新潟県新発田市にある二王子岳(にのうじだけ)に登りました。
越後平野の北端付近に立つ飯豊連峰の前衛の山です。麓の平野部から見た時に大変目を引く存在であることから、古くから農耕の神として信仰の対象となってきました。豪雪地帯にある山らしく山頂付近は森林限界を超えており、全方位に展望が開けています。
自転車を抱えて、遠路はるばる下越地方の名峰を巡って来ました。
2023年10月14日に旅す。
今回は日本海を見下ろす新潟県の山、二王子岳へと遠征してきました。全国区の知名度こそありませんが、地元では親しまれて良く登られている山です。山頂からの眺望はすこぶる良好で、中でもとりわけ飯豊連峰の眺めが秀逸です。
山頂にはいかにもSNS映えしそうな二王子岳のシンボル的存在である、青春の鐘なるものが設置されています。
登山口となる二王子神社へ乗り入れている、バスなのどの公共交通機関は存在しません。基本的に車の無い奴はお断りな山であると言えます。
車を待たない登山者だって、映える写真を撮っていいねをたくさん稼ぎたいのに!これは我ら車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーに対する明白な挑戦である。
そこで今回は折り畳み自転車を持ち込み、新発田駅から自転車でのアプロ―チを試みました。輪行登山と言う暗黒面を極めた私に、もはや不可能などは存在しないのです。
紅葉の最盛期にはまだ少し早いかと思えるタイミングでの訪問でしたが、山頂付近はしっかりと色付いていました。紅葉と展望を心行くまで満喫した、恐らくは誰の何の参考にもならないであろう、輪行による二王子岳訪問記です。
コース
二王子神社からスタートして二王子岳を往復します。累計の標高差はおよそ1,200メートルほどあり、概ね丹沢の大倉尾根往復と同程度の強度となる行程です
1.二王子岳登山 アプローチ編 自転車を抱えてゆく、下越地方への長き旅路
5時52分 JR東京駅
二週連続で東京駅よりおはようございます。早朝のまだ電車が比較的空いる時間帯とは言え、袋詰めにした自転車と言う大荷物を抱えて都心部に向かうのは、色々と神経を使います。
一度乗ってしまえさえすれば、後は終点まで寝ていれば良いだけなので気楽なものでZzzz
終点の新潟駅に着いたら、お次は特急いなほに乗り換えます。あらかじめ乗り換え切符と言うの買っておくと、ホーム上にある乗り換え専用改札からスムーズに移動できます。
特急いなほは新潟と秋田を結んでいる長距離路線で、乗車するのは鳥海山に登った時以来です。
新潟駅から目的地の新発田(しばた)駅までは大した距離ではありません。別に特急に乗らなくても良かったのですが、白新線の次の鈍行列車との乗り継ぎがイマイチで結構待たされることになるため、今回は奮発した次第です。
車窓に目指す二王子岳の姿が見て来ました。標高1,400メートル少々でしかない山なのですが、海に近い平野部にあるためかなり目立ちます。
8時44分 新発田駅に到着しました。新発田は新潟県北部の中心的な都市あり、米所としても名高い場所です。
しかし新発田と書いて「しばた」とは、何気に難読な地名ですよね。一見さんには絶対に読めないやつです。
ここまでは文字通りお荷物状態であった自転車を手早く組み立てます。登山口のある二王子神社までは、片道およそ15kmの距離です。・・・頑張ってまいりましょう。
2.逆風の中を行く二王子岳へのサイクリング
自転車にまたがり出発します。ルートは途中まで基本的に新潟県道202号線を忠実に辿ります。駅の周辺では道がクランクしていたりして、ちょっとわかり難い場所もあります。
市街地を抜けて加治川に架かる橋を渡ると、周囲はいかにも米所の新潟らしい田園風景に変わりました。
二王子岳を正面に望みながら田園を走る気持ちの良いサイクリングロード・・・と言いたいところなのですが、正面から結構な強さの向かい風が吹いており、意外に苦しい展開です。見ての通り吹きっ晒しなので、風の影響をモロに受けてしまいます。
普段乗っている通常サイズの自転車に比べて、向かい風の影響がより強く感じられます。小径車だとどうしたってトルクが小さくなるだろうから、抵抗の影響をより強く受けてしまうのだろうか。
二王子岳と書かれた案内標識が現れたところで、県道202号線を外れて左へ進路を転じます。
二王子岳本体に登り始める前に、小さな段丘の切れ端らしき場所を乗り越えます。車ならなんてことは無いのでしょうが、小径車にとっては結構な障害物です。というか、ここでもやはり向かい風がキツイ。
新発田駅から1時間程をかけて、ようやく二王子神社の入り口までやって来ました。サクッと抜けるつもりだった平野区間で既にだいぶお疲れ風味なのですが・・・。
ここからは先は山道となります。傾斜が緩いところでは自転車をこいで登り、きつくなったら降りて押します。
車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーとして、さらには異常限界アプローチ登山ガチ勢としての意地と誇りにかけて、二王子岳に屈するわけにはいかないのです。
特に通行止めの扱いにはなっていませんでしたが、路肩の一部が崩落していました。車でお越しの人は注意を要します。
登るにつれて徐々に道の傾斜度が増して来ましたぞ。この辺りはもう頑張らずに押して登りました。登山開始時刻が遅くなってしまいますが、いたしかたありません。
10時25分 だいぶヘロヘロになりつつ、ようやく二王子神社まで登って来ました。・・・どうだ見たか、これが令和最先端のSDGsだッ!(ぜーはー、ぜーはー)
さてここで、二王子神社まで自転車で登って来るつもりなどはサラサラないであろう大多数の公共交通機関利用者のために、二王子神社へアプローチするためのサステナブルでワイズスペンディングなソリューションを一つご提案しておきましょう。
新発田駅からタクシーでおよそ5,600円くらいだそうです。
登山者用の駐車場がありますが既に満車状態です。二王子岳の人気の程が伺えます。
自転車には駐車場脇の木陰に留守番を命じます。往路は散々でしたが、その分帰りではきっと楽が出来るはずです。
3.最初から登り一辺倒な二王子岳への道程
登り始める前から既にだいぶグッタリとしておりますが、ようやくここから本題が始まります。駐車場から登山口となる二王子神社へと向かいます。
二王子岳の中腹に立つ二王子神社です。農業の神として下越地方、中でもとりわけ阿賀野川北部の地域で信仰を集めて来た歴史ある神社です。創建当時の本殿は火災により失われ、現在の建物は昭和42年に再建されたものです。
10時35分 登山開始時刻としてはだいぶ遅くなってしまいましたが、ともかく出発します。神社から山頂まで往復の標準コースタイムはおよそ7時間です。少しばかり巻いて行かないと、日没時間に間に合いませんな。
いかにも神社の境内らしい、杉の巨木が立ち並ぶ道です。沢沿いに続いており、水の流れる音が心地よい空間です。
始めのうちは殆ど高低差もなく、何度か渡渉しながら緩やかに登ります。最後までずっとこの調子ならばよいのですが、これは来る急登区間の前のウォーミングアップでしかありません。
途中からは沢と道が一体化し、高尾山の5号路を思わせるような道で雰囲気や良しです。
しかしそんな癒しの時間は長く続きません。沢沿いを離れるなり、待っていましたとばかりに急登が始まりました。
沢沿いの区間が終わったところで1合目です。ここまでは文字通りウォーミングアップだと言う事なのでしょう。私はアプローチの段階で既に十分すぎるほど体は温まっていましたがね。
延々と階段の登りが続くこの光景は、まるで丹沢の大倉尾根のようです。山頂までの標高差が同じく1,200メートルほどなので、だいたいバカ尾根往復と同程度の強度であると考えて問題ありません。
杉林を抜けると、広葉樹の森の中に入りました。紅葉前線はもっと高い標高付近にあるらしく、まだ薄っすらと黄色味ががってきているだけの段階です。
二王子岳は紅葉が見事であると言う事なので大いに期待していたのですが、訪問の時期としては少しフライングであったかもしれません。
巨大な岩が散乱する中を縫うようにして登って行きます。白亜に輝くこの岩は、一目でそれとわかる花崗岩です。花崗岩の山は水をろ過する作用が強く、名水と呼ばれる水を生み出してる山はどこも大抵は花崗岩の山です。
二合目まで登って来ました。一号目からはかなりしっかりと登らされており、これが後8回続くのかと思うと、前途に軽く不安を感じる展開です。実は結構きつい山なのではなかろうかと。
二合目は水場になっており、花崗岩に磨かれた冷たくおいしい水がじゃぶじゃぶと大量に出ていました。二王子岳は水が豊富な山で、水場はこの先にも何ヵ所かあります。水の携行量については、そこまで神経質になる必要は無い山です。
二合目を過ぎると、道の傾斜度がさらに増して見上げる角度になりました。ここが序盤の頑張りどころです。気合を入れて参りましょう。
11時55分 急登を登りきったところで、一王子神社避難小屋に到着しました。
この場所が三合目です。疲労度的にはそろそろ半分くらいであってほしい気分なのですが、残念ながらまだ三分の一です。やはり結構きつい山なのではなかろうか。
アプローチの段階で既にだいぶ消耗してしまっていたからそう感じただけなのかもしれませんが、大倉尾根と同程度とは言えないくらいにしんどい登りであるように感じられます。
避難小屋の二階に入口がある辺り、冬の二王子岳がどういう場所なのかは何となく察しがつきます。なにしろ豪雪地帯の山ですからね。
三合目を過ぎると一時的に道の傾斜が緩んで、一時の安息のような水平移動の道になりました。こう言う場所でしっかりと呼吸を整えておきましょう。
陽当たりの良い場所では、チラホラと紅葉の色付きが始まっていました。この様子なら、もっと標高の高い一帯には期待が出来そうかな。
再び始まる無慈悲な階段地獄。基本的に最後までずっとこの調子で登り一辺倒です。
四合目まで登って来ました。特に何かがあると言う訳でもなく、ただの坂の途中にポツンとありました。
4号目付近の区間は景色もこれと言って変わり映えせず、土嚢の積まれた階段をひたすら延々と登らされます。この辺りはひたすら我慢のしどころです。
12時30分 独標と呼ばれている994メートルのピークまで登って来ました。ここが5合目地点です。時刻は既に正午を回っているると言うのに、いまだに中間地点をウロウロしていることに軽い不安を覚えます。
4.紅葉の中を進む後半戦
五合目を過ぎて以降も、相変わらずの階段地獄が続きます。一見代り映えのしない光景ですが、周囲の森の木々が徐々に色付き始めていました。
このまだ色付き始めの柔らかい色合いが実に良いですね。こうて周囲の景色が色鮮やかになってくると、自然とテンションも上がって来ようと言うものです。
豪雪地帯の山特有の、雪の重みに負けて横向きに延びた木々の姿が目立ってきました。そろそろ森林限界高度に近づきつつあるようです。
竹と書かれた謎の標識があらわれて、実際に竹が置かれていました。現地ではこれは一体何なのだろうと不思議に思っていましたが、どうやらこれは積雪期に目印として登山道上に立るためのものであるようです。
時刻が13時を回ったところで、ようやく6合目に到着しました。周囲に背の高い木は無くなり、頭上が大きく開けました。冬には、この辺りはもう完全に雪の下に埋まってしまうのでしょう。
ここまで登って来て、ようやく山頂らしき場所がお目見えました。うーん、まだまだ結構遠そうですな。
山頂の周囲は完全に紅葉しており、みごとな錦模様となっていました。訪問のタイミングが少し早すぎたのではないかと懸念していましたあ、どうやらそれは杞憂であったようです。素晴らしい!
登山口からずっと登りが続いていまいしたが、ここに来て初めて少し下りました。小さな窪地の中を通り抜けます。残雪期にはここに池塘が出現するようですが、流石に秋にもなるともう干上がった状態でした。
窪地を通過すると再び登りに転じます。しかし紅葉のおかげで気分はすっかりと上向ており、あまり辛さは感じられません。登っている最中に感じる辛さと言うのは、多分にその時の気分による所が大きように思えます。
油こぼしと呼ばれている急登区間を登ります。花崗岩が露出した急斜面はクサリ場になっていました。特に難しい要素もなく、危なげもなく突破します。
油こぼしを登りきったところが7合目です。この時点で時刻は既に13時30分になっていました。このペースで日没前に下山出来るのだろうか。
ヘッドライトは持っているから別に問題ないと言えばないのですが、どちらかと言うと危惧しているのは自転車で山道を下る区間の事です。出来る事なら真っ暗になる前に通り抜けてしまいたいのですが。
急登区間は油こぼしまでで終ったらしく、傾斜がゆるんで気持ちよく歩ける道になりました。そうそう、こう言うのでいいんですよ。
お花畑と呼ばれている地点まで登って来ました。初夏にはニッコウキスゲやヒメサユリなどが咲きますが、秋には一面の草紅葉に覆われます。
今は干上がっていますが、見るからに池塘があったと思われる窪みが残っていました。今回は紅葉に合わせて訪問しましたが、花が咲く季節にも是非とも登ってみたいものです。・・・出来れば自転車以外のアプローチ手段で。
ここにも水場があり、涸れることもなく水が出ていました。秋になってもまだこれだけの水が蓄えられてると言うのだから、泥炭層のもつ保水力の大きさが良くわかります。
ここで展望が大きく開けて、日本海の大海原が見えました。良いですね、個人的にはこういう海が見える山が大好きです。
小さな谷に沿って登って行きます。ここにも僅かながら水流がありました。この上にもまだ湿原があるようです。
山頂らしき場所をようやく視界内に捉えました。なかなか奥行きの深い山でしたな。
山頂にあるかまぼこ型の避難小屋が見えます。なにも無理して日帰せずに、あそこに一泊する計画にすれば良かったのではなかろうか。そうすれば日本海に沈む夕日だって見られるだろうし。
続いて三王子神社なるものが現れました。そいえば三合目の避難小屋は一王子神社とか呼ばれていたっけか。山頂が二王子なのに、わざわざ数字を増やしたり減らしたりしているのはなんのためだろう。
特に社殿などがあるわけではなく、小さなお社だけがポツンと立っていました。
5.二王子岳登山 登頂編 飯豊連峰と日本海を見晴らす好展望の頂
三王子神社を過ぎると、いよいよ森林限界を超えて視界が開けました。山頂部はかなり広々としており、見事な錦模様に染まっていました。
南側の展望が大きく開けました。何分なじみの薄い山域であるため、見えている山がどこなのかはイマイチよくわかりません。
この一際目立っている山は蒜場山(ひるばさん)と言うらしい。調べてみると、二王子岳と同様に展望が良く、若干のアスレチック要素もある山であるらしい。
うーむ、これは登りたい山リストに書き加えるべき一座であるかもしれない。二王子岳以上にアプローチが厄介そうではありますが。・・・また自転車の出番か。
今度は干上がっていない池塘が残っていました。びわ池と呼ばれている池です。
頂上らしき場所まで登ると、アンテナがポツンと立っていました。
避難小屋であるかのようなカマボコ型の人工物がありますが、これは無人の雨量観測装置であるそうです。雨量と言うよりは、どちらかと言うと積雪量を調べているのでしょう。
山頂だと思ったていた場所には、奥の院と書かれた小さなお社がありました。ここにかつては二王子神社の奥の院が建っていたそうですが、今ではこうして台座だけが残っている状態です。
と言う事で、山頂はさらに少し先にありました。まったくこの期に及んで勿体付けてくれますな。
奥の院と山頂と間の鞍部に、二本木山への分岐があります。ここから往復でだいたい1時間くらいかかる距離であるようです。
二本木山へと続く稜線が見えます。ああ、いいですね。出来れば足を伸ばしたい所でしたが、本日もうだいぶ時間が押してしまっているので、ここを歩くのは諦めます。
東側には飯豊連峰の山並みが連なります。だいぶ以前より登りたい山リストの上位に名を連ねていながら、未だに訪問が叶っていない山々です。ああ行きたい、凄く行きたい。
見ての通り相当山深い場所にあるため交通アクセスが絶望的に悪く、最低でも3日以上のまとまった休日でもないと訪問が難しい場所です。
二王子岳の山頂に立つ避難小屋です。豪雪の山にある小屋らしく、冬の積雪にも耐える頑丈そのものと言った厳つい姿をしています。
14時5分 二王子岳に登頂しました。アプローチの段階で既にだいぶ消耗していたとはいえ、思いのほか苦労しました。気軽に登れる山では決してなく、意外と骨のある山だと思います。
6.二王子岳山頂からの展望
山頂からは文字通り全方位の展望が開けています。中でも東側の飯豊連峰の眺めが大変素晴らしい。二王子岳はまさしく、飯豊連峰を眺めるために存在しているような山です。
それでは皆さん準備はよろしいでしょうか。よければ叫びますよ。さん、はい!「飯豊はいいで~」
・・・はい、満足しました。
横に長い飯豊連峰の中でも特に目を引くのが、最高峰の大日岳(2,128m)です。その極めて宗教色の強い名称からも察せられる通り、古くから信仰の対象となって来た霊山でもあります。
ちなみに飯豊連峰の主峰である飯豊山(2,105m)は、このピョコっと見えているピークです。飯豊連峰の表の顔と言えるのは福島県や山形県側から見た時の姿であり、二王子岳からの眺めはどちらかと言うと裏側であると言えます。
北側の展望です。ちょうど正面に朝日連峰が見えるはずですが、こちらは雲が多めで少々残念な状態でした。
ああちなみに、朝日連峰についても登りたい山リストの上位にランクインしていますが、飯豊山と同じく絶望的なまでの交通アクセスの悪さに阻まれてこちらも未踏です。
登りたい山が多すぎて休みが足りない。まったく足りない。
西側には日本海。私は太平洋側の民なので、普段あまり目にする機会の無い日本海を見ると、何故か妙にテンションが上がります。
南西方向の眺めです。越後(新潟)平野と日本海の先に佐渡島が浮かんでいます。あまり意識したこともありませんでしたが、佐渡島ってこんなに大きな島だったのですね。
遠路はるばる訪れただけの甲斐がある、大変すばらしい眺望でした。名残惜しくはありますが、だいぶ時間も押しているのでそろそろ下山に移りましょう。
7.二王子岳登山 下山編 日没時間が迫る中をスピード下山する
14時35分 山頂を辞去して下山を開始します。流石にこの時間ともなると、周囲には人影もなく静まり返っていました。
西に傾き始めた太陽がびわ池に映り込んで、ダブル太陽状態になっていました。この陽が沈んでしまう前に、神社までたどり着けるだろうか。
下界の田園地帯が良く見えています。帰路もあの中を自転車をこいで帰らなければなりません。やはりどう考えても、東京から日帰りで登りに来るべき山ではないんだよな。
二王子岳で唯一の危険地帯であると言えないこともない油こぼしを、慎重に通過します。下りではしっかりとクサリと使った方が安定します。
あとはひたすら階段を下るのみ。まあようするに、バカ尾根の下山みたいななものです。
15時40分 五合目の独標まで下って来ました。これで残りあと半分です。
いいかげん日没時間も迫って来ていたため、この先はほとんど写真も撮らずに、黙々と下山と言う作業に取り組みました。
16時50分 と言う事で後半をだいぶ端折りましたが、なんとか真っ暗になる前に二王子神社まで戻って来ました。
神社から駐車場へと戻る道すがらに、迷彩服を着込んで完全武装している3人組とすれ違いました。これからサバゲ―のナイトゲームでもするのだろうか。それにしてもえらく本格的なような。
そんなことを考えつつ駐車場に戻ってくると、あれだけ停まっていた登山者の車は一台も残っておらず、かわりに自衛隊の高機動車が停まっていました。サバゲーではなく本物だったのか。
近くに陸上自衛隊の新発田駐屯地があるので、そこの隊員がこれから夜間訓練を始めるところなのでしょうか。
何が始まるのか興味津々ではありましたが、邪魔をしてしまうのもなんなので速やかに撤収します。
往路ではあれほどヒイヒイ言いながら登った山道も、帰路では蓄えられた位置エネルギ―を開放すればよいだけなのであっという間です。夕闇に包まれつつある中を疾走しました。
山の中にはほとんど街灯がなく、自転車のライトだけではだいぶ心許ない状況です。段差があったら普通にひっくり返りそうなので、ここは徐行気味に進みます。
県道まで戻ってくると、しっかりと街灯が灯っていました。朝から風向きは変わっておらず追い風になったおかげか、ここから先は往路での苦労が嘘のように快適なサイクリングとなりました。
18時10分 快調に飛ばして1時間少々で新発田駅まで戻って来ました。小径車のサイクリングは、風向きによっては天国にも地獄にもなりえると言う事ですね。よく覚えておくことにしましょう。
再びお荷物となった自転車を抱えて、長い長い帰路に就くのでした。自分でやっておきながら言うのなんですが、やはりだいぶ無理のある行程でした。
遠路はるばる敢行された輪行による限界アプローチ登山は、こうして成功裏の内に幕を下ろしました。
この山にわざわざ自転車でアプローチしようとする好きが世の中にどの程度存在するかは疑問ですが、二王子神社までの標高差は300メートル程度とそこまで大きくは無いので、十分に現実的ではあります。
公共交通によるアクセスには難がありますが、二王子岳が持つポテンシャルは相当なものでした。山頂からの展望は素晴らしく、季節によって花や紅葉も同時に楽しむことも出来ます。遠方から手間をかけてでも訪れるだけの価値がある、文句なしの秀峰であると思います。
そして谷向かいから眺めたことにより、飯豊連峰に対する憧れの念がより一層強まった山行きでありました。出来れば初夏の花の季節に歩いてみたいのですが、来年こそ行けるだろうか。
<コースタイム>
二王子神社(10:35)-避難小屋(三合目)(11:55)-独標(五合目)(12:30)-三王子神社(13:45)-奥ノ院(14:00)-二王子岳(14:05~14:35)-独標(五合目)(15:40)-避難小屋(三合目)(16:00)-二王子神社(16:50)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
車も買えない貧乏人環境意識高い系のためのサステナブルでワイズスペンディングなソリューション。とても参考になりました。このまま暗黒系登山の覇者として精進されることを心から願っております。
で、次は守門岳、それともトンネルから登るという未丈ヶ岳ですか?
(あ、個人的には飯豊や朝日を先に読みたいと思います。できれば和賀山塊とかも)
たまのみすまるさま
コメントをありがとうございます。
誰も聞いたことが無いような山の名前を並べて人を暗黒面に誘うのはやめてください!あまりこうした異常限界アプローチ登山ばかりを紹介していると、大多数の読者様を置き去りにしてしまいかねないので、ネタ回としてたまに挟んで行きたいと思っております。和賀山塊はとても良さげですよね。・・・近づくだけでも一苦労しそうですが。
こんばんわ
横井と申します。11/14の二王子岳の山行記拝読しました。実は日頃からブックマークしていて参考にしていますが、何と同じ日に登っていたと知ってびっくりしました。私は二本木山を往復して二王子岳に戻った所で、赤い登山者が後から登ってきたのを覚えてます。多分、山頂には二人くらいしかいなかったと思うのですが、そのうちの一人が私です。私は青いリュックでした。
下山は自分が先でしたが、途中で抜かれました。登山口に着いた時に自転車で颯爽と帰途についているハイカーを見かけました。まさかいつも読んでいるブログの主様とは露知らず。
毎度分かり易い山行記で写真も沢山あるので面白いです。
多分こういうニアミスはそうそうないのでいきなりコメントさせて頂きました。
横井さま
こんにちわ。コメントを頂きましてありがとうございます。
白い帽子を被っていた方でしょうかね。私は時間の関係で二本木山までは足を伸ばせませんでしたが、紅葉は最高潮だったのではないでしょうか。
またいつでも、気軽にご訪問ください。