東京都青梅市にある青梅丘陵(おうめきゅうりょう)を歩いて来ました。
青梅市の北部に連なる標高400~500メートルほどの低山の連なりです。稜線に沿ってハイキングコースが整備されており、青梅線の青梅駅から軍畑駅の区間を繋が手歩くことが出来ます。行程の大半は杉林に覆われているものの、所々に展望が開ける場所が存在し手軽に歩ける人気のコースとなっています。特に、桜の咲く季節には大勢のハイカーが訪れます。
桜が咲く春爛漫の丘陵地で、軽めの花見登山を楽しんで来ました。
2019年4月7日に旅す。
青梅丘陵は東京の平野部と奥多摩の山間部の、ちょうど境界付近に位置してる丘陵地です。青梅市の市街地を見下ろす稜線上には多くの桜が植えられており、春の訪れとともに華やかなる光景を作りだします。
青梅丘陵のトレッキングコースは全長12kmとそこそこ歩きでのある距離がありますが、全般的に高低差は少なくとても歩きやすい道が続きます。最高地点は標高494メートルの雷電山です。
緩めのハイキングコースで、ゆっくり花見登山を洒落込もうとこの地を訪れた私を待ち受けていたのは、切れ目なく続々とやってくるトレランの大集団でした。
この日は青梅高水山トレイルラン大会の開催日で、総計1000人ものランナーがこのコースを走っていました。のんびり静かに花見登山するつもりが一転、周囲から足音が絶えない騒がしい山行きとなりました。
ゴール地点にある梅岩寺は枝垂桜で有名な桜の名所です。最後まで花尽くしの、麗らかなる春の山へと繰り出します。
コース
軍畑駅からスタートし、青梅丘陵の稜線を歩いて青梅駅へと下ります。全長およそ12kmほどの、駅から駅へと歩くお手軽な行程です。
1.青梅丘陵 アプローチ編 軍畑駅から舗装路を歩き榎峠へ
8時40分 JR青梅線 軍畑駅
青梅丘陵入り口の最寄り駅となる軍畑駅へとやってまいりました。この駅は人気のハイキングコースである高水三山の最寄り駅でもあるため、多くのハイカー達が一斉に下車します。
軍畑と書いて「いくさばた」と読みます。この一風変わった地名は、この地が辛垣の合戦が行われた古戦場であることに由来しています。
JR東日本は最近、青梅線の青梅駅より先の区間に、東京アドベンチャーラインなる愛称を定着させようと画策しているらしい。今のところ、まったくと言っていいほど定着する兆しは見えてはおりませんが。。
駅前の道標に何気なく目を向けると、トレラン大会の告知が張り出されているのに気が付きました。4月7日(日)とは今日ではありませんか。
昨年の南高尾山稜に訪問した時に続き、またもやブッキングです。どうも私はトレラン大会とは間が悪いようで。再び登山道すれ違い訓練登山となってしまうのでしょうか。
身支度を整えて8時45分に行動開始です。まずは駅前から道なりに進んで踏切を渡ります。遮断機の無い危ないヤツだ・・・
もうツツジが咲き始めましたか。ツツジは種類が多いためか、花期のスパンがとても長い印象です。
これは桃の花でしょうかね。見事に満開で付近には良い香りが漂っていました。
それなりに見栄えがするし、何よりも桜と違って食べられてるし、いいこと尽くしだと思うのですが、何故か桜ほど一般的ではないんですよね。不思議です。
頭上高くにあるこの鉄橋は奥沢橋梁と言います。トレッスル橋と言う、最近では珍しくなってしまったクラシカルな構造をもつ橋です。
この橋を見るためだけに、わざわざ軍畑までやってくる橋梁マニアもいるのだとか。趣味の世界と言うのは奥が深い。
榎峠に向かって道なりに坂を登って行きます。峠越えのルートとあってか、ヒルクライム中のロードバイクの姿を多く見かけます。
道は多摩川の支流である平溝川に沿って続いています。辺りに反響する水音がとても心地よい。
沿道は今や春もたけなわです。この春と言う季節は、ただ道を歩いているだけでも楽しから困ったものです。
なにも山登りしなくとも、このまま散歩して回るだけで良いんじゃないかと言う気分になってきます。
ヤシの木を見かけただけで、途端に体感温度がカリフォルニアっぽくなるから不思議なものです。カリフォルニアに行ったことはありませんが。
この奥多摩美術館、開いている所を見たことがありません。現役の施設なのでしょうか。
分岐地点まで登って来ました。高水三山方面へ向かう場合はここを左に入りますが、今日はこのまま直進します。
登山口までは意外と距離があります。急坂が続き、この舗装道路歩きの時点ですでに結構な標高を稼ぎ出しています
駅から30分ほど歩いたところで、ようやく登山口の榎峠口に着きました。それでは張り切って、青梅丘陵のハイキングへと繰り出しましょう。
2.深い杉の植林に覆われた静かなる丘陵地の山並み
登山開始も早々から、周囲はいかにも奥多摩の山らしい鬱蒼とした杉の植林帯となります。
緩やかにアップダウンを繰り返しますが、急勾配な場所はあまりなく歩きやすい道です。
傾斜の大きい場所は階段になっています。全般的にお金をかけてとても丁寧に整備されている印象の道です。流石は予算潤沢な東京の山と言ったところでしょうか。
9時45分 雷電山に登頂しました。ここが青梅丘陵の最高地点となります。なんと言うかこう、痺れそうなくらいカッコいい名前の山ですね。
山頂の様子
何があると言う訳でもない地味な山頂です。名前がカッコいいと言う以外に、特筆すべき点はありません。
眺望は北側が一ヵ所だけ開けています。前方に連なっているのは奥武蔵の山並みです。
眼下には、物々しい雰囲気の奥多摩工業の採石場が見えます。見える景色はこれが全てです。何とも地味で控えめな青梅丘陵の最高地点でありました。
青梅丘陵のハイライトと言える場所はこの先にちゃんとありますので、どうぞご安心(?)ください。
ここから先は丘陵地の尾根歩きです。ゴールの青梅駅まではあと8.3kmほどあります。まだまだ前半戦ですね。
現在地が最高地点なのでこの先は基本的に下り基調となりますが、アップダウンはそれなりにあります。
感覚的なものなので言葉で説明するのが難しいのですが、実に奥多摩っぽい道です。道中の光景を見ただけで奥多摩であることが判ってしまう、独特の雰囲気があります。
途中でコース本線から外れて辛垣城跡へ向かう分岐があります。当然ながら立ち寄ります。先を急いでいるなどの特段の理由が無い限り、私は基本的に巻き道は使わない派です。
辛垣城跡への登りは、ここまでの緩やな道とは違い岩が露出したゴツゴツした道でした。お散歩コースに毛が生えた程度のものを想像していましたが、意外にしっかりと登山道です。
10時10分 辛垣(からかい)山に登頂しました。何と言って良いのか、辛そうな名前の山ですね。鉄壁の防備を誇ったであろう山城だったころとは違い、今日では特に辛い思いはせずに簡単に登れます。
山頂には特に遺構と呼べるようなものは残っておらず、案内板だけがポツンと立っていました。軍畑と言う地名は、この城を巡って行われた辛垣城の戦いの古戦場であることに由来しています。
見るからに城門があったであろう場所など、山城跡らしさを僅かに感じることは出来ます。
しばしの間、高低差のない平坦な道が続きます。トレラン向きな道ですね。・・・トレランと言えば、そろそろ正面から大集団が現れる頃合いかもしれませんが。
10時30分 名郷峠を通過します。山と高原地図には記載自体のない分岐ですが、道標によればここから二俣尾駅へ下山することも可能なようです。
峠に小さなお社がポツンとありました。昔から人の往来のあった峠なのでしょう。
3.静かなる丘陵地を駆け抜けるトレランの大集団
名郷峠を過ぎてから少し経った所で、ついにトレイルランナー達が現れました。という事で、すれ違い対応によりここからは大幅にペースダウンです。
なだらかな丘陵地からぴょこっと飛び出したこの二つの突起は大岳山(右)と鋸山(左)かな。鋸山は傍から見ると実はかなり急峻な山なんですね。
西側に目を向けると、左手間の山は三室山(646m)で、右奥に見えているのが日の出山(902m)かな。この辺りの奥多摩の前衛の山々には馴染みが薄いので、イマイチ同定に自信が持てません。
道が狭くなっている場所で大渋滞が発生し、完全に塞がってしまっていました。仕方がないので、ある程度捌けてくるまで待機することにします。
10分、20分と待機を続けるも、一向に渋滞が緩和される気配がありません。試しに何人位いるのか尋ねてみたところ、千人ですとの返事が返って来ました。
えぇ?千人って・・・ワ、ワンサウザンド
「そんなに待ってられっかい!」という事で、強引に渋滞の脇を通りに抜けて行動再開です。
渋滞を抜けると一気に人がいなくなりました。どうやら局地的に詰まっていただけだったようで。
三方山に近づくにつれて、今度は北側の展望が開けて来ました。この季節特有の霞の影響で遠くは見えませんが、空気が澄んでいれば広く関東平野を見晴らすことが出来ます。
11時20分 三方山に到着しました。すれ違い待ちの影響により、標準コースタイムを大幅に超過するペースです。まあ、先を急ぐ旅ではないのでどうでもいいと言えばいいことではありますが。
山頂の様子
三角点がある他は、ベンチ等もなにもない空間です。眺望も一切なく、雷電山以上に地味な空間でした。
軍畑の駅前で、昔ながらな250ml缶のバヤリースを見かけてつい買ってしまったのですが、よくよく考えてみると、蓋が無いから一気に飲み切るしかない缶ジュースは、登山にはまったく適しておりませんな。
三方山は山頂こそ展望皆無ですが、少し下ったところから奥武蔵方面の眺望が開けました。まあなんと言うか、身も蓋もないことを言ってしまうと地味ですね。
これよりしばし、片側だけが開けたトレイルとなります。伐採地に植えられた新たな木々が育ちつつあるので、もう何年かすればこの場所も展望皆無な杉林となってしまう事でしょう。期間限定の眺めです
またもや地図には記載の無い分岐がありました。ここから石神前駅へと降りられるようです。
折り返して周回するコースなのか、先ほどまで前方からやってきていたトレラン集団は、今度は背後から来るようになりました。
青梅駅まではあと4kmほど。ここから先はずっと林道歩きです。しかし何を隠そう、青梅丘陵トレッキングのハイライトと言えるのは、実はこの林道の区間に入ってからなのです。
4.桜が満期の青梅丘陵ハイキングコースを行く
林道に出て道幅が広くなったことにより、すれ違いを気にする必要はなくなりました。しかし流石に参加者千人ともなると、絶えず切れ目もなくランナーがやって来ます。
12時5分 矢倉台へ到着しました。東京の桜の名所として、そこそこの知名度のある場所です。
辛垣城の物見所だったと言うこの場所からは、青梅の市街地を広く見渡すことが出来ます。桜もちょうど見頃の真ん中で、訪問のタイミングとしては完璧であったようです。・・・トレラン大会とのブッキングさえなければ。
ここから先は、桜満開のお花見ロードです。僅かに散り始めた桜吹雪の中を気持ちよく歩きます。
下るにつれて徐々に市街地との比高が少なくなり、すぐ足元に町が見えます。まさに青梅の裏山と言ったところで、生活音から何からすべて聞こえてくる距離です。
この仏舎利塔は、太陽整髪教団という名の新興宗教団体が建てものです。・・・太陽と整髪にどのような関係があるのか、謎の多い名前ですね。
教祖様と奥様のレリーフが掲げられています。現在、この太陽整髪教団は活動はしていないそうです。
尽きることのないトレラン集団とともに、ハイキングコースを進み続けます。
ちなみに私は走るのは嫌いです。トレランが嫌いだと言う意味ではなく、山だろうが平地だろうが走ることそのものが好きではありません。だって腹減るし疲れるじゃないですか。
・・・「お前は一体何を言っているんだ?」と思われたかもしれませんが、ともかく嫌いなものは嫌いなのです。
梅岩寺への分岐地点まで歩いて来ました。ここからハイキングコースを外れて下山します。
5.梅岩寺の枝垂桜を鑑賞する
山の中にひっそりとお社がありました。これは梅岩寺とは何も関係のなく、秋葉神社と言う名の神社です。
神社の参道を兼ねている登山道を下ります。麓までは10分とかかりません。
青梅駅の姿が見えて来ました。本当に駅のすぐ裏手にある感じです。まさに駅チカなハイキングコースです。
ちょうどお目当ての枝垂桜の目の前へと飛び出しました。
そう、本日の私の本当の目当てはこの桜見物であり、青梅丘陵を歩いたのは言ってみれば物のついででしかありません。やけに長いついででしたがね。
ということで、これが桜の名所として名高き梅岩寺の枝垂桜です。見上げる高さの巨木ですな。
夜にはライトアップも行われるらしく、大型の照明が準備されていました。
枝垂桜は入り口付近にもう一本あります。すこし小ぶりながらも、こちらも十分な見ごたえです。
13時35分 青梅駅に到着しました。行動時間5時間ほどの、お手軽な花見登山でありました。
麗らかなる春の青梅丘陵を巡るお花見登山はこれにて終了です。
予期せぬトレラン集団と遭遇がありましたが、普通に歩けば駅から駅へ4時間少々で巡れるとてもお手軽なコースです。所々に展望が開けた場所もあり、低山らしからぬ解放感がある良ハイキングコースだと思います。都内からのアクセスが比較的良好なのもポイント高しです。ガッツリとした山行きでなく、軽めの山歩きがしたい言う人におススメです。
純然たる低山であるので、真夏の訪問は推奨しません。ベストな訪問時期はやはり桜の咲く頃であろうかと思います。花見がてらに東京の郊外へ繰り出してみては如何でしょうか。
<コースタイム>
軍畑駅(8:45)-榎峠(9:15)-雷電山(9:45)-辛垣山(10:10)-名郷峠(10:30)-三方山(11:20)-矢倉台(12:05)-梅岩寺(13:10~13:30)-青梅駅(13:35)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
こんばんは。
桜良いですね。
めちゃくちゃ美しいです。
Taym様
コメントをありがとうございます。
桜の名所として知られている場所だけあって、見事な枝垂桜でした。今年の桜はもうとっくに終わってしまいましたが、次年度のお花見候補地に梅岩寺を加えてみてはいかがでしょうか。