山梨県身延町にある三石山(みついしやま)から南部町にある思親山(思親山)までを縦走して来ました。
2座共に天子山地に属しており、富士川の東側に連なる山脈上に位置している山です。山梨百名山に選ばれてますが、訪れる登山者は極めて少なく、静かな山域となっています。車であれば比較的アクセスが容易な山ですが、公共交通機関の利用を前提とした場合、長き道程を歩むこととなります。
身延線の身延駅から井出駅へ、人影疎らなロングルートを縦断してきました。
2022年3月20日に旅す。
今回は地味な山梨百名山回です。山梨県南部の富士川の東に連なる山脈上に位置する、三石山と思親山に登って来ました。登山の対象としてはほとんどその存在を知られていない、極めてマイナーな2座です。
地元の人をのぞけば、恐らくこの山の存在を知っているのは、山梨百名山の完登を目指している人くらいなものであろうと思われます。
マイカー登山する人であらば、どちらの山も山頂に近い峠まで車で乗り入れることが可能であり、比較的容易に登頂することができます。また結構な距離が離れてはいるものの、尾根で繋がっており2座を縦走することも可能です。
マイカー登山をしない人である私は、当然この縦走を選択しました。そこには踏み跡と言えるものがほとんど存在しない、不明瞭な道が続いていました。
その距離の長さと道の分かり難さからして、この縦走コースは万人向けとは言い難いものとなっています。物好きな玄人向けと言える行程です。
終日に渡って晴れてはいるものの雲が多いピリッとしない天気でしたが、マイナールートらしさがあふれる静かな山行きを楽しんできました。
山梨百名山に興味が無い人にはまったく役には立たないであろう、丸一日を費やしてマイナーエリアを縦断してきた記録です。
コース
身延駅よりスタートし、三石山の登山口がある大崩集落まで舗装道路を延々と歩きアプローチします。三石山からは大島峠と佐野峠を経て思親山へ。
思親山からは東海自然歩道のルートに沿って井出駅へと下ります。駅から駅へと歩く、全長27kmほどのロングコースです。
1.序章 極めてコスパの悪い甲斐南部の山々
ここ近年、コスパと言う言葉が常用語として広く認知される様になりました。
コスパとはcost performance(コストパフォーマンス)の略で、日本語で言うところの対費用効果と言う言葉に相当します。まこと日本的に、もとの単語の読みを縮めて作り出した造語です。当然ながらこの言い回しは、日本以外の国では通じません。
私は正直このコスパと言う言葉が、あまり好きではありません。
言葉の響きそのものが貧乏くさいと言うか、「コスパ最高、神xx」とか言いつのっていると、おのれの性根までもがさもしくなってしまうような気がしていて、普段は意識してなるべくこの言葉そのものを使わないようにしています。
・・・なのですがまあ、オッサンが一人世界の片隅で「私はコスパと言う言葉が嫌いだ!」と叫んでみたところで、鼻で笑われるだけで何の意味もありはしません。ここは一旦我を捨てて、あえて普段は使わないコスパと言う言葉を使用して話を進めます。
純然たるレジャー行為であるところ登山に対し、コスパが云々と言うのも妙な話ではありますが、しかしその概念は確かに存在します。
ここで言うコストとは、単純に費用だけの話ではなく、山頂に到達するために必要な労力全般についてです。例えばこの山、みんな大好きな大菩薩嶺を見てみましょう。
都内からの交通アクセス良好にして、簡単に登れてかつ大絶景が広がる山です。おまけに日本百名山のブランドまで冠したこの山は、首都圏近郊の山の中でも際立って高いコストパフォーマンスを持つ山であると言えます。
言うまでもなく、こうしたコストパフォーマンスに優れた山はどこも人気があり、多くの登山者が詰めかけます。
そのため人混みを極度に嫌う一部の好事家たちは、静かな山を求めてあえてコスパの悪い山へと目を向けることになります。そう、この三石山のような山に。
この山は登るのにえらい苦労する割には、山頂には展望もなにもありません。まさに骨折り損のくたびれ儲け。だがしかしそれがいいのです。コスパが悪いが故に、静かなる山頂を独占できる可能性が大きい場所です。
私はいつか山梨百名山を完登した言う漠然とした思いを抱いており、これまでも折を見てはちょくちょくと山梨県へと出向き、未踏の山梨百名山に登ってきました。
そのため、交通アクセスが容易な場所にある山梨百名山については、もうあらかた登りつくしてしまった感があます。そろそろアクセス難を理由に先送りにしていたエリアへと、目を向けざるおえない状況になりつつあります。
中でもとりわけ厄介なのが、甲斐南部の静岡県との境界近くにある山々です。この富士川の下流域に点在する山々は、公共交通機関の利用を前提とした場合に、とにかくコスパが悪い。
基本的にアクセス手段は身延線を使うしかない訳なのですが、何度も出向いたのではコストばかりがかさむので、何とか効率よく巡る算段を立てる必要があります。
と言う事で今回はこの甲斐南部の山の中から、三石山と思親山の2座を繋げて一気にブチ抜きます。
2.三石山登山 アプローチ編 甲府に前乗りし、身延線の始発電車で身延駅へ
甲府駅前よりこんばんわ。今回の縦走計画は歩行距離が長く、行動時間が長くなることは避けられません。始発電車で行動を開始するために、本日は甲府に前乗ります。
三石山と思親山に登るためだけに前乗りまでする登山者と言うのは、はたしてどのくらい存在するのだろうか。こうしてまた、コストばかりが嵩んでゆく・・・
知らぬ間に、甲府の駅前にヨドバシカメラが出来ていました。店内で流れているテーマ曲がちゃんと「甲府のヨドバシカメラ♪」になっていました。芸が細かいですね。
格安のビジネスホテルで一泊します。まさに寝るためだけの必要最低限の空間ですが、それこそが我が意にかなうものであります。
つまり、格安ビジホはコスパ最高で神だと言うことです。ついさっき、その言葉は嫌いだって言ってなかったか?
明けて3月20日、4時50分。武田信玄に朝のご挨拶を済ませて、本日の行動を開始します。
甲府の駅前には24時間営業のコンビニが複数件あるため、出発直前に買い出しできます。何しろ行動時間が長くなる見込みであるため、行動食を気持ち多めに持ちます。
この野沢菜のおにぎり、地域限定であると言う事ですが、東京でも販売してくれませんかね。あまり需要は無いのでしょうか。
5時14分発の身延線の始発電車に乗車します。こので電車に乗りたいがために、前乗りした次第です。
甲府ではなく身延に前泊しても良いのですが、身延には甲府駅周辺ほどには格安ビジネスホテルの選択肢がありません。コスパを重視した結果このようになりました。
・・・またコスパと言う言葉を使ってしまいましたよ。いざ使い始めると、確かに便利な言葉ではあるんですよね。
6時35分 身延駅に到着しました。ここは有名観光地の最寄り駅な訳ですが、流石に朝一番の電車に乗ってくる人は少数派であると見えて、周囲は閑散としていました。
3.大崩集落への長いアプローチ
駅前で軽い腹ごしらえと身支度を整えて、6時45分に行動を開始します。まずは登山口のある大崩集落まで歩いて行きます。
駅前の謎のマスコットキャラクターに挨拶を済ませて出発します。
富士川の対岸に、朝日を浴びる身延山(1,153m)の姿が良く見えました。日蓮宗の総本山である久遠寺がある、全国区の知名度を持つ山です。
それに比べて、我らが三石山の存在を知っている人と言うのは、はたしてどれくらい存在するのだろうか。
桑柄川という小さな川を渡る橋の手前で右折して、身延線の踏切を渡ります。
すぐに三石山の道標が現れました。この先は基本的に道なりに進めばよいだけですが、ひたすら長ーいアプローチなので覚悟してください。
中部横断自動車道の巨大な橋脚の下を潜ります。この高速道路は中央自動車道と東名高速道路とを結んでいる南北路線で、富士川に沿ってほぼ身延線と同じルートを辿っています。
どうやら道の舗装がしっかりとしているのは、中部横断自動車道の建設時の工事現場までであったようで、すぐに路面の荒れたすれ違い困難な1車線の山道に変わりました。
この先にも人の暮らす集落が存在するはずなのですが、この荒れ気味な道が生活道路だと言う事なのでしょうか。住むだけでもなかなかスリルのありそうな場所です。
この山道歩きがひたすら長い。登山口まではだいたい1時間30分くらいかかります。ちなみに身延のタクシーは、すれ違いが困難だと言う理由でこの道には入ってくれないそうです。
振り返ると、背後に七面山(1,989m)の姿が良く見えました。ナナイタガレと呼ばれる大きな崩落地が印象的です。
その名も大崩集落です。名前からしてヤバイ場所である感じしかしない場所です。この大崩地区を源頭とするの桑柄川は、短い小河川ながらも、土砂災害警戒区域に指定されています。
この大崩集落があるのは、三石山のちょうど中間地点と言ったところです。ここまでの舗装道路歩きで、既に結構な標高差を稼ぎ出しています。
三石山の登山口があるのは、大崩集落の中でも最も上の地点となります。と言う事で、集落内に入ってからもさらに上ります。
桑柄川沿いの狭い谷間を抜けたことにより、背後の展望が開けて来ました。
笊ヶ岳(2,629m)の姿が良く見えます。山梨百名山の中でも特に登頂が困難だとされる、通称四天王と呼ばれている中の一座です。完登を目指している以上は、いずれはこの山にも登らなくてはいけません。
七面山も良く見えます。この記事の冒頭で紹介した三石山から思親山へと至る全容の写真は、このナナイタガレから撮影したものです。
舗装路の終点まで登って来ました。道の脇に2~3台分の駐車スペースが存在し、車でお越しの人はここまで入ってこれます。・・・地元のタクシーですら嫌がるような道を通り抜ける必要がありますけれどね。
8時10分 三石山登山口に到着しました。これでようやくスタート地点に立てたと言う訳です。やけに長いアプローチでありましたな。
4.三石山登山 登頂編 急登とクサリ場の果てに待つ地味な静かなる頂
民家の脇から山中へと分け入って来ます。この登山口脇のお宅では犬を飼っており、ムチャクチャ吠えられました。はいはい、ちょっと通るだけですよ。
振り返ってみた大崩集落の最上部です。よくもまあこんなところにと思うような場所にあります。
先ほどから七面山の姿が目を引きます。古くから信仰の対象となってきた山らしく、極めて目立つ姿をしておりますな。
位置的にこの山は恐らく八紘嶺(1,918m)です。山梨百名山に名を連ねている山ながら、現在は静岡県側からしかアプローチが出来ないと言ういわくつき(?)の山です。
登山道に入って程なく、椿草里方面への分岐がありました。この椿草里というのも、大崩集落に負けず劣らずな凄い場所にある集落であるようですが。
割と急勾配な植林の中を、黙々と高度を上げて行きます。檜の植林は枝打ちもされておらず、全般的にもうあまり手入れがされていない印象です。
登り始めて1時間ほどで尾根に乗りました。尾根に乗って以降も、あまり変わり映えのしない光景が続きます。
3月下旬の季節に新緑前線はまだこの尾根の標高までは届いておらず、辺りは冬枯れの殺風景のままです。木々の隙間からまだ白い南アルプスの山並みが見えますが、視界の開けた場所はありません。
9時20分 三石山展望台と呼ばれる地点まで登って来ました。もっと大きく開けた場所を期待していましたが、ほんの僅かな眺望があるだけの場所です。
天子山地越しに、富士山の頭だけが見えました。ちょうど大沢崩れが真正面に見えるアングルです。
反対の富士川方面の展望も少しだけ開けています。身延山がちょうど正面にありました。
身延山の背後に、まだ真っ白に雪を被ったままの山が見えます。左が赤石岳(3,120m)で右が荒川岳(3,141m)かな。
どちらも登りたい山リストの最上位にある山なのですが、日程の都合がつかず未だに訪問できていません。南アルプス南部の山は、公共交通機関の利用を前提とすると、色々制約事項が多くてなかなか計画を立てづらいのですよ。
正直微妙な展望台を過ぎると、これまでの安心安全な道から道から一転して、尾根が痩せて来ました。
ロープが垂らされた急斜面をよじ登ります。足元はグズグズの崩れやすい砂地なので、ここは慎重に参りましょう。
崩落気味の急斜面をよじ登ると、今度はクサリ場が現れました。ドマイナーな山のであっても、こうしてしっかりと整備されているのはありがたい限りです。
それなりに緊張感を要する一帯を登りきると、その先にはデジャブを覚えそうになる植林帯が広がっていました。どこまでも地味な山です。
やがて前方に人工物が見えて来ました。どうやら山頂が近いようです。
三石山の山頂に立つ三石神社です。そもそも何故この山が山梨百名山に選ばれたのかと訝しく思う三石山ですが、古くからこの神社が存在して大切にされてきた歴史があるからなのかもしれません。
9時55分 三石山に登頂しました。展望も何もない地味で静かなる頂です。だがそれが良い。まさしく我が意にかなった山頂であり、この上なく愛おしい。
なお山梨百名山の山頂標識は、どう見ても最高地点ではない場所に設置されています。せっかく来たのだから、一応は最高地点も踏んでおきましょう。
ここが最高地点です、手製の山名プレートの一つでもあるかと思いきや、何もありませんでした。だがそれが良い。
良く足元を見てみると、小さな守り神様(?)がちゃんといらっしゃいました。
無事にピークハントを終えたので、神社の前に戻りましょう。神社の正面に大きな三つの岩があるのが三石山のと言う山名の由来であると言われています。しかしどう見ても、大岩は二つしかないように見えますが・・・はて?
神社前の鳥居はすっかりと朽ち果てており、枠だけがかろうじて残っている状態でした。
5.佐野峠へと続く、踏み跡不明瞭なる長き道程
10時15分 本日の行程ははまだまだ先が長いので、休憩は程々にして行動を再開します。道標も何もありませんが、佐野峠方面への道は先ほどの大岩の裏にあります。
裏側から見た岩は、今度は3つどころか五つあるように見えます。一体どの角度から見たら3つに見えるのだろうか。
さて、これから歩こうとしている三石山から思親山へと至るルートですが、山と高原地図上では破線扱いですらなく、そもそも線が描かれていません。完全なるバリエーションルートです。
一応は目印らしきペンキマーカーが続いていますが、地面はやわらかくて踏み跡の気配は殆ど感じられません。
鞍部まで下って来ました。正面に見えている名もなきピークへと登り返します。
左方向の南側に視線を向けると、これから歩く尾根が連なっているのが見えました。ゴールの思親山は見えているのかいないのか、正直なところ良くわかりません。
写真では少々わかりにくいですが、かなりの急勾配な登り返しです。はっきりとした道筋も無いため、本当にここを登るのであっているのか少々不安になります。
登り切った先には、識別表だけがポツンと立っていました。本当に名前は無いピークなようですね。
ここからは尾根沿いに進みます。特に難所はありませんが、踏み跡はらしきものはほとんど見当たらず、ひたすら長い道のりです。やはり縦走は完全に玄人向けですね。
建設工事中の林道に、尾根が分断されていました。未完成であるため、この道はまだ地図には記載されていません。
まだ工事中であるため、当然ながら登山道への取り付きなどは整備されていません。と言う事で少々強引に尾根上へ復帰します。
マーカーはあるものの、道がある様な無いような尾根筋を辿ります。相変わらず地面はフカフカで柔らかく、踏み跡の気配が感じられません。よほど歩く人は少ないようですね。
手製の札が下がっており、これで一応はルートを外してはいないことの確証が持てました。
緩やかに登って降りてしたところで、再び工事中の林道と合流しました。この辺りは、先ほどの地点よりもだいぶ工事が進んでいます。
振り返ると、つい先ほど通ってきた三石山の姿が良く見えました。いかんせん地味すぎて、なんと言うかこう名山の風格みたいなものが全く感じられません。だがそれが良い。
彼方に駿河湾が良く見えました。しかし林道の工事現場からの眺めが一番良いとは、どこまでも地味な山です。
富士山も目の前にドーンと見えるはずですが、だいぶ雲に覆われつつあり辛うじて一部だけが見えていました。本日はもう、ここからの逆転は無さそうですな。
この先は尾根筋そのものが完全に林道に削り取られてしまっているため、このまま工事中の道を歩きます。
林道が脇へとそれていったところで、再び尾根へと取り付きます。
この林道の工事が完成して一般車の立ち入りが可能になれば、三石山は今よりもずっと容易に登ることが出来る山になるはずです。だからと言って、それで人気の山になるとも思えませんがね。
代り映えのしない道が続きます。流石に少しダレて来ました。峠はまだなのか。
そんな心の叫びが届いたのか、伐採地が現れて前方の視界が開けました。正面に見えているのは残念ながら思親山ではなく、まだその遥か手前の名もなき小ピークです。。
広く伐採されているおかげで、富士川の向かいに連なる山並みが良く見えました。あの尾根の向こう側はもう静岡県です。
まだ未踏の山梨百名山である、篠井山(1,394m)と十枚山(1,726m)の姿が良く見えます。この2座もまた最寄駅からは遠く、恐ろしくコスパの悪い山なんですよね、どうやって攻略してくれようか、頭が痛い山です。
どうするかは追々考えるとして、今は目の前のことに集中しましょう。動物除けの柵に沿って峠へと下って行きます。
12時5分 大島峠まで歩いて来ました。ここが三石山と思親山のほぼ中間地点となります。
下ったからには当然その後は登り返し。縦走登山とはそういうものです。バリルートらしく、九十九折れなどは一切ない容赦のない直登です。
背後を振り返ると、身延山と七面山がすっかりと遠くにありました。こうして見ると結構な距離を歩いて来たものです。
ここまで来てようやく前方に、思親山が姿を見せました。右の一番奥に見えているピークが思親山です。まだ何回かのアップダウンが残っているのが一目瞭然です。遠いなあー。
何故かここにも大島峠の標識が立っていました。国土地理院の地図を見る限りでは、先ほどの鞍部が大島峠で間違いないはずなのですが、はて?
ここからはしばしの間、再び林道歩きです。そして林道を歩いている時の方が全然眺めが良いと言う法則は、ここでも健在でした。
駿河湾がだいぶ大きく見えるようになって来ました。この甲斐南部の山々は、実質的にはほぼ静岡県の山みたいなものですからね。
右手のピークは巻かずに直登する登山道もあったようですが、いい加減面倒になって来たのでそのまま林道沿いを進みます。
左手には天子山地の山並みが連なります。富士山はもう完全に雲隠れを決め込んでいますが、晴れていればここはかなりの絶景スポットであると思います。
13時5分 佐野峠に到着しました。ここは一般車も入って来ることが可能な峠で、思親山のみ登りたければここが最寄りの登山口となります。ようやくバリエーションルート歩きが終わりました。
佐野峠は、富士山展望スポットとしてそれなりに名の知られた場所です。本日はもう既に残念な状態でしたが。
6.思親山登山 登頂編 日蓮が親を偲んだと言う静かなる頂へ
ここからあらためて登山開始です。思親山までは標準コースタイムで45分の行程となります。峠スタートならば、実にお手軽な山であると言えます。それなのに、一体何故こんなにも苦労をして歩いて来たのだろうか。
佐野峠から思親山に至る道は、東海自然歩道の一部に組み込まれています。そのため、道は大変良く整備されてます。・・・整備されていると言えば聞こえは良いですが、要するに階段地獄です。
この階段付近にはカタクリが咲くらしいのですが、まだその季節ではなく殺風景が広がっています。
そのいかにも優しげな名前とは裏腹に、もう着いたのかと思ったら間に2度も偽ピークを挟みこんでくる、なかなかの心折設計な山です。勘弁して下さい。こちとらもう、ヘロヘロに疲れているんです。
ボッキリと心をへし折られたところで、ようやく本当の山頂が見えて来ました。
13時40分 思親山に登頂しました。いやはや遠かった。峠から登り始めた登山者には、この達成感は到底得られないことでしょう。そのことに何か意味があるのかどうかはさておき。
それにしても思親山とは、とても良い名前の山ですよね。身延山で修行をしていた日蓮が、思親山越しに故郷の両親を偲んだという伝承が由来となっています。
そう言えば身延山山頂にある久遠寺奥の院の名前も、確か思親閣と言う名前だったけか。
山頂は広々とした草原状となっており、頭上が開けた気持ちの良い空間です。ですが、立木が多いため展望はさほど開けていません。
富士山も見えます。・・・今は見えていないけれど、晴れていれば見えます。5月と7月の下旬頃には、山頂からダイヤモンド富士を拝むことも出来ます。佐野峠まで車で入れるため、ナイトハイクするのも比較的容易そうですね。
7.思親山登山 下山編 東海自然歩道を辿り、身延線の井出駅へ下る
14時10分 2座縦走の目標は無事に達成されました。ボチボチ撤収に移りましょう。この先もまだ結構な距離が残されていますが、もう登り返しはなくひたすら下って行くだけです。
進行方向の左手下方に天子湖と言う水力発電用の人工湖があるはずなのですが、今は渇水期らしく干からびた湖底を晒していました。
遠く彼方に沼津の街並みが見えました。往路では北の甲府側から回り込んで来ましたが、帰路はこのまま南下して東海道本線で帰宅する予定でいます。
この下山路も東海自然歩道の一部です。距離は長いですが、大変よく整備されており歩きやすい道です。
この下山路がまた、何度か林道と交差しつつダラダラと続くのですが、特に見所もないため道中の様子などはスパッと省略します。
15時40分 場面は一気に飛んで八木沢の集落まで下ってきました。やり切った感でいっぱいになりそうですが、駅まではまだもうひと道あります。
八木沢集落に立つ源立寺です。日蓮宗に属している寺院です。日蓮宗の総本山である身延山に近い場所だけに、富士川の流域にはこうして日蓮に所縁のある地名や寺院が多く存在します。
バス停もありますが、山間部の町営バスにはありがちな安定の平日のみの運行です。残念ながら週末登山には使えません。
16時25分 井出駅に到着しました。駅から駅へ、歩くも歩いたり27kmの縦走登山は無事に終了しました。今日もたくさん歩いて疲れたぁー。
次の電車がやってくるまでには、まだ少し待ち時間があります。せっかくなので周囲の山でも眺めながら待つことにしましょう。
・・・と言うか、駅の周囲には何もないので、それくらいしかすることはありません。
向かいに見えているこの山は山梨百名山の貫ヶ岳(897m)です。ヒル山として悪名高い山なので、できればあまり暖かくなる間に攻略しておきたいところです。
こちらは大島峠からも見えていた篠井山です。ちなみに、この山にもヒルは出ます。シロヤシオが見事だと言う話なので、その頃に訪問したい気もしますが、そうすると必然的にヒルとの直接対決は避けられません。
なお井出駅は無人駅であり、特急ふじかわは停車しません。と言う事で、甲府行きのふじかわが通過して行くのを空しく見送ります。
その後にやって来た富士駅行きの鈍行列車へと乗り込み、長い長い帰宅の途につきました。
甲斐南部の山梨百名山への遠征は、無事目標通りに2座を一気に回収して幕を下ろしました。身も蓋もないことを言ってしまうと、もしこの2座が山梨百名山に選ばれていなかったら、恐らく訪れることは無かっただろうと思わせる山行きでした。
殆ど人がおらず静かな山行きを楽しめることに間違いはがありませんが、いかんせんアプローチに要する労力が大きすぎて、積極的に訪問を推奨するだけの訴求力を見出しにくい山です。だがそれが良いと思う、物好きな人にしかオススメはしません。
山梨百名山ハンターの皆様におかれましては、コスパ最低の山であることを重々御覚悟の上で訪問してください。
<コースタイム>
身延駅(6:45)-三石山登山口(8:10)-三石山(9:55~10:15)-大島峠(12:05)-佐野峠(13:05)-思親山(13:40~14:10)-源立寺(15:45)-井出駅(16:25)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
オオツキさん、こんばんは。
コストパフォーマンスの良い山の部分、なるほどなーと思いながら拝読いたしました!
大菩薩嶺は昨年行きまして、確かに満足度高かったです!やや歩き足りない感はあったので、このGWに再訪し今度は裂石から丸川峠経由で登ろうかと思っています。
山梨百名山はいくつクリアされてるんですか?
MMさま
コメントをありがとうございます。
大菩薩嶺は行けば確実に良い思いが出来る優等生的な山です。上日川峠行きのバスが恐ろしく混むことだけが唯一の玉にキズです。
今現在、山梨百名山には76座登っています。そろそろ四天王(笊ヶ岳、笹山、鶏冠山、鋸岳)にも手を付けたいところなのですが・・・難物揃いで若干尻込みしています。
オオツキさんこんばんは!いつも山行計画の参考にさせてもらってます。
コメント失礼します。
すごいロングトレイルですね。甲斐南部は本当にアクセス、ルートともに難かしいですね。。。
私自身大した登山歴ではないですがコスパの悪い静かな山は大好物の類です(笑)
この付近の山々もいずれ登りたくなりました。
GoTToNNさま
コメントをありがとうございます。
甲斐南部山に興味を持たれるとは、いよいよ物好きも極まれりですね。三石山から佐野峠に至る区間は、道標こそ一切ありませんが特に難所は無く、バリエーションルートとしては易しい方に部類されると思います。甲斐南部の入門編(?)として是非どうぞ。