天祖山-酉谷山 奥多摩最深部、長沢背稜を歩く

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東京都奥多摩町にある天祖山(てんそざん)と酉谷山(とりだにやま)に登りました。
酉谷山は東京都と埼玉県の境界である長沢背稜(ながさわはいりょう)上にあり、奥多摩と呼ばれる一帯の中でも最も奥まった場所にある深山です。歩く人は極めて稀で、秘境めいた静かな森が広がっています。
とても東京の山とは思えないような、人影疎らな稜線を歩き通して来ました。

2017年5月2日に旅す。

warning!
長沢背稜の一帯は人影疎らな本当の山の中です。半ば観光地化されている人気の百名山等とは勝手が違います。
・地形図とコンパスを必ず携行しましょう。GPSは谷が多い場所では正確に受信できない場合があります。
・登山計画書を必ず提出しましょう。奥多摩駅に投函ポストがあります。遭難しても偶然発見してもらえる望みは極めて薄い場所です。
・水と食料は予備を十分に持ちましょう。かなりの長距離を歩きます。道迷い遭難も多く発生している場所です。

長沢背稜は東京の奥多摩と埼玉の秩父地方の境界を形成する尾根です。別名で都県境尾根などと呼ばれたりもします。
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奥多摩エリアの中でも最深部に位置し、取り付くのは容易ではありません。前々からこの一帯を歩いてみたいと思っていましたが、なかなか実行に移す機会が得られず、今回ようやく満を持して決行しました。

日帰りでのアプローチは極めて困難な場所に位置するため、今回は酉谷山避難小屋に宿泊し1泊2日で長沢背稜を巡ります。
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酉谷山避難小屋は収容人数が10人にも満たないような小ぶりな山小屋ですが、他に代わりが存在しない唯一無二の立地により、大変人気のある小屋です。

そのため、万が一小屋からあぶれても良いように、念のため野営一式を背負って歩いてきました。

東京都最果ての場所を巡る、一泊二日の旅へと繰り出します。
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コース
天祖山・酉谷山周回のコースマップ
初日は日原鍾乳洞から天祖山を越えて長沢背稜に取り付き酉谷山避難小屋へ。二日目は酉谷山避難小屋から天目山までの尾根を歩き、ヨコスズ尾根を通って東日原に下山する。

長沢背稜の東側を歩き通すルートです。

1.長沢背稜線登山 アプローチ編 東京都の秘境日原のさらなる奥地へ

6時40分 JR立川駅
本日は平日ダイヤであるため、何時ものホリデー快速ではなく奥多摩行きの普通列車に乗り込みます。
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今日はわざわざGW中日の平時に有給を使って来ました。理由の一つが休日は東日原どまりのバスが、平日だとその先の日原鍾乳洞まで行ってくれるからです。これで車道歩きを30分以上短縮できます。
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8時45分 鍾乳洞バス停に到着しました。
途中の川乗橋でみんな降りるだろう思いきや、最後まで満席状態でした。まさか長沢背稜にそんな人気があるのでしょうか。
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はい、そんな訳ないですね。天祖山登山口へ向かうには橋を渡って左ですが、私以外の乗客は皆、まっすぐ日原鍾乳洞方面へと進んでいきました。
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ちなみにその日原鍾乳洞は、バス停からさらに10分ほど歩いた場所にあります。土日休日の場合は、東日原バス停から歩く必要があるのため、結構な距離を歩くことになります。
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日原鍾乳洞もなかなか魅力的なスポットです。日原へ下山後にまだ余力があるのであれば、ついでに立ち寄ってみるのも良いと思います。
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話しが脇にそれました。本題に戻りましょう。林道日原線の道なりに進み、天祖山の登山口へ向かいます。
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振り返ってみると、こんな光景が広がっています。日原川が刻みし大峡谷です。よくもまあこんな所にまで車道を通したものだと、関心させられます。
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林道脇を流れる日原川。多摩川の支流であり、奥多摩駅のある氷川で多摩川と合流します。非常に透き通った綺麗な清流ですね。
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林道はこの日原川に谷に沿って、さらなる奥地へと続いています。この林道を歩いているだけでも、すでに冒険感があります。
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しばらく歩くと路面の舗装がなくなりました。
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この辺り一帯は石灰石の採掘場が数多く存在します。この林道も、もともとは鉱山施設に出入りするために整備されたものなのでしょう。
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いつも疑問に思うのですが、こういう山奥の谷を渡る索道と言うのは、最初はどうやって対岸へ運んでいるのでしょうか。
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「始めは細いワイヤを通して、徐々に太くして行く」という説明をどこかで聞いたことがあるような気がしますが、となるとその最初の細いワイヤは、人が担いでこの絶壁を登ったという事なんですかね。ほんとに?

正面にはこれから超えようとしている天祖山が見えました。林道からはかなりの標高差があり、なかなか手強そうです。
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天祖山の登山口に到着しました。本当にここであっているのか不安になるよな、ただの法面の切れ目のような場所です。
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2.圧倒的な急登をもって立ちはだかる、日原の要塞天祖山

9時25分 身支度を整え登山を開始します。
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本日は、ほぼ人のいないドマイナーな道を歩きます。人が全く写っていないのは画的に少々寂しいので、自撮を多めに取り入れてお送りします。

本日宿泊予定の酉谷山避難小屋は非常に狭い建物で、ギリギリ詰め込んでも10人くらいまでしか泊まれません。

そんなわけで、本日は念のためテントを背負ってきています。また水場が枯れていることもあると言うので水も多めに持っています。おかげでザックの総重量は13kgほどになりました。足取りも重くスタートです。

地図の等高線を見ると、登り始めは相当キツイ坂を登ることになっていますが、実際は石垣がつまれた九十九折れの道になっていました。
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なかなか手の込んだ石垣です。入山者が少ないと言いつつも、道はしっかりと整備されているようでした。
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序盤は岩場の登りが続きます。ここは、かつて滑落死亡事故があった場所とのことです。気を引き締めて行きましょう。
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油断のならない厳しい道が続きます。
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マイナーがゆえにあまり知られていないだけで、この天祖山の表参道には、奥多摩三大急登の筆頭と言われる稲村岩尾根よりもキツイという意見もチラホラと聞かれます。

登り始めて50分ほどで空が見えてきました。
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尾根に乗りました。これで当分危険箇所はありません。
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傾斜も緩んで歩きやすい道が続きます。ただし踏跡がかなり薄いので、見落とさないよう集中力を要します。
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展望はありませんが、気持ちのいい森です。柔らかい緑色をした、新緑の若葉が実に美しい。
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地図上に水場アイコンがありますが、多分これです。水滴が僅かに滴っていますが、汲めそうにはありません。当然季節にもによるのでしょうけれど、ここはあまりアテにはしない方が良いかも。
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11時 大日神社に到着しました。これは大日神社跡と言ったほうが正確かもしれません。
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完全に廃墟と化しています。まあ、雨宿りくらいは出来るかな。
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神社の裏から再び急登が始まります。容易には攻略させてくれない山です。
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斜面に僅かながらツツジが咲いていました。
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天祖山は森の雰囲気は素晴らしいですが、全般的に花が少ない山です。華がないと言い換えた方がよりしっくり来るかな。

ようやく天祖山の頭頂部がお目見えです。この時点で標高は1,400メートルほど。新緑前線のある標高を超えたらしく、冬枯れの殺風景に変わりました。
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岩々しい道を登ります。踏跡が薄くルートが分りにくいので、よく周囲を観察して歩く必要があります。
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枯葉と岩のコンビは結構滑りやすい。登りはまだいいですが、下山時は結構危ないかもしれません。
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山頂に近づくにつれて、徐々に傾斜が緩くなってきました。
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道を塞ぐような倒木が割と多めです。やはり石尾根などのメジャーな登山道に比べて、道の整備状況は良好とは言えません。
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地図上で会所と呼ばれている場所までやって来ました。天学教という新興宗教団体が所有する修行場?のようです。詳しいことはよく分りません。
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会所の前からは富士山が見えました。ここだけ不自然に視界が開けていたので、おそらくは人為的に伐採したのでしょう。天祖山で展望がある場所はここだけです。
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しめ縄が張ってありました。この先の山頂部は神域のようです。脱帽して進入します。
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12時50分 天祖山に登頂しました。登山口から3時間以上かかっての登頂です。
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今日は泊まりと言うことで、あまり時間に追われていないので比較的のんびりと歩いています。荷物も重たいですしね。それを差し引いても、天祖山はなかなかの防御力でした。
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谷を挟んで向かいに東京都最高峰の雲取山(2,017m)が見えます。
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こちらは東京都標高第2位の芋ノ木ドッケ(1,946m)。都内第2位の高峰であるにも拘らず、長沢背稜縦走路上の小ピーク扱いされている不遇の山です。
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山頂でこの日初めてザックを落とし、昼食休憩を取りました。

食事中に突如サイレンの音が鳴り響いたと思ったら、その後に爆発音がしました。天祖山の北東斜面には石灰岩の鉱山があるので、おそらくは採掘時の発破音でしょう。

3.多摩と秩父を股にかける、奥多摩最深部長沢背稜へ

13時10分 さていよいよ、奥多摩最深部である長沢背稜へと向かいます。谷向かいに見えている稜線がその長沢背稜です。
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まずは一旦大きく標高を落とします。ちょっと恐怖を感じるくらいの急斜面でした。
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勿体無いくらい標高を落としたところで、ようやく最低鞍部の梯子坂ノクビレが見えて来ました。
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この後に待ち構える登り返しのことを思い憂鬱な気分になっておりましたが、それは杞憂でした。長沢背稜への登りは非常にゆったりとしており気持ちよく歩けます。
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この辺りは見事なカラマツ林が広がっていました。紅葉シーズンにも歩いていたいですねえ。
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ちょこっとだけ都心方面の眺望が開ける場所がありました。方角的に右の山は本仁田山(1,224m)で、左は川苔山(1,363m)でしょうか。
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やがて頭上に空が見えて来ました。稜線までもう一息です。
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出発から5時間以上かけて、ようやく長沢背稜の尾根に辿り着きました。遠かった・・・
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多摩と秩父を股に掛ける
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ここで初めて秩父側の展望が開けます。中央左のギザギサした山は秩父の名峰として名高い両神山(1,723m)です。中央右奥にあるのは浅間山(2,568m)かな。
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尾根上を歩き始めてしばらく経ったとところで急に視界が開けました。
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へリポートがありました。これはまた、こんな山奥によく整備しましたねえ。
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防災を目的とした滝谷ノ峰ヘリポートです。確かにここは、ヘリでも無いと救助なんかやってられない場所でしょうな。
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ヘリポートから見た天祖山(1,723m)です。ドッシリと重々しい山容をしています。北側から見ると、石灰岩の採掘で山腹を大きく削り取られている様がよく見えました。
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こちらは先ほども見えていた雲取山です。長沢背稜とは、途中の芋ノ木ドッケを経由して尾根でつながっています。天祖山は越えずに、雲取山荘に一泊して翌日に長沢背稜を歩く人も多いようです。
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こちらは秩父方面の山並みです。見渡す限りの一面の山また山ですな。
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遠く彼方に並ぶ雪を被った山並みは、方角的に上越国境地帯の山でしょうかね。これだけ遠くて小さいと、流石に山座同定するのは難しいですが。
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ヘリポートを過ぎたところで、ゴールの酉谷山がようやく姿を現しました。
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本日の宿である酉谷山避難小屋が山腹に小さく見えます。
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しかし見えてからがまたけっこ長いです。一部崩れてしまっていますが、石垣などもあり、古くから人の往来のある道である頃が何となく伺えます。
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酉谷山の山頂へ向かう道と、避難小屋へ直行する巻き道の分岐点まで辿り着きました。重荷を早く下ろしたかったのでここは巻き道へ。
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巻き道を20分ほど歩いたところで、避難小屋の真上に出ました。かわいらしい小屋ですね。
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16時 今宵の宿である、酉谷山避難小屋に到着しました。
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看板に彫り込まれたこのイチョウのマークが、ここが東京都であることを雄弁に物語っています。
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心配していた水場は枯れてはおらず、滾々と湧き出ていました。
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小屋の前からの景色はと言うと、大絶景と言うほどでもありませんが、まあ悪くはありません。
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おじゃましまーす
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先客が3人居ました。スペースは十分すぎるほど余裕があります。結果論ですが、重たい思いをしてここまで担ぎ上げたテントと水は出番無しでした。

毛布まであります。最悪、軽装で来ても何とかなりそうです。
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酉谷山避難小屋は非常に人気の高い避難小屋で、週末になると満員になってしまうことが良くあるそうです。

この日はGW中日とはいえ平日なので比較的空いておりましたが、休日にここを目指す時は野営具一式を携行した方が無難です。

4.奥多摩最深部の山、酉谷山の頂へ

ザックを小屋に残して、空荷でサクッと山頂を往復してきます。
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小屋から少し登った秩父側の斜面に、通称酉谷山避難小屋テント場と呼ばれている一画があります。
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正式なキャンプ指定地ではないので、あくまで小屋からあぶれた際の緊急時にのみ利用しましょう。スペース的には10張くらいはいけるかな。

避難小屋から山頂までは15分くらいです。割とあっけなく頂上が見えて来ました。
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16時25分 酉谷山に登頂しました。どこから登ってもひたすらに遠い、最深部の名に恥じない山でありました。
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山頂からの眺望はと言うと、特に良くはありません。富士山がちょっとだけ見えます。
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こちらは明日歩く予定の、長沢背稜の尾根道です。
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裏手には秩父地方の展望が広がります。その奥には、赤城山や日光の山並みなども遠望できました。
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半袖のまま登ってきてしまったので寒くなってきました。僅かな滞在時間で足早に山頂を後にし、避難小屋へと戻りました。

夜20時ごろ、何気に外を見たら僅かに夜景が見えたので撮影してみました。
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三脚は無いので手落ちです。ISO感度を6400まで上げたら、なんとか手持ち撮影でもいけました。手前部分の漆黒さ加減が凄いですね。人口の光源が一切ない空間が広がっています。

この時間になってヘッドランプ装着のおじさんが一人小屋に転がり込んできて、最終的な宿泊者は5人になりました。

山小屋に泊まるにしろテント泊するにしろ、山で宿泊する際に耳栓は必携品です。必ず持ち物に加えましょう。山という場所には、寝る前に酒盛りして轟音のイビキを立てるおじさんが必ず存在します。例外はありません。

私は耳栓のおかげで快適に眠ることが出来ました。

5.天目山を目指し、長沢背稜を縦走する

翌朝5時 普段より長く寝て気持ちよく目覚めました。まだ気温が上がっていないからでしょうか。富士山が昨日よりくっきりと見えます。
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都心方向は若干靄がかかっていました。スッキリ快晴とはいかないものの、まずまずのお天気です。
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パッキングを済ませて出発です。2食分の食料が減った上に、水の量も調整して大分軽くなったはずなんですが、それでもため息が出るくらい重い。
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5時40分 一晩お世話になった避難小屋を辞去して出発します。今日は長沢背稜を東に向かい、奥多摩随一の好展望地である天目山を目指して歩きます。
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ありがとう酉谷山避難小屋
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ここで一瞬、反対方向に進んで雲取山経由で鴨沢に下る案にも心を動かされましたが、鴨沢まで道の長さを思い浮かべて止めました。
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長沢背稜の縦走路は、尾根の上ではなく奥多摩側の山腹を巻く様に取り付けられています。アップダウンはほとんど無く、とても歩きやすい道です。
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たまにこんな感じの場所も現れます。大分年季の入った木橋のようですが大丈夫かな・・・
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崖の途中に引っかかっているこの旧橋は、自然に落ちたのか、それとも人為的に落としたのか。とても非常に気になります。・・・自分が乗っている最中に落ちてはかないませんからね。
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7時25分 ハナド岩に到着しました。ここでこの日初めて別の登山者とすれ違いました。時間的に一杯水避難小屋で宿泊したんでしょうかね。
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ハナド岩は長沢背稜コース上でも屈指の好展望スポットです。気付かずに通り過ぎてしまっては勿体無いので気をつけましょう。
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南側の真正面に石尾根の全貌が見渡せます。富士山も頭だけ見えていますね。
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こちらは西側の眺望。中央左が雲取山。中央右が芋ノ木ドッケです。東京都の標高1位2位のツーショットです。
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足元は断崖絶壁なので、あまり夢中になってファインダーを覗き込み過ぎると危険です。
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ハナド岩を過ぎてからほどなく、正面に目的地である天目山が姿を現しました。秩父側では三ツドッケとも呼ばれ、その名の通り三つのピークを持つ山です。
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一杯水避難小屋へ直行する巻き道と天目山への分岐までやってきました。ここは巻かずに登ります。
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結構急な斜面を登りきると山頂が見えてきました。見るからに展望が良さそうな姿に期待が高まります。
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8時10分 天目山に登頂しました。長沢背稜と呼ばれるのはひとまずここまでです。どこまでが長沢背稜なのかについては諸説があるようではありますが。
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この天目山からの展望は、奥多摩エリアでも随一と言われています。でもまあそれは、違法伐採の結果ではありますが。

なんでも、この山が好きで好きでしょうがないという一人のおじさんが、チェーンソーを持ち込んで勝手に伐採してしまったのだとか。

・・・チェーンソーっていったい何キロくらいあるのでしょうか。凄い行動力ですよね。

さて、その違法伐採の結果をじっくりと眺めてみましょうか。北側には秩父方面の山並みが広がります。
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東には棒ノ折山までと続く都県境尾根が一望できます。天目背稜と呼ばれる稜線です。ここから先は過去に歩いたことがある領域に入ります。
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正確な定義は不明ですが、一般的に芋ノ木ドッケから天目山までの尾根を長沢背稜と呼び、その先の尾根は天目背稜と呼ぶらしい。

これは南東方向の展望です。正面にある大岳山(1,266m)の特徴的なシルエットが目に付きます。
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続いて南の展望です。富士山の手前に見えてい尾根は石尾根です。雲取山から奥多摩駅の手前まで伸びています。富士山の右に見えているピークが鷹ノ巣山(1,737m)です。
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最後に西の展望を。中央奥が雲取山。雲取の手前にあるのが昨日通ってきた天祖山です。
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山頂にはアセビの花が多く咲いていました。
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ええ景色やのうー
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天目山はあまり歩く人が居ない非常にマイナー山ですが、個人的にはとてもオススメの山です。

この山の展望を賞賛すると「違法行為を肯定するのか?けしからん!」と怒り出す人も世の中には居るようです。しかしそんなことを言われましても、素晴らしいものは素晴らしいとしか・・・

いずれ時が経てばこの山頂は再び樹林に没するわけですから、見に行くなら早い方が良いかと思います。

6.長沢背稜登山 下山編 ヨコスズ尾根を下りに日原へ

8時30分 下山を開始します。ここからヨコスズ尾根を通って日原に降ります。
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天目山付付近の稜線は割とデコボコしており、もう気分はすっかり下山モードなのに結構激しく登り返しさせられたりします。
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8時55分 尾根道から転げ落ちるような急坂を下ったところで、一杯水避難小屋に到着しました。
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なんでもこの避難小屋に昔、山賊が住み着いていたことがあったのだとか。平成の世に山賊とはねえ。
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中の様子を覗いてみましょう。
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酉谷山避難小屋よりはずっと広いのですが、ここは立地が微妙で使いにくいんですよね。もう少し奥地にあれば利用価値も高まるのかも知れませんが。

ここで小休止して残っていたパンを平らげました。

下山再開です。始めは穏やかな尾根道を下ります。
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滝入ノ峰を巻く所にやや危険な箇所がありますが、良く踏まれている歩きやすい道が続きます。
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一度グレたけどその後更生した杉。・・・通るたびに写真に撮っているような気がします。これ、すごく目立つんですよ。
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何度も通ったことのある道なので、その後はわき目も触れずサクサクと降ります。

という事で割とあっけなく、日原集落まで戻ってきました。
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11時 東日原バス停に到着しました。
こんな早い時間に帰る人なんて殆ど居ないだろうと思いきや、鍾乳洞見物帰りと思われる集団が居合わせてバスは満員でした。
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余力があったら鍾乳洞見物でもしに行こうかとも思っておりましたが、二日に渡ってたくさん歩いて、もうクタクタです。おとなしく撤収に移ります。

奥多摩駅から青梅線に乗りこみ、帰宅の途につきました。
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奥多摩最深部に位置する酉谷山は、特段何があると言うわけでもない深い森の中にひっそりと佇んでいました。一言で言ってしまえば非常に地味な山です。
この山は、奥多摩を隅から隅まで歩き通してみたいと思う人以外は、あまり訪れることの無い場所なのではないかと思います。都会の喧騒を離れ、一人静かに山の中で過ごしたい人にはうってつけの場所と言えるでしょう。
長沢背稜は歩く人も少なく相当に山深い場所ではありますが、道は割としっかり整備されており、高低差も少なく普通のハイキングコースを歩いているかのような錯覚さえも覚えます。どちらかというと、尾根に取り付くまでが核心部であると言えます。
芋ノ木ドッケから雲取山へ至る道がまだ未踏破であるため、長沢背稜にはいつかまた再訪します。

<コースタイム>

1日目
日原鍾乳洞BS(8:45)-八丁橋(9:25)-大日神社(11:00)-天祖山(12:50~13:10)-梯子坂ノクビレ(13:40)-滝谷ノ峰へリポート(14:50)-酉谷山避難小屋(16:00)-酉谷山(16:25)-酉谷山避難小屋(16:40)

2日目
酉谷山避難小屋(5:40)-ハナド岩(7:25)-天目山(8:10~8:30)-一杯水避難小屋(8:55~9:20)-東日原BS(11:00)

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長々と最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. タケ より:

    こんにちは。週末に単独登山を楽しんでいる45歳のおっさんです。
    最近登ったルートを繋げると、もしかして日本海まで通じるんじゃないかと気づいて、コツコツと日本縦走横断を目指しています。
    ですのでオオツキさんの山行ブログはとても参考になります!
    私もいつか長沢背稜を走破してみたいです。

  2. オオツキ より:

    タケさま。
    コメントいただきありがとうございます。
    良いですね日本横断!
    時間と体力が無限にあったら、どこまででも歩いて行きたいと常々思っております。
    拙い内容の記録ですが、何かの参考になったのであれば幸いです。

  3. 久米川八坂 より:

    来年のGW に行く予定です。一度行ってみたいと思ってました。初めて歩くので分かりやすい文章と写真助かりました。テント持参で足元充分きおつけて歩きます。

  4. オオツキ より:

    久米川八坂様
    コメントを頂きましてありがとうございます。
    長沢背稜一帯は、そうそう気軽に立ち入れる場所ではありませんが、奥多摩の山深さと広大な原生林のスケールに圧倒されると思います。
    歩いている人自体が極めて少ない場所ですので、怪我や道迷い等のトラブルに見舞われないよう、道中はくれぐれもお気をつけ下さい。