東京都八王子市にある高尾山(たかおさん)に登りました。
年間に265万人もの人が訪れる、世界一登山者の多い山です。山中には数多くのハイキングコースが網目のように整備され、登山の対象というよりは観光地の範疇にあると考えたほうが良い場所です。
過去に飽きるほど何度も登った事のある今更な山ではありますが、大雪の降った後とあれば話は別です。
天狗も凍える雪山と化した高尾山で、大いに遊んで来ました。
2018年2月4日に旅す。
今回の行き先は、ミシェランガイド3星に輝く世界の高尾山です。世界一登山者数が多い山として有名です。訪問者の数は公称265万人にもおよび、ギネスブック公認なのだとか。
私はもともとあまり人混みが好きではない性質なので、自宅から電車一本で行けるお手軽な山である割には、この山を訪れる機会はそう多くありません。
では、今日に限って何しにやって来たのかと言うと、理由は大きく二つあります。
一つ目は、まだ雪が大量に残っていそうだったからです。滅多に雪の積もる事の無い東京都心部にすら、あれほどの積雪量があったわけですから、山間部である高尾山には相当量の雪が積もったことでしょう。
雪山化した高尾山だなんて、なかなかお目にかかれないレアな光景です。これは是非とも実際にこの目で確かめてみたいところです。
理由の二つ目は、最近靴を新調したので、その慣らし運転を兼ねてです。
LOWAチベット GT WXLです。
安くはない買い物でしたが、足に馴染んだ時のレザーシューズの履き心地を一度知ってしまった身としては、今更もうアッパーがナイロンの靴には戻れません。
これまで長きに渡って苦楽を共にしてきた頼れる相棒キャラバンGK69は、踵のソールが磨り減ってまるで草履のようになってしまったので、引退させることにしました。
既に2度のソール交換を経てきた老兵です。頑丈なとても良い靴でしたが、キャラバンショップの店員に3度目のソール交換は無いと言い渡されてしまっているので、泣く泣く交代と相成りました。
と言うことで、新たな相棒を携え、雪山と化した高尾山へと繰り出します。
8時25分 京王線 調布駅
高尾山カラーの準特急に乗り込み、終点の高尾山口駅へと向かいます。近場なので、非常にゆったりとしたスタートです。
私は京王線ユーザーなので、高尾山へは乗り換え無しの一本でいけます。・・・とアピりたかった所ですが、残念ながら自宅最寄りの駅に特急は停車しないのです。
調布駅から僅か35分ほどの乗車時間で、高尾山口駅に到着しました。なんと言う圧倒的なお手軽さなのでしょう。
2年前に出来た高尾山口駅前の温泉「極楽湯」が、ホームのすぐ隣にあります。観光地プライス(1,000円)なうえに、いつも混んでいて芋洗い場状態なので、あまりオススメはしません。
駅前の様子は、高尾山にしてはまあまあ空いている方ですかね。圧倒的にライトユーザー(?)が多いであろう高尾山において、降雪直後に訪れる物好きはあまり多く無いように見えます。
まずは清滝駅へ向かいます。道は完全に除雪されていました。人が少めな点を除けば、今のところはいつもの高尾山です。
清滝駅前までやって来ました。今日は靴の慣らし運転に来ているのですから、当然ながらケーブルカーは使用しません。
高尾山のコース中でほぼ唯一の登山らしい登山が出来る、稲荷山コースから登ります。
敷地の広さを現す尺度として、よく東京ドーム何個分と言う表現をしませんか。あれと同様の感覚で、私はよく山の高さを表現するのに、高尾山何個分とか言ったりします。高尾換算、略して高尾算です。
おおむね標高差400メートル、所要時間にして1時間くらいが1高尾山です。丹沢の大倉尾根が、標高差1,200メートルで大体3時間くらい掛かるので、高尾算は遠からず良い指標になっていると思うのです。
その高尾算の根拠となっているのが、今から登る稲荷山コースです。山頂まで大体1時間くらいの道のりです。
稲荷山コースの入り口は、ケーブルカー駅の脇にあります。登り始めからいきなり結構な量の雪が残っていますねえ。これは雪山気分を味わうのに、大いに期待できそうです。
融けかかったシャーベット状の雪です。足を置いてみると、結構滑ります。
なので、今日は最初からチェーンスパイク装着で行きます。9時20分に登山開始です。
高尾山にしては珍しく、スニーカー履きの軽装な人の姿は見えません。周囲は皆、しっかりとした登山の格好をしている人だけでした。
陽の当たる場所では雪がなくなっています。こう言う雪が消えたり現れたりを繰り返すコンディションでは、軽アイゼンよりチェーンスパイクのほうが快適です。
だいたい200メートル前後の間隔で、このようなキロポストが設置されています。
この時点で、飲料水を全く携行していないことに気がつきました。清滝駅で500mlのペットボトルを1本調達しようしていた事を、完全に失念していました。
本来であれば、即座に引き返すべき事態ではあります。しかしながら「まあいいか、高尾山だし」と思わせてくれるのが、この山が持つ底知れぬ度量の成せる業なのです。
単にお前が山を舐めているだけだ。
と言うことで、そのまま行動を続行します。なお、至る所に自動販売機が設置されている1号路とは違い、稲荷山コースに道中で給水できるポイントは存在しません。
眼下にある高尾山インターチェンジから、車の音が絶えず聞こえてきます。里に近い山において、麓の環境音が聞こえてしまうのは致し方ありませんな。もっと奥まで進めば、そのうち音は聞こえなくなります。
場所によっては足元がぬかるみまくっています。おニューの靴を早速泥まみれにしてしまいました。
いやむしろ、これで良いのかもしれません。何事においても始めが最も肝心です。お高くとまった(?)新品の靴に、自分がこの先どういう使われ方をするのか、身をもって叩き込んでやる事にしましょう。
泥の付いた靴に踏みしだかれて、雪の表面がすっかり薄汚れています。既に結構な数の入山者があるようですね。
少し道の傾斜がきつくなってきたところで、コース名の由来となっているピークの稲荷山が見えて来ました。
左へ進むと山頂を巻くことも出来ます。ですがまあ、わざわざ巻くほどの距離でもないので、真っ直ぐ進めばよいと思います。
稲荷山には東屋が立っており、格好の休憩スポットとなっています。
ここからは八王子の市街地を一望できます。朝から空がどんよりとしていて、なんだかピリッとしない天気です。
山頂直下で、すぐに先ほどの巻き道と合流します。この光景を見れば、わざわざ巻くほどでないと言った理由をご理解いただけるかと。
稲荷山を過ぎると、しばらくの間は傾斜の緩い道が続きます。標高が上がったためか、雪の量が多くなってきました。
高尾山にもマムシが居るのですね。幸いなことに、一度も遭遇したことはありませんが。
六号路からの合流地点まで登って来ました。ここからまた少し傾斜が増してきます。
よくよく考えてみると、尾根筋の稲荷山コースより谷筋の6号路の方が、日陰な分だけ雪がもっと沢山残っていたのではないかという気がします。
この辺りはいつ来ても足元ドロドロの泥濘地帯なのですが、今日は雪のおかげでむしろ普段よりも歩きやすい状態でした。
この山頂直下の階段は、稲荷山コースのイメージを代表している場所です。ここだけ見ると、凄くキツそうなコースに見えますよね。実際は傾斜の緩い尾根歩きが大半を占める、実に楽なコースなんですけれどね。
山頂に向けたビクトリーロードです。ゆくっりと一歩一歩登って行きましょう。
高尾山と言うのは、コースタイムをどれだけ巻けるか等を考えながら登るような山ではありません。
自分のペースでゆっくりと登れば良いのです。慌てる必要なんてありません。
期待していた以上に、結構な量の雪が融けずに残っていました。降雪直後に訪れていればもっと沢山の雪が残っていたのでしょうけれど、昨日は昨日で奥多摩の山奥で遊んでいたのですよ。
10時25分 高尾山登頂
登山開始から1時間5分で到着しました。雪の影響はほとんどなく、ほぼ高尾算の通りです。
山頂の水場で、東京水道局の美味しい水を給水します。山の頂上に水道があるだなんて、流石は世界の高尾山です。どうやって加圧しているのでしょうか。
ここで、雲の合間から陽が射して来ました。強烈な雪の照り返しが目に染みいります。度入りのサングラスが欲しいな・・・
展望台からの風景は雲が多くてちょっと残念な感じです。正面の雲に覆われているのは丹沢主脈の山々ですかね。富士山も全く見えずです。
展望台でしばらく粘ってみましたが、一向に雲の取れる気配がありません。諦めて下山を開始します。下山は最も無難な一号路を使います。
山頂の茶屋は営業していませんでした。この積雪状況では、殆ど客は居ないと見越しての判断か。
下山前にトイレに立ち寄って行いましょう。建設費1億5千万円の豪華檜普請のトイレで用を足せば、きっとセレブな気分に浸れることでしょう。
一号路はどうせ除雪済みだろうと高を括っておりましたが、以外なことに稲荷山コースよりも遥かに深く積雪していました。そういえばここは日陰ですね。
スニーカーで四苦八苦している人が沢山いました。・・・水も持たずに山登りした私が言うのも何ですが、いくらなんでも山を舐めすぎなんじゃないですか?
足元ツルツルです。凹凸の少ないな石畳の上に積もった雪と言うのは、何気結構危険なものですな。
薬王院の境内は除雪済みでした。上で見かけたスニーカー履きの人たちは、きっと山頂まですべて除雪済みだと勘違いして進んでしまい、後に引けなくなってしまったのでしょう。
寺院が沢山ありすぎて、いまだにどれが薬王院なのか知りません。特定の建物のことではなく、この辺りにある寺院全体の名称なのでしょうか。
いつもは人で溢れる薬王院も、今日は流石に閑散としていました。
境内には天狗が沢山居ます。東京都内では、高尾山のほかに御岳山も天狗の生息地として有名です。
屋根からの落雪があるからか、正門が通行禁止になっていました。
杉の巨木が立ち並ぶ表参道を下って行きます。この辺は、登山と言うよりは参拝ですね。
小腹が空いてきたので、権現茶屋でお昼にします。今日は水だけではなく、食べるものも一切携行していないという山舐めっぷりであります。だって高尾山だし。
権現茶屋の名物だと言う天狗ラーメンを頂きました。お値段は1,000円です。観光地プライスなのは致し方ありませんが、ボリューム感は十分にあります。
豆乳スープがベースの、あっさり系の味付けです。すりゴマの他に、梅干や紫蘇、紅生姜等と言った、普段はあまりラーメンに使われることはなさそうな具が沢山入っていました。
他の何とも似ていない、極めて独特な味わいです。なんにせよ、ここでしか食べることの出来ないオンリーワンの存在であることは間違いありません。
ケーブルカーを使うつもりはありませんが、食後のデザートに天狗焼きを買いたかったので、ケーブルカー駅方向に向かいます。
山頂駅はなにやら改装工事中でした。天狗焼き屋もバリケードに覆われて営業していません。
ビアホール前からの展望はすこぶる良好です。夜に訪れたことはありませんが、ここからの夜景はさぞ綺麗な事でしょう。
天狗ラーメンに続いて天狗焼きと、今日は天狗づくしです。この時点で既に、この日消費した以上のカロリーを摂取してしまっている気がしますが、気にしないことにしましょう。
・・・そんなんだから、いつまでたっても痩せないのでしょうけれどね。
リフトもスルーして、駅まで歩いて下ります。
はっきり言って、一号路の下山と言うのは絶望的なまでにつまらない行程です。運賃の480円をどうしてもケチリたい訳でもない限り、下山は素直にケーブルカーかリフトを利用したほうがいいと思います。
かく言う私は、今日は靴の慣らし運転に来ているので、ケーブルカーを使ってしまっては何の意味もありません。例えどんなにつまらなかろうが、歩いて下るのです。
靴擦れが起きそうな予兆も無いし、急な下りであっても、指の先端が靴に接触してしまうこともありません。
高尾山に一回登ったくらいでは結論は出せませんが、今のところ新しい靴の履き心地はすこぶる良好な感触です。
次はもっと長距離を歩いてみることにしましょう。
駅に準特急が停車しているのが見えました。それに乗りたい。ちょっと待って、ジャスタモーメント!
と言うことで小走りに駅へ戻ります。走らずとも大体10分に1本くらいの高頻度で運転されてはいますが、新しい靴で走ったらどんな感じなのかもテストしてみたかったのですよ。
無事に発車前に駆け込めました。駆け込み乗車は危険ですからお止めください。
その後、調布のパルコにある好日山荘に立ち寄り、付属品のう○こ色の靴紐を赤いものに買い換えました。やはりレザーシューズには赤い靴紐が良く映えます。
きっと末永い付き合いになることでしょう。これからよろしく頼むぜ相棒!
なんだか高尾山とは全然関係の無い靴の話ばかり長々としてしまいましたが、世にも稀なる高尾山での雪山登山は、こんな感じで無事終了です。
高尾山にこれだけの雪が積もるのは、おそらくは数年に一度しかないことでしょうから、大変貴重な体験が出来たと思います。
都内に雪が積もった際には、とりあえず近場の山に繰り出してみては如何でしょうか。そこではきっと、いつもとは全く違う登山体験が得られる事でしょう。
本文中でも触れましたが、稲荷山コースは高尾山の中では唯一といっていい、登山道らしい登山道です。コースタイムもちょうど一時間くらいで手頃なので、新しい靴の慣らし運転や、病み上がりの様子見などと言った用途で訪れるのにも良いかと思います。
<コースタイム>
清滝駅(9:20)-稲荷山(9:55)-高尾山(10:25~10:50)-権現茶屋(11:30~12:00)-清滝駅(12:40)
完
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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