埼玉県の小川町、東秩父村および寄居町を巡る外秩父七峰縦走ハイキング大会に参加しました。
秩父盆地を取り巻いている山地の東側に位置している、外秩父山地の7座を巡るハイキング大会です。さほど標高差が大きくはない低山の連なりながらも、全長がおよそ42kmにも及ぶコースを一日で歩く過酷な行程の大会です。
「自分ならやれる」と言う謎の自信を持って挑んだ大会で待っていたのは、前評判に違わぬひたすら長い道程でした。
2022年4月17日に旅す。
2022年に開催された、第三十五回外秩父七峰縦走ハイキング大会に参加してきました。昨年と一昨年はコロナ渦により中止となっており、今年は3年ぶりとなる開催です。
外秩父七峰と称されている山は具体的に言うと、官ノ倉山(344m)、笠山(837m)、堂平山(876m)、剣ヶ峰(876m)、大霧山(766m)、皇鈴山(679m)および登谷山(668m)です。
この七峰のうち笠山、堂平山および大霧山の3座については、比企三山とも呼ばれています。秩父盆地を取り囲んでいる山域の東側に位置している山域です。
外秩父七峰縦走ハイキング大会は、この7座を含む山並みを縦走する大会です。全行程のおよそ半分近くは舗装道路歩きとなりますが、全長がおよそ42kmにも及ぶ過酷な大会です。
トレラン大会ではなくあくまでもハイキング大会なため、走ることは禁止されています。42kmの道程を制限時間の12時間以内に踏破する必要があります。
流石に最後の方は失速してだいぶヘロヘロになりましたが、それでも脱落することは無く何とか完歩してきました。過酷であると評判のハイキング大会に参加してきた一日の記録です。
コース
小川町役場に設けられた大会の受付からスタートし、外秩父七峰にあるチェックポイントを巡りつつ寄居町まで歩きます。全長およそ42kmのコースです。
1.タフガイと呼ばれるような男に私はなりたい
唐突ですがみなさま。あなたは今現在、子供の頃に思い描いていた「なりたい理想の自分」の姿になれていますか?
人間は誰しも大概は、なりたいと願うなんらかの理想の自分像が存在しているものだろう思います。かく言う私にも、思い描く理想の自分像はしっかりと存在していました。
雨にも負けず風にも負けず、夏の暑さにも冬の寒さにも負けない丈夫な体を持ち、いかなる状況においても決して機嫌の良さを失わず、苦境を豪快に笑い飛ばし余裕の表情で歯を見せて笑ってのける男。
そう、私はずっと、タフガイと呼ばれるような男になりたかったのです。
そもそもタフガイとはいかなるものなのか。具体的にタフガイになるために必要であると思われる要件を整理しましょう。まずタフガイたるものは、1にも2もタフであることが当たり前の大前提です。
別にイケメンである必要などは全くなく、何ならハゲていても全く問題はありません。
良くわからない前口上となりましたが、ある日私はコロナ渦で2年連続中止となっていた外秩父七峰縦走ハイキング大会が、今年は開催されると言うニュースを目にしました。
この大会の存在は以前より認知はしていたものの、正直あまり興味が湧かず、今まで参加したことはありませんでした。しかし、1日で42kmを踏破とはまたえらくタフな大会ですよね。タフな大会かー。うーん・・・
ぼんやり考えているうちに、いつの間にか私は大会へのエントリーをつつがなく済ませていました。
まあ、あれだ。42kmもの山道を歩き終えた後になおも余裕の表情で笑って見せれば、それはもうタフガイであると言っても差し支えが無いんじゃないでしょうか。
大会のおよそ1週間前に、記録カードとゼッケンが郵送で送られてきました。ゼッケンには参加番号と名前の他に、目標を書く欄があります。シンプルに「完歩」であるとか、あるいは「行けるところまで」等と書く人が多いようでした。
私はここに「No Guts No Glory」と書き込みました。米国人が好むスラングで、意味するところは「根性なしに栄光なし」です。いかにもタフガイが好みそうな標語でしょう?
さて、私は基本的に登山に限らずレジャー行為全般に対しては、楽しんでこそナンボであると考える生粋のエンジョイ勢です。おおよそスポーツマンシップと言うものをまるで持ち合わせていない人間であると言えます。
そのためトレラン大会のような競技的な登山には一切の興味がなく、ゼッケンをつけて歩くような大会に参加するのは今回が初めての経験です。
それがなぜ今回に限って参加してみようという気になったのかと言うと、公式サイト上に「外秩父七峰縦走ハイキング大会は競争ではありません。楽しく歩いて、自分の脚力を自分で判断する大会です。」とうたわれていたからです。
それならば参加してみようかなと。
とは言っても、無計画で闇雲に突撃して何とかなる様な大会では決して無いのもまた事実です。相応の準備だけはしっかりと進めておく必要があります。
従来ですとコース上の要所ごとにはエイドが設けられており、水や食べ物はそこで補充できます。そのため、持ち物は極力減らして軽量化を図るのが基本です。
ですが本年度の大会ではコロナ渦での開催と言う事もあり、大会の主催者側ではエイドを設置しないと言う注意書きが添えられていました。となると、必要な水と行動食は全て自分で担いで行くしかありません。
水に関しては、途中の堂平山や定峰峠に自動販売機があるはずなので、それを当てにして携行量は1Lとしました。あとは歩きながらでも食べられる高カロリーの行動食を多めに持ちます。
舗装路歩きが長いので靴はローカットシューズが推奨されていますが、靴は軽さよりも履きなれていることの方が重要であろうと考えて、結局はいつものローバーチベットを履いて行きました。
片側だけで1kg近くある革製のハイカットシューズです。重いですね、はい。
大勢が参加する大会であるため、接触事故を避けるためにストックの使用は禁止です。
そしてもう一つ余分な重量物の代表格と言えるのがカメラです。普段の山行きでは重くかさばるフルサイズ機を抱えて歩いていますが、今回は流石に妥協して持って行くのは小型のマイクロフォーサーズ機にしておきます。
F2.8通しのレンズを付けている時点で、妥協したも何もあったものではないのかもしれませんが・・・
ともかく準備は整いました。さあ、あとはひたすら歩くのみです。
2.八王子で前泊して、始発電車で小川町役場へ
4月16日 19時 八王子
外秩父七峰縦走ハイキング大会の受付があるのは、小川町の役場前です。自宅最寄りの京王線の駅から始発電車を乗り継いでいった場合、小川町駅に到着するのは最速でも7時を過ぎてしまいます。
大会には制限時間があることから、可能であれば受付開始時刻よりも前に現地入りしたいところです。そのため本日は、八王子に前乗りします。
駅からほど近い格安のビジネスホテルで前泊します。本当は現地の小川町付近で前泊するのが一番良いのでしょうけれど、考えることは皆同じと見えて、会場付近の宿はすでに軒並み満室でした。何しろ3,000人近くが参加すると言う大会ですからね。
明けて4月17日 4時35分 JR八王子駅
駅前の24時間営業のファーストフード店でしっかりと朝食をとり、八王子駅へとやって来ました。
4時45分発の八高線の始発電車に乗車します。この電車に乗りたいがために、わざわざ八王子に前泊した次第です。
高麗川で高崎行きに乗り換えます。目的は同じであると思われるハイカーの集団が大挙して乗り換え、車内はほぼ満員になりました。
6時小川町駅に到着しました。駅のトイレは激しい争奪戦が繰り広げられます。用は事前に済ませておきましょう。
大会受付のある小川町役場は、駅からは少し離れた場所にあります。当日は自然と人波が出来ているため、ついて行けば問題ありません。
会場には既に受付待ちの大行列が出来上がっていました。受付開始は6時30分からと言う事になっているのですが、前倒しで既に始めているようです。
何はともあれともかく行列に並びましょう。42kmも山道をほっつき歩こうとするのは、ごく一部のもの好きだけだろうかと思いきや、意外に盛況なようで驚きです。
参加者の応募者数が3000人に達した時点で募集を打ち切ると言う告知がされていましたが、はたして何人がエントリーしているのでしょうか。
結局15分程並んで、6時20分に受付となりました。ゴールの受付時間は18時30分までなので、42kmを12時間40分で踏破する必要があります。
単純計算すると、平均速度3.4kmのペースを維持する必要があります。登り坂の区間では当然それ以下のペースになるでしょうから、途中の舗装道路を歩く区間で積極的にコースタイムを巻いて行く必要があるわけです。
受付を済ませると、コースマップとマップケースが配布されます。このマップは、できればゼッケンと一緒に事前に送付しておいてもらえるとありがたかったのですが。
3.序盤の足慣らし官ノ倉山
歩き始めは普通に街中の道を進みます。参加者はみな時間に余裕が無いと言う事をよく承知しているらしく、始めから結構なハイペースでどんどん進んで行きます。
私自身、42kmを歩き切るスタミナに関しては正直あまり心配はしていません。それくらいなら行けるだろうと、何故か根拠もなく楽観視しています。それよりも危惧しているのはスピードです。
普段の私は写真を撮りながらゆっくりと歩く山行きスタイルで一貫しており、長距離歩行にはある程度の自信を持っているものの、速く歩くことに関しては全く自信がありません。
各所に設けられているチェックポイントには通過期限時刻が定められており、その時間を過ぎてしまうと強制リタイアとなります。本日はとにかく撮れ高よりも、歩行速度を維持することを意識しなければなりません。
この後に登ることになる七峰の一つの、笠山が良く見えました。通称おっぱい山と呼ばれている山ですが、この角度からだとあまりそのようには見えませんな。
そんなにしっぽをピンと立てちゃって、君も大会に参加するのかい?
八幡神社と銘打たれた鳥居をくぐって進みます。なかなか山歩きは始まらず、ダラダラと舗装道路歩きが続きます。
終いには山に登るどころか、下り坂になりました。七峰1座目の官ノ倉山と言うのは、一体どこにあるのでしょうか。
30分以上歩き続けて、ようやく登山道らしい土の道がはじまりました。それでは張り切って行ってみましょう。
と思ったら、小さな段丘の切れ端を横断しただけで、また舗装道路に戻ってしまいました。なかなか勿体付けて来ますな。
道中にトイレがありましたが、待ち行列が出来上がっていました。この後に通ることになる道の駅に大きくて立派なトイレがあるので、よほどの緊急事態でもない限りここはスルーした方が良いと思います。
トイレを過ぎたところで、ようやく官ノ倉山の登山口に到着しました。今度こそ登山開始です。
実に里山らしい杉の植林が広がる山です。官ノ倉山の標高は300メートル少々しかなく、言ってみれば七峰のウォーミングアップ担当のような存在です。
ただの樋にしか目えませんが、不動の滝と銘打たれていました。これは滝・・なのだろうか。
登山道に渋滞が発生していました。まだスタートしたばかりであまり人がばらけないため、官ノ倉山は七峰縦走コースの中でも最も激しく渋滞の派生するポイントです。焦ってもしょうがないので気長に参りましょう。
一番激しく渋滞が発生している場所はクサリ場になっていました。特に手を使わなくても全然登れるレベルです。
クサリ場を通過してすぐに、頂上らしき場所が見えて来ました。おや、もう着いたのかな。
と思ったら、官ノ倉山ではなくその手前の石尊山と言うピークでした。この山は七峰には数えられていません。
官ノ倉山は石尊山のすぐ隣にあるのですが、何故かコースは山頂を通らずに脇を巻いています。おや?七峰すべての頂を踏まなかったら、それは縦走とは言えないのではなかろうか。
コースを外れて山頂を往復してこようかと逡巡するも、思い直してこのまま進みます。何しろこちらは初めての七峰縦走なのですから、体力の消耗に繋がる余計な事はすべきでないと判断しました。
と言う事で、ピークハントはせずに下山に移ります。下りでもかなりの渋滞が発生していました。
7時45分 山頂からは大きく下ったところで、官ノ倉山のチェックポイントに到着しました。スタート地点からここまでは5.1kmあり、1時間15分で踏破しました。
スタッフに記録カードを渡してハンコを押してしてもらいます。この押印が途中で一つでもかけていると、最後にゴールしても完歩とは認められませんので、素通りしてしまわないように要注意です。
4.縦走路中で最も厳しい登りが続く、笠山への道程
官ノ倉山は他の6座とは尾根沿いに繋がってはおらず、一度完全に下山します。現時点はまだまだ序の口であり、2時間ものB級アクション洋画に例えるなら最初のカーチェイスシーンが終わったくらいの段階です。
再び長い舗装道路歩きが始まります。道中に特に見所もないので、スパッと省略します。
8時25分 道の駅和紙の里ひがしちちぶまで歩いて来ました。ここにチェックポイントはありませんが、途中で買い出しの出来る七峰縦走における重要なエイドステーションです。
今回エイドは設けていないと言う説明でしたが、それは大会主催者側では用意しないと言う意味であったらしく、しっかりと飲み物や軽食が販売されていました。
なんだ、それなら行動食を全部担いで来る必要はなかったじゃないですか。おっ、バナナが安いな。
あれが安いとかお得とか、そんな井戸端会議のような事柄はどうだって良い。そんな事よりも、タフガイがすべき会話とは、筋肉とか爆発の話だろう。
と言う事で(?)立ったままプロテインを補充したら、休憩せずに行動を続行します。
ここから笠山の登山口がある萩平まで、ひたすら長い林道歩きが続きます。景色も単調で、全行程で一番気が滅入ったのはこの区間でした。
林道を進み続けても目的地には到達しますが、途中で少しだけショートカット可能な登山道があります。ここは当然、登山道へ進みます。
ひたすら林道を登り続けた先の山中に、小さな集落がありました。萩平と呼ばれている地区です。
沿道は花が咲き誇り春爛漫です。立ち止まってゆっくりと鑑賞する余裕が無いのが残念でならない、長閑な里山の光景が広がっていました。
9時40分 笠山登山口に到着しました。ここからようやく本格的な登山の領域となります。
この先は過去に比企三山を縦走した際に一度歩いたことがある領域であり、登山道の様子も良く知っています。笠山まではノンストップの急登が続くはずです。
この先も途中までは林道と登山道の好きな方が選べます。当然ながら登山道一択です。
登山道では再び渋滞が発生していました。林道の経由の方が若干遠回りにはなりますが、空いているので所要時間的には有利であるかもしれません。
なかなかの急勾配です。七峰縦走コースの中でも、最も登りがきついのはこの笠山の登りの区間です。気合を入れて参りましょう。
10時30分 笠山チェックポイントに到着しました。官ノ倉山とは違って、こちらのチェックポイントはしっかりと山頂にありました。
この時点でスタート地点から16.7kmを踏破しました。今のところ、特別早くも遅くもないペースで順調に進んでいます。
5.七峰随一の好展望地、堂平山と縦走路中間地点の白石峠
最初の休憩は次の堂平山でとると決めているので、辿り着いて早々はありますがすぐに下山します。
ここでも林道歩きと登山道経由が選択できます。当然登山道へと進みます。
10時50分 笠山峠に到着しました。笠山と堂平山の鞍部となる峠です。つまり、ここからは再び登り返しです。
と言っても、笠山の直下程の険しさは無く、せいぜい30分程度の登りです。一気に登ってしまいましょう。
登山道の脇にチラホラと春の妖精ことカタクリが咲いていました。当然ながらしゃがみ込んで撮影している余裕などは無いので、通りがけに上から撮影しました。
しかしいくら競争ではないと言っても、時間に追われる登山と言うのは、やはりあまり楽しいものではありませんなあ。
山頂に近づいて来たところで、一気に視界が開けました。この草原状になっているのは、パラグライダーの発着場であるようです。
森を抜けたことにより、展望が開けます。この後に歩くことになる、大霧山から登谷山に至る尾根が良く見えました。気が遠くなりそうになるこの距離感よ。
朝の青空が嘘の様に、どんよりとした空模様になってしまいました。ちなみに本日はこの後15時頃から、小雨がぱらつくと言う予報になっております。
11時10分 堂平山チェックポイントに登頂しました。ここでもしっかりと非公式のエイドステーション設営されて、軽食や飲み物が販売されていました。
この時点でスタート地点から18.4kmです。まだ半分ですらないんですね・・・
麓の桜はもうとっくに散ってしまいましたが、山の上ではまだまだ見頃でした。
この堂平山の芝生の上で、この日初となる腰を下ろしたまともな休憩を取りました。まだまだ先は長い。
11時25分 疲れが少しは取れたような、取れていない様な微妙な感じですが、行動を再開します。前方にアンテナの立っている山が見えていますが、この後あそこを越えて行きます。
堂平山からお次の剣ヶ峰の区間は、1kmと離れておらずあっという間に辿り着きます。
11時35分 剣ヶ峰チェックポイントを通過します。ここは山頂ではなく入口に設置されていました。堂平山から距離が近すぎて、イマイチ存在意義の感じられないチェックポイントです。
剣ヶ峰への登り返しは、距離こそ短いですがなかなかエグイ勾配の階段を登らされます。ここですっかりと打ちのめされ人の姿を多く目撃しました。まあ、いい加減疲れてくる頃合いですよね。
11時45分 剣ヶ峰を登っておりたしたところで、白石峠に到着しました。スタート地点からおよそ21km地点であり、ここが七峰縦走コースのほぼ中間地点となります。ようやく折り返しですか。
当初の見込みでは、12時頃にここを通過するつもりでいました。予定よりほんの少しだけ前倒し気味に進むことが出来ているようです。
6.大霧山を超えて、約束されしソフトクリームの地、秩父高原牧場を目指す
と言う事で、ここからが後半戦のスタートです。この先は下りが主体になるから、前半戦よりはずっと楽であるはずです。
峠からは再びエグイ勾配の階段地獄が始まります。さあ気合いを入れろタフガイ。No Guts No Gloryだ。
ここまで来るとだいぶ人もばらけてきて、官ノ倉山のような惨い渋滞は発生しなくなります。それでも、こうして急な場所には人だかりができます。
前を行く人のゼッケンの目標欄を読むと、「完歩」や「行けるところまで無理せず頑張る」等の常識的な目標の他に「ソフトクリームを食べるぞ」と書いている人がかなり多く目に留まります。
秩父高原牧場にある有名な高原ソフトクリーム屋さんのことを言っているのでしょう。やはり皆、楽しみにしているようですね。
せっかく頑張って登って来たのに、定峰峠に向かって大きく標高を落とします。縦走とはそういうものです。
12時30分 定峰峠に到着しました。ここには峠の茶屋があり、トイレや自動販売機もあります。道の駅和紙の里や堂平山の山頂と並ぶ、七峰縦走コースにおける重要なエイドステーションとなっている場所です。
長距離を歩く時のエネルギー補給には練乳が良いと以前に聞いていたいたので、ここで小休止がてらに練乳をチューブから一気飲みしたのですが・・・オェーッ!気落ち悪い。いくら何でも甘すぎるだろ。
だいいち、ミルク(練乳)をチューチューしながら歩くタフガイが一体どこの世界に存在すると言うのでしょうか。例えどんなに高カロリーで効率が良かろうと、練乳一気飲みは次回からは却下です。
桜がまだ残っており良い感じです。峠にはハイキング大会の参加者のみならず、多くの自転車乗りの姿がありました。
峠からは再び登り返します。この後しばらくの間、練乳ショックで胃がムカムカして気分が悪くなり、ペースダウンを余儀なくされました。タフガイらしからぬ振る舞い(ミルクチューチュー)をしたことに対するペナルティなのでしょうか。
13時15分 旧定峰峠を通過します。今の峠越えの林道が出来る以前の時代は、ここを越えて比企郡と秩父を往来していたのだそうです。
峠にはスタッフがおり、15時までにここを通過出来ないと強制的にリタイアとなります。
槻川を挟んだ向かいに、笠山の姿が良く見えました。ずいぶんと遠くまで歩いてきたものです。そして天気予報の通り、一雨降りそうな空模様になってまいりました。
大霧山の手前で大きく登り返します。ボチボチ疲労も溜まってくる頃合いであるため、この辺りが頑張りどころです。
13時45分 大霧山チェックポイントに到着しました。この時点で25.4km地点となります。さあ、残すところは後2座です。
大霧山の山頂からは、その残りの2座である皇鈴山と登谷山の姿が良く見えています。その手前に広がっている平坦な場所が秩父高原牧場です。今から通り抜けて行きます。
下りきった地点が粥新田峠です。ダイダラボッチが粥を煮たと言う伝説のある場所です。ここからは再び舗装道路歩きとなります。
秩父高原までやってくると、七峰縦走もいよいよ終盤に入った感があります。2時間ものB級アクション洋画に例えるなら、唐突にベッドシーンが入るあたりです。
やがて「牛の横断ありと」言う放牧的な珍しい看板が現れます。多くの参加者達が目標に掲げていた高原ソフトクリームの販売場は、ここにあります。
結構並んでいますねえ。先ほどの練乳ショックがまだ若干尾を引いていたのでパスしようかとも思いましたが、やはり思い直して列に並びます。
外秩父七峰縦走ハイキング大会に参加してソフトクリームを食べたと言う経験は、他に代替の効かない唯一無二の体験ですからね。無視するわけにまいりませぬ。
濃厚でおいしーい。
ソフトクリームを頬張りながら満面の笑みを浮かべるタフガイなんぞが、一体どこの世界に存在するんだと言う気がしなくもありませんが、美味しいから気にしないことにします。美味しいのは正義です。
歩道にあったベンチに座って、この日2度目となるまともな休憩を取りました。
7.最後の2座を制し、七峰縦走を達成する
14時35分 短い休憩を切り上げて、行動を再開します。しかしこの微妙な登り勾配の坂を早足気味に歩いていたら、再開して早々に足が攣りそうな感覚に見舞われて、しばしのペースダウンとなりました。
そろそろ足の筋肉が限界に近づきつつあるようですね。あまり大きな負荷をかけないように歩かなくては。
長閑な高原の光景を暫し楽しみます。本当はあまり楽しんでいる場合ではないのだけれど、しかしいかなる状況下にあっても余裕の表情を崩さないのがタフガイたるもの慎みです。苦しい時にこそ笑うのです。
この舗装道路歩きがまた、結構長くて途中でダレます。もっとも、一番最後の下山時には、さらに長い舗装道路歩きが待っていますがね。
15時ちょうどに二本杉峠を通過します。ここにもスタッフがおり、16時を過ぎると強制リタイアとなります。
とりあえずは制限時間の1時間前に通過することが出来たので、タイムオーバーによるリタイアの可能性はもうほぼなくなったものと考えて良さそうです。後はやりきるのみです。
皆野町との境界が現れたところで、ようやく登山道が再開しました。
割とあっけなく頂上が見えたと思いきや、これは偽ピークでした。この期に及んでこのような心折設計をぶち込んでくるとは、七峰縦走路はなかなか侮れません。
チェックポイントが見えてきたところで、ついにポツポツと雨粒が落ち始めて、危惧していたことが現実のものとなりました。レインを羽織るほどの雨量ではないので、一旦は濡れるに任せたまま進みます。
15時20 皇鈴山チェックポイントに到着しました。スタート地点から31.1km地点です。いよいよ30kmの大台に乗って来ましたよ。
皇鈴山は展望台があって見晴らしの良い山であるようですが、だいぶ雨脚が強まり頭上が開けた場所へは立ち入りたくなかったため、寄らずに素通りしました。
七峰最後の一座である登谷山は、皇鈴山からは1km少々しか離れていない場所にあります。
いよいよ最後の一座へと向かいます。ここまで来ると、周囲を歩く人々も流石に疲労の色がだいぶ濃くなってきている様に感じます。
例年ですとこの大会の完歩率は、だいたい5~6割くらいものであるとのことです。参加者の半数近くは、ここまではたどり着けずに途中で脱落していることになります。
最後の登り返しはさほど大きくなく、あっけなく頂上が見えました。
15時40分 登谷山チェックポイントに到着しました。スタート地点から32.2kmの地点です。これで無事に七峰縦走を達成しました。
達成感で満たされそうになる瞬間ですが、しかし残念ながらまだもうあと10kmほどの道程が残されています。家に帰るところまでが七峰縦走なのですから。
嬉しいことに、タイミング良く雨が上がりつつありました。これもすべては、私の日頃の行いの良さによる賜物に違いない。
8.何気に一番つらかった、寄居町への下山行
後は下山するだけなのですが、実はここからが正念場なんです。この先はゴール地点の寄居駅まで、およそ10kmほどの舗装道路をひたすら下り続ける必要があります。
少し下ったところに仮設トイレがありました。この時は特に我慢してはいなかったので、中は検めていません。
16時 釜伏峠を通過します。ここを過ぎるとルートは尾根上から外れて、麓の集落まで下って行きます。
この下りが何気にツライ。舗装道路の下りは、足の裏に地味にダメージを与えて来ますからね。2時間ものB級アクション洋画に例えるなら、拳銃を隙間に落としてしまい格闘シーンが始まる辺りです。
ここにもトイレがあります。先ほどの仮設トイレよりは、こちらの方が広くて快適だと思います。
最終チェックポイントの時点ではまだまだ結構余力が残っている感じがしていたのですが、この最後の下りで完全にノックアウトされました。最早惰性だけでヨタヨタと歩き続けているその姿は、寄居死の行軍状態です。
この先は特に見所もないため、またもやスパッと省略いたします。
八高線の踏切を渡ったら、いよいよゴールは目前です。
映画に例えるなら、タイガー戦車に向かってコルトM1911を打ち込んでいたら突如爆発し、そんなアホなと言う感じに上を見たら、上空を爆装したP-51Dが飛び交っているシーンのあたりです。
・・・なんか急に映画のジャンルが変わっていないか?アパム弾持って来い。
最後に荒川を渡ればゴールです。ああ、やっとこの下山の苦行が終わる。
なんとなしにぼんやりと荒川を眺める。・・・って、ここまで来て呆けてないで、さっさとゴールに向かいましょう。
17時45分 外秩父七峰縦走ハイキング大会を完歩しました。歩き始めてから11時間26分でのゴールでした。あー疲れた。
ゴールの受付をすると、完歩証と記念キャップを貰えます。完歩証は予め全員分が用意してあるらしく、参加番号を告げると名前入りのものがすぐに出て来ました。
そして、これまでずっと七峰の読み方は「しちみね」だと思っていたのが、実は「ななみね」であったことを帽子のローマ字表記で知りました。
私がゴールしたのは、ちょうどゴールする人が一番多いタイミングであったらしく、ゴール前には記念撮影待ちの行列が出来上がっていました。
当然私も並びます。余裕の表情をして見せたつもりですが、果たしてうまく笑えていただろうか。
ちなみにゴール地点があるのは、ベルクフォルテ寄居店というスーパーマーケットの駐車場です。駅からは少し離れています。と言う事で、寄居駅に向かって最後の歩行です。
今度こそ本当のゴールです。もっと混雑しているかと思いきや、意外と空いていて拍子抜けです。3000人から参加達は、一体どこへ消えてしまったのでしょうか。
帰りは東武線を利用しても良かったのですが、地味に乗り換え回数が多くて面倒だったので、往路と同様に八高線で帰宅の途に着きました。
42kmを歩くも歩いたりの一日はこうして無事に終了しました。初参加ながらも完歩することが出来ましたが、一回参加すればそれで充分かなと言うのが正直な感想です。
と言うのも、参加のエントリーして以来常に頭の片隅に「大会に備えてトレーニングになるようなロングルートを歩かなくては」と言う意識が一種の強迫観念のようにしてこびり付いていて、ここ最近の私の行動意思決定に少なからず影響を及ぼしていたからです。
例年ですと4月上旬の春の季節は、咲始めた花々を追い求めて近場の里山でゆる登山を楽しむことが多かったのですが、今年の春にはそれが一切ありませんでした。やはり私は歩く速さを追及するスピードハイクよりも、花や景色を眺めながらゆっくり歩く山行きスタイルの方が性に合っているようです。
一見すると非常識な距離のコース設定のようにも思える本大会ですが、標高差がそこまで大きくはなく、給水可能なエイドポイントやエスケープポイントも多くあることから、42kmと言う数字の印象から受けるほどには過酷ではありませんでした。普段からある程度のロングトレイルを楽しんでいる人ならば、恐らく完歩するのはそこまで難しくないと思います。
自身の健脚に自信ありの方は、腕試しならぬ足試しめしをするために一度参加してみては如何でしょうか。
<コースタイム>
小川町役場(6:30)-官ノ倉山CP(7:45)-道の駅和紙の里ひがしちちぶ(8:25)-笠山CP(10:30)-堂平山CP(11:10~11:25)-剣ヶ峰CP(11:35)-白石峠(11:45)-定峰峠(12:30)-旧定峰峠(13:15)-大霧山CP(13:45)-粥新田峠(14:05)-秩父高原牧場(14:20~14:35)-二本杉峠(15:00)-皇鈴山CP(15:20)-登谷山CP(15:40)-釜伏峠(16:00)-ベルク寄居店駐車場(17:45)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
いつも楽しく拝見しております。Twitter名sophiaで、フォローさせて頂いている者です。
記事を参考に、たくさん山登りさせてもらってます!
今回もまたとても面白く、”タフガイ”の満面の笑みのところで、つい吹き出してしまい(失礼!)ました(素敵です!痩せられましたよね!?笑)。
楽しい記事をありがとうございます。そうして長い道中ご苦労さまでした(かつて私はフルマラソンを何度か走ってるので、後半のしんどさは良くわかります、、)。
いよいよ登山シーズン開幕ですね。
今年も良き山行に恵まれますように。
ブログ、楽しみにしております!
sophiaさま
コメントをありがとうございます。
フルマラソンの経験があるのは凄いですね。あの距離を走り続けるなんて想像もできません。タフウィメンですね。
ちなみに、あの満面の笑みの写真は、全力で腹を引っ込めてる状態です。
オオツキさん、外秩父七峰縦走ハイキング完歩おめでとうございます!
日頃、マイナーエリアの破線ルート等をガンガン歩いている山行を拝見していますと、既に充分にタフガイを名乗って良いと思います!
都内在住なのに都内に前泊というのもなかなかできることではありません(^^)
MMさま
コメントをありがとうございます。
確かにわざわざ、自宅から1時間もあれば行ける距離の八王子に宿泊するのは、妙な気分でした。これも公共交通機関利用勢の宿命ですかね。
今よりもっとタフな山行きにチャレンジできるよう、引き続きヘンな山のヘンなルートを歩いて精進を重ねたい所存です。
最近オオツキ沼にハマっております笑
今回も何度か声をあげて笑ってしまいました!
練乳でオエ〜ッ!となっても、ほどなくしてソフトクリームは入るんだ…笑、それだけカロリー消費がものすごいって事ですね。
完歩おめでとうございます。
部分的に歩いた事のあるエリアだったので、そうそう!と懐かしく楽しく拝読しました。
また記事を楽しみにしております、タフガイ!
AKさま
コメントを頂きましてありがとうございます。
オオツキ沼なるものがこの世に存在していたとは驚きです。笑っていただけたようで冥利に尽きます。
・・・練乳一気飲みは本当にヤバかったです。糖分が飽和して、まるで二日酔いのような胃もたれ感でした。
コメが欲しいと言う事なので・・・
とある理由により、戸倉三山を検索していたらこちらに出会いました。
この大会、似たような理由により参加を躊躇っていましたが、友人に誘われて今回参加。
ほぼ同じタイムで完歩したので自分は写ってないかな・・・と探したらそれらしいのが一枚ありました。
「一回参加すればそれで充分」とのことですが、物好き系ハイカーを自認する貴殿であればきっと次回も参加すると勝手に信じています。
あ。私は参加しません。
U-leafさま
コメントを頂きましてありがとうございます。
かくいうU-leafさまも、戸倉三山を検索している時点で相当物好きな方であろうかと想像します。次回に七峰のどこかでお会いするかもしれませんね。楽しみにしております。
タフガイの心意気、本当に本当に素晴らしい!!!感動致しました!
そしてあの満面の笑み!ハリウッドスター並に心豊かな表情です。
見やすい、分かりやすい、コメントがユニーク。写真構図が整っている。
本当に充実された内容になっています。とても参考になります。ありがとうございます。
私は西武池袋線沿線入間市在住で、秩父方面が主になります。
早朝から秩父に入る事ができ、ほぼ誰にも会わず、孤独を楽しむ?事ができます。
爽快な稜線や眺望などなく、ひたすら地味な山歩きになりますが、絶好の自己反省の時間にもなります?!
秩父登山を増やして頂けますと私も参考になり、楽しいです♪
大変かとは思いますが、よろしくお願い致します。
ぴろきさま
コメントを頂きましてありがとうございます。
過分なお褒めの言葉を頂き恐縮です。ハイキング大会の翌日は極度の筋肉痛になり、1フロアを移動するのにもエレベーターを使用してしまいました。
そんな訳でまだまだ軟弱者です。真のタフガイを目指して精進いたします。