
長野県松本市と安曇野市にまたがる常念岳(じょうねんだけ)と蝶ヶ岳(ちょうがたけ)に登りました。
北アルプスこと飛騨山脈の前衛部に連なる常念山脈に属している山です。常念岳は麓の松本盆地から見上げた際に非常に目につく存在で、古くから豊穣の神として崇められてきた地域の象徴的な存在です。常念山脈の稜線を辿る縦走コースは通称パノラマ銀座と呼ばれており、登山対象としても人気の高い山です。
晴天に恵まれた初日からは一転した曇りがちな空のもと、パノラマ銀座の後半を縦走してきました。
2025年9月17~18日に旅す。
前回の大天井岳に引き続き、パノラマ銀座縦走の2日目と3日目の記録です。常念岳と蝶ヶ岳を越えて上高地まで歩きます。
常念山脈の中央に位置している、パノラマ銀座縦走におけるハイライトと言うべき区間です。比較的平坦で歩きやすい燕岳から大天井岳までの区間とは異なり、常念岳の前後は大きなアップダウンを繰り返す歩きごたえのある区間となっています。

初日の大天井岳ではほぼ完璧な晴天に恵まれましたが、2日目は生憎と雲が多めの天気となりました。それでも、完全なる虚無の世界に飲み込まれなかっただけ、まだ救いはありましたが…

上高地へと下山する最終日には、完全な雨天となりました。出だし初日の晴天からは一転して尻すぼみ感のあった縦走2日目と3日目の記録です。

コース

大天荘のキャンプ指定地からスタートして、常念乗越を経て常念岳に登頂します。山頂から尾根沿いに縦走して、蝶ヶ岳ヒュッテのキャンプ指定地でもう一泊します。
最終日は長塀尾根を下って上高地へ下山します。パノラマ銀座縦走としてはごく一般的な行程です。
1.曇りがちの空の下を行く、常念乗越への道程
9月17日 6時20分 大天荘のキャンプ場からおはようございます。本日は明け方のうちにから小雨がパラついており、雨がやむのを待っていたらすっかりと遅い時間になってしまいました。

本日は天気が好転するようなら表銀座へ、下り坂ならパノラマ銀座方面へという2段構えの計画を立てています。前日の天気予報の通りに、雲が多めの生憎な空模様です。
雲越しに何となく陽の光を感じます。ですがこれ以上粘っていても天気が好転しそうにはないので、そろそろあきらめて行動を開始しようかと思います。

谷向にあるはずの槍ヶ岳と穂高連峰は、完全に雲の中です。表銀座方面に進んだら、途中からは虚無の世界と化すことが初めから約束されている状態です。

1夜を過ごした憩いの我が家を撤収します。雨に濡れたことにより心なしか重くなってしまった感じの荷物を背負い、2日目の行動を開始します。

6時45分 この期に及んでまだ表銀座への未練がタラタラでしたが、計画通りに常念方面に向かって出発します。

前方に見えるはずの常念岳は、頭の部分だけが雲に覆われている状態です。頭上の雲はちょうど標高2,800~2,900メートル付近に垂れ込めているらしく、パノラマ銀座の稜線がギリギリ没しない絶妙な状態が作り出されていました。

まずはお隣の東大天井岳との鞍部に向かって緩やかに下って行きます。尾根上はハイマツ帯となっており、晴れてさえいれば前日と同様に常時パノラマの状態となるはずです。

この辺りはまだ上り下りともに傾斜も緩やかで、鼻歌交じりにでも歩けそうな気持ちの良い尾根道です。アップダウンがそれなりにキツくなってくるのは、この先のもっと常念岳に近づいてからです。

登山道は東大天井岳の山頂は通っておらず、脇を巻きながら大きく回り込んで行きます。山頂へ登るための脇道も一応はあるらしいのですが、気が付かずに素通りしました。

すでに綿毛化して枯草になりつつあるチングルマが多く目につきます。7月中の初夏の時期に訪れたていたら、さぞや素晴らしい光景が広がっていたのでしょうが、実際問題としてその時期はもっと混在していてテント場の場所取りに苦労することになります。

ハイシーズンを迎えた人気の山がオーバーユース気味になることは致し方がないことではあるのですが、それでも表銀座とパノラマ銀座の混雑ぶりは限度を逸脱しているというか、訪問することそのものを躊躇するくらいには混み合います。
常念山脈の主峰たるにふさわしい、威風堂々とした山容をしています。常念乗越からの登り返しがなかなかキツそう見えますが、今はひとまず考えない事にします。

一瞬見えただけでまたすぐに雲に没してしまいましたが、それでも見える瞬間があるとわかっただけでも多少は気分が上向こうというものです。

常念乗越の手前に横通岳(2,767m)と言う名のピークがありますが、登山道は山頂を踏まず名前の通りに脇を巻いて行きます。

一応は日本国以内で73番目に標高が高い山らしいのですが、それにしてはずいぶんと投げやりな名前を付けられてしまったものです。
日本百高山の完登を目指している人には対象の山の一つなので、巻かずにちゃんと山頂を踏んでいきましょう。私は特に意識していないので、道なりに巻いていきます。

常念乗越が見えてきました、思っていた以上に一度しっかりと標高を落とします。その後登り返しのことを思うと気乗りはしませんが、道がそうなっている以上は仕方がありません。

ここで再び常念岳が雲の中から姿を見せました。割と山らしい姿をした山と言うか、きれいな三角錐型をしています。いいカタチをしていますね。

常念岳は麓の松本盆地から見上げた時に、ちょうど田植えが始まる時期にお坊さんの姿に見える雪形が現れることから、別名で常念坊とも呼ばれています。
古くから豊穣の神として信仰の対象とされてきた霊山でもあります。これは常念岳に限った話ではありませんが、里からよく見えていいカタチをしている山には、大抵何らかの山岳信仰の謂れが存在します。
鞍部に立つ常念小屋の屋根が見えています。健脚な人であれば、中房温泉から初日の内に常念小屋まで歩いて、パノラマ銀座縦走の日程を1泊2日に圧縮することは十分に可能です。結構な距離を歩くことになるので、あまりお勧めはしませんが。

鞍部が近づいてきたところで、登山道が森の中に入りました。常念山脈の稜線は大部分が森林限界を越えたハイマツ帯ですが、暗部になっている場所の周辺には、一部こうした樹林帯が存在します。

森を抜けると、頭上にはわずかながらも青空が広がりつつありました。ここからのお天気逆転なるのか、期待が高まります。

こちらが常念小屋のキャンプ指定地です。大天井岳のキャンプ場と同様に、最近の他アルプスでは珍しくなってきた予約不要のテント場です。ここも相当混雑する人気のテント場ですが、さすがに今の時間帯はまだ完全な無人状態です。

9時15分 常念乗越まで下ってきました。常念小屋で常念岳の山バッジが買えるので、バッジコレクターの方は忘れずに立ち寄って行きましょう。

さあ、ここからは常念岳に向かって怒涛の登り返しが始まります。気を引き締めてまいりましょう。
2.何気に辛い登り返しを経て、常念岳の頂へ
常念乗越から常念岳山頂までの標高差は、およそ400メートルほどあります。1高尾山なので、だいたい1時間くらいあれば登れるのではないかと、この時はまだ常念坊さんのことを甘く見ていました。

※1高尾山=標高差400メートル=徒歩およそ1時間
いかにも北アルプスの山らしい、ガラ石状の小石が散乱する道です。見上げる角度の急勾配で、かなりの体力を削られます。

急登なだけに、短時間で標高が上がって行きます。常念小屋があっという間に小さ見えるようになりました。

下から見上げた時に最高地点のように見えていた場所は偽ピークで、本当の山頂はさらに奥にありました。思っていた以上にしんどいですぞこれは。

私は縦走だからまだいいですが、一ノ沢登山口から日帰りで登っている人は、この常念乗越からの最後の登りでボッキリと心をへし折られるのではなかろうか。
相変わらずどんよりとした空模様のままですが、悪いことばかりではありません。昨日に続いて、ひょこりとライチョウが姿を見せてくれました。

人間の存在を全く意に介する様子もなく、まるで公園のドバトのように平然と人の足元を歩き回っています。常念岳に住んでいるライチョウにとって、人間は普段から見慣れた無害な生き物なんでしょうね。

すぐそこにあるように見えて、なかなか山頂にたどり着きません。いったい誰だ、1高尾山だから大したことは無いだろうとか、適当なことをフカしていたやつは!

良い感じに息絶え絶えになって来たところで、ようやく山頂が現れました。下から見上げるとかなり大柄な常念岳ですが、山頂部はかなり狭い岩場です。

10時40分 常念岳に登頂しました。いくらテントを背負っているとはいえ、よもや1高尾山を登るのにこれほどの苦戦を強いられるとは思ってもいませんでした。常念坊さんは意外と侮れませんぞ。

パノラマ銀座縦走におけるハイライトと言えるのは、間違いなくこの常念岳越えであろうかと思います。
早速ですが、周囲に広がるパノラマを一通りざっと眺めてみましょう。北側には大天井岳からここまで歩いてきた稜線がすべて一望できます。

引いた位置から見た大天井岳は、東大天井岳の存在感が思いのほか大きく、双耳峰のようにも見えます。

これは燕岳だと思いますが、ここから見ると北燕岳と重なって山頂部が三又に分かれているように見えます。

南側には、この後に歩くことになる蝶ヶ岳へと続く稜線が連なっています。見たところアップダウンはそれなりにありそうです。

西側には槍ヶ岳と穂高連峰がドーンと見えるはずなのですが、こちらは完全に雲隠れ中です。むしろ晴れていたら「やっぱり表銀座に進めばよかったー」と激しく後悔することになっていたことでしょう。

東側には松本盆地が一望できるはずですが、こちらもやや雲が多めです。それでも、常念岳が麓からでもよく見える位置にあることがなんとなくわかります。

雲が多めで全般的に中途半端なパノラマとなってしまいましたが、それでも一面の虚無の世界にならなかっただけでも良しとすべきでしょう。比較的登りやすい位置にある山なので、またいつか来ることにします。
3.思いのほかアップダウンが大きい蝶ヶ岳への道程
11時30分 少し長めの休憩を入れていくらか元気を取り戻したところで、行動を再開します。

常念岳からは一度しっかりと標高を落とします。縦走登山とはそういうものでございます。

この辺りは後立山連峰の稜線を思わせるようなギザギザな尾根になっており、東の松本盆地側が切れ落ちています。登山道は尾根の西側をトラバースするようについており、特にこれと言った危険箇所はありません。

谷を挟んだすぐ向かいに穂高連峰があるのですが、相変わらず完全に雲隠れを決め込んでいます。天気予報の通りではあるのですが、一瞬だけでも晴れてくれないかな。

下っても下ってもなかなか鞍部が見えてきません。その後の蝶ヶ岳への登り返しを思うに、あまり下って欲しくはありませんが、尾根がそうなっている以上は仕方がありません。縦走登山とはそういうものでございます。

前方に見えている蝶槍が、すっかりと見上げる高さになってしまいました。この後に、あの尖って見える先端部分を越えていくことになります。

標高が下がって完全に雲の下に出たことにより、麓の松本の市街地が良く見える状態になりました。朝の時点から全く変わっておらず、標高2,900メートル辺りから上が雲に覆われている状態です。中層雲と呼ばれているやつですな。

遠目には尾根上のただのコブの世に見えている突起一つ一つも、目の前まで来ると見上げる絶壁感があります。

振り返って見た常念岳は、南側から見ると台形型をしているように見えます。一見山頂は広そうにも見えますが、横幅の薄い屏風状の岩になっています。

コブを乗り越えると、前方の暗部一帯に針葉樹の森が広がっていました。この標高帯が、ちょうどギリギリ森林限界を越えるか超えないかくらいの境界になっているようです。

しばし森の中を進みます。日差しがないとはいえジリジリと暑さが増してきていた頃合いだったので、ひんやりとした森の中は気持ちが良い。

今はもう枯草状態ですが、夏にはお花畑だったのであろう空間が広がっています。パノラマ銀座を歩くのにベストな時期はいつかと問われたら、それは間違いなく7月中の初夏の時期なのですが、その時期は特に週末を中心にとにかく混在します。

9月になるともう花は無くなりますが、そのかわりに比較的すいている状態にはなります。紅葉が始まるとまた混み始めるので、ちょうど今くらいの時期は穴場だと言えます。
花か紅葉の見所を取るか、あるいは空いている状態を取るかは、完全なるトレードオフです。
振り返って見ると、常念岳の姿がよく見えました。時期によっては、お花畑の中に佇む常念岳と言う画が見られる場所のでしょう。

再び前方に蝶槍が姿を見せました。パノラマ銀山の通り道上にある小ピークでしか無いのですが、しかし見れば見るほどにかなりの存在感があります。

このまま蝶槍への登りが始まるのかと思いきや、もう一回間に鞍部を挟みます。なかなか勿体付けてくれます。

この辺りはあまり水捌けがよくないのか、水たまりが点在していて足元はぬかるんでいます。ここだけを見るとまるで東北地方の山のような光景で、花崗岩の岩場が主体だった常念岳の北側とでは明らかに成り立ちが異なっています。

ここでも1度しっかりと標高を落としたところで、ようやく蝶槍の本体へ取りつきました。ここが本日最後の登りとなるはずです。いっちょう気合を入れてまいりましょう。

この登りが意外としんどい。常念岳への登り返しで既に結構な体力を消耗しているからと言うのもあるかもしれませんが、それだけではなくここまでの小刻みアップダウンがじわじわとスタミナを削り取っていたようです。

だいぶ足が前に出なくなってきましたが、肩で息をしつつ何とか山頂の直下まで登ってきました。山頂部はちょっとした岩場になっているのですが、すでに写真を撮る気力もなくなっていたのか1枚も残っていませんでした。

15時20分 蝶槍に登頂しました。前述の通りここはただの通り位置でしかないピークなのですが、思いのほか防御力が高めでした。

背後を振り返ると、ここまで歩いてきた大天井岳と常念岳が並んで良く見えました。結構遠くまで歩いてきたものです。

南側には本日のゴール地点である蝶ヶ岳が見えています。この先にはもう大きなナップダウンもなく、緩やかな尾根が続いています。そうそう、こういうので良いんですよ。パノラマ銀座にエキサイティングなアップダウンは求めていません。

穂高連峰は相変わらず全く見えていませんが、雲間から陽が差し込んで天使の梯子になっていました。パノラマとは言えませんが、これはこれで神々しくて良い景色ではあります。

4.蝶ヶ岳にて歴戦の憩いの我が家を失う
ゴールに向かいましょう。蝶ヶ岳近くの稜線は、中心が陥没した二重山稜になっていました。これは尾根が谷に向かってずり落ちて行く過程で生じる地形です。

東西のどちら側にずり落ちているのかはよくわかりませんが、長いスパンで見ればこの光景はやがて大きく変わるはずです。
振り返って見た蝶槍です。蝶ヶ岳本体を食いかねないくらいにはインパクトのある姿をしてます。

梓川が流れる谷底にも、天使の梯子が下りていました。この谷の下流に上高地があります。明日はこの谷族に向かって下山する予定です。

横尾方面への分岐地点を通過します。最速で下山がしたい場合は、ここから下りるのが最も早いはずです。地図の等高線間隔を見た限りでは、かなり急勾配な道のようではありますが。

蝶ヶ岳の周辺はほぼ平坦で、気持ちよく歩ける稜線です。こんな終わり際になって急に優しくされても、困惑してしまいます。

16時10分 蝶ヶ岳ヒュッテに登頂しました。なんだかんだ農取門限を1時間間10分も超過してしまいました。そもそも歩き始めた時間が遅かったからと言うのもありますが、意外に歩きごたえがある道程でした。

蝶ヶ岳ヒュッテは三俣登山口の他に、上高地側からもアクセスしやすい立地であるため、テント場も大変人気があります。ただ本日は平日である上に天気も芳しくはないため、至って空いていました。

と言うわけで広々としているど真ん中にテントを張ったわけなのですが、まあこれが大失敗でした。

テントを張った時点では大した風も吹いていなかったので、あまり真面目にペグを打たなかったのですが、真夜中になると大荒れの天候となりました。
過去に劔沢キャンプ場でテント泊をした時には、台風直撃でもビクともしない抜群の耐候性能を見せてくれたエアライズでしたが、それは大真面目にペグを打って岩で覆っておくなどの対策をしっかりとしていたからでした。
長年苦楽を共にしてきた憩いの我が家は、この日にその生涯を終えることになりました。
5.長塀尾根を足早に下る
明けて9月18日 6時20分
動揺のあまり写真も撮りませんでしたが、荒れた1夜を何とか潰れずに耐え抜いた我が家は、見るも無残な状態になっていました。ポールはひしゃげて変形し、フライはちぎれてポール受けのナイロンには穴が開いていました。

1夜でゴミになってしまった我が家を撤収しつつ、出発の準備をします。縦走の途中ではなく最終日だったのは不幸中の幸いでした。さらばエアライズ。今まで長いありがとう。
ここでアライテントの名誉のために一言付言しておくと、壊れてしまったのは真面目にペグ打ちをしなかった私の失態であって、エアライズの耐候性能自体は極めて優秀です。壊れはしても潰れなかったことが何よりもその証左と言えます。
ひとまず雨は止んでくれましたが、天候は依然として荒れています。本日はもう下山するだけなので、特に問題はないでしょう。

下山を開始する前に、一応は蝶ヶ岳の山頂を踏んでいきましょう。テント場からはそれこそ5分あれば登れる距離にあります。

と言うことで蝶ヶ岳に登頂しました。完全なる虚無の世界に中にありましたが、ここには以前日帰りで登ったことがあり、山頂からの展望はその時にしっかりと見ているので、特に大きな落胆はありません。

そんなことよりも、我が家が壊れてしまったことの落胆の方が遥かに大きくて、呆然としております。いかんいかん、切り替えて行かねば。
6時50分 暴風の吹き荒れる山頂を辞去して、下山を開始します。下山ルートは一番無難な長塀尾根を辿ります。大部分が樹林帯の尾根なので、荒天の影響はほぼないでしょう。

再び小雨がぱらつき始めましたが、樹林帯に逃げ込めば影響は無かろうということで、レインウェアの上だけを着込んだ状態で足早に下って行きます。

下り始めてほどなく、妖精の池と呼ばれている池があります。尾根上から雪渓が消えてからもうだいぶ経過した9月に入ってもなお、なみなみと水をたたえていました。

夏には池の周辺が一面のお花畑になるのですが、今の季節はもう枯草模様です。紅葉にはまだ少し早いので、9月中旬はやはり時期的には中途半端だと言わざるおえません。だからこそ空いているというのはあるのですがね。

鬱蒼とした針葉樹の森の中に入ってゆきます。この先はもう最後までずっと、展望のない森の中です。

このまま真っすぐに下って行くかのように見えた長塀尾根ですが、途中で一度登り返しが差し込まれます。まったく下山時における登り返しほど憂鬱なものはありません。登った分だけまた下らなくてはいけないんだよ。

憂鬱な登り返しと言う作業をこなすと、三角点が置かれたピークがありました。

7時30分 長塀山を通過します。長塀尾根と言う名所の由来にもなっているピークです。森に覆われていて展望は一切なく、ただの通り道と言ったところです。

長塀山を過ぎると、あとはもうひたすら下り続けるだけです。長塀尾根は全般的に傾斜が緩やかでたいへん歩きやすい尾根ですが、その分だけ横方向への移動距離が長めです。ひたすら単調な下りが続くので覚悟してください。

ここにきて頭上に青空が広がり始めました。出来れば山の上にいるときに、この状態になって欲しかったのだけれどな。

森の中に木漏れ日が差し込み始めました。このまま天気のV時回復なるのかと期待が高まりましたが、一時的なものでした。

後半はかなりの急勾配となります。反対向きに登る場合は、立ち上がりが一番キツくて後から楽になっていくタイプの尾根です。

北アルプスのメジャーな登山道らしく大変よく整備されてますが、一部崩壊している個所もありました。オーバーユースに整備が追い付いていない状況です。

途中をだいぶ端折りましたが、サクサクと足早に下まで降りてきました。

10時 徳澤園に到着しました。登山の領域はここまでで終了で、この先はもう世界的観光地であるKamikochiの領域となります。

6.雨の上高地を散策する
何はともあれ、徳澤園に来たからにはまずはソフトクリームを食べないことには始まりません。うん、相変わらず濃厚でとてもおいしい。

一休みしたところで、上高地に向かって行動を再開します。もう下山は終わったかのような空気が漂いますが、上高地バスターミナルまでは、まだあとおよそ7kmほど歩く必要があります。

ここでまたパラパラと小雨がパラつき始めましたが、気にするほどの雨脚でもないので、濡れるに任せたまま進みます。

ほぼ平坦で単調と言えば単調な道程なのですが、上高地の美しい光景を目にしながら歩けるので、特に無聊は感じ無いと思います。とは言っても、過去にそれこそ何度も何度も歩いている道なので、いいかげん食傷気味ではあります。

11時15分 明神館まで歩いて来ました。ここでバタバタと音を立てて大真面目に雨が降り始めたので、慌てて折り畳み傘を引っ張り出して差しました。

道が川のような状態となってしまうくらいには激しい雨が降っています。超軽量の小さな折り畳み傘なので、ザックや片腕が思いっきりはみ出していて、結局はずぶ濡れに近い状態になってしまいました。全くトホホな展開です。

12時10分 雨の中を小走り気味に駆け抜けて、河童橋まで歩いて来ました。

生憎な天気だと言うのに、河童橋の周辺は観光客で溢れかえっていました。何もこんな日にとは思ってしまいますが、普通はそうおいそれと予定変更はできないか。

私は結構直前になってから予定を決めるタイプの人間ですが、それは主に単独行動だからこそ出来ることではあります。
穂高連峰は相変わらず濃密な雲に覆われていました。これでは上高地の魅力が半減どころか9割減だと思うのですが、まあ言ってもしょうがないか。

全身濡れネズミ状態になっており、是が非でもひと風呂浴びて温まって行きたいので、バスターミナルには向かわずに上高地温泉ホテルを目指します。河童橋を渡って下流方向へ下って行った場所にあります。

12時30分 上高地温泉ホテルまで歩いて来ました。およそ私には縁遠そうな高級な宿泊施設ですが、日帰り入浴も受け付けています。

入浴客専用の入り口は玄関の右側にあります。泥まみれの薄汚い登山者を、高級な宿泊客から隔離するために入口を分けたに違いない。日帰り入浴の可能時間は午前と午後の部に分かれているので、到着時間にはご注意ください。

温泉に浸かって暖まり、乾いた服に着替えてすっきりしたのもつかの間。小さな傘をさしてバスターミナルまで歩いて行く過程で、あっという間にまた濡れネズミ状態に逆戻りしてしまいました。

13時45分 上高地バスターミナルに到着しました。風呂に入りたい。

大混雑のバスターミナルから新島々行きのバスに乗り込み、長い長い帰宅の途につくのでした。ああ、さすがに帰路では松本駅から特急に乗りました。普通ですか?いいえあずさです。

絶好の晴天に恵まれた縦走初日からは一転して、2日目と最終日は何とも締りの悪い2日間でした。何よりも憩いの我が家を失ってしまったことが痛手です。
本文中で触れましたがパノラマ銀座におけるハイライトと言えるのは、常念岳越えの区間であろうかと思います。前後左右のどちらに視線を向けても、名前通りの大パノラマが広がります。
人気があるのも当然で、それゆえに混雑することだけはいかんとも避けようはありません。華はありませんが、今回のように穴場の時期を狙うのも一つの手ではあるかと思います。
混雑に巻き込まれる覚悟があるのなら、北アルプスの絶景が広がる天空の縦走路へと繰り出してみてはいかがでしょうか。コース上にあるテント場はいずれも稜線上の吹きさらしの場所にあるので、テントを張る際にはくれぐれもペグ打ちを怠りなきよう、お気を付けください。
<コースタイム>
2日目
大天荘(6:45)-常念乗越(9:15~9:30)-常念岳(10:45~11:30)-蝶槍(15:20)-蝶ヶ岳ヒュッテ(16:10)
3日目
蝶ヶ岳ヒュッテ(6:40)-長塀山(7:30)-徳澤園(10:00~10:20)-明神館(11:15)-河童橋(12:10)-上高地温泉ホテル(12:30~13:20)-上高地バスターミナル(13:45)
最後に余談として。
いろいろと考えた結果、やはり私の人生にはどうしてもエアライズが必要であるとの結論に至り、後日にまた同じモデルを購入しました。最初に購入した当時の3倍以上の値段になっていて少々驚きました。山用テントって、今はこんなに高いんですね…
私があと何年テントを背取って山を歩き続けられるのかはわかりませんが、憩いの我が家を担いでの冒険はまだ少し続く予定です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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