東京都檜原村で滝巡りをしてきました。
南北の秋川に沿って村内の各地に点在する、全部で13の滝を巡るコースです。今回は南秋川の源流である三頭山からスタートして、南秋川沿いにある八つの滝(三頭大滝、管平の滝、夢の滝、九頭竜の滝、竜神の滝、吉祥寺滝、払沢の滝および中山の滝)を巡って来ました。
真夏の陽気と涼し気な沢沿いの景色が交差する、暑いのか涼しいのかよくわからなかった一日の記録です。
2021年8月21日に旅す。
時は前線が停滞し続けてピリッとしない天気が続いていた2021年の8月下旬。東京都檜原村へ滝めぐりに繰り出して来ました。
前回の滝めぐりでは、北秋川沿いに点在する滝を訪問しました。今回は第2弾という事で、南秋川沿いに点在する8つの滝を訪れます。
ここで檜原村の地理について軽くおさらいしておきましょう。檜原村にある集落は、秋川沿いの谷合にあるごく僅かな平坦地に点在しています。
今回巡り歩いた南秋川は、東京都と山梨県の境界である三頭山を源頭とし、笹尾根と浅間尾根の間に渓谷を形成しています。
源流である三頭山からスタートし、南秋川を下りつつ順番に滝を巡って来ました。
1.南秋川始まりの地、三頭山
8時10分 武蔵五日市駅
ホリデー快速秋川号に乗って、終点の武蔵五日市駅へとやって来ました。ここから、都民の森行きの急行バスに乗車します。
この日は終日に渡って曇天であると言う天気予報が出されてしましたが、この時点ではまだ僅かに青空が広がっており、ジリジリと気温が上昇しつつありました。
9時6分 およそ1時間の乗車時間をかけて、終点の都民の森に到着しました。バスから下車するなり、麓の街中とは明らかに違う涼しい空気が出迎えてくれました。
灼熱地獄になる事を覚悟しての訪問でしたが、むしろ半袖では少し肌寒いくらいで少々拍子抜けです。まあ、ここはすでに標高およそ1,000メートルの地点ですからね。
入口脇にあるカエデの葉は、すでに薄っすらと紅葉の色づきが始まりつつありました。今年はまだ夏山らしい山に殆ど登っていないというのに、季節は着実に秋へと移り変わりつつあります。
このまま真っすぐに、本日の滝巡りの最初の滝である三頭大滝へ向かっても良いわけではありますが、登山ブログを標榜している以上一応は、先に三頭山を山頂を踏んでから出発することにしましょう。
イマイチな天気予報が出ているため、道中はさぞや空いているだろうと思いきや、臨時便バスの座席がすべて埋まるくらいには盛況です。三頭山の人気の高さが伺えます。
緊急事態宣言の発出に伴い、都民の森の体験施設はすべて臨時休業中です。トイレだけは借りられる状態でした。
余計な寄り道はせずに、最短ルートでスパッと三頭山へと向かいましょう。と言いう事で、まずは鞘口峠に向かいます。
2分刻みの道標とはまた、やけに細かいですね。これはこの看板を設置した人の自己コースタイムなのでしょうか。
9時30分 鞘口峠に到着しました。ここからは尾根歩きとなります。
この鞘口峠経由のルートは、山頂までの距離が短い分だけ、始めから結構な急登が続きます。それではいっちょう、気合を入れて行きましょう。
自身の仕事の繁忙と週末の悪天候という不運が重なった結果、ここしばらく全く山へ行けない状態が続いていました。3週間ぶりとなる登山で、立ち上がりから文字通り体が重い。
三頭山の中腹には、東京都内では最大の規模となる見事なブナ林が広がっています。ブナ林は保水力に優れているのが特徴で、三頭山は多摩川源流の水源地を守る大変重要な役割を担っています。
その重要極まりないないブナ林を、都民の森を造成する際に一体どれだけ伐採してしまったのでしょうかね。ここまで上がってくる直通バスを利用しておいてから言うのもなんではありますが、馬鹿げたものを作ってくれたものです。
三頭山にはその名の通り3つの頂があります。そのうち東峰には展望台があるのですが、本日は工事中で立ち入りが出来ないという案内が掲げられていました。
一応は過去の参考画像を張っておきましょうか。東峰の展望台と言うのはこんな場所です。晴れていれば御前山(1,405m)や大岳山(1,266m)の姿が良く見えます。
展望台へ入れないのならば用はないとばかりに、巻き道へ進みます。三頭山の最高地点は中央峰なのですが、山頂が狭いため山頂標識は中央峰ではなく西峰に設置されています。
という事で、中央峰もスルーして真っすぐに西峰へと向かいます。山頂が見えました。
10時30分 三頭山に登頂しました。本日は滝めぐりに来たはずなのに、気が付くと何故か山に登ってしまっていると言う。
この三頭山への登頂は、当初から予定されていた行動ではなく、現地に到着してからの完全なる思い付きです。ですがそれで良いのです。もともとここは、そういうブログなのですから。
予報通りの曇天ですが、山頂からはしっかりと富士山が見えました。全く期待などしていなかっただけに、これは嬉しいサプライズでした。
富士山の反対側の北方向には、東京都最高峰の雲取山(2,017m)の姿がありました。曇ってはいるけれども高曇りで、意外と周囲はしっかり見えました。
完全なる蛇足ではありましたが、一応は登ってきた甲斐があったと言うものです。
2.秋川水系最上流に位置する三頭大滝
10時45分 やって来て早々ですが、下山を開始します。何しろこの場所に立ったこと自体が、完全なる蛇足な訳ですからね。
そそくさと鞍部まで下って来ました。ここを直進すると笹尾根縦走路へと続いていますが、本日は当然そちらへは進みません。
最短ルートで三頭大滝方面へと下ります。この道標に書かれた30分と言う数字は少々シビアで、実際はもう少しかかると見ておいた方が良いでしょう。
苔生す沢沿いを下る、涼しくて気持ちの良い道です。この沢は、本日辿ろうとしている南秋川の源流にあたります。
北八ヶ岳並みとまでは言いませんが、とても良い雰囲気な苔の森です。
途中に何回か渡渉ヵ所があります。大雨が降った直後などには、このルートは歩かない方が無難です。
鞍部からはおよそ40分ほどかかって、遊歩道まで下って来ました。
こちらの吊り橋が、三頭大滝を鑑賞するための滝見橋となります。その名の通り、滝を見るためだけに架けられた橋で、対岸は行きどまりとなっています。
本日最初の滝、三頭大滝です。せっかく架けてくれた橋にケチをつけるようですが、少々滝に近すぎるようで、引いた位置から全体像を眺めることは出来ません。
落差は35メートルあります。超広角レンズでないと、滝の全容が一枚の写真には収まりませんな。
3.場所が分かりづらい菅平の滝と、一番簡単に見られる夢の滝
次の滝へと向かいましょう。ウッドチップの敷き詰められた遊歩道を、都民の森の入口方向へ進みます。
一度入口まで戻っても良いですが、途中にあるこのケヤキ路なるルートからショートカットが出来ます。
ケヤキ路を抜けると、奥多摩周遊道路に出ました。ここから少しだけ舗装道路の脇を歩きます。歩道がないので、車に十分注意して歩いてください。
ガードロープに切れ目すらありませんが、ほどなく右手に登山道への入り口が現れます。この横道は、奥多摩周遊道路が出来る以前の旧道への入り口です。
奥多摩周遊道路の法面脇にまるで取って付けたかのような急坂を下ると、すぐに沢沿いの道となりました。
この橋の事はよく覚えています。水面からは結構な高さがある上に、表面がコケに覆われて滑っており、渡るのに非常に怖い思いをしました。
沢の両岸を行ったり来たりします。いかにも急造っぽい橋で、本当に体重をかけても大丈夫なのか少々不安になります。
ようやくいかにも旧道らしい、広々とした幅をもつ未舗装の道に出ました。事前のリサーチによると、この旧道の脇のどこかに、菅平の滝へ降りる横道があるらしい。
特に苦労して探すまでもなく、あっさりと道の右手に道標が現れました。逆に数馬側から登ってきた場合は道の左手になります。良く見ながら歩いていれば、見落とすことはまずないと思います。
沢へ下る階段が整備されてしました。結構急な上に手すりなどはないので、見物したければしっかりとした靴を履いて来ることを推奨します。
12時13分 管平の滝に到着しました。岩の上を這うようにして水が流れ落ちる、ナメ滝と呼ばれる種類の滝ですね。
よく見ると、奥の方にも何段かまだ滝が連なっているのが見えます。角度的には、対岸から見た方が奥まで良く見えそうですが・・・
しかし、飛び石伝いの渡渉を試みようと言う気にはなれない水量です。浅い場所がないものかと探してみましたが、最終的には断念しました。
もう少し水の少ない時期であれば、もっと簡単に渡れるかもしれません。
まだ先は長いのでサクサクと参りましょう。このまま旧道沿いに下山を続けます。
お次の夢の滝ですが、こちらは奥多摩周遊道路の上から直接見ることが出来ます。周遊道路に合流したら、都民の森方向に向かって少し登り返します。
さあて、このドリーム・フォールなる滝は、一体どんな夢を見せてくれると言うのでしょうか。
見覚えのある案内板が現れました。奥多摩周遊道路が大きくカーブしている地点が橋になっており、滝はその橋の上から見えます。
さあ、これが夢の滝だ。・・・どのあたり夢が詰まっているのかはよくわかりませんが、これもナメ滝の一種ですね。
本当はもっと全長の長い滝でしたが、奥多摩周遊道路を建設した際、橋脚を立てるために下半分は削ってしまったのだそうです。
4.比較的手軽に見に行ける、九頭竜滝と竜神の滝
先へ進みましょう。次の九頭竜の滝へは、このまま道なりに進んでもたどり着けますが、結構交通量が多い道なので、ここを左折して旧道に入ります。
この旧道沿いに「兜造り」と呼ばれる茅葺き屋根で名高い、兜家旅館があります。かの有名な白川郷の合掌造りと同じ系列の構造をもつ建物です。
赤い鉄筋のトラス橋が見えてきたら、再び旧道と新道が合流します。
九頭竜の滝への入り口は、この新道の橋を上流方向へ渡った先にあります。と言うことで、少し登り返します。
現物を見る前にどんな滝なのかネタバレを食らわせてくる、いつもの案内板が立ってしました。
案内板によれば、元々は横道の滝と呼ばれていましたが、すぐ近くにある九頭竜神社を参拝するついでに見に来る人が多いことから、いつの間にか九頭竜の滝と呼ばれるようになってしまったという事らしい。
滝へと下りる道がしっかりと整備されており、観光気分でもまったく問題なく歩けます。
12時40分 九頭竜の滝に到着しました。うーん、何と言ったら良いのでしょう。至って普通の滝ですね。
やる気のないコメントで恐縮ですが、私の感覚ですと特筆すべき名瀑であるようには見えません。至って普通の滝です。
気を取り直して次へ向かいましょう。この道標は「人里(ひとざと)まではあと4kmあるぞ」と言っているわけではなく、人里(へんぼり)と言う集落までの距離を示しています。紛らわしいですね。
少し下ったところに、いつの間にか滝の名前が変わってしまった理由である九頭竜神社があります。その名の通り、竜神を祭っています。
仕事の成功と縁結びのご利益があるそうです。よくわかりませんが、その二つは同じ系列のご利益なのでしょうか。
数馬バス停まで下ってきました。数馬は檜原村の中でも最奥に位置している集落です。
バス停の周囲にはなにもありません。ですが、何故か昔から私はこの数馬バス停と言う場所が妙に好きなのです。この何も無さっぷりが、ここが最果ての地である感をより演出してくれているように思えます。
ここ数馬の集落には、南朝に使えていたと言う武士たちの落人伝説が残っています。
必死の思いでひたすら奥地へと逃れてきた落人たちが、ここまで逃げればさすがにもう追手はかかるまいと、ようやく安堵した地がここだったわけですな。
檜原街道が開通する以前の数馬と言うのは、今からは想像も出来なような、到達すること自体が困難な僻地であったはずです。
集落の右手には、三頭山より端を発する笹尾根が連なります。この尾根は、八王子市にある高尾山までずっと繋がっています。
数馬の湯まで下ってきました。目指す竜神の滝は、温泉からさらに少し下流方向へ下った場所にあります。
この数馬の湯の第2駐車所の奥に、竜人の滝への入り口があります。
いつもの案内板もしっかりと立っていました。そう言えば、管平の滝にだけはこの案内板が立っていませんでしたな。
駐車場の奥の土手を、河原に向かって下ります。この案内板だと「竜神」ではなく「龍神」ですね。どちらが正しいのでしょうか。
対岸に目当ての滝の姿が見えました。南秋川の本流の滝ではなく、支流の沢にある滝でしたか。
涼しくて素晴らし雰囲気の空間です。実は崖の下にこんな場所が隠されているだなんて、皆気が付かないでしょうね。
13時5分 竜神の滝に到着しました。割と滝らしい滝と言うか、極めて正統派な滝ですね。落差は18メートルとのこと。
さほど落差が大きくないため、滝壺の水深は浅めです。そのため、滝のすぐ真下まで接近が可能です。
もっとも、あまり近づきすぎると飛沫でずぶ濡れになりますがね。前回の滝巡りからまったく学んでいないオッサンであります。
次の吉祥寺滝まではかなり距離があるため、バスで移動します。一度数馬の湯バス停まで引き返して、13時23分発の武蔵五日市駅行きのバスに乗車します。
本当は数馬の湯でひと風呂浴びて行きたかったのですが、そうすると次のバスまでは1時間半近く間が空いてしまうため、入浴は諦めました。
5.立ち入り禁止の吉祥寺滝と、既に見飽きた感のある払沢の滝
13時50分 吉祥滝バス停に到着しました。ここで途中下車したのは私一人だけでした。この後すぐに、その理由を思い知ることになりますが・・・
吉祥寺滝へ向かうには、進路を180度転じて元来た数馬方面へと少し戻ります。
すぐにいつもの看板がありました。あったのは良いのですが、その下に檜原村のマスコットキャラクターである「ひのじゃがくん」からの、気になるメッセージが張り出されていました。
曰く「吉祥寺滝は、工事等のため見ることはできません」と。・・・なんだと。
まあ、とりあえずは行けるところまで行ってみましょうか。眼下の南秋川は、ゴウゴウと水音が轟くゴルジュ帯となっていました。
どうやら、このゴルジュ帯の脇に整備されている遊歩道が、現在工事中であるようです。
この先が工事個所なのかな。なお本日は日曜日であり、工事は行われていません。・・・それでは、十分に注意して行ってみましょう。
※あなたの生命と財産にかかわる重要な警告※
この記事は決して、この先への侵入を推奨したり煽ったりするものではありません。言うまでもないことですが、この先で何が起ろうとも、その結果はすべて自己責任です。
という事で、こちらが吉祥寺滝となります。滝と言うよりはゴルジュ帯の水路ですね。
まるでに煮立った釜のような水流です。足を滑らせて転落でもしたら、恐らくタダでは済まないでしょうね。
立ち入り禁止の場所に勝手に侵入した挙句に、足を滑らせ転落して溺死なんてしようものなら、誰からも一切の同情をされないばかりか、遺体を足蹴にでもされかねない事案です。
くれぐれも落ちないように十分ご注意ください。と言うか、そもそも中へ入らないでください。・・・私に言えた義理ではありませんが。
吉祥寺滝から少し下ったところで、南秋川と北秋川の合流地点である本宿に到着しました。ここからは、北秋川方面へ少し進み、払沢の滝を目指します。
檜原村内にある滝の中でも、最も有名なのが払沢の滝です。日本の滝100選なるものにも選ばれている名瀑です。
有名所なだけに、専用の駐車場まで完備しています。この日は新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発出中とあって、駐車場は閉鎖されてしました。
この滝は結構奥まった場所にあり、入口からは徒歩で大体10分から15分ほどかかります。既に過去に一度レポートしているので、道中の様子などは割愛します。
14時40分 払沢の滝に到着しました。竜神の滝と同様の、極めて正統派の滝です。ここのところ雨続きなためか、水量はかなり多いように思えます。
6.滝めぐり最後の滝、中山の滝へ
払沢の滝の見物を終えて、一度本宿まで引き返します。いつのまにか頭上には、青空が広がりつつありました。今更ですかい。
遠くてちょっと分かり難いですが、北秋川と南秋川の合流地点です。
この秋川の合流地点のすぐとなりに、檜原村の村役場があります。地形的に言ってこの場所に役所があるのは必然と言うか、ここ以外には考えられない立地です。
郵便ポストがひのじゃが君仕様になっていました。そもそも、このマスコットキャラクター、昔からいましたっけか?
最後の滝へと向かいましょう。役場から下流方向へと道なりに進みます。結構な距離があるので、タイミングよくバスが来たのならば乗って行ったほうが良いかもしれません。
しっかりと道標も整備されていました。檜原村はこの滝巡りコースを売り出すことに、割と真剣に取り組んでいるように印象を受けます。
和田向バス停まで歩いて気ました。ここが最寄りのバス停ですが、さらにもう少し下流方向へ進んだ場所にあります。
いつもの看板もしっかりとありますが、しかし歩道には背を向けていてガードレールのある方を向いています。これって、一体誰に向かってアピールしているのでしょうか。
川までは結構な高低差があります。南北の秋川が合流したことにより、かなりの水量の堂々たる川に成長していました。
上流側から見たところですが、これのことを言っているのですかね。一見すると、あまり滝っぽくはありませんが。
16時 中山の滝に到着しました。吉祥寺滝と同様に、やはりこれは滝と言うよりはゴルジュ帯ですね。
前回の北秋川沿いを巡った第1弾に引き続き今回は第2弾と言う位置づけでしたが、南秋川沿いにある滝は何れも道から近い場所にあり、比較的見に行きやすい場所が多いように感じました。菅平の滝だけが少々分かりづらい場所にありますが、他の滝は気軽に訪問が可能です。
イマイチピリッとしない天気の日にでも、この落人伝説の残る最果ての村へと、滝見物がてらにフラッとお散歩しに繰り出してみては如何でしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント