栃木県日光市にある鳴虫山(なきむしやま)に登りました。
駅のすぐ裏手にある、日光の裏山とでも言うべき山です。この山は春を迎えると、アカヤシオやヤマツツジなど花々が咲き誇り、それを目当てに数多くの登山者が訪れます。
例年よりも、すべての花の開花が1週間前倒しとなった2018年の春。散りかけのアカヤシオを滑り込みで鑑賞して来ました。
2018年04月22日に旅す。
今回の行き先は鳴虫山です。日光駅のすぐ裏手にある標高1,100メートルほどの里山です。
この山は例年だと、だいたいゴールデンウィークに入った頃にアカヤシオが見頃を迎えます。
アカヤシオはツツジ科に属する花で、新緑の始まる頃の季節に開花します。特に北関東の山で多く見られ、淡いピンク色の花弁が特徴です。
あらゆる花の開花時期が前倒しとなっている今年の春。アカヤシオが見頃を通り越してすでに散り始めているという情報を得て、慌てて北関東へと繰り出しました。
コース
東武日光駅から憾満ヶ淵までの周回コースを歩きます。標準コースタイム3時間45分の行程です。コースタイムだけを見ると、散歩に毛が生えた程度のものに思えますが、割と登山らしい登山が出来ます。
下山後は真っすぐ駅には戻らずに、何故か寄り道して日光市街の外れにある外山へ登りました。寄り道に至った経緯は本文にて。
1.鳴虫山登山 出発編 鈍行列車で行く日光への旅
5時42分 東京メトロ半蔵門線 九段下駅
ここから東武日光線への直通電車に乗り込み、東武日光駅へと向かいます。
以前は東武日光駅まで直通運転する快速電車が存在しましたがど、2017年のダイヤ改正で廃止されてしまいました。
おかげで、途中に何度も乗換えを行う必要があります。まあ、日光まで行くのなら特急を使えと言うのが東武の見解なのでしょうけれど。
東武も物持ちがいいと言うのかなんと言うか、やけに年季の入った何処となく昭和の香りが漂うボロ車両を、未だに数多く走らせています。
南栗橋駅で東武日光行き乗り換えます。この先からは4両編成になるので、椅子取りゲームが発生します。そんな中を悠長に写真なんか撮っていると、当然ながら出遅れます。
途中の新栃木駅でどっと人が降りて、そこからは座れました。
8時16分 東武日光駅に到着しました。軽く腹ごしらえと身支度を済ませて、8時30分に行動を開始します。
駅前の時点で既に標高が543メートルあります。おかげで、ここでは東京に比べておよそ1ヶ月遅れで春が訪れます。
鳴虫山登山口へは駅から直接歩いていける距離です。私が見た範囲内では、駅に案内図のようなものは見当たりませんでした。地図を良く確認してから歩き始めましょう。
まあ、人気の山らしく駅から登山者の列が自然に出来上がるので、付いていけば多分大丈夫です。全然関係ないところに誘導される可能性もゼロではありませんが。
天気は文句なしの快晴です。市街地を見下ろす女峰山(2,483m)の姿が一際目を引きました。この山は登るとなるとかなりハードです。
御幸町(ごこうまち)交差点を左折します。たしか道標は見当たらなかったと思います。
青看板の振り仮名を見るまでは「おさちまち」と読んでいました。
正面に鳴虫山が姿を現しました。この先の突き当りを左側に回りこみます。
沿道にシャクナゲが咲いていました。当然標高にもよりますが、通常であらば5月中旬以降に咲く花です。やはり今年の春は全てがフライングです。
8時50分 鳴虫山登山口に到着しました。団体さんが今まさに出発せんとしている所でした。前方を塞がれたくなかったので、足早に脇を通りぬけて登山開始です。
2.鳴虫山登山 登頂編 新緑とアカヤシオの映える登山道
取り付き始めから尾根に乗るまでは結構な急坂です。準備運動もせずに勢い良く登り始めたので、早々に汗だくになりました。
朝日に照らされる眩い新緑。このやわらかい緑色は、新緑の季節ならではのものです。
ヤマツツジのほうはまだ、開花前のつぼみ状態です。ゴールデンウィークの頃には見頃を迎えているかな。
天王山神社の鳥居の前を通過します。ほほう、ここが秀吉と光秀の天下分け目の決戦の舞台ですか。←違います。
木漏れ日に照らされた新緑の葉が、まるでステンドグラスのように輝いていました。
9時20分 神ノ主山に登頂しました。鳴虫山へと続く尾根上にある小ピークです。
山頂は樹林に囲われていて、あまり展望はありません。一部だけ視界が開けており、そこから女峰山の姿が見えました。
まだまだ全然疲れてはいないので、休憩はせずに行動を続行します。
ミツバツツジが見頃を迎えていました。このツツジはヤマツツジより開花時期が早めで、紫からオレンジへとバトンタッチされて行きます。
日光駅の裏山などと言いつつも、鳴虫山は決してお手軽な散歩道などではなく、結構ガッツリと登らされます。
中腹を越えた辺りから、一面に木の根が露出した根っこロードが始まりました。
これだけ根が剥き出しになっているのは、登山者の土足に踏み荒らされて、土がすべて流出してしまったからなのでしょうか。
ここで本日のアカヤシオ第一号を発見。アカと言うよりはピンクに近い淡い色をした花です。
既に散り始めており、地面のアチコチで落ちヤシオになっていました。
大きな花弁をもつアカヤシオは風に弱く、強風が吹くと実に呆気なく落花します
根っこ道が延々と続きます。今日は晴れているから何も問題ありませんが、濡れていると危険かもしれません。
沿道にアカヤシオが咲き誇る道を進んでいきます。撮影が捗りすぎて中々歩みが進みません。なお、何れも満開を通り越して散りかけでした。
アカヤシオは割と背の高い木のなので、アップで写したければ望遠レンズがあったほうがよいです。
足元に春の妖精ことカタクリが咲いていました。登山道の上に平然と咲いているので、踏んでしまわないように足元注意です。
10時45分 鳴虫山に登頂です。
低山ながら、結構登りでのある道のりでした。
山頂の様子
広々としており、休憩スペースには困りません。ベンチ等は無いのでレジャーシートを持参すると良いでしょう。
山頂のアカヤシオもこの通り、ギリギリ散らずに間に合ってくれました。
言わずと知れた日光のシンボル男体山(2,486m)の姿も見えました。男体山は基本的に冬の間は立ち入り禁止で、山開きはゴールデンウィーク中の5月5日です。
3.鳴虫山登山 下山編 山頂から憾満ヶ淵へと続く急坂の道
11時25分 下山を開始します。
下山は桜の名所として有名な憾満ヶ淵(かんまんがふち)方面へ向かいます。まあ、桜はもうとっくに終わっているとは思いますが。
急勾配な木製階段を下ります。一つだけ思いっきり斜めになっている段があって、足元を良く見ていなかった私は、驚きのあまり叫び声をあげてしまいました。
11時45分 合峰と呼ばれるピークに到着しました。
これは「がっぽう」と読むのでしょうか。展望は一切ありません。ルート上の小ピークと言った所です。
合峰からの下りはかなりの急勾配です。ロープが設置されている場所もあります。こちら側から登るのは結構キツそうですな。
標高が下がってきた所で、カラマツ林に出ました。こちらもちょうど新緑を迎えているところです。
カラマツ越に見た男体山。やはり男体山は中禅寺湖畔から見る姿が一番美しいですね。日光市街側からだと、横に間延びしたパッとしないシルエットです。
ここに来てまたもや登り返しがありました。こちら側のルートは登って降りての繰り返しです。
地図に独標と書かれているピークです。休憩中の団体さんに占拠されていたので、写真も撮らずに素通りしました。
相変わらずの急降下が続きます。この土の滑り台は、雨の日はどういうことになってしまうのでしょうか。
ミツマタが満開でした。まるでトイレの芳香剤を思わせる、独特の強い香りが周囲に立ち込めます。
急坂故に下りはあっという間です。あっさり麓に辿り着きました。
日光第二発電所の脇を通ります。
明治25年に発電を開始したと言う、日本最古参の水力発電所の一つです。この程度の落差から生み出される発電量など、極めて微々たる物だとはおもいますが、それでも今なお現役で発電を行っています。
4.憾満ヶ淵を散策する
日光有数の景勝地の一つである憾満ヶ淵を散策します。中禅寺湖から流れでた大谷川の急流が作り出した小渓谷です。
ここには約70体の地蔵が安置されており、並び地蔵と呼ばれています。行きと帰りに数えると数が合わないという伝説があり、化け地蔵という通称でも呼ばれています。
それぞれ表情が異なっており、眺めて歩くと面白い。これはしょげている様な表情をしておりますな。
憾満ヶ淵は、某フランスのタイヤメーカーが作ったガイドで二つ星を獲得しています。それが理由かは定かではありませんが、物珍しそうに眺めて歩く外国人観光客の姿を多く見かけました。
急流が岩を削って作り出した独特の景観が広がります。
この川の水は、上流に位置する中禅寺湖から流れ出たものです。一度湖に滞留した水と言うのは、どうしたって多少は濁るものだと思うのですが、大谷川の水は驚く程透明で澄んでいます。
2018年の4月21日から4月24日の4日間にかけて、憾満ヶ淵のライトアップが行われます。このボンボリ(?)は、中にキャンドルを入れるためのものです。
例年ですと、このライトアップは2月に行われます。毎年開催期間が微妙に違うようなので、興味のある方は要確認です。
これはおそらく4月17日まで行われたいた、二荒山神社弥生祭りの山車です。展示しているのかなんなのか、道を塞ぐように置かれていました。
ソメイヨシノはとっくに散ってしまった後でしたが、八重桜がまだ咲いてくれていました。
気温が上がってかなり暑くなってまいりました。ちょうどいいタイミングで、前方に抗い難い白い渦巻きの誘惑が。
悩んだ末に抹茶味をチョイス。残念ながらスジャータです。
別にスジャータが駄目だと言う気はサラサラ無いんですが、せっかく観光地に来ているのだから、ご当地オリジナルソフトに期待してしまうではありませんか。
神橋まで歩いてきました。江戸時代に架けられたオリジナルの橋は洪水に流されて、今架かっているのは明治37年に再建されたものです。なお、今でも渡れますが300円取られます。
ずっと「しんばし」と読んでいましたが、正しくは「しんきょう」です。酔ったサラリーマンが千鳥足で歩いていそうな名前の橋だと思っていたのに、全然違いましたね。
神橋から右に曲がって真っ直ぐ進めば、東武日光駅に戻れます。ですが本日は思う所あって、このまま直進して少し寄り道をします。
5.鳴虫山登山 寄道編 東照宮の鬼門を守護する外山
こちらがその寄り道先です。日光市街の外れにある標高880メートルほどの山、その名も外山(とやま)です。
まずは山の下まで舗装道路を道なりに歩いていきます。
気温がどんどん上昇していて、なんだか頭がぼんやりとして来ました。もしかして熱中症??
この辺りは別荘地なのでしょうか。小高い丘の上に小洒落た建物が沢山建っていました。
14時5分 再び登山開始です。
外山は東照宮の鬼門にあたる北東方向に存在し、山頂にはその守護のための毘沙門天神社が存在します。
登り始めから圧倒的な急登アンド杉林です。その雰囲気たるやまるで奥多摩・・・
この道は山頂の神社を詣でるための参道です。そのため、このように山中にいくつもの鳥居が存在します。
頂上付近は岩がむき出しの険しい山容となっており、安全のために手すりが備え付けれれていました。
こちらが山頂の毘沙門天神社です。鉄筋コンクリート製の味気ない建物ですな。
以前は木製の立派な神社が建っていましたが、老朽化により建て替えたのだそうです。
こちらの光景が、外山に寄り道を思い立った理由です。正面に今日歩いた鳴虫山の全容を一望できます。
私は自分が歩いた山の全容を少し引いた位置から俯瞰しみたいと言う欲求が人一倍強く、いつも山全体が見える場所が無いかと探し回ったりしています。
本日も、外山から鳴虫山が良く見えると言う事前情報を得て、わざわざ寄り道をした次第であります。
日光の市街地も一望できます。中央左寄りにある、三角屋根の東武日光駅の姿が際立っておりますな。
山頂から駅が見えると言うことは逆もまた然りなわけで、外山は東武日光の駅前から見えています。
神社があるのは、厳密には山頂ではありません。山頂は神社裏手にひっそりとあります。
14時40分 外山に登頂です。
狭い山頂には、多くの仏像が安置されていました。
裏手からは女峰山の姿を一望できます。むしろ外山からの展望としてはこちらの方が主で、鳴虫山を見るためにここまで登ってくる物好きなどは、滅多にいないことでしょう。
男体山も見えます。この時間だと逆光になってしまうので、シルエットしか見えません。
実に満足度の高い寄り道でありました。15時ちょうどに下山を開始します。
サクサクと下山して、徒歩で東武日光駅へ戻ります。駅へ向かう路線バスも高頻度に走ってはいますが、全然歩ける距離です。
道中にあった日光の美味しい水(本当にそう書いてある)で靴の泥を洗い落としました。
世界遺産の町日光は、市庁舎までもが凝ったデザインをしています。
晴天の休日とあって駅には人が溢れ、特急けごんはすべて満席でした。もっとも、普通列車で帰る私には関係の無いことです。行きと同じ経路を逆に辿り、長い長い帰宅の途に付きました。
全てが駆け足の前倒しとなった2018年の春山。満開は過ぎてしまっていましたが、何とかアカヤシオシーズンに滑り込めました。山一面がピンク色に染まる姿は圧巻で、これほど春の訪れを感じさせてくれる花というのも、なかななか無いのではないかと思います。
アカヤシオは終わったには、次にシロヤシオの開花が控えており、ヤシオツツジの見頃は今後まだしばらく続きます。春の花々を愛でる低山歩きに繰り出してみては如何でしょうか。
<コースタイム>
鳴虫山登山口(8:50)-神ノ主山(9:20)-鳴虫山(10:45~11:25)-合峰(11:45)-独標(12:15)-憾満ヶ淵(12:50)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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