長者ヶ岳-天使ヶ岳 田貫湖の背後に連なる富士展望の山並み

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静岡県富士宮市と山梨県南部町にまたがる、長者ヶ岳(ちょうじゃがたけ)と天使ヶ岳(てんしがたけ)に登りました。
富士裾野の西側に沿うようにして南北に連なる、天使山地に属する山です。朝霧高原を挟んで富士山と正対する位置にあるため、稜線上からは大変良好な富士展望が得られます。
大沢崩れの浸食谷を正面に望む富士と高原の光景を、ゆっくりと眺めて来ました。

2020年2月29日に旅す。

長者ヶ岳は休暇村富士がある田貫湖(たぬきこ)の背後に立つ山です。湖畔にはキャンプサイトも整備されており、富士山を目の前に望むリゾート地として人気の場所です。
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ちなみにこの田貫湖、小さすぎて富士五湖に入れてもらえなかったと言うわけでは無く、実は人工のため池です。ため池の周囲がリゾート地化されると言うのは、長野の白樺湖などと同様です。

その立地上、天子山地に属する山はどこからでも、大変良好な富士展望を得られます。特に長者ヶ岳から眺めた場合、大沢崩れの巨大な浸食谷が真正面に見えるのが特徴です。
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首都圏在住のハイカーが普段見慣れている姿とは、ちょうど反対側からの眺めです。

上々の天気のもと、ぱっくり二つに割れつつある富士山の姿を詣でて来ました。
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コース
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休暇村富士の駐車場を起点に長者ヶ岳と天使ヶ岳を周回します。標準コースタイムおよそ5時間ほどの行程です。

 

1.長者ヶ岳登山 アプローチ編 富士山を回り込み、田貫湖のある朝霧高原へ

中年二人を乗せた車は、快調に中央自動車道を進みます。新型コロナウィルス対策に伴う外出自粛要請効果なのか、中央自動車は至って空いていました。
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長者ヶ岳の登山口がる休暇村富士へは、一応は路線バスでも行くことは可能です。ただしバスの本数が少ないので、かなり綱渡りな登山計画にならざるおえません。

本日は友人が車を出してくれたため、ゆとりある計画です。

助手席にふんぞり返って、せっせと写真撮影に励みます。今の所は上々のお天気です。
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本日は午後から天気が崩れるという予報であるため、午前中の内にスパッと登ってしまいたいところです。

高速を降りた後も道はガラガラでした。富士急ハイランドも休園を決めたという話であるし、踏んだり蹴ったり状態です。
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もともとこの富士五湖エリアは、中国人観光客のインバウンド需要が非常に大きかった場所です。それだけに、今回の騒動で受けた打撃は相当なものでしょう。

朝霧高原の中を走っているところで、ちょうど富士山の向こうから太陽が登って来ました。特に狙っていたわけでもないのですが、思いがけず昇るダイヤモンド富士を頂きました。
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道の駅朝霧高原にトイレ休憩に立ち寄りました。ここのトイレはなんと暖房付きで、寒い季節には良い塩梅です。
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道の駅の正面には、わが親愛なるケナッチーこと毛無山(1,964m)の姿が良く見えます。毛無山は天使山地の最高峰であり、本日登ろうとしている長者ヶ岳とは稜線でつながっています。

見たところ、頂上付近に僅かに冠雪しておりますな。

目指す長者ヶ岳(右)と天使ヶ岳(左)の姿が見えて来ました。毛無山よりはぐっと標高も低いため、こちらに雪は一切見当りませんでした。
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8時 田貫湖南駐車場に到着しました。かなりのキャパシティがのある駐車場で、無料で停められます。
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田貫湖の湖畔は、キャンプ場のテントサイトとなっています。風もなく素晴らしいリフレクションです。
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何も考えずに駐車しましたが、ここであらためて周辺地図を見てみると、もっと登山口に近い休暇村富士の向かいにもどうやら駐車場が存在するようです。それならばという事で再び移動しました。
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こちらがその長者ヶ岳登山口最寄りの駐車場となります。場所で言うと休暇村の建物の真向かいです。コロナ効果なのか、駐車スペースは至って空いておりました。
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休暇村富士には日帰り温泉もあるという事だったので、下山後はここでひと風呂浴びようと考えいたのですが、受付時間が13時30分までとえらく中途半端で、結局は立ち寄れませんでした。
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本日の同行者は、約二年ぶりの登場となる友人ST君です。何を張り切ったのか、とても日帰り登山用とは思えないような大荷物を担いでいました。
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2.稜線まで続く序盤の急坂と、圧倒的杉林

8時20分 身支度を整えて行動を開始します。左端に見えているピークが、目指す長者ヶ岳です。どうでしょう、長者の風格がありますかね?
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道標の案内に従って進みます。
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休暇村の真正面に富士山があります。泊ったことはありませんが、客室の窓からも良く見えることでしょう。
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ホント、いい場所に建ってますねえ。
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登山口まで一時の林道歩きです。奥の斜面上に見えている杉林が、花粉充填率100%のヤバい色合いになっております。
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私は毎年この季節になると、花粉症の影響で空咳が止まらなくなります。最近はコロナ流行のせいで、ちょっと咳をしているだけで周囲から不審の目を向けられるので、肩身が狭くてなりません。

登山道の入り口までやって来ました。最初から割と急な登りなので、ゆっくりと行きましょう。
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本日はお手頃日帰り登山だと言うのに、このパンパンに荷物の詰まったザックの中には、いったい何が入っているのでしょうか。
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もっとも、カメラを二台ぶら下げて歩いている私に言えた義理ではありませんが。

急であるが故に、短時間で高度が上がって行きます。田貫湖があっという間に小さくなりました。
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やがて頭上に稜線が見えてきました。ここまで来れば、急登はいったん終了です。
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尾根との合流地点は休憩スペースとなっており、樹木が一部刈り払われているため眺望が開けます。
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富士山と田貫湖の姿が良く見えました。ここは湖畔から一時間もあれば登ってこれる場所なので、キャンプのついでにちょっと登ってみるのにも良いかもしれません。
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ぼんやりと霞んでしまっていますが、彼方には駿河湾が見えます。
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この富士裾野に半分埋もれている山は愛鷹山ですね。普段は箱根や丹沢方面からよく目にしていますが、これは反対側からの姿になります。
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3.長者ヶ岳登山 登頂編 緩やかな稜線歩き、好展望の頂へ

ここからは山頂までずっと、尾根筋を忠実に辿ります。周囲は相も変わらずの圧倒的杉林です。
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急坂は無く緩やかな道が続きます。このルートは東海自然歩道の一部でもあります。歩道として整備されているだけのことはあって、とても歩きやす道です。
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登るにつれて熊笹の姿が目立ち始めました。天使山地に属している山の稜線多くは、このような笹薮に覆われています。もし刈り払いが行われていなかったら、さぞや惨い薮山なのでしょう。
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お隣の天使ヶ岳の姿も見えました。一見しただけでも、登っても特に良いことがなさそうなオーラが滲み出ているのが、何となく見て取れます。
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山頂に向かってラストスパートです。周囲は冬枯れの殺風景でしたが、逆にグリーンシーズンだと空さえも見えないのかもしれません。
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頂上が見えて来ました。
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10時 長者ヶ岳に登頂しました。登り始めてから1時間40分での登頂です。
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同行者がいる状態だと、普段よりも登るペースが速く、そして普段よりも全然写真を撮っていないと言う事実に気が付きました。

逆に言うと一人で登っている時は、それだけ撮影にかまけて歩行ペースを乱してしまっているということです。

山頂の様子
ベンチ付きのテーブルが二組あります。大勢を収容できるほどの広さはありませんが、そこまで人気のある山でもないので問題は無いでしょう。
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毎度お馴染みの山梨百名山の標識もありました。ここは山梨県と静岡県の境界となっている場所です。
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森林限界未満の標高しかない山ですが、富士山のある東側だけ樹木が伐採されており、眺望が開けています。
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望遠を覗いてみましょう。大沢崩れの裂け目がパックリと開いているのが良くわかります。
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数億年スパンの時間軸で見ると、富士山が現在の様な均整の取れた姿をしている期間と言うのは、ほんの一瞬のことでしかありません。やがては浸食により解析が進み、複数個のピークに分断されて行くことになります。

山頂部には、かなりの強風が吹き荒れていのが見て取れます。最高地点の剣ヶ峰にある富士山観測所の建物が、ほんのわずかに見えました。
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山頂のちょうど真下に田貫湖があります。まさに足元と言った場所です。
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朝に一度車を停めた南駐車場も良く見えました。
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北には毛無山方面へと続く稜線が連なります。繋げて歩くことも出来ますが、破線扱いのコースで笹薮が相当惨いとのことです。
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4.登っても特に良いことのない、地味なる天使ヶ岳

10時15分 お隣の天使ヶ岳に向かって行動を再開します。長者ヶ岳からは標準コースタイムで50分の行程となります。
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鞍部に向かって下ります。大した標高差はなく至って歩きやすい尾根道です。先ほどまでの快晴が嘘のように、曇り空になってきました。
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下った後は当然登り返し。縦走とはそういうものです。
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天使ヶ岳の山頂部は横に広く、最高地点がどこにあるのかよくわかりません。なかなか付かないなー、などと思いつつ進みます。
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明らかに最高地点と思われる場所を過ぎても何もなく、おかしいぞと思い始めたところで、唐突に山頂標識が現れました。
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10時50分 天使ヶ岳に登頂しました。「え?ホントにここ?」と思うような何もない場所です。
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天使山地という山系の由来にもなったであろう山が、まさかこんな扱いを受けていようとは。ベンチも何もないので、昼食休憩はここよりも長者ヶ岳で取ることを推奨します。

そしてあの荷物がパンパンに詰まったでかザックの中には、ガスストーブやら風防やら食材やらが詰まっていた模様。
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山頂のちょうど真上を、パラグライダーが飛び回っていました。気持ちよさそう。
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眺望がほぼ皆無と言って良い天使ヶ岳ですが、山頂から少し脇にそれた場所に、富士見台を称する場所があります。ちょっと見に行ってみましょう。
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今日はもうすっかり雲隠れしてしまっていましたが、一応はここからも富士山が見えます。下の木が育ちつつあるので、いずれは隠れて見えなくなりそうですが。
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こちらは大室山と御坂山地方面です。どんより曇ってしまっております。午後から崩れると言う、天気予報通りの空模様です。
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5.長者ヶ岳登山 下山編 林道を大回りして、スタート地点の休暇村富士へ

11時25分 山頂を後にして下山を開始します。長者ヶ岳へ引き返しても良いのですが、せっかくなので周回コースを選択しました。
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山頂直下はかなり急峻です。本日歩いたのと逆向きに、天使ヶ岳から登ろうとする場合は、最後の登りが結構キツイと思います。

木の隙間から少しだけ駿河湾が見えました。海を挟んだ向かいは伊豆半島です。
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ここに来て富士山奇跡の復活です。山頂付近には、いろいろな種類の複数の雲がかかっていて、何が何やらよくわからない状態でした。
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急坂を下りきると、緩やかなる檜林の中へと入りました。
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木漏れ日が作り出す、天然のスポットライト。こうやって陽が差し込む場所にだけ苔が生えているのが面白い。分かり易すぎる自然の摂理です。
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平坦になってからが意外と長いです。代り映えしない光景に少しダレてきました。
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未舗装の林道を横断します。一瞬ここを左折するのかと思いましたが、道標も何もないため横断して直進しました。
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下り続けると、程なく舗装された林道とぶつかりました。やはり、先ほど横断した林道は、地図にも記載がないフェイントだったようです。
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ここから林道を歩いて、スタート地点の休暇村へと戻ります。
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もうゴールしたかのような達成感に満たされそうになりますが、この林道歩きのコースタイムが1時間ほどあります。意外と長いので気を引き締めて歩きましょう。
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林道の途中で、唐突に視界の開けた場所に出ました。スカイ朝霧と言うパラグライダーの発着場です。
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滑走スペースの奥に、つい先ほどまで居た天使ヶ岳の山頂が見えました。
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これは地図にも記載のある山之神ですね。八百万神の国らしく、日本全国どこの山にも大抵はあります。
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天使の森キャンプ場の脇を延々と歩きます。しかしこのキャンプ場、富士山近郊のキャンプ場なのに富士山が全く見えないと言うのはどうなんでしょう。。
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コロナ対策の一環なのか、営業はしていませんでした。
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勝手にほぼ水平移動なものと思い込んでいましたが、田貫湖に向かって微妙に登り勾配の道が続きます。
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意外と長い舗装道路歩きにウンザリし始めてきたところで、ようやくゴールまで戻って来ました。
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13時40分 スタート地点へと戻って来ました。歩行開始から5時間20分程の山行きでした。
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営業時時間外で休暇村の温泉には入れなかったので、移動して富士眺望の湯ゆらりに立ち寄りました。その名の通り富士山が目の前に見える温泉です。
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価格はお高めの観光地プライスで1,500円でした。この価格には、貸しタオル代が含まれています。

その後は吉田うどんで締めて、まだ明るいうちに撤収しました。
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首都圏在住の人にとって、天使山地があるのは基本的に「富士山のむこう側」です。普段目にしているのと反対側から見た富士山には、巨大な裂け目が広がりつつありました。どこから見ても大差が無いようにみえて、富士山には実に多様な顔があります。
何故か富士山の話ばかりをしてしまいましたが、長者ヶ岳と言う山の特徴は、一言でいえば富士山の展望台です。大沢崩れを目の前で見ることができるのが最大の見所であり、言い方を変えると、それ以外にはこれと言った見所はありません。普段とは一味違う富士の姿を眺めてみたい人におススメです。
公共交通機関利用だとかなりアクセス難な場所なので、覚悟の上でご訪問下さい。

<コースタイム>
休暇村富士(8:20)-休暇村分岐(9:10)-長者ヶ岳(10:00~10:15)-天使ヶ岳(10:50~11:25)-林道(12:35)-休暇村富士(13:40)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. つっしー より:

    参考にしても特に良いことがなさそうな地味な情報なのですが、
    なんと!天子ヶ岳の山頂は「ホントにここ」ではありませんでしたよ!(地味ですね……)

    長者ヶ岳側から見て文中にある昼食の場所から手前200メートルほど、「明らかに最高地点と思われる場所」でルートを外れて左手の林に20メートルほど分け入った地点に一段高い場所があり、そこに山頂標ありました。
    鬼ヶ岳や竜ヶ岳のものを作ったのと同じ方の作だと思われる、木片を釘で並べた標識のほかいくつか並んでいました。
    ※一昨年、ひたすら奥多摩のバリ尾根を歩いていたときに退屈してしまい、地味ピークを巻かずに地図に無い勝手山頂標を見つけるシブい遊びに興じていたのが功を奏しました(功なのかは謎)。

    もっとも記事中の地点よりさらに地味~な場所でしたし、実質ほぼ最高地点は通過しているはずなのでよほどの酔狂でなければわざわざ回収までもないと思われます。

    • オオツキ オオツキ より:

      つっしーさま
      コメントをありがとうございます。

      どう見ても山頂ではないと薄々感づいてはいましたが、登山道が最高地点を通らないパターンでしたか。山梨百名山でもたまにいますよね。岩殿山とか。

      「よほどの酔狂でなければ」の一言が、「さあ、回収しにお行きなさい」と示唆しているように感じるのは気のせいでしょうか。。