小倉山-高芝山-鈴庫山 三窪高原の前衛に連なる静かな尾根を巡る

送電鉄塔から見た鈴庫山
山梨県甲州市にある小倉山(おぐらやま)、高芝山(たかしばやま)および鈴庫山(すずくらやま)に登りました。
何れも柳沢峠の西側に広がる三窪高原の前衛部に位置している極めてマイナーな山々です。中でも高芝山に至る一般登山道は存在せず、いわゆるバリエーションルートのみの山です。登山の対象としては無名に等しい存在ですが、防火帯からの眺めがよく、春にはミツバツツジが花を咲かせます。
さほどの深い考えも無しに訪れた破線ルートで待っていたのは、思った以上に歯ごたえのある険路でした。

2023年4月16日に旅す。

鈴庫山は三窪高原の傍らにピョコっと突き出したピークです。・・・と唐突に言われても、おそらく大半の人にはどこの事か分からないでしょうかね。
黒金山から見た三窪高原
三窪高原とは青梅街道の最高地点である柳沢峠の西側に広がっている尾根上の一帯です。起伏の少ない平坦な尾根が連なっており、6月の頭くらいからレンゲツツジが花を咲かせます。

鈴庫山は柳沢峠からスタートであらば、ものの一時間少々で登れてしまう山です。今回はあえて、麓の玉宮(たまみや)から、高芝山を経由して登って来ました。

鈴庫山以上に輪をかけてマイナーな存在である高芝山は、山と高原地図上では破線ルートしか存在しない山です。深い考えもなしに選択したルート上には、急登に次ぐ急登の険しい道が続いていました。
高芝山の急登
そもそも山と高原地図における破線扱いルートとは、荒れていて通行困難だったり道標がなかったりと、あまり一般的だとは言えない状態にあることを示しています。

とは言っても破線認定する厳密な基準があるわけではないらしく、同じ破線扱いでも難易度は結構まちまちです。実線ルートとほどんと変わらないくらい明瞭な道であることもしばしあります。

今回歩いた高芝山に関して言うと、しっかりと破線らしい破線ルートでした。

苦戦を強いられつつ登り詰めた先には、甲府盆地を見下ろす大パノラマが広がっていました。マイナーな甲斐百山の3座を巡って来た一日の記録です。
鈴庫山からの展望

コース
小倉山、高芝山を経て鈴庫山に至るコースマップ
塩山駅から出ている路線バス玉宮線の湯原バス停からスタートし、ざぜんそう公園を経て小倉山へ登頂します。小倉山から尾根に沿って破線ルートを登り、高芝山をへて三窪高原へ。

三窪高原から鈴庫山を往復したのちに、柳沢峠バス停へ下ります。

1.鈴庫山登山 アプローチ編 静かなる山村、玉宮を目指す

4時30分 JR三鷹駅
私の自宅最寄り駅は京王線なのですが、京王線からでは塩山駅を6時54分に発つ玉宮行きの始発バスへの乗り継ぎが間に合いません。と言う事で、朝っぱらから自転車をこいで三鷹までやって来ました。
早朝の三鷹駅
三鷹駅から、高尾、大月、甲府へと始発電車リレーを継投して行きます。もはやすっかりなれっこな行程です。

6時24分 塩山駅に到着しました。三鷹駅4時40分発の始発電車に乗れれば、こんなにも早くに塩山駅へ降り立つことが可能です。
早朝の塩山駅ホーム

上空はどんよりとした曇り空ですが、これは朝のうちだけで、正午以降には晴れる予報となっています。しかしこれだけ厚く垂れこめているいる雲が、果たして本当に取れてくれるのだろうか。
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塩山では燕が子育ての真っ最中で、駅構内を我がもの顔で飛び回っていました。頼むから、衝突はしないでくれよ。
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6時54分発玉宮行きバスの時間まで少し待ち時間があるので、北口にある武田信玄公像を眺めるなどしてしばし時間つぶしをします。
塩山駅の武田信玄公象
ちなみに、先ほどからチラホラと名前が出ている玉宮というのは、かつての村の名前です。昭和の中頃に塩山市の一部となり、その塩山市も現在では甲州市の一部です。

良いお時間になったところで、南口のロータリーに移動します。バス停に何人か並んでいる登山者がいましたが、みな玉宮行きではなく大菩薩登山口行きのバスへと吸い込まれて行きました。
塩山駅南口のバスロータリー

と言う事で、バスは安定の貸し切り運行です。私一人のためにすまんのう。
玉宮行きの路線バス車内
玉宮行きのバスは1日に3本しかありません。この朝一の便を乗り逃すと、その時点で計画が全て破綻するのでご注意ください。

7時12分 湯原バス停に到着しました。終点の少し手前にあるバス停で、ここが最初の一座である小倉山の登山口の最寄りとなります。
玉宮 湯原バス停

2.すでに花の季節は終わってしまっていた玉宮ざぜん草公園

身支度もそこそこに、7時15分に行動を開始します。まずはバスが元来た方角へ少し戻ります。
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すぐに左手にざぜん草公園への入り口が現れるので、ここを入って行きます。本当はこの時点で前方に小倉山が見えるらしいのですが、すっかりと濃厚なガスに呑み込まれていました。
玉宮ざぜん草公園の入り口

このザゼンソウと言うのは、サトイモの遠い親戚の多年草です。ぱっと見の見た目は黒いミズバショウと言ったところで、花弁が僧侶が座禅を組んでいる姿に見えると言うのが名前の由来です。
ザゼンソウの案内板
3月下旬から4月の上旬頃が花期であると言う事ですが、今年はあらゆる花の開花時期が前倒しに進行しているため、訪問のタイミングとしては遅すぎたかもしれません。

公園の入口にトイレと駐車場が整備されています。本日は人影もなく、静まり返っていました。
玉宮ざぜん草公園の駐車場

小倉山の登山口は、ザゼンソウの群生地を通り抜けた先にあります。ということで、道なり進みます。
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群生地までやって来ました。たとえ1輪2輪であっても良いので、まだ咲いている個体が残ってくれていると良いのですが。
玉宮ざぜん草公園の群生地

群生地は野生動物除けのための電気柵で囲われていました。あまり他では見かけない、プラスチック製の取っ手で一つずつ取り外すタイプです。
ザゼンソウ群生地の電気柵
しっとり水に濡れている電気柵と言うのは、嫌でも感電の2文字が脳裏にちらつきます。おっかなびっくり、そぉーと外して中に入ります。

群生地の内部には、植生保護のための木道が整備されていました。危惧していた通り今シーズンのザゼンソウはもう完全に終わっていまっており、咲いている個体は残っていませんでした。残念!
玉宮のザゼンソウ群生地

よく見ると木道ではなく、コンクリート製の模造品ですね。こちらの方が表面が濡れていても滑りにくいので、むしろありがたいくらいですが。
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咲いていないものはしょうがないので、群生地を通り抜けてそのまま小倉山方面へと向かいます。周囲を覆っているガスが、ますます濃くなって来ました。本当にここから晴れてくれるのでしょうかね。
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尾根まで登って来ました。高芝山および鈴庫山方面へ向かうにはここを左ですが、その前にサクッと小倉山を往復してきます。
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3.一面シルキーな小倉山と、上条峠へと続く尾根道

小倉山は玉宮のすぐ傍らに立つ里山で、低山ながらも甲府盆地方面の眺めが良く、手軽なハイキングコースとして整備されています。もっともこの調子では、展望の方は望みが薄そうですけれどね。
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ほどなくガスの中から、立派な木製の展望台が姿を現しました。なかなか大がかり凝った構造をしています。
小倉山の展望台

8時 小倉山に登頂しました。ざぜん草公園から歩いて、せいぜい30分少々しかかからない実にお手軽な山です。
小倉山の山頂標識

肝心の展望台からの甲府盆地の眺めですが、結果はこの通り。一面のシルキーな白一色の世界が広がっていました。
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早起きをしてすでに若干小腹がすきつつあったため、ここで軽く腹ごしらえをしつつ少し待機してみます。その間にもしかしたらガスが取れてくれるかもしれません。

ときよりこうしてガスが切れて青空が顔を覗かせますが、なかなかスカッとは晴れてくれません。
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ガスが取れそうで取れない状況が続き、ズルズルと引きずられてついつい長く留まりすぎてしまいました。帰りのバス時間の都合もあるので、いい加減諦めて行動を再開しましょう。

8時50分 小倉山からの展望は諦めて行動を再開します。なんやかんやで結局1時間近くも滞在してしまった・・・。ここからは、少しばかり先を急ぎましょう。
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先ほど登って来た、ざぜん草公園方面への分岐地点まで戻って来ました。公園には戻らずにこのまま直進します。
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ざぜん草公園のある方を見ると、あれだけ濃厚だったガスは予報の通りに晴れつつありました。展望については、この先の鈴庫山から楽しませてもらうことにしましょう。
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露出した岩が目立つ尾根道を進みます。現時点ではまだ破線エリア内に入っておらず、踏跡はしっかりとあって明瞭です。
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4月中旬頃のミツバツツジが見事であると言う事前情報を得ていたため、今回その時期を狙って訪問した訳だったのですが、ツツジの方はもう既に終わりかけの状態でした。
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やはり今年は、あらゆる花の開花時期が早いようですね。もう少し標高の高い一帯に残っていることを期待しておきましょう。

ここで雲の中から富士山がお出ましです。そんなところにお隠れでしたか。
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分岐から割としっかり登らされたところで、上条山と言うピークに到着しました。展望もなにもはなく、ただの通り道と言ったところです。
上条山の山頂

上条山からは、これまたしっかりと一度標高を落とします。この後どうせまた登り返すのに、何もこんなに下らなくたっていいじゃないですかー。
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下りきった地点が上条峠と呼ばれている場所です。ここから玉宮バス停方面へ下ることも出来ます。小倉山のみを巡るハイキングとしては、ざぜん草公園から登ってここから下る周回ルートを取るのが最も一般的です。
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谷を挟んだ向かいに日川尾根が連なっているはずですが、こちらはまだ雲隠れを決め込んでいました。本日はだいぶ湿度が高いようですね。
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眼下に林道が登ってきているのが見えます。この林道は最低鞍部の上条峠ではなく、その少し先の地点を越えています。
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峠から少し登り返したところで、今度は立派な東屋が立っていました。小倉山にあった展望台といい、このハイキングコースはかなりお金をかけて整備されている印象です。
上条峠の東屋

東屋の前に上条峠と書かれた札が掛かっていました。厳密に言うと峠はここではないのですが、まあ細かいことだしどうでもよいか。
上条峠と書かれた標識

東屋から少し下ったところで、先ほど足元に見えていた林道とぶつかりました。道の脇に駐車場もあり、車でお越しの人はここまで入ってこれます。
上条峠の駐車場

実線扱いのルートなのはここまでです。この先はいよいよ、破線ルートの領域へと足を踏み入れて行きます。入口からして既にわかり難いですが、取り付きは林道脇のここです。
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4.防火帯の急登を乗り越えて高芝山を目指す

まるで奥多摩のような杉の植林帯の中を進みます。一応は踏跡らしきものがあるにはありますが、足元の感触はやわらかく、殆ど歩かれていないであろことが伺えます。
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何と書かれているのかよく読めない目印がありました。少なくとも、登山道の案内ではなさそうです。
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薄暗い植林帯を抜けると、周囲は新緑が眩い明るい自然林に変わりました。ツツジの木は沢山あるものの、ここでも既に落花していました。うーむ、やはり少し遅すぎたのだろうか。
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前方の頭上が大きく開けているのが見えて来ました。明るいのは良いのですが、こうなると直射日光が中々厳しそうです。
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行く手の尾根上にある松林がすべて伐採されていました。これは恐らくは防火帯です。
高芝山の防火帯
防火帯とは、山火事の延焼を防ぐために、尾根上を帯状に伐採してある場所の事です。おもに都道府県や市区町村の境界に設けられていることが多いです。

伐採が行われてから既に結構な時間が経過しているらしく、松の幼木が好き勝手に繁茂して薮状態になっていました。痛い痛い、松の藪は痛い。
防火帯の藪

伐採されているおかげで、ここからは背後の展望が開けます。眼下には先ほど登って来た小倉山と上条山が良く見えました。
高芝山の防火帯から見た小倉山
いつの間にか綺麗に晴れましたね。こうして上から見下ろすと、小倉山は確かに甲府盆地の眺めが良さそうです。

前方に、思わず二度見しそうになるような急登が立ちはだかりました。一般登山道であれば、右手の森の中にでも九十九折れの道が付いていそうなものですが、ここには当然そんな物はありません。
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ということで直登の真っ向勝負を挑みます。どうやら高芝山は花崗岩の山らしく、足元は堆積した真砂の砂地で、踏み込んだ矢先からサラサラと崩れます。
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防火帯の脇にミツバツツジが咲き誇っていました。ようやくお花前線がある標高まで登って来たようです。
高芝山のミツバツツジ
かなりの規模の群生地ですが、しかしあまりゆっくりと鑑賞している余裕はないです。・・・油断していると滑り落ちかねませんからね。

背後の展望がかなり開けて来ました。立ち止まってしばしの現実逃避を楽しみます。いや本当におっかないのですよこの斜面。登りだからまだなんとかなっていますが、このルートを下りでは絶対に歩きたくありません。
高芝山の防火帯からの展望

遂に行く手を岩に阻まれてしまいました。これはちょっと乗り越えられそうにありません。左右のどちらかに迂回は可能だろうか。
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右側からなんとか行けそうか。一般登山道だったら間違いなくトラロープか何かが垂らされるであろう勾配ですが、手掛かりに出来るものは何もありません。砂地の急斜面に靴のつま先を蹴り込みながら、何とか登りました。
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雪ではない地面に対してキックステップをしたのは、自身初めての経験です。なかなか一筋縄ではいかないルートですぞ。

何とか難所をクリアしたと思った矢先に、すぐに次の急登が前方に現れました。今度はあれに登れってか。やれやれ、一難過ぎてまた一難です。
高芝山の急登

ナイフリッジとまではいきませんが、両側が切り立っている砂地のヤセ尾根を通過します。
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写真だと少々わかり難いですが、両側ともかなり鋭く切れ落ちています。こんな所から転げ落ちようものなら、通りかかった人に偶然発見してもらえる望みは極めて薄い場所です。くれぐれも慎重に通過しましょう。
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急登のおかわり行ってみよう。傾斜度は先ほど似たり寄ったりですが、距離は多少短めのように見えます。一気に登ってしまいましょう。
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今度は道を塞ぐ大岩などはなく、割とスムーズに登れました。高芝山の核心部と言えるのは、最初の急登の岩を迂回する地点だと思います。
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何とか防火帯を登り切りました。記事だと割とあっけなく登って来たように見えるかもしれませんが、途中で登りあぐねてルート探ったりなんだりと、結構な時間を要しました。あまり気軽に人に勧められるような道ではないです。
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防火帯の最上部地点から振り返って見た光景です。苦労の甲斐がある絶景ではありませんか。・・・こんな苦労などせずとも、鈴庫山からはもっと凄い光景を簡単に拝めますけれどね。まあそれは言いっこナシということで。
高芝山の防火帯からの展望

ここで一度東電鉄塔の下を潜ります。鉄塔の先に、ようやく高芝山本体の姿を視界に捉えました。
鉄塔から見た高芝山

左端の方にちょこんと飛び出しているピークが、目指す鈴庫山です。まだまだ結構遠そうですね。
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ぱっと見では恐ろしく地味なピークですが、しかし大絶景の広がる山であるらしい。大いに期待しておきましょう。
送電鉄塔から見た鈴庫山

鉄塔のすぐ近くにまで林道が伸びてきています。登山道は林道のすぐ脇をかすめていますが、合流はしません。
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林道の法面の上から、西側に連なる山々がよく見えました。
230416鈴庫山-066
山座同定を始めるとキリがないので詳細は割愛しますが、小楢山(1,712 m)やら乾徳山(2,031m)やら黒金山(2,232m)などがよく見えています。

何れ劣らぬ山梨百名山の秀峰たちです。え?知らないって?そうですか・・・。

鉄塔を過ぎてから、しばしの間の緩やかな尾根歩きです。これは来る嵐の前の静けさのようなもので、この後山頂直下でもう一回急登があります。今のうちに気分を休めておきましょう。
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お待ちかね(?)の急登再開です。この辺りは踏跡も疎らではっきりとした正解ルートは存在せず、なんとか登れそうな場所を見繕ってよじ登って行きます。
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防火帯の急登と合わせて、高芝山に登るにはある程度のルートファイティング能力が求めらます。総じて玄人向けの山であると思えます。

先ほどから偉そうなことを言っている当のお前自身は玄人なのかと問われると、何とも言えないところですが・・・

またもや尾根を塞ぐ大岩です。今度は左側から迂回しました。
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ようやく山頂らしき場所が見て来ました。やれやれ、えらい苦労しましたよ。
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12時30分 高芝山に登頂しました。上条峠からたかだか標高差600メートル少々を登るのに2時間半近くを要している事実が、ここまでの苦闘ぶりを如実に物語っていました。
高芝山
このように地味極まりないピークながらも、高芝山は甲斐百山と言うタイトルを保持しています。何なら、今日登ろうとしている小倉山、高芝山および鈴庫山は3座とも甲斐百山です。

踏破を狙っているわけではありませんが、山梨百目山の完登を達成した暁には、次の目標とするのも良いかもしれない。

5.まだまだ続く破線ルートを越えて三窪高原を目指す

高芝山からは一度大きく標高を落とします。反対側も急勾配かつ踏跡不明瞭なので、降りる方角を間違わないように十分注意して下さい。自信が無い人はGPSを使いましょう。
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高芝山は当座二つのピークを持つ双耳峰です。先ほどの山頂は西峰で、今度は東峰に向かって緩やかに登り返します。
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この辺りが東峰の最高地点なハズですが、標識の類は見当たりませんでした。ここから左へ曲がって針路を北方向へと転じます。
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基本は尾根を辿れば良いのですが、だだっ広くて尾根筋が少々わかりずらいです。知らない間にあらぬ方向へ下ってしまうことが無いように、意識して尾根の最も高い地点をなぞります。

左手を林道がかすめているのが見えて来ますが、ここではまだ合流しません。尾根を忠実に辿りながら北上します。
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登りに転じたたところで、ようやく何となく踏跡らしきものがありました。道幅がかなり広く、恐らく現在の車道が出来る以前の旧道か何かだと思います。
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登り切ったところ今度こそ林道と合流しました。林道竹森線と言う名の林道です。ここからはいっときの間の舗装道路歩きとなります。
山梨県 林道竹森線

特に一般車の通行は禁止されていない林道のようですが、シャレにならないサイズの大岩が路上に転がっていました。長居はしない方が良さそうですね。
林道竹森線の大岩

林道から振り返ると、先ほど越えて来た高芝山の西峰と東峰が並んで良く見えました。一見するとどこにでもありそうな地味山なのに、侮れない防御力の持ち主でした。
林道竹森線から見た高芝山

道の左手に現れた登山口から、再び登山道へと分け入って行きます。ちなみにこのまま林道を進み続けると、柳沢峠に到達します。
柳沢ノ頭の登山口

振り返ると、背後に大菩薩嶺(2,057m)が横たわっていました。笹原の稜線が広がっているのはここからだとちょうど反対側で、西側から見ると黒々としています。見る方向によって、かなり印象が変わる山です。
柳沢ノ頭付近から見た大菩薩嶺

今歩いている道はもうすでに実線ルートの領域内です。これまでとは違って、鼻歌混じりに歩けそうな明瞭な道筋が続いていました。
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13時40分 柳沢ノ頭まで登って来ました。ここから先が、三窪高原と呼ばれている一帯となります。
柳沢ノ頭
だいぶ時間が押してしまいました。帰路に乗車予定の柳沢峠を15時40分に通る塩山駅行きのバス時間まで、もうあまり余裕がありません。

最初の小倉山で1時間近くもの時間を空費してしまった影響が、今になってジワジワと効いて来ましたな。

かつては展望があったのかもしれませんが、今では木々が覆い茂り視界を遮っていました。ツツジの蕾が沢山あったので、開花の時期に訪れたら、さぞや華やかなのでしょうね。
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6.鈴庫山登山 登頂編 手軽に訪問できる大展望の頂き

この先の一帯は観光地化されており、スニーカー履きの観光客が普通に紛れ込んでくる領域となります。急坂は無く、緩やかにアップダウンします。
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まさかの屑籠がありました。もっとも、捨てられた空き缶はすでに十年以上放置されていそうな様相ですが。かつては業者がちゃんと回収していたのだろうか。
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広場までやって来ました。正面がハンゼの頭と呼ばれているピークで、鈴倉山に向かうにはここを左折します。
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鉄塔から見えていた姿からもお察しの通り、鈴庫山は三窪高原から尾根沿いに少し下った地点にあります。そのため、分岐から先は基本的に下りです。
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正面に鈴庫山が見えて来ました。見ての通り、下山時の登り返しが始めから約束されています。気乗りしないな~。
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鞍部まで下って来ました。それでは張り切って、最後の登りに行ってみよう。なお意外と急登です。
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山梨県内の山を歩いているとたまに目にする謎の看板、やまなしの森林100選がありました。そろそろいい加減、いくつ見たことがあるのかを真面目に数えて見るべき時なのだろうか。
鈴庫山のやまなしの森林100選

手も使って急坂をよじ登ると、前方が大きく開けた空間へと飛び出しました。
鈴庫山の山頂

14時5分 鈴庫山に登頂しました。お手軽さが売りなハズの山なのに、えらい苦労しました。しかし柳沢峠から登ってきた登山者に、この達成感は到底味わえまい。・・・そのことに何か意味があるのかどうかはさておき。
鈴庫山の山頂

山頂からの眺めはこの通り、富士山と甲府盆地を一望できます。素晴らしい!
鈴庫山からの展望
なお足元は断崖絶壁なので、あまり際付近ではしゃぎ過ぎないように、足元には十分お気お付けください。

少し雲が湧いてきてはいますが、富士山もこの通りバッチリみえます。ふたを開けてみれば、予報通りの天気でした。
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足元に今日最初に登った小倉山が良く見えました。まさに玉宮の裏山といった立地であるのが良くわかります。
鈴庫山から見た小倉山

その先には甲府盆地が広がります。誰がなんと言うと、山梨県以外の何物でもない光景です。
鈴庫山から見た甲府盆地

西方向の彼方には、南アルプスの山並みが連なります。こちらはだいぶ雲が湧いてしまっていました。まあ、時刻はもうとっくに正午過ぎですからね。どうしたって雲は沸いて来るでしょう。
鈴庫山から見た南アルプス

反対の東側には、死闘を繰り広げた高芝山の姿がありました。正直なところ、単なる通り道くらいの認識でいたのですが、それは大いなる間違いでしたな。
鈴庫山から見た高芝山

7.鈴庫山登山 下山編 帰りはラクラクに柳沢峠へ下る

さあ、帰りましょう。まずは約束されていた登り返しです。
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意外とあっけなく広場まで戻って来ました。ハンゼの頭まで足を延ばそうかと逡巡するも、もうだいぶ時間も押しているのでこのまま下山に移ります。
ハンゼの頭手間の広場

広場から柳沢峠へと下る道は、スニーカー履き観光客にも配慮したのであろう緩やかな道です。気持ちよく半分駆け足で下って行けます。
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あっさりと舗装道路まで下って来ました。この道はまだ青梅街道ではなく林道です。このまま舗装道路沿いに下ります。
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サクサクと足早に歩き続けて、林道の入り口まで下って来ました。ここで青梅街道と合流します。
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合流地点は峠よりも奥多摩側に少し下った地点です。峠に向かって最後の登り返しです。
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15時15分 柳沢峠に到着しました。蓋を開けてみれば、15時40分発のバスには全然余裕で間に合いました。後知恵ですが、これならハンゼの頭に寄って行けばよかったかな。
柳沢峠
三窪高原はレンゲツツジの名所なので、その頃にでもまた再訪することにしましょう。次回はバスで来ます。

前述の通り、柳沢峠は青梅街道の最奥地点です。標高1,472mと結構な高さの峠ですが、路線バスで登って来ることが出来ます。土日限定かつ1日に2便しかありませんけれどね。
柳沢峠から見た富士山
路線バスは冬期の間は運休となります。今シーズン運行開始は昨日からだという、絶妙なタイミングでの訪問でした。

塩山方面行きはバス停が立っていないので、反対方面のバス停の向かい側に適当に立ってバスを待ちます。帰路の便は時刻表よりも少し遅れてやってきました。
柳沢峠を通行する塩山駅行きのバス

まるでトグロを巻いているかのようなループ橋の連続を、バスはスムーズに下って行きます。あれ程苦労して登って来たと言うのに、現代文明すげえと思わされる瞬間です。
青梅街道 柳沢峠区間のループ橋

バスと言う偉大なる文明の力により、スムーズに塩山駅へと戻って来ました。ええ、下山で楽が出来る山は大好きですよ。
塩山駅南口

行きと同様に鈍行列車に乗り込み、帰宅の途につきました。
塩山駅のホーム

今回は柳沢峠スタートでは物足りないかと思い、何となくの思い付きでルートを選びましたが、思いもよらない苦戦を強いられました。高芝山は万人向けとは言い難い難物の山です。今回歩いたルートは、物好きな人にしかオススメはしません。
鈴庫山は登山の対象としてはほぼ無名に等しいかのような存在の山ですが、前評判の通り山頂からの眺めは一級品でした。何も苦労して玉宮から登らずとも、柳沢峠スタートであれば簡単に登れます。三窪高原の散策と合わせて訪れてみては如何でしょうか。
小倉山については無理して鈴庫山と掛け合わせずに、ザゼンソウのシーズンに短く小倉山だけを周回するのが良いかと思います。

<コースタイム>
湯原バス停(7:15)-小倉山(8:00~8:50)-上条山(9:25)-上条峠(9:45~10:00)-高芝山(12:30~12:40)-柳沢ノ頭(13:40)-鈴庫山(14:05~14:25)-柳沢峠(15:15)

230416鈴庫山-111

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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