線まで登れば大絶景が待っているので、今はひたすら我慢して黙々と登り続けましょう。
背後が少し開けて、眼下に広がる高原地帯と、その背後の奥秩父山地の山並みが一望できました。いつの間にか、ずいぶんと高いところまで登って来たものです。
有名な「ここが一番きつい」と書かれた標識がありました。実際に登った感覚だと、この看板が現れるのはキツさのピークを過ぎた辺りで、この看板よりも少し手前が最も急勾配でした。
かくして看板に書かれていた通り、前三ツ頭のピークが見えて来ました。あそこまで辿り着いたところでまだ急登は終わらないのですが、ともかく展望は開けます。
道の左側は大きくザレており、眼下に広がる甲府盆地を一望でききました。朝からずっと晴天が続いていますが、少しだけ雲が出てきて湧いて来ました。
稜線まで登って来ました。実は先ほどから見えていたのは前三ツ頭と言うピークで、稜線上に出るなり本当の三ツ頭が現れると言う、なかなか心をへし折りに来る展開です。
11時10分 前三ツ頭まで登って来ました。天の河原から実に2時間30分を要しました。いやはや、評判通りのキツイ登りでしたよ。うんまあ、まだ終わりじゃあないんですけれどね。
目指す権現岳の姿は、三ツ頭に遮られてここからでは見えません。三ツ頭まで登れば、赤岳を始めとした南八ヶ岳の主要な山々の展望が開けます。
既にだいぶバテバテではありますが、もうひと踏ん張り頑張って登りましょう。
前三ツ頭手前の急登に比べれば幾分かマシですが、三ツ頭への登りも結構な急登です。稜線出でたら風に吹かれて寒くなるかと思いきや、逆に直射日光ギラギラで暑くなって来ました。
灌木帯を抜けてたところで、ようやく三ツ頭のピークらしき場所が見えて来ました。
ここまでずっと三ツ頭に遮られて見えていなかった、お隣の編笠山(2,524m)の姿が視界に飛び込んできました。権現岳よりはずっと登りやすく、雪山初心者向けの山として定番の存在です。
11時50分 三ツ頭まで登って来ました。間もなく正午になろうかと言う時間になって、ようやくの到着です。(権現岳に)12時くらいには着くんじゃないの?とか思っていた、自分の見通しの甘さ加減が恨めしい。
目の前に権現岳から赤岳に至る、南八ヶ岳の主要なピーク達が居並びます。これまでの疲れを吹き飛ばすかのような、素晴らしい眺めです。
八ヶ岳連峰最高峰の赤岳(2,899m)です。雪を纏ったその姿は、赤岳と言うよりはむしろ白岳ですね。
冬の赤岳には大変興味はそそられるのですが、永世雪山初心者である自分の技量だと、そもそも登れるのかどうか自体が極めて微妙なラインなんですよね。
背後にはお富士山。なんなら権現岳には登らずに、始めからここを目的地としても何ら不満は感じないであろうクォリティの眺望です。
流石にだいぶ疲労を憶えていたので、ここで腹ごしらえを兼ねて一本立てました。
4.権現岳登山 登頂編 恐ろし気なトラバースを抜けた先に待つ、絶景の頂
山頂に向かいましょう。ここまでの道程は特にこれといった危険な箇所がない安心安全な道でしたが、この先からは少し険しくなります。気を引き締めてまいりましょう。
鞍部まで下って来ました。雪の上にテント泊したのであろう痕跡が残っていました。吹きっ晒しの場所だし、夜中はさぞや寒かろうに。
ここでストックは収容して、ピッケルに持ち替えました。
権現岳と三ツ頭の間にある、名も無き小ピークを乗り越えます。夏道がどうなっているのかはよく判りませんが、冬は真っすぐ直登します。
このピークは頂上は踏まずに、途中でトラバースに移ります。今のところ雪は固く締まっており、特に危うさは感じません。もう少し季節が進んで雪が緩んでくると、怖さを感じるポイントかもしれません。
山頂が徐々に近づいて来ました。山頂直下はなかなかの急勾配であるように見えます。
思った通りの絶壁感が溢れる斜面です。ここを登るのは、前爪があるアイゼンでないと難しいと思います。少なくとも、私が目にした範囲内では、チェーンスパイクや軽アイゼンで登っている人は皆無でした。
振り返れば絶景。先ほど通った三ツ頭も、何時しかすっかりと目線より下にありました。
山頂付近の岩場まできたところで、流石に直登はできないと見えて再びトラバースに移ります。
この場所が冬の権現岳における核心部です。雪の付き方次第でかなり難易度が変わってきます。と言うかここ、夏道は一体どうなっているのだろうか。
肝を冷やしつつもなんとかおっかないトラバースを突破すると、今度こそ山頂が見えました。さあ、あとはウィニングランをキメるだけです。
このまるでチョキをしているかのような岩の上が、権現岳の山頂です。風化によるものだとしても、一体どういう力が働いてこんな珍妙な形状になったのか不思議です。
編笠山も何時しかすっかりと見降ろす高さです。漠然と編笠山と権現岳は同じくらいの標高だと思い込んでいたのですが、実際は200メートル近い差があります。
山頂標識は岩の上にあります。アイゼンを履いた状態で岩を登るのはちょっとおっかないですが、ここまで来た以上は登りましょう。
13時 権現岳に登頂しました。だいぶ手こずったようでいて、これでもまだ標準コースタイムよりは少し早くらいの到着でした。大泉口コースのしんどさ加減が伺えます。
ちなみに山梨百名山の標柱は、山頂の岩の上ではなく下に立っています。
山梨百目山ハンターなので、こちらの標柱の写真もしっかりと押さえておきます。権現岳には過去既に登頂済みであるため、今回登頂数のカウントは増えません。
5.冬の権現岳から望む展望
無事に登頂はなりましたが、山頂からさらに少し先に進んだキレット方面への分岐地点まで行った方が眺めが良いので、もう少し先まで進みます。
赤岳へと続くキレット方面の全容がドーンと視界に飛び込んできました。そうそう、この光景が見たかったのです。素晴らしい!
赤岳はどこから見てもカッコイイ山であるとは思いますが、中でも一番見栄えがするのは権現岳から見た姿だと思います。特にこうして雪を纏った姿たるや、お賽銭をあげて拝みたくなるくらいにはカッコイイ。
こちらは赤岳のお隣さんの阿弥陀岳(2,805m)です。赤岳の影に隠れてあまり目立たない山ですが、登頂難易度で言うなら赤岳よりもむしろ上の存在です。一度南陵コースを歩いてみたいんだよな。
阿弥陀岳の左後方には、北八ヶ岳の蓼科山(2,531m)の姿も見えます。あの辺りがちょうど八ヶ岳連峰の北の端です。
蓼科山の左手には美ヶ原(2,034m)と霧ヶ峰(1,925m)。その背後には北アルプスの山並みが並んでいるはずですが、そちらは生憎と雲隠れ中でした。
権現岳は二つのピークを持つ双耳峰で、こちらがもう一つのピークであるギボシ(2,700m)です。両ピークの間には、傾いている山小屋として名高い権現小屋があります。
時間と体力に余裕があったらギボシまで足を延ばしたかったのですが、流石にどちらももう限界です。
ギボシの先の彼方には、木曽御嶽山(3,067m)の姿がありました。標高3,000メートルを超える独立峰であるため、遠くからでも良く目立ちます。
これは北アルプスの乗鞍岳(3,026m)ですね。御嶽山と同様に、遠くからでも大変よく目立ちます。
編笠山の先には南アルプスと中央アルプスの山々が並んで見えます。
北アルプスや南アルプスにくらべるとイマイチ地味な中央アルプス。地味と言うか、山域のスケール的に南北のアルプスと肩を並べらるほどには大きくはないと言うだけなんでしょうけれど。
ボリューム的には、むしろ八ヶ岳と近いくらいなように思えます。
絶景を思う存分に目に焼き付けて満足しました。ボチボチ引き上げましょう。
6.再び恐怖のトラバース地帯を抜ける
13時20分 名残惜しくはありますが、いいかげん背負っている荷物を早く降ろしたくもあるので下山に移ります。
背中のザックの事を言っているのではありません。先ほどの危なっかしいトラバースをもう一度無事に通過しない事には生還できないという事実の事です。
自分は日帰り組の中では最後尾だろうと思っていましたが、この時間になってもまだ登ってくる登山者の姿がチラホラとありました。
と言う事で再び恐怖のトラバースタイムです。登りよりも下りの方が圧倒的に怖いのは言うまでもないでしょう。・・・と言うか、横幅が狭すぎませんか。
時間にして正味1分にも満たない程度の距離ではありますが、トラバースが大の苦手な私はえらく緊張しました。
とりあえず最大の難所は乗り越えました。この先もしばしの間、油断のならない急な下りが続きますが、気持的にはだいぶ楽になりました。
左手に奥秩父山塊の山並みが横たわります。北アルプスのような迫力こそありませんが、重厚と言うか奥行きの厚みが尋常ではない山域です。
二度目のトラバースです。こちらは横幅しっかりとあるので、特にそこまでの緊張は感じません。
トラバース地帯を無事に乗り越えて、これでもうだいぶ背負っているものは軽くなりました。ピッケルは収納してストックに持ち替えます。
約束されていた、三ツ頭への登り返しです。大した高さではありませんが、すっかり下山モードに切り替わっていまっている体には何気にしんどい。
14時15分 三ツ頭に戻って来ました。ここまで戻ってくれば、もう危険と言える場所はありません。
正午を過ぎても空には相変わらず雲一つありません。まさに絶好の登山日和でしたな。日焼けが惨いことになってはいそうですが。
権現岳はこれで見納めです。さらば権現岳。素晴らしき眺望をありがとう。
7.権現岳登山 下山編 雪山の下山はあっという間・・・でもなかった
もう帰るだけとか言いつつ、撮影が捗りすぎてなかなか歩みが進みません。だって、目にする光景がいちいち絶景なんですもの。
14時50分 前三ツ頭まで下って来ました。登る時にはあれほど息絶え絶えだった坂も、下る分にはあっという間です。
標高が下がって来るにつれて、足元の雪はだいぶゆんるんでグズグズになっていました。なんやかんやで暖かかったですからね。
韮崎付近に延々と横たわっている七里岩は、もともと八ヶ岳の噴火により流出した岩屑流が堆積したものであると言われています。こうして上から眺めると、たしかに八ヶ岳から甲府盆地に向かって流れ出て行った痕跡が見て取れます。
樹林帯に入ったらあとはもう消化試合です。黙々と下山と言う作業に取り組みます。
急登を下りきったところで、12本爪アイゼンは外して再びチェーンスパイクに戻します。
16時30分 天の河原まで戻って来た時には、もうすっかりと陽が傾いていました。
ソールが堅い冬靴は、雪の無い地面を歩くと地味に足の裏にダメージを与えて来るんですよね。むしろ天の河原から先の下山の方が苦行でした。
天女山まで戻って来ました。この分なら、ヘッドライトは出さずとも下山を終えれそうです。
最後の仕上げです。普段ならなんと言うことはない登山道なのですが、冬靴を履いていると意外とそうでもありません。痛い痛い冬靴痛い。
あまりの長さに若干の嫌気がさしつつも、何とか登山口まで戻って来ました。
17時5分 天女山入口ゲートまで戻って来ました。車で来ている人は達成感に満たされる瞬間であることでしょう。私はまだ終わりではないんですけれどね。もう歩くのかったるいからタクシーを呼ぼうよ
ドケチ環境意識高い系ハイカーである私は、ここからさらに甲斐大泉駅まで歩きます。往路で小淵沢駅から直接タクシーに乗ると言う贅沢をしてしまっているわけですから、せめて帰りくらいはね。
ここでいまさら言うまでもないことですが、冬靴は舗装道路を歩くのにはまったく適しておりません。アプローチシューズを用意すべきであったと軽く後悔しました。痛い痛い冬靴痛い。
17時50分 甲斐大泉駅に到着しました。行動開始から9時間50分の山行きでありました。今日もたくさん歩いて大満足です。
18時35分発の小淵沢行きの小海線に乗車します。もしこの列車に間に合わようなら帰りもタクシーを呼ぶつもりでしたが、結果としては30分以上の余裕がありました。
小淵沢駅から特急あずさに乗・・・ろうとしたのですが、直近の列車は満席状態でした。だいぶコロナ渦以前の客足が戻って来ましたな。
やれやれと肩をすくめつつ、鈍行列車に揺られて長い長い帰宅の途につきました。
最高の天気にも恵まれて、権現岳登山は大満足の内に幕を下ろしました。無雪期にはどちらかと言うと南八ヶ岳縦走時の通り道扱いをされることが多いであろう権現岳ですが、こと山頂からの眺望に関しては一級の存在です。
冬の権現岳は山頂手前のトラバース以外には特にこれと言った難所もなく、ただひたすら体力勝負の山です。技術的な面での難易度は高くありませんが、日帰りで10時間以上のルートを歩き通すことのできる体力が必須です。
ロングトレイルに自信ありの人は、白く染まった神々しき南八ヶ岳の山々を眺めに訪れてみては如何でしょうか。苦労に見合うだけの光景に出会えることは保証いたします。
<コースタイム>
天女山入口ゲート(8:00)-天女山(8:20)-天の河原(8:35)-前三ツ頭(11:10)-三ツ頭(11:50~12:05)-権現岳(13:00~13:20)-三ツ頭(14:15~14:30)-前三ツ頭(14:50)-天の河原(16:30)-天女山(16:50)-天女山入口ゲート(17:05)-甲斐大泉駅(17:50)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
オオツキさん、こんばんは。
山頂まで行かなくても、途中でイケメン3兄弟・甲斐駒、北岳バットレス、赤岳が見えてしまうんですか!八ヶ岳連峰の中では地味ながら権現岳やるな〜!
雪山に登る技術も装備も私にはないので、雪山の写真を見るだけで感動、興奮です。今回も素晴らしい写真をありがとうございます!
MMさま
コメントをありがとうございます。
北岳パイセンがイケメン枠に含まれるのかどうかには若干議論の余地がありそうですが、周辺のオールスターたち全部見えな最高のお天気でした。
八ヶ岳の向かいの入笠山なら、本格的な雪山装備がなくても登れます。銀嶺の八ヶ岳を眺めに登ってみては如何でしょうか。