二十六夜山-高柄山 秋山川の流域に立つ二つの山梨百名山を巡る

尾崎地区から見た二十六夜山
山梨県上野原市にある二十六夜山(にじゅうろくやさん)と高柄山(たかつかやま)に登りました。
どちらの山も山梨県東部の神奈川県との境界に近い、桂川(相模川)支流の秋山川流域に立つ山です。秋山地区は秋山山稜と道志山塊に挟まれた川沿いの狭隘な集落で、桂川流域と行き来するための峠越えの道が古くから数多く存在しています。
秋山川の両側に立つ、甲斐東部の二つの山梨百名山を巡って来ました。

2023年11月4日に旅す。

山梨百名山の一つである二十六夜山は、桂川の南に連なる秋山山稜と、道志山塊との間に挟まれるようにして立つ山です。都留市にあるもうひとつの二十六夜山と区別するために、秋山二十六夜山とも呼ばれます。
白谷ノ丸から見た秋山山稜と道志山塊
単体で登ると往復3時間程の手軽な山ですが、それだけでは少々物足りない気がしたので、秋山山稜にある高柄山と合わせて登って来ました。

高柄山もまた山梨百名山に選ばれている一座で、神奈川県との境界にも近く、山梨百名山の中で最も東に位置しています。

実はこの二座には以前一度訪問しているのですが、その時は終日に渡りガスガスな生憎の天気だったため、記事化はせずにお蔵入りになっていました。今回は晴天の日を選び、取りこぼし回収のために再訪してきました。
雪の積もった二十六夜山の山頂

始めに断っておくと、二十六夜山には最初から最後まで展望が一切ありません。そこで今回は紅葉の時期を狙って訪問しました。
秋山二十六夜山の山頂
そろそろ紅葉前線が標高1,000メートル未満の低山にまで下ってくる頃合であろうと期待していたのですが、まだ薄っすらと色付き始めた段階で、やや期待外れの状態でした。

二十六夜山に登った後は一度下山し、川向かいの秋山山稜へと登り返します。秋山川を挟んで立つ二つの山梨百名山を巡って来た一日の記録です。
高柄山の山頂

コース
231104高柄山-map
浜沢バス停からスタートして二十六夜山に登頂したのち、一度下尾崎バス停まで下山します。そのまま返す刀で寺下峠まで登り、秋山山稜の尾根沿いに高柄山へ。高柄山からは千足集落を経由して四方津駅へ下ります。

一度も標高1,000メートルを超えることがない純然たる低山歩きですが、秋山山稜はアップダウンが多めでなかなか歩き応えがある骨太な行程です。

1.二十六夜山登山 アプローチ編 二つの尾根の挟まれた秋山地区を目指す

8時5分 JR高尾駅
この後の上野原駅でのバスの乗り継ぎ時間の都合もあり、本日は普段よりもややゆったりとした始動です。絶好の登山日和とあってか、6両編成の中央本線は満員御礼状態でした。
JR高尾駅のホーム

8時26分 高尾駅から15分ほどの乗車時間で、上野原駅に到着しました。山梨県東部に位置する上野原市は、住民の東京都内への通勤率が非常に高く、郊外のベットタウンとしての色合いが非常に強い街です。
上野原駅のホーム

かつては駅北口の狭い場所にあった上野原駅のバスターミナルですが、現在は南側に移動して広々としてます。上野原の市街地は基本的に桂川の河岸段丘の上にあり、川沿にある駅の周辺はかなり閑散としています。
上野原駅前のロータリー

8時43分発の無生野(むしょうの)行きのバスに乗車します。この路線バスが秋山地区に出入りする唯一の公共交通機関であり、運行本数は非常に少ないです。乗り逃すとその時点で計画終了なのでご注意ください。
上野原駅4番バス乗り場
無生野の行きのバスが発着するのは、バス乗り場の中に離れ小島のようになっている4番乗り場です。同時間帯に発着するバスが多くて少々わかりにくいかもしれません。

秋山川沿いに上野原と都留市の禾生を結んでいる、山梨県道35号線をひた走ります。中央道と甲州街道が渋滞している時に迂回路として案内されることもある道ですが、すれ違い困難な狭隘個所もあったりするのであまりオススメはしません。
山梨県道35号線

9時30分 浜沢バス停に到着しました。終点の無生野の4つ手間のバス停で、僅差ではありますがここが二十六夜山登山口の最寄りバス停です。
浜沢バス停
バスは途中からは完全に貸し切り状態でした。万が一このバス路線が廃止されてまうと、秋山地区に公共交通機関で訪問する方法は完全に失われてしまいます。

公共交通機関を利用して山に登っている我ら車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーにとって、それは由々しき事態です。そうならないためにも、乗って残そう公共交通!

・・・私は日本バス協会の回し者ではありません。

2.人の気配が全く感じられない静かなる月待ち信仰の山

身支度も早々に行動を開始します。バスを降りたら、まずはバスの進行方向に向かって道なりに少し進みます。
秋山地区を走る路線バス

やがて道の左手にSLOW MOUNTAIN AKIYAMAと言うキャンプ場の入り口が現れるので、ここから入って行きます。
SLOW MOUNTAIN AKIYAMAの入口

二十六夜山の登山口であることを示した案内板もしっかりとありました。書かれている内容によると、山頂からは南アルプスのパノラマが楽しめるのだとか。
二十六夜山の登山口
え?そうなんですか?展望の無い山だと聞いているのですが。

案内板上に無造作にはられた張り紙をよくよく見てみると、眺めが良かったのは昔の話で今は展望も何もありませんと、無情な内容が書かれていました。やっぱりそうですよねー。
案内板に張られた張り紙

入口から登ってゆくと、キャンプ場の管理棟らしき建物とアスレチック遊具がありました。今は閑散期なのか利用者の姿は見当たらず、静まり返っていました。
SLOW MOUNTAIN AKIYAMAキャンプ場

特に案内などはありませんが、キャンプ場内の道を奥へと進みます。
SLOW MOUNTAIN AKIYAMAキャンプ場の敷地内

動物除けのフェンスに突き当たったところから取りつきます。
動物除けの金網

バンガローが何棟形並んでいる急斜面を登ります。初っ端からいきなり、見上げる角度の急勾配です。
231104高柄山-019

急坂を登り切ったところで扉がありました。ここからようやく登山道が始まります。それでは張り切って本日一座目に行ってみましょうか。
動物よけ柵のゲート

背後を振り返えると、秋山川を挟んだ向かいにある秋山山稜の尾根が見えています。これから二十六夜山へ登って下りてした後に、次はあちらへ登り返そうと言う訳です。自分で計画しておいて言うのもなんですが、実に阿呆なコース取りですな。
浜沢コース登山口から見た秋山山稜

登山道に入って以降も結構な急登が続きます。浜沢コースは基本的に、最初から最後までずっとこんな感じの急勾配が続きます。
二十六夜山の登山道

9時55分 森の中にポツンと東屋がある場所まで登って来ました。まだ登山を開始したばかりですが、小腹が空いたのでここで軽く腹ごしらえをしました。
231104高柄山-023

東屋を過ぎると程なく、周囲は杉の植林から広葉樹の森に変わりました。やはり紅葉にはまだ少し早かったらしく、薄っすらと黄色く色付き始めている段階です。訪問時期としては、やはり少々早やすぎたか。
二十六夜山の登山道

陽当たりの良さそうな場所だけがこうして部分的に色づいていました。まあこうして所々で見れただけでも、とりあえずは良しとするか。
二十六夜山の紅葉

ここまでずっと尾根沿いに直登が続いていましたが、尾根の上を塞ぐような大岩が現れたところでトラバースに移りました。
二十六夜山の登山道

この迂回地帯は道の幅自体が狭い上に、枯れ葉の堆積で大変滑りやすい状態となっており、通り抜けるのに少々肝を冷やしました。人気のあるルートだったらトラロープの一つでも張られていそうなものですが、ここには何の補助もありません。
二十六夜山の登山道

危なっかしい急坂を登りきると、名も無きピークが現れました。少しだけ展望が開けそうな予感がします。
二十六夜山の登山道上の小ピーク

南側には道志山塊の尾根が連なっているのが見えました。ちょっと紛らわしいのですが、この道志山塊にも二十六夜山と言う名前の山が存在し、区別するためにそちらは道志二十六夜山ともよばれます。
二十六夜山の登山道から見た道志山塊
秋山二十六夜山よりも道志二十六夜山の方が断然眺めが良い山なのですが、何故か山梨百名山に選ばれているのは地味な秋山二十六夜山の方です。

もっとも、登山口にあった案内板によれば秋山二十六夜山も昔は眺めが良かったと言う話だから、選定当時と今とでは状況が違うのでしょうけれど。

西側に見ている一際目を引くこちらの山は、三つ峠(1,785m)です。山頂にあるアンテナのおかげで同定は容易です。
二十六夜山の登山道から見た三つ峠

こちらは北西方向の眺めです。手前右の尖った山は秋山山稜の高畑山(982m)で、中央の奥に見ているのが滝子山(1,620m)かな。どちらも大月市の秀麗富嶽十二景に選ばれている山です。
二十六夜山の登山道から見た高畑山

急登は一旦終わりピークから緩やかに下ります。標高が上がってきたことにより、良い感じに紅葉した葉がポツポツと目につくようになって来ました。
二十六夜山の登山道

3.二十六夜山登山 登頂編 樹木の成長により失われた好展望の頂

二十六夜山と道志山塊方面との分岐地点まで登って来ました。ここから再び急登が再開します。
赤鞍ヶ岳方面分岐

一気に周囲が鮮やかになりました。このまま紅葉最盛期のエリアに突入してくれるのかと期待したのですが、日当たりの問題なのか部分的にこの周辺だけが色付いていました。
二十六夜山の登山道

訪問のタイミングとしては、一週間後くらいがちょうど良かったのかな。まあ、翌週末も晴れてくれる保証はどこにもないし、紅葉のど真ん中を射止めるのは意外と難しい。
二十六夜山の紅葉

急登を登りきるとフラットな尾根に乗りました。二十六夜山は山頂部が横に長い山で、ここまで登ってくるともうほとんど標高差はありません。ビクトリーロードを進みましょう。
二十六夜山の登山道

木々の隙間から隣の秋山山稜の尾根が見えます。あちらの標高は概ね800メートル前後で、970メートルある二十六夜山のほうが僅かに標高は上です。
二十六夜山から見た秋山山稜

山頂方面への分岐地点まで登って来ました。二十六夜山の山頂は主稜線上からは少し外れた位置にあります。と言う事でここからサクっと往復します。
二十六夜山 山頂への分岐

山頂付近は紅葉しているかなと望みをかけていたのですが、まだ緑の葉の方が目立つ状態でした。紅葉前線はまだ標高1,000メートル以上の地点にあるらしく、やはり少々早すぎたようです。
二十六夜山の山頂付近

分岐からは5分とかからずに、山頂が見て来ました。わはははは、これはまた画に描いたかの如き地味山ですね。
秋山二十六夜山の山頂

11時5分 二十六夜山に登頂しました。さあ刮目せよ、これが雄大な南アルプスを一望できる大パノラマだ。
二十六夜山の山梨百名山標柱
仮に樹木が無かったとしても、道志山塊の尾根が間に割り込むので、どのみちあまり眺めは良く無さそうな立地に思えるのですが、果たして当時はどんな光景が見えていたのだろうか。

展望の無い山頂に長居しても得るものは何もありません。登頂して早々ですが、分岐地点まで引き返します。
二十六夜山の山頂付近

分岐地手のすぐ近くに廿六夜塔があります。この場所でかつて二十六夜待ちが行われていたことを示す碑です。
二十六夜山の廿六夜塔
二十六夜待ちとは平安時代の頃から始まり江戸時代まで盛んに行われていた行事で、早い話がお月見です。二十六夜は旧暦の26日目の月のことで、月の満ち欠けで言うとかなり新月に近い状態の細い月です。

二十六夜の月は昇ってくる時間帯が深夜になるため、何時しか月見そのものよりも、月が出るのを待っている間に飲んで歌ってお祭り騒ぎするほうがメインの扱いを受けるように変わっていったのだとか。

かつてはこの場所で、秋山地区の住民が総出で宴が張られていたのでしょうか。今ではすっかりと木々が生い茂り、空を見上げても月は見えそうにありません。
二十六夜山から見上げた空
当時は見えていたのか。あるいは月見はただの口実であるのだから、見えていなかろうと問題視はされなかったのか。

4.二十六夜山を下り、その足で秋山山稜へと登り返す

見るべきものも見たので下山しましょう。下山はもと来た道には引き返さずに尾崎方面へ下ります。往路に登って来た浜沢コースの登山道よりも緩やかで、ずっと歩きやすい道です。
二十六夜山の登山道
二十六夜山に登るメインルートと言えるのはこちらの尾崎コースの方で、浜沢コースはどちらかと言うと裏ルートです。私は例のごとく「往復ヨリ周回ヲ持ツテ尊キトス」と言ういつもの不可解な価値観を発露して、あえて周回ルートを取りましたが。

緩やかな長尾根を延々と下ると、最後は枯た沢沿いの道になりました。この辺りの道は少々荒れ気味でした。そんなに入山者の多い山でも無いので、あまり手入れはされていないようです。
二十六夜山の登山道

今は枯れていますが、これだけ立派な堰堤があると言う事は、降雨時にはそれなりの水量がある沢なのかもしれません。雨の日には歩かない方が良さそうです。
231104高柄山-046

だいぶ途中を端折りましたが、サクサクと登山口まで下って来ました。本日一度目の下山が完了です。
231104高柄山-047

正面にこれから登り返す予定の秋山山稜の山並みが見えます。この尾根により、秋山地区は桂川流域とは完全に分断されています。
上野原市秋山地区尾崎
秋山山稜を越えるかつての峠道は、尾根上に複数個所存在しています。本日はその中の一つである寺下峠を目指して今から登って行きます。

12時5分 県道35号線まで下って来ました。この交差点を右へ少し進んだ地点に、下尾崎バス停があります。
下崎バス停周辺の山梨県道35号線
ちなみに無生野線の路線バスは1日に2往復しかありません。時間帯にもよりますが、ここで帰路のバスを待つよりは、徒歩で峠越えをした方が恐らくは早いです。

尾崎側の登山口にもしっかりと案内板が設置されていました。ここにも眺めが良いと書いてある・・・
尾崎登山口の二十六夜山の案内板

秋山川に架かる橋を渡り、林道を道なり進みます。この林道大地峠線は大地峠までは車両も通行可能な舗装された道が続いていますが、反対側へ抜けることはできません。
林道大地峠線

振り返って見た二十六夜山です。この山は秋山山稜と道志山塊の二つの尾根に挟まれた場所にあるため、なかなか山全体のシルエットを観察できる場所がありません。
尾崎地区から見た二十六夜山

沿道に廃屋が並ぶ林道を進みます。峠までの行きどまりの道であるので、この道の利用者は主に林業関係者などに限定されているものと思われます。
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現在車両で秋山山稜を越えることのできる道は、路線バスが通っている新天神トンネルと、猿橋駅へ抜ける鈴懸峠の2ヵ所だけです。大地峠を越えられるようになると、かなり便利になると思うのですが、そもそも需要は無いのでしょうか。

程なく道の左手に、寺下峠への登山口が現れました。それでは張り切って、本日二度目の登山開始と参りましょう。
寺下峠登山口

登山口のすぐ脇に砂防堰堤があり、青々とした水が溜まっていました。ユーシンブルー並みだとまでは言いませんが印象に残りました。
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峠の直下までは沢沿いの道です。近年はあまり歩かれていないらしく、トレイルは全般的に荒れ気味です。
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沢を流れる水量は少なくか細い流れです。さきほど堰堤に溜まっていた水はあれほど青味を帯びていたのに、こうして見ると普通に透明なのだから不思議なものです。
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沢沿いを外れたところで、峠に向かって急登が始まりました。峠の両側を行き来していた昔の旅人たちは、本当に毎回この急坂を登っていたのだろうかと疑問になる様な傾斜度です。
寺下峠への登山道

恐らくは炭焼窯の跡だろうと思われる石垣が残っていました。古くから人の手が入っていた山であることが良くわかります。
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登り始めてから40分ほどたったところで、行く先にようやく空が見えました。
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12時50分 寺下峠に到着しました。これで秋山山稜の尾根上に乗ったことになります。私はここから尾根上を縦走して高柄山を目指しますが、もう飽きたと言う人はここから梁川駅へ下ることも出来ます。
寺下峠

5.激しいアップダウンが続く秋山山稜の尾根道

さてここから先は尾根歩きとなるわけなのですが、始めに断っておくと秋山山稜はかなりアップダウンが激しい尾根です。1,000メートルに満たない標高から受ける印象と違って、かなりハードな道程となるので覚悟しておいてください。
231104高柄山-061

寺山峠から矢平山に向かって登って行くのですが、まずはその手前にある763メートルの名も無きピークの山頂を通らずに脇を巻きます。この巻き道がまた、もともと幅が狭い上に落ち葉に埋もれていてなかなか心臓に悪いです。
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ピークを巻いたとは言っても、一度しっかりと標高を落とされます。しかしこれは、この先に延々続くアップダウン地獄の始まりに過ぎませんでした
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鞍部から矢平山への登りは、かなりの急勾配な岩場です。要所要所にお助けロープがたらされているので、しっかりと活用しつつよじ登ります。
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背後に見えいるのはたぶん倉岳山(990m)です。秋山山稜の最高峰にして、最も人気の高い山です。今私が歩いている倉岳山から先のエリアは、あまり人気が無いらしく人影も疎らです。
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富士山の頭だけが僅かに見えていました。倉岳山の山頂からであれば、もっとしっかりと見えます。
231104高柄山-066

再び標高が高くなってきたことに伴い、紅葉の色付きが戻って来ました。目指す高柄山の山頂は現在地よりも標高が低いため、この辺りが本日最後の見所かな。
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だいぶ息絶え絶えになりながら、ようやく山頂らしい場所へと辿り着きました。かなり広々とした空間です。
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13時40分 矢平山に登頂しました。大柄な山で、麓から見上げた時に秋山山稜の中でもかなり目を引く存在なのですが、あまり人気は無く訪れ人は少ない不遇の頂です。
矢平山
隣接する倉岳山と、一体どこでこんなにも人気の差が付いたのでしょうか。油断、慢心、展望の違い

山頂には全く展望がありませんが、すこし先へ進むと伐採地があり、ネット越しに北側の展望が開けています。
矢平山の伐採地

道志山塊の先に丹沢の山々が見えます。中央奥に見えている、頭一つ突き抜けている山は丹沢最高峰の蛭ヶ岳(1,673m)です。
矢平山の伐採地からの展望

先へ進みましょう。ここの付近は一見するとほぼ平坦なようにも見えますが、しっかりと細かいアップダウンがあります。基本的に平坦な道は一切歩かせてもらえないと考えていた方が良いです。
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大地峠に向かってモリモリと下り始めました。急勾配な上に足元は乾燥した砂地で、どう足を置こうとも絶対に滑る絶望状態となっていました。
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14時5分 新大地峠まで下って来ました。昔の峠道が越えてた地点とは微妙に位置が違うため、区別するためにそう呼ばれているらしい。
新大地峠
国土地理院地図を見るとこの場所は単に大地峠とだけ書かれており、旧大地峠がどこにあるのかはよくわかりません。

下って来て早々ですが、再び登り返しさせられます。ええ、秋山山稜と言うのはそういうものです。いい加減わかってきましたとも。
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登り返した地点が、丸山と言う名のひねりも無い名称のピークです。単なる通り道でしかなく、登って早々に再び下りに転じます。まったくさっきからいったい、何を登ったり下りたりしているのだか。
丸山の山頂

眼下に林道が見えて来ましたが、その手前で道が大きく崩れていました。迂回路がしっかりとあるので、案内に従って進みます。
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ちなみにこの林道は、尾崎下バス停から寺下峠登山口まで区間を少しだけ歩いた林道大地峠線です。アップダウン地獄の尾根歩きは省略したいと言う人は、矢平山をスルーしてここまで舗装道路沿いに登って来ることも出来ます。

林道に降り立ってから振り返っていると、登山道脇の法面が、ゴッソリと崩れ落ちてしまっていました。
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6.高柄山登山 登頂編 幾多のアップダウンの果てに待つ、山梨百名山最東端の頂

林道を横断して山道へと入って行きます。道標によれば、高柄山まではあと50分程の距離です。まだ結構ありますな。
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ここに来てまたもやしっかりと下らされます。いやもう本当に登って降りてするのは勘弁してほしいのですが。
231104高柄山-080

ここまで展望が皆無の尾根道が続いていましたが、崩落地があり少しだけ桂川方面の展望が開けました。正面に見えている横に長い山は権現山(1,312m)です。良い山だと思うのですが、何故か人気知名度共に今一つです。
231104高柄山-081

山の上に大規模な住宅地があるのが見えます。バブル時代に山を削って造成された高級住宅地、コモアしおつです。四方津駅と直結している斜坑エレベータが目を引きます。
高柄山から見たコモアしおつ
本日の下山予定地である四方津駅は、ちょうどあのエレベータの真下あたりにあります。

高柄山の山頂をようやく視界に捉えました。そしてその手前にまだまだアップダウンが残っていることも、同時に見えてしまいました。
231104高柄山-083

気乗りはしませんが、道がそうなっている以上は仕方ありません。と言う事で最早何度目かもわかりませんが、モリモリと下ります。ここは尾根が痩せていて、安全のためにロープが張られていました。ゆっくりと慎重に通過します。
231104高柄山-084

14時45分 高柄山手前の千足峠に到着しました。帰路はここから下山する予定ですが、その前にサクッと山頂を往復してきましょう。
千足峠

高柄山に向かって最後の登りです。ここまでの道中で既にだいぶお疲れ風味ですが、ラストスパートをかけて行きましょう。
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・・・と思ったら山頂はまだで、またもやしっかりと下らされました。・・・ひとつ提案があるのですが、もう無益なアップダウンはやめにしませんか?
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今度こそ最後の登りです。というか、そうであってほしいと言う願望です。この先はもう山頂だよね。お願いプリーズ!
231104高柄山-088

そんな願いが届いたのか、ようやく山頂らしき場所に飛び出しました。いやはや思いのほかしんどかった。
高柄山の山頂

15時 高柄山に登頂しました。前述の通り過去に一度登頂済みの山ですが、記事化されたのは今回が初めてです。
高柄山の山梨百名山標柱 width=
ちなみに高柄山は、山梨百名山の中で最も東の地点にある山です。最北端は赤岳、最西端は仙丈ケ岳、最南端は高ドッキョウです。

展望は北側だけが開けています。桂川が作り出した河岸段丘と、その上に広がる上野原の市街地を一望できました。
高柄山山頂からの展望

山頂に小さの社がありました。付近には立て看板などの案内もなにもありませんが、里に近い山だけに、古くからの信仰のいわれがあるのでしょう。
231104高柄山-092
思いのほか疲れる行程ではありましたが、無事に山梨百名山2座をハシゴする目標は達成されました。これでもう、思い残すことは何もありません。

7.高柄山登山 下山編 千足を経て四方津駅へと下る

山頂を辞去して千足峠へと引き返します。ここでもアップダウンがまだ残っていますが、ここまでの苦労思えば全然大したことはありません。
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15時35分 千足峠まで戻って来ました。あとはひたすら下るのみ。
千足峠

杉林の急斜面をひたすら九十九折れにジグザクと下って行きます。面白味は無いけれども、一番効率的に標高差を稼げるタイプの道です。
231104高柄山-095

浸食谷のすぐ脇を下って行きます。崩落が道のすぐ隣にまで迫ってきており、安全のためにロープが張られていました。そう遠くない将来、道の付け替えが必要になってくるかもしれません。
231104高柄山-096

急斜面を下りきったところで沢にぶつかりました。徒渉する必要がありますが、季節が秋にもなると僅かな水流であるため一跨ぎです。
231104高柄山-097

ここからは気持ちの良い沢沿いの道となります。ISO感度を上げたので写真は明るく写っていますが、山の北側にあるため既に周囲はかなり薄暗くなりつつありました。
231104高柄山-098

こうした名も無きナメ滝が数多くあるのが印象的です。この付近は浸食されにくい岩盤が多いのだろうか。
231104高柄山-099

無事に林道の終点まで下って来ました。一応は駐車スペースであると言えないことも無い僅かな空き地があります。
231104高柄山-100

この道標の打ち捨てられぶり具合からして、ここから登る人はあまり多くは無いのでしょうね。
231104高柄山-101

あとはひたすら舗装道路歩きです。四方津駅まではまだまだ結構な距離があります。
231104高柄山-102

16時20分 千足の集落まで下って来ました。市街地からは遠く離れた山間部のこじんまりとした集落ですが、先ほどから車の往来が結構あり意外と住民の数は多そうです。
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集落があると言う事で、申し訳程度ではありますがここからはしっかりと街灯があります。既に日は沈んでいますが、何とかまだ明るいうちには下りきれそうです。
231104高柄山-104
四方津駅は桂川の対岸にあるため、この後に川を渡る必要があるのですが、最後の最後に驚きの光景が待っていました。

最後の曲がり角を曲がると、いかにも年季の入った吊り橋が目に飛び込んで来ました。その名も千足橋です。
上野原市 千足橋

続いて目に入ってきたのが、この重量制限の道路標識です。2tまでと書かれているからには、当然ながらこの橋を車両が通行するという事です。
千足橋の重量制限

床板は木製で、まるで人道用の橋のような外観です。しかし千足の集落に出入りできる道はこの橋しかなく、集落内で見かけた車はすべてこの橋を渡っているはずなのです。・・・本当に?
千足橋の床板

そんな疑念に答えてくれるかのように、見ている目の前で軽自動車が橋を渡って行きました。おお、本当にこの橋を渡るんだ。
千足橋を渡る軽自動車

この付近の桂川は深い渓谷を刻んでいます。これだけ崖が深いと、橋を架けるにしても柱を立てるのも容易ではないだろうから、吊り橋と言うのは確かに合理的ではあります。
231104高柄山-109

千足橋をわたったら、あとは中央本線の線路沿いに駅まで歩くだけです。
231104高柄山-110

しかしここからがまた凄い道でした。これは本当に生活道路なのかと疑問を持ってしまうような狭隘な道が続きます。
231104高柄山-111

四方津周辺の桂川は川幅が狭く、周囲には僅かな平地しかありません。だからこそコモアしおつはわざわざ山を削って造られたわけですからね。
231104高柄山-112

山の上からも見えていた斜坑エレベーターがいつしか目の前にありました。全長は210mあり、エレベーターと名乗っていますが実態としてはケーブルカーに近い乗り物です。
コモアしおつの斜坑エレベーター

四方津駅の入り口は斜坑エレベータがある北側にあるため、一度駅の脇を通り過ぎてからグルっと回り込む必要があります。
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17時5分 四方津駅に到着しました。なんだかんだで、ほぼ丸一日を費やしたガッツリ登山でありました。今日もたくさん歩いて大満足です。
四方津駅の駅舎

30分程待たされてからやって来た鈍行列車に乗り込み、帰宅の途に着きました。
四方津駅のホーム

記事化されずに取りこぼされていた二つの山梨百名山は、こうして無事に回収されました。

二十六夜山も高柄山も、単体で訪れるにはやや物足りない中途半端なコースタイムを持つ山です。そこで今回は同日に両方登ることを計画した訳なのですが、思わぬ秋山山稜のアップダウンの厳しさに打ちのめされた山行きでした。

そんな訳でこの2座を同時にハシゴすることは、正直あまりオススメはしません。体力に自信がある方はチャレンジじてみては如何でしょうか。

今回は紅葉の時期を狙っての訪問でしたが、高柄山はツツジの名所として知られている山なので、ベストなシーズンは5月頃になるかと思います。

<コースタイム>
浜沢バス停(9:30)-東屋(9:55~10:05)-二十六夜山(11:05)-下尾崎バス停(12:05)-寺下峠(12:50)-矢平山(13:40)-新大地峠(14:05)-千足峠(14:45)-高柄山(15:00~15:20)-千足峠(15:35)-千足(16:20)-四方津駅(17:05)

二十六夜山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. 貫徹 より:

    一週間違いの11日に高柄山に登りました。
    天気は曇り、途中少し雨がぱらつきました。
    紅葉は、全く見られませんでした。

    上野原駅から御前山の下を回りこんで登る道で登りましたが、御前山を越える方が一般的?らしく、合流点まではかなり荒れた感じの道でした。
    下りきってから登りにかかる(→ゴルフ場の裏に出る)あたりが少し分かりにくく、それ程高い山でもないのに少々苦闘しました。

    下りたのは千足峠から。
    途中の吊り橋と駅までの道には、全く同じ感想を持ちました。

    • オオツキ オオツキ より:

      貫徹さま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      高柄山の標高付近にまで紅葉が降りてくるのは、11月の下旬頃になってからでしょうかね。軽く調べてみた限りでは、高柄山への登山ルートとして最も一般的なのは、やはり御前山経由のルートであるようです。かなりの急勾配であると言う話もチラホラと聞かれますが、ツツジが咲く頃にも歩いてみたいところです。

  2. Taka High Doh より:

    未記事化分のリカバリー、お疲れ様でした。自分の記録を調べたら、2017年12月に間を約1週間空けて、それぞれ別個に登ってました。どちらも、大月市の秀麗富嶽十二景の主だった山を登り済ませ、そのうちの相当数が山梨百名山と被っていたことから、登頂対象の範囲を山梨百名山に拡げ始めたという時期に目をつけた山でした。

    当時、上野原駅のバス発着所はまだ線路より上(北口)で、狭い場所で転回してました。元・秋山村方面、無生野行きのバスは他のバスよりも車体が小さく、コミュニティバスみたいな感じで、平日だったのですが、乗客は浜沢バス停まで私1人。もし私が気まぐれで二十六夜山へのハイキングに来なかったら、乗客ゼロだったのか…と、公共ローカル交通機関存続の危うさを実感したことを憶えてます。二十六夜山の山頂は極めて地味ながらも、季節的に葉が落ちて木立の合間から日が差していたので、意外に明るかった印象を覚えています。下尾崎バス停、寺下峠を経て、梁川駅に下山しました。

    高柄山は、ざっくりと四方津駅→千足峠→高柄山山頂→鶴島御前山山頂→上野原駅のコースで歩きました。鶴島御前山山頂のハサミ岩から、栃穴御前山→桂川を渡って→四方津御前山→四方津駅という御前山3連発を巡るルートがあり、興味があるのですが、上級バリエーションルートなのでソロ山行は困難です。山仲間の中に誰か一緒に行ってくれる人がいないか探索してるのですが、見つからないまま今日に至っています。桂川を渡る橋が廃橋に近い状態かもしれないらしく、役所に問い合わせても返答は「状況不明」だったという情報を聞いた憶えがありますが。

    お隣の倉岳山・高畑山は、バリエーションルート初級者向けのルートが複数あり、自分も山仲間と一緒に登ったことがありますが、何気に売りというか、魅力だと思います。山百の中にはバリルートでないと登頂できない山も相当数ありますね。

    • オオツキ オオツキ より:

      Taka High Dohさま
      コメントをありがとうございます。

      昔は無生野行きのバス本数がもっと多かったと記憶しているのですが、現在は2往復だけだと知って驚いています。秋山地区やお隣の道志村を取り巻く公共交通機関の現状は、相当厳しいものがあるようです。

      いつかは大昔のように、峠越えをしないと秋山地区に出入り出来なくなる日も来るのかもしれませんね。とりあえずは、登れるうちに登っておいて正解であったと思います。

  3. U-leaf より:

    山梨百名山全座登頂直後にまた登るとは。
    まだ未記事の山梨百名山もあるでしょうから2周目突入ですかな。

    • オオツキ オオツキ より:

      U-leafさま
      コメントをありがとうございます。

      今回の2座で記事化されていなかった取りこぼしはすべて回収されました。すこし時間はかかると思いますが、そのうち山梨百名山総集編記事を出します。

  4. U-leaf より:

    なるほど、それは失礼いたしました。
    山梨百名山の記事お待ちしております。
    次は関東百名山あたりでしょうか?
    日本には実に色々な山がありますね。