菜畑山-朝日山 晩秋の道志山塊の静かなる山並み

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山梨県道志村にある菜畑山(なばたけうら)と朝日山(あやひやま)に登りました。
道志山塊と言う交通困難な僻地にある、極めたマイナーな山です。山域の大半が樹林に覆われており眺望には恵まれない山域ではありますが、富士山に近い立地のおかげで、所々に開ける僅かな展望スポットからの光景は絶景です。
殆ど人とすれ違う事の無い、静かなる晩秋の尾根道を歩いて来ました。

2018年11月17日に旅す。

なんだか最近は有名な山にばっかり登ってるなあ。

こんにちは。自称マイナールートが大好物な天邪鬼系ハイカーのオオツキです。しかしながら、どうも最近の私は自称とは裏腹に、有名どころの山にばかり登っております。

有名な山には当然のことながら、その山が有名たる所以となった何かしらの優れた要素が詰まっています。大ハズレと言うことはなく、行けば必ず良い思いが出来ることでしょう。

だからと言って有名所ばかりを追っていたのでは、ありふれた観光ガイドのような退屈なブログになってしまうのもまた必然です。

そこで今回は原点回帰という事で、マイナーエリア道志山塊に属する菜畑山でもって、皆様のご機嫌を伺います。ひょっとしなくても、読者を置いてきぼりにしているのではないだろうか。

菜畑山を含む道志山塊の主脈は、おおむね標高1,000~1,500メートルほどの山の連なりです。樹林帯に覆われ眺望は殆どなく、歩く人の極めて少ない静かな山域が広がっています。
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マイナーと言いつつも、菜畑山は山梨百名山と言う肩書を持っています。山梨百名山コンプリートを志す人間であれば、避けて通ることは出来ない必達の山ではあります。

菜畑山は公共交通の不毛地帯である道志村のほぼド真ん中に存在していますが、一応は電車とバスによるアプローチが可能です。もっとも、極めてシビアな乗り継ぎを要求されますが。
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バスの時間に追われる少々慌ただしい行程ではありましたが、マイナーエリアらしさの溢れる静かな山行きを楽しんで来ました。
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コース
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道坂隧道バス停よりスタートし、道志山塊の主脈に沿って今倉山、菜畑山および朝日山を縦走します。下山は大川渡BSへ。

標準コースタイム6時間30分ほどの行程です。

1.菜畑山 アプローチ編 都留市と道志村の境界、道坂隧道へ

7時50分 富士急行線 大月駅
見るたびに毎回のようにラッピングが変わる富士急行線ですが、本日の車両は機関車トーマス仕様です。毎度毎度凝っておりますな。
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8時11分 都留市駅に到着しました。
駅名の看板までもがトーマス仕様に変わっておりました。どうやら、富士急ハイランドにあるトーマスランドと言うアトラクションの20周年記念であるようです。
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都留市駅から8時15分発の道坂隧道(どうざかずいどう)行きのバスに乗車します。
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以前はもっと慌ただしい乗り換えでしたが、いつの間にかダイヤ改正したらしく、トイレに寄れるくらいの時間の余裕がある乗り継ぎに変わっていました。

8時45分 終点の道坂隧道バス停に到着しました。
道志山塊の山腹を貫く、都留市と道志村の境界にあるトンネルの入り口です。この時点で標高は既に1,000メートルあります。
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2.道坂峠をへて縦走最初の山、今倉山を目指す

身支度を整えて、8時50分に登山を開始します。登山口はトンネルの脇にあります。
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バス停の名称は道坂隧道なのに、扁額に書かれた名称は隧道でなくトンネルなんですね。個人的には隧道という古めかしい言葉の響きの方が好みです。
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道には枯れ葉が降り積もっており、もうすっかり冬の装いです。秋と言う登山に最も適しているであろう季節は、いつもあっという間の駆け足で過ぎ去っていってしまいます。
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頭上を見上げると、僅かながらも秋の名残がまだありました。紅葉の中心はもう、山から里へと移ってしまったようです。
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古い馬車道跡と思われる平場が、登山道と交差するように続いています。道坂トンネルが出来る以前の時代の、峠越えの道の跡でしょうか。
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ほどなく前方に峠が見えて来ました。
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登山開始から15分ほどで、道坂峠に到着しました。道志山塊の主脈に乗ったこと事になります。ここから先はずっと尾根沿いの道となります。
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本日の縦走登山最初の一座である今倉山を目指して、峠からの急坂を登って行きます。
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僅かに残ったカラマツ黄葉が、青空に映えていました。
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それにしても良いお天気ですね。予報では微妙なお天気だったので、捨て日のつもりでわざわざ微妙な山を選んできたと言うのに。こんなに良いお天気なのであれば、もっと眺望の良い山へ行くべきでした。

天気が良くても悪くても文句を言う、注文の多いおっさんであります。

麓の方の山肌が良い色に黄葉しています。関東地方の11月下旬におけるベストな山域は、標高1、000メートル未満の山々でしょう。
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道志山塊は基本的に樹林帯にずっぽり覆われていますが、時々こうして眺望の開ける場所があります。右に見えてるのは三ツ峠山(1,764m)です。山頂にあるアンテナのおかげで山座同定は容易です。
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標高が上がるにつれて、すっかり落葉した冬の殺風景な光景に変わりました。
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振り返ると、世界遺産のアイツが頭だけを僅かに覗かせていました。
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今倉山の山頂直下は割と急峻です。息を切らさない程度にノタノタの登って行きます。
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山頂が見えてきました。
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9時45分 今倉山に登頂しました。
二つのピークを持つ双耳峰であり、山頂標識があるこの場所は東峰です。
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山頂の様子
木に囲まれて展望は一切ありません。三角点がある他は何も無い場所です。なぜこの場所が山梨百名山に選ばれているのか、少々疑問です。
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こちらがこれから歩く道志山塊主脈の山並みです。特徴がなさ過ぎて山座同定は極めて困難です。
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菜畑山までの所要時間は2時間とあります。山と高原地図のコースタイムだと1時間45分です。さて、実態に近いのはどちらの方でしょうか。
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3.菜畑山へと続く、静かなる道志の山道

今倉山からはまずは一旦、大きく高度を落とします。本日歩く予定でいる行程の中では今倉山が最高地点であるため、この先は基本的に下りが主体です。
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山頂直下の急坂を下りきると、平坦な道になりました。駆けだしたくなるような気持のよい道です。
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割とすぐ近くに道志村の集落があるのが見えます。バイクのエンジン音が散発的に聞こえてくるあたりも、いかにも里山と言った風情です。
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急勾配な場所にはロープが張ってありました。手持ちの地図には藪道との記載がありましたが、割としっかり手入れがされている印象です。
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ここで前方に絶景の予感。右側の斜面に小規模な崩落地があるようです。
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思った通りの大展望。低山歩きにおいては、崩落地のある所に好展望ありです。
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富士山をアップで。手前にある大柄な山は、道志山塊最高峰の御正体山(1,681m)です。
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前方に見えている峠は山伏峠です。あの峠を越えた先は山中湖村になります。
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本日は帰宅時にあの峠をバスで越えてい行くことになります。自宅があるのは反対方向なのですが、何故わざわざ山中湖村を目指すのかと言うと、それしかバスが無いからです。

月夜野方面へ行くバスは、平日にしか運行しておりません。この一帯が公共交通の不毛地帯であると言った理由がお分かりいただけるかと。

崩落地からほどなく山頂が見えて来ました。あれれ?いくらなんでも早すぎませんか。
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10時40分 水喰ノ頭に到着しました。
菜畑山の手間にあるピークのようです。地図にもしっかりと記載されているピークであるにもかかわらず、すっかり意識から漏れておりました。
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特に何があると言う訳でもない場所なので、そのまま素通りして今度こそ菜畑山に向かいます。
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熊笹の茂る尾根道を快調に飛ばして行きます。しっかりと刈り払いが行われており、不明瞭な場所はありません。
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再び山頂が見えて来ました。今度こそ着いたのかな。
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11時5分 菜畑山に登頂しました。
これで山梨百名山完登と言う目標に、また一歩近づくことが出来ました。・・・はて、いつの間にそんな目標を掲げていたっけか?
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山頂の様子
以前は東屋が存在していたらしいのですが、屋根は失われて椅子だけが残されていました。
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山頂からは、全方位とはゆきませんが一部の展望が開けています。富士山もこの通りバッチリ見えます。
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先ほどの崩落地からの方が良く見えたと言う事実は、ひとまずは忘れることとしましょう。

道志川を挟んだ向かいには、丹沢山地の大室山(1,587m)と加入道山(1,418m)がどしっりと横たわっています。あまりこちら側から眺めたことがないので、なんだか新鮮です。
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大室山の背後に見えているのは姫次あたりかな。
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これは方角的おそらく畦ヶ丸(1,293m)でしょう。初めて見るアングルなので、イマイチ同定に自信が持てません。
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振り返って見た、スタート地点の今倉山。双耳峰なのが良くわかります。
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4.登っても特に良いことは無い朝日山

縦走最後の山である朝日山へと向かいます。まずは鞍部に向かって勿体ないくらい大きく高度を落とします。
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ゴールの朝日山が見えました。山頂まではまだ何度もアップダウンしなければならないのが見て取れます。
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鞍部からの登り返しは結構な急勾配でした。割と激しくアップダウンしますね、このコースは。
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標高が下がったことにより、周囲に紅葉が戻って来ました。
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カラマツ林の急斜面を喘ぎながら登って行きます。
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登り切った所がブドウ岩ノ頭と言う名のピークです。特に何があると言う訳でもない、縦走路上の通り道です。
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登って早々ですが、お次はガッツリ下りです。一体何のために登ったんだと言いたくなるところですが、道がそうなっている以上は仕方ありません。
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12時15分 下り切った所で坂本峠に到着です。
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道標も何もありませんが、ここから戸渡バス停へエスケープできます。時間が押していたらここまでで縦走を打ち切ることも考えていましたが、まだ若干の余裕があるのでこのまま予定通り進みます。
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再び始まる急登。縦走とはそういうものです。意外と厳しい道ですね。
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背後に再び富士山が現れました。菜畑山山頂を出発して以降、今の所一度も展望の開ける場所には行き当たっておりません。どこまでも地味で静かな同志の山並みです。
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登りきったところで、岩戸ノ峰と言うピークに登頂しました。ここもまた、展望も何もない縦走路上の通過地点です。
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しばし現れる安息の時。しかしながら、少なくともあと一回はアップダウンがあるはずです。
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ようやく朝日山本体が目の前に姿を現しました。見るからに、登っても何も良いことのなさそうなオーラが立ち込めておりますが。。
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左手に大月市秀麗富岳十二景の一座である倉岳山(990m)が見えました。秋山山稜と呼ばれる、中央本線の南に連なる山並みです。
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つまりJR中央本線は、あの山を越えた先を通っています。この付近一帯の交通アクセスが極めて悪いのも納得の地形です。東西に長く延びる秋山山稜に間を阻まれている訳ですから。

朝日山に向かって最後の上りです。
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山頂付近には見事なブナ林が広がっていました。丹沢のブナ林のような立ち枯れ現象には見舞われていないようです。丹沢とは谷を一つ隔てているだけなのに、一体何が違うのでしょうか。
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山頂が見えました。
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13時15分 朝日山に登頂しました。
山頂標識には赤鞍ヶ岳とあります。朝日山と言う名称と、どちらが正式な名前なのでしょうか。
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山頂の様子
三角点がある他は何もありません。思っていた通りの、登っても何も良いことのない山頂でした。
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5.急坂を下り大川渡バス停へ下山

13時30分 下山を開始します。
前方には道志山塊の主脈がまだずっと続いておりますが、これ以上進むと本当に帰れなくなります。
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という事で例のごとく道標も何もありませんが、右に進めば下山です。
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薮に覆い隠されるようにして、降下地点を示す道標が存在しました。
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急斜面を一気に下る急勾配の道です。ロープが張られていますが、九十九折れなどなく一直線です。
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急坂を転げ落ちるように下りきると、ようやく勾配が緩みました。
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再び帰ってきた紅葉を愛でつつ下って行きます。
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無粋なガードレールの姿が視界に入りました。文明社会への帰還です。
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路面が荒れ放題の林道に出ました。デコボコで歩きにくいことこの上ない。
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沿道の木々が本当に良い色に紅葉しています。デコボコな路面のせいで、よそ見していると危ないですが。
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脇の甘くない鹿よけのゲートを越えます。
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前方にそびえたつ、丹沢山塊きってのファットマウンテン大室山。道志村側から登ると2時間ほどで山頂に立てるそうです。西丹沢はひたすら遠いイメージですが、裏側からなら意外と近い。
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大室山の脇から、月が出ていました。
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道志道に向かって農道を下って行きます。まだ15時前だと言うのにすっかり日が傾いてしまっています。冬至を間近に控えたこの季節は、本当に日が短い。
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14時45分 大川渡バス停に下山しました。
1日に2往復だけ、山中湖旭日丘と道志小学校とを結ぶ路線バスがこのバス停を通ります。15時の便を乗り逃すと、もう次はありません。
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ちなみに平日であれば、反対向きの月夜野行きのバスが存在します。そこから三ヶ木を経由して、橋本へ戻ることが出来ます。

バスはきっかり時刻表通りに現れました。
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ちなみにこの路線は、4月から11月までの間の季節運行です。つまりこの記事が投稿される頃には、もう運休期間となってしまっているという事です。

この記事を見て同じルートを辿ろうと思いたった奇特な方は・・・申し訳ございませんが春までお待ちください。

15時55分 山中湖旭日丘バス停
そんな訳で、特に用事があるわけでもありませんが、経路の都合により山中湖畔へとやってまいりました。
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道の駅ならぬ森の駅があります。ここまで来れば周遊バスが数多く走っているので、もう時間を心配する必要はありません。
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謎の水陸両用車両kabaが駐車していました。山中湖周辺をドライブ&クルーズするツアーに使用されています。一度乗って見たいともいつつ、まだその機会を得られていません。
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せっかく来たので、少し湖畔をブラついて行くことにします。
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この季節だと、太陽がちょうど富士山に向かって沈んで行くことになるため、まだ16時だと言うのにもうすっかり夕暮れです。
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観光地化された湖には付き物の、スワン型の遊覧船が停泊していました。
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足漕ぎ型の小型スワンボートも、当然ながらあります。
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そしてまさかの、ボートではない本物の白鳥も泳いでいました。もう白鳥が渡ってくるような季節でしたか。そしてこんな時に限って、高倍率の望遠レンズを持ってきていないと言う大失敗です。
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思いがけず白鳥も見れて満足しました。河口湖行きの周遊バスに乗り込み、撤収へと移ります。
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この周遊バスは、種類が色々あってやたらと複雑な運航形態をしており、どれに乗ればよいのか非常に分かりにくいです。とりあえずFラインと呼ばれているバスに乗れば、最短で富士河口湖駅へ戻れます。

終点の河口湖までは行かずに、途中の富士山駅で下車します。
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もうすっかり日も暮れてしまった富士山駅のホームからの光景を写真に収めて、本日のミッションは終了です。
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大月行きの普通列車に乗り込み、帰宅の途につきました。
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菜畑山と朝日山を巡る静かなる山行きは、何故か山中湖にまで足を延ばし無事に終了です。思っていた通りの、ほとんど人に出会う事が無い貸し切り状態な山行きを楽しむことが出来ました。
本文中でも触れた通り、冬シーズンにはこのエリアに公共交通機関でアプローチする手段そのものが失われます。よって、このルートを歩くことが出来るのは季節限定です。もう少し日が長くなれば、北上して秋山山稜の立野峠を乗り越え、中央本線の梁川駅まで歩くなどのルート取りも可能かもしれません。
道志山塊の山々は、万人に向かって広く推奨できるような特別な何かがあると言う訳でもない、極めて地味な山域です。今回はまあ、こんな山もあるんだよと言う程度のご紹介でした。

<コースタイム>
道坂隧道BS(8:50)-今倉山(9:45)-水喰ノ頭(10:40)-菜畑山(11:05~11:20)-坂本峠(12:15)-朝日山(13:15~13:30)-大川渡BS(14:45)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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