山梨県の都留市、西桂町および富士河口湖町にまたがる三ッ峠山(みつとうげやま)に登りました。
その名が示す通りの3つのピークからなる山で、最高峰の名を開運山と言います。御坂山地の中では人気、知名度ともに最も高い山です。山頂からは富士展望が素晴らしく、この山域では唯一となる、宿泊可能な有人の山小屋まで完備しまいます。
開運の山で今年一年の発展を祈願すべく、新春初登山をして来ました。
2018年1月3日に旅す。
新しい年が明けました。平成の世も残すところあと1年と少々です。その頃には私も、平成の世における大正生まれの人と同様の、2世代前の元号の生まれになるのだと言う事実に、戦慄を禁じえません。
どうでもいい前口上はさておき、新春初登山です。
ここは一つ縁起の良さそうな山に登ってやろうと思い、新年早々からいつものようにエアー登山(ソファーで寛ぎながら山と高原地図をぼんやりと眺める行為を指す)に勤しんで行き先を適当に決めました。
決めた行き先は三ッ峠山の最高峰、その名も開運山です。山梨県の御坂山地にある、富士展望の良いことで名の知れた山です。
ベタですけれど、これほど新年の初登山にふさわしい名前を持つ山は、そうそう無いのではないでしょうか。
この時は生憎の霞んだ天気で、山頂から富士山の姿は一切見えませんでした。はたして今年は、最高の富士山展望が微笑みかけてくれるでしょうか。今年一年のツキを占うべく、はるばる御坂山地へと繰り出します。
コース
山頂に最も近い登山口の三ッ峠登山口バス停から登ります。下山は府戸尾根を長々と下って河口湖駅へ。年明け早々で体も鈍りまくっているので、あまりキツくない行程で計画しました。
1.三ッ峠登山 アプローチ編 電車とバスを乗り継ぎ、山頂最寄りの三ッ峠登山口へ
8時50分 富士急線 河口湖駅
東日本一鈍足な急行[要出典]こと富士急行線にのって、はるばる終点までやって参りました。
周囲から聞こえてくる会話が、ことごとく異国の言葉です。ここはいつ来ても国際色豊かな場所ですな。
お天気はこの通り最高です。そして寒さも最高です。気温はこの時点でマイナス5度でした。
麓がこの寒さだと、山頂付近では一体どういうことになってしまうのでしょうか。
9時6分発の、天下茶屋行きのバスに乗り込みます。なおこの路線、冬季には天下茶屋までは行かず、三ッ峠登山口までで折り返します。
9時37分 バスは坂道を延々と登り、三ッ峠登山口バス停に到着しました。
この時点ですでに標高は1,230メートルです。山頂までの標高差は550メートルほどしかありません。ここから登る分は、高尾山に毛が生えた程度の山だという事です。
ちなみにこの季節には、下山の時間帯にここまで上がって来るバスはありません。ここへ戻って来るのであれば、標高1,000メートル地点の三ッ峠入口まで車道を歩いて下る必要があります。
2.あらゆるものが凍結していた極寒の登山道
正月3ヶ日だと言うのに、結構人が居ます。きっと、みんな開運を願いに来たのでしょう。
10分ほど登ったところで、駐車場に辿り着きました。車でお越しの人は、ここまで進入できます。トイレも完備されていました。
この時間ともなると既に満車です。三ッ峠山の人気の程が窺えます。
案内板がありました。この案内板によると、1月と言うのは何も見頃なものが無い時期であるようですね。なんてこったい。
いいや、空気が澄んでいるこの季節は、富士山が一番見ごろなハズだ。
駐車場を過ぎると、路面の舗装こそなくなりますが、車の通行可能な道がずっと続きます。歩きやすい道ではあるんですけれど、正直あまり楽しくは無いですね。
見事なまでの氷の芸術です。天然の滝ではありませんがこれは一応、氷瀑ということになるのでしょうか。
小川もこの通り完全に凍結しています。水の溜まる場所ならいざ知らず、流れている最中のものが凍ると言うのは、余程急激に気温が下がったのでしょうか。
日の当たる場所に出ると、僅かながら体感温度が上昇して思わずほっとします。日陰になっている場所では、まるで冷凍庫の中にいるかのような寒さです。
ここは地図上でベンチと書かれている地点です。特に展望が開けているわけでもなく、本当にベンチが置いてあるだけの場所です。
ベンチを過ぎても道の様子に変化はありません。ゆるやかな九十九折れを描く道が、延々と山頂に向かって伸びて行きます。
樹林に覆われた登山道は静寂そのものですが、上空の方からはいかにも強風が吹き荒れていそうな音が、ゴウゴウと鳴り響いています。
日本上空には今、1812年にナポレオンを、そして1941年にはドイツの侵攻を退けたと言う、かの高名なる冬将軍が滞在しています。
おかげで日本列島は全国的に非常に強い寒波に見舞われており、本日も山頂の気温はマイナス10度以下であるとの予報が出ております。
標高が上がって来るにつれて、足元までもがコチコチになって来ました。砂埃を巻き込んで凍っているためか、思いのほか摩擦係数が大きく、乗ってもあまり滑りません。
この傾斜は流石にアイゼンがいるかなと思いつつも、結局無しで登れました。
こちらが山頂直下に立つ三ッ峠山荘です。今は静まり返っていましたが、1日にはご来光目当ての宿泊者で、さぞかし賑わったことでしょう。
3.開運山の山頂で開運を祈願する
目指す開運山の山頂が見えました。山頂に立ち並ぶアンテナは、地上波のテレビ関連施設です。
こちらは三ッ峠山のもう一つのピークである御巣鷹山です。山頂のアンテナは電話会社のものです。どっちもアンテナだらけの山です。
私が今日登ってきたルートは、これらの施設を保守するための車両が往来するための道なのかもしれません。
巨大な電波反射鏡の脇を登って、山頂に向かいます。何気に結構な急坂の上に、足元が砂地で非常に滑りやすい場所です。
11時15分 開運山に登頂です。登山開始から1時間30分で辿り着いてしまいました。本当に高尾山並みな道程ですな。
逆光で文字が読み取り難かったので、別アングルでももう一枚。標高は1,786メートルと、そこそこの高さがあります。
山頂の様子。
ほぼ全方位に展望が開けています。周囲を遮るものが何も無いため、強烈な風に晒されます。寒い。寒すぎる。
山頂からの展望はこの通り最高です。正面に見えている尾根が、下山に使用する予定の府戸尾根です。三ッ峠山頂から河口湖湖畔まで伸びています。
南西方向の展望。手前には御坂山地の山々、奥にはすっかり冠雪した南アルプスが連なります。
北西方向の展望。甲府盆地と、その背後には奥秩父の山々が連なります。こちらはだいぶ雲が掛かってしまっていますね。
御坂山地の最高峰である御坂黒岳をアップで。右後方にある尖がった山は釈迦ヶ岳です。
甲府盆地をアップで。周囲を山に囲われた要害の地であったことが大変良くわかります。
こちらは東側の展望。手前の山並みが道志山塊で、奥には丹沢の山々が連なっています。
北東の都心方向の展望。一番奥に見えている稜線は笹尾根かな。
最高の展望を満喫できました。これできっと今年のツキも向いてくることでしょう。
寒すぎて鼻水が凍りつきそうなので、風を避けられそうな場所に移動します。山頂直下の砂礫の斜面は、下りだとスベリまくって少し怖いです。
お正月らしくモチでも焼いてみようかとも考えましたが、結局面倒になって何時ものお湯を沸かすだけの昼食にしました。
結果としてはこれで正解でした。寒過ぎて調理なんてやってられません。
座っていると尻の下から冷えてくるので、八ヶ岳の姿を眺めながら、お行儀悪くラーメンを立ち食いしました。
4.河口湖まで続く、長い長い府戸尾根
ラーメンを食べココアを飲んでも、体が温まるどころかますます冷えてきました。これは動いていないと駄目だと言うことで、下山を開始します。
下山を開始して早々に、前方になにやら絶景スポットの予感が。と言うことで、藪の中へ寄り道します。
正面に道志山塊の二大スタアである御正体山(左)と杓子山(右)の姿を一望できました。まあ、どっちもマイナーな山ですよね。そもそも道志山塊自体がマイナーですし。
開運山の山頂直下の屏風岩もよく見えました。ロッククライミングのゲレンデとして大変有名です。流石に正月3ヶ日から登っている人間はいないようですが。
ほんの薄っぺたくではありますが、富士五湖の一つである山中湖の姿も見えました。わかりますかね?写真中央のやや上よりのところに見えています。
足元は崖です。危ないので、あまりはしゃぎ過ぎないようにしましょう。
寄り道していたらますます体が冷えて、足先の感覚がなくなってきました。凍結してしまう前に下山を再開しましょう。
山頂から10分ほどで、三ッ峠の3つめピークである木無山に到着です。山頂は広い笹原状になっていますが、展望はありません。名前の由来は毛無山と同じなんでしょうね。
12時35分 下山開始です。府戸尾根は、木無山から麓まで全長およそ8kmメートルほどの長大な尾根です。距離が長い分、傾斜が緩く非常に歩きやすい道が続きます。
富士五湖の内の3つが同時に視界に入る場所がありました。手前から河口湖、西湖、精進湖です。
途中で何度かトレランに追い抜かされました。府戸尾根は確かに非常にトレラン向きな道だと思います。
正面に送電鉄塔が見えてきました。登山道においては、鉄塔のある所好展望ありです。鉄塔の下は、大抵木が刈り払われていますからね。
定番の見上げアングル。上のほうからは凄まじい風切音が聞こえてきます。冬将軍が荒ぶっておりますな。
振り返って見る木無山。下から見上げる分には、普通に木が生えている山ですね。
下っているんだかいないんだかわからないような、殆ど傾斜の無い道が続きます。
富士山のほうに向かって歩いてるいているので、どんどんと大きくなっていきます。この時間帯になるとモロに逆光です。
そして、ここに来てまさかの登り返しです。大して疲れてはいませんが、長い長い尾根歩きで少々ダレてきました。
14時40分 天上山に到着です。府戸尾根にある最後のピークです。ここまで来ればもう登り返しはありません。
山頂の様子。
小御嶽神社のお社があります。周囲は樹林に囲まれており、展望はありません。
展望が無いと言いましたが、一箇所だけ伐採されていて、そちらだけ視界が開けています。
さっきから富士山ばっかり何度目だよと思われるかもしれませんが、仕方がないのですよ。
この界隈の展望所と名の付く場所は、何処も彼処も富士山のある方角だけ木が刈り払われており、見える光景と言えばこいつの姿ばかりです。
まるで、富士山以外のものなど見る価値無しとでも言わんばかり勢いです。
カチカチ山ロープウエィの山頂駅を目指して下っていきます。ここからはもう、登山ではなく観光地のエリアに入るので、カジュアルな格好した人の姿をチラホラと見かけるようになります。
ベンチの置かれた休憩スポットがありました。当然ながらここからもアイツの姿は良く見えていますが、もう写真は載せなくてもいいですよね?
木の間から、開運山の山頂部が僅かに見えました。こちら側は一切刈り払われておりません。ここへ訪れる観光客は、だれも開運山の姿など見たがらないと言う事なのでしょう。
程なくカチカチ山の展望台に到着しました。ロープウェイの山頂駅にあたる場所です。
まさに着火せんとする瞬間のモニュメント。今にして思うに、カチカチ山は子供向けにしては結構エグイというか、割とバイオレンススプラッターなお話ですよね。
背中に火をつけられそうな名前の茶屋がありますが、営業はしていませんでした。富士河口湖町の人は商売っ気が無いですね。正月休みなんて書き入れ時でしょうに。
眼下に富士急ハイランドが見えます。一度ええじゃないかに乗ってみたいと思いつつも、未だ訪問が叶っておりません。
お一人様のプロフェッショナルである私にかかれば、一人遊園地なんて楽勝ではあるのですけれど、でも好山病患者が富士河口湖町まで来たら、必然的にどこかの山に登っちゃうじゃないですか。
なお、カチカチ山ロープウェイは本日運転をしていませんでした。単に正月休みなのか、あるいは強風で運休になったのでしょうか。
まあ乗れたとしても、ショートカットできるのは大した標高差ではありません。結構な数の観光客の姿を見かけましたが、みんな自分の足で登ってきたということですね。
例のごとくアイツの姿が良く見えます。ただ写してもつまらないので、ススキにピントを合わせて少し変化を付けてみました。
登山口から駅まで、直接歩いて戻ります。大体10分くらいの道のりです。所々にこのような道標があるので、迷うことは無いかと思います。
河口湖駅まで戻ってきました。沿道にあるお食事所がことごとくシャッターを下ろしていました。やはり富士河口湖町の人は商売っ気が無ですね。
ちょうど良いタイミングで、駅のホームに中央線直通のホリデー快速富士山号が停まっていたので、それに乗って帰還しました。
最後に車窓から見えた三ッ峠山の姿を写真に収めて、今回の旅は終了です。
新春初登山は予定とおりつつがなく終了しました。最高の晴天の下で富士山を詣でることが出来て、期待通りの山行きでした。これで本年は大いに開運し、今後ツキが向いてくることでしょう。
人気な山だけに、三ッ峠山へと通じる登山道は多数存在します。今回歩いた三ッ峠登山口からのルートは、最短で山頂に立つことができるものの、車の通り道を延々と歩くだけなので、ルートとしての面白みはありませんでした。
少々長丁場になりますが、三ッ峠駅から直接歩くルートが、一番この山らしさを味わうことの出来るルートなのではないかと思います。まだ歩いたことの無いルートが存在するので、この山へはいつかまた再訪することでしょう。
<コースタイム>
三ッ峠登山口BS(9:45)-開運山(11:15~12:25)-木無山(12:35)-天上山(14:40)-護国神社(15:20)-河口湖駅(15:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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