東京都日野市にある七生丘陵(ななおきゅうりょう)を歩いて来ました。
七生丘陵は広義には多摩丘陵の一部であり、かつてこの地に存在した七生村(現在は日野市の一部)の名前を取って呼ばれています。この丘陵のうち、京王線の高幡不動駅から平山城址公園までの区間が、遊歩道として整備されています。
桜が満開の丘陵地を巡る、お花見散歩をしてきました。
2020年3月28日に旅す。
時は東京都に週末の不要不急な外出は控えるようにとの通達が出された週末。日野市の七生丘陵へと繰り出して来ました。
・・・え?前後の文脈が噛み合っていないって?まあ要するに、3つの密とはおおよそ縁が無さそうなマイナーな場所でお散歩をしてきました。
七生丘陵は浅川の脇に沿うようにして連なる多摩丘陵の一部です。住宅地のすぐ脇にある、ちょっとした丘のよう佇まいの場所ですが、所々で眺望が開ける気持ちの良い散歩道となっています。
七生丘陵を辿る歩道は二つ存在します。
一つは東京都が整備した「かたらいの路」。こちらは京王線の高幡不動駅から七生公園までのコースです。もう一つが日野市が整備した七生丘陵散策コースで、多摩動物公園から平山城址公園駅までのコースとなっています。
今回は変則的に二つのコースを繋げて、高幡不動駅から平山城址公園駅までを歩いて気ました。
スタート地点の高幡不動とゴール地点の平山城址公園は、どちらも桜の名所として知られている場所です。満開の見ごろを迎えた桜を眺めながら、人気(ひとけ)の無いマナーな散策路を歩いて来ました。
コース
高幡不動駅から、かたらいの路のコースを歩き七生公園へ。そこからは生丘陵散策コースにそって平山城址公園駅まで歩きます。
1.桜は見ごろを迎えたが、人気の無い閑散とした高幡不動
9時19分 京王線 高幡不動駅
京王線沿線に住まう私は、高幡不動へは乗り換えなしの一本で来れます。という事で、朝は比較的ゆったりと始動しました。
お天気はあいにくのどよーんとした曇り空です。桜は青空の下にこそ映えるので、できることなら晴れ間が欲しい所ではあります。
まずは「かたらいの路」の起点である、高幡不動に向かいます。駅からは歩いて5分とかからない距離にあります。
自粛要請でそもそも開門していなかった時はどうしようかと少し心配していましたが、入り口は何事もなく解放されていました。
桜は見事に満開の見頃です。しかしそれを眺める人の姿はほとんど見当たらず、閑散とした状態でした。
土方歳三まんじゅうとはまた。名物はなんでもかんでも饅頭にしてしまう、この日本の観光地の商魂の逞しさよ。
まんじゅうを購入すると、何故かマスクが一枚でついて来ると言う謎のサービスを実施中でした。こんなご時世ならではのオマケです。
背景が青空だったら、実に映える光景なんですけれどねえ。一見するといかにも歴史がありそうに見える五重塔ですが、実は比較的新しい鉄筋コンクリート製です。
年に一度、4月28日に開催される春季大祭国宝まつりの際にのみ、塔の内部が一般公開されます。しかし残念ながら、2020年の春季大祭国宝まつりは中止とのことです。
塔の地下には無料の休憩スペースが存在しますが、そこも閉鎖中でした。
境内の桜はまさに見頃のど真ん中です。例年であれば、さぞ多くの見物者で賑わうのでしょう。
このソメイヨシノと言う品種は、接ぎ木によって人工的に繁殖されて植樹されたものです。クローンであるため、結実してもその後に芽が出てくることはありません。
それでは一体、この桜たちは何のために花を咲かせているのでしょうか。
答えは一つしかありません。それは人間のためです。眺める人間を楽しませるためだけに、ソメイヨシノは毎年春になると花を咲かせているのです。
つまり我々人間は、満開のこの花を眺め愛でなければならない義務を負っているのです。これは義務ですよ義務。
以上!自粛しなかった言い訳お終い。
これはしだれ桜でしょうか。ソメイヨシノだけでなく、何種類かの桜が植えられています。
草むらの中にポツンと佇むお地蔵さん。特に謂れの説明などはありませんが、いつからここに居るのでしょうか。
桜の花びらが浮かぶ池にはカルガモの姿が。人慣れしているのか、まったく逃げる素振りも見せません。
散策はこれくらいにして先へ進みましょう。高幡不動の裏手には、かつての城跡があったと言う小高い丘があります。この丘こそが七生丘陵の末端部です。
この城山には八十八体の地蔵が安置されており、お遍路することが出来ます。
かたらいの路は、このお遍路コースと重なっています。という事で、お地蔵様に囲まれた坂道を登って行きます。
春らしく足元は花で溢れていました。これはシャガと言うの名のアヤメの仲間です。日陰に咲いていることが多い花です。
これはスミレですね。スミレは種類が多すぎて、何スミレなのかを識別するのは非常に難しい。
結構登らされますが、登山と言えるほどの運動強度はありません。あくまでお散歩道です。
見晴台と呼ばれている最高地点まで登って来ました。城跡と言っても、遺構と呼べるようなものは特に残ってはおらず、ただの雑木林となっています。
北東方向だけが僅かに刈り払われており、周囲を見晴らすことが出来ます。
眼下には日野の街並み。まあ特に、これと言った何かが見えるわけではありません。
彼方に薄っすらと、都心部の高層ビル群が見えました。どんよりとした曇り空ではありますが、空気そのものは至って澄んでいるようです。
先へすすみましょう。特に案内などは出ていませんが、尾根沿いに進めば問題ありません。
頭上にツバキが花を咲かせていました。こちらはもう終わりかけです。
見晴台の裏手に、かつての馬場の跡であるという広場があります。ここの桜もまた、見事でありました。
背後が青空だったら、もっと素晴らしい光景だったのですけれどね。
奥多摩の山並みが少しだけ見えました。曇っていなければ富士山の姿も見えます。
大部分が住宅地に埋め尽くされているものの、何となく尾根筋が続いているのが分かります。これが七生丘陵の稜線であるようです。
2.住宅地の中を通り抜けて、多摩動物公園へ
土の道はここで一度終わり、この先はしばらく住宅地の中を歩きます。
地図が掲げられていました。この通り住宅地の中を突っ切るのが、かたらいの路のオフィシャルなルートです。
所々にこのようにしっかりと道標が掲げられているので、その導きに従っていれば、まず迷う事は無いかと思います。
中にはこんな風に、壁にペンキでマーキングしただけのやっつけな案内もあります。
これは完全に、書くべき場所を誤りましたね。排水溝に被らない所に書けば良いものを。
一見すると何の変哲もない住宅地の光景に見えますが、ここは尾根の上です。
左向け―左!
とこのように、左右のどちらを向いても下り坂となっており、尾根の上を歩いているのが良くわかります。この付近は斜面からてっぺんにいたるまで、丘陵全体を覆うように隙間なく宅地化されています。
鹿島台と呼ばれている場所のようですね。丘の上は風通しが良いため夏は涼しそうですが、しかし住むとなると上り下りに苦労しそうです。
10時25分 南平東地区センターと呼ばれている地点まで歩いて来ました。ここから再び、徒歩道が始まります。
背後には都心方面を見晴せます。大した高さの尾根ではありませんが、それでも開放感のある場所です。
3.多摩動物公園の外を回り、七生公園へ
ここからは鉄条網に沿った道が続きます。柵の向こう側にあるのは多摩動物公園です。
物々しいのは人間の侵入を防ぐためではなく、タヌキ対策だそうです。なんでも野生のタヌキが敷地内に侵入して、勝手に餌を食べて住み着いてしまうケースが後を絶たないのだとか。
御嶽神社と書かれた、立派な石碑が立っていました。ちなみに、この場所の標高は153メートルとのことです。
尾根筋を忠実に辿るため、割とアップダウンが多めです。傾斜が急な場所にはしっかりと階段が整備されているため、スニーカーでも特に問題はありません。
本当に住宅地のすぐ傍らに道が続いています。近所に住む人にとっては、きっとオラん家の裏山的な場所なのでしょうね。
視界の開けた場所に出ました。特に名もないただの通過地点ではありますが、七生丘陵の中で最も眺望が開ける場所はここです。
日野の街並みの先には、薄っすらと奥武蔵の山並みが連なります。
奥多摩前衛の山々も良く見えます。中央に見えているのは右手前が大岳山(1,266m)で左奥が御前山(1,405m)です。
ミシュランガイド三ツ星に輝く世界の高尾山の姿も見えました。この山は見た目に特長が無さ過ぎて、山座同定するのが非常に難しい。
京王線がガタゴトと走りぬける音が、割とひっきりなしに聞こえて来ます。まあ、すぐそこが町ですからね。
足元の土手が紫色の花で埋め尽くされていました。オオアラセイトウと言う名の、菜の花の仲間です。諸葛孔明が広めたと言う伝説があることから、ショカツサイとも呼ばれます。
菜の花と同様に、花が咲く前であれば食べることも出来るそうです。ただし、あまり美味しくはないとの事。
道なりに進むと、なにやら行きどまりのような光景です。おや、道を間違えたかな。
再び多摩動物公園の柵に沿って進みます。ぐるりと敷地の周囲を回り込むようにして道が続いています。
もう歩くのに飽きたと言う人は、ここから南平駅にエスケープすることも出来ます。
上ったり下りたりを繰り返す道が続きます。かたらいの路は、なかなか歩きでがありますぞ。
多摩動物公園は外出自粛要請を受けて臨時休園しているらしく、園内には人の気配が全くありません。断続的に動物の鳴き声だけが聞こえて来ます。
見物に来る人間が居ようがいまいが、オラウータン達の日常に何ら違いはないようです。
雲間にほんの少しだけ青空が広がり始めました。これはもしかして、逆転ホームランなるかの展開です。
11時5分 七生公園まで歩いて来ました。その名の通りの、丘陵地を利用して造成されている公園です。
山頂広場なる場所があるらしいので立ち寄って行きます。山頂と言う言葉を聞くと無意識に体が反応してしまうのは、登山者としての本能でしょうか。
山頂広場には、眺望も何もない空間が広がっていました。登っても特に良いことは無い場所ですな。
無事にピークハント(?)も済ませたところで、七生公園を後にします。
4.多摩テックの跡地脇を進む七生丘陵散策コース
かたらいの路として整備されているのはここまでです。この先は七生丘陵散策コースに沿って平山城址公園へと向かいます。
ここから暫しの舗装道路歩きです。七生公園を出たら左に進み、続いて最初の信号を右折します。
沿道も桜が満開です。この咲きっぷりでは、もう翌週までは持たないでしょうね。
この緑のフェンスに囲われた中にあるのは、かつてこの地に存在した遊園地である多摩テックの跡地です。
なつかしい、子供の頃には良く訪れていました。多摩テックは、カートなどの自分で動かすことの出来る乗り物が多いのが特徴で、個人的には某ネズミ国などよりもずっと好きな遊園地でした。
完全に子ども向けと言える場所で、大人のカップルには全く見向きもされなかったのが敗因のようで。
道標の導きに従い、脇道に入ります。今度はこの多摩テック跡地の周囲をグルっと回るようです。
斜面が墓地として造成されており、展望が開けました。奥に見えている稜線は多摩丘陵の主脈です。七生丘陵はこの主脈から派生した枝尾根のようなものです。
両側をフェンスに囲われて、少々圧迫感のある道です。お散歩道として、正直これはいただけません。
ここでようやく待望の、青空を背景にした桜を見ることが出来ました。うん、やはりこの方が断然よい。
多摩テック跡地の周囲は桜で埋め尽くされいました。子供の頃の私は、桜になんて目もくれていませんでしたが、実はこんなにも素敵な場所にあったのですね。
11時35分 無粋な緑色のフェンスが尽きたところで、平山城址公園に到着しました。
5.桜が満開の平山城址公園
この公園は読んで字のごとく、平山にあった城跡に作られた公園です。公園全体が七生丘陵の尾根上にあります。
あまり知名度はありませんが、ここは知る人ぞ知る桜の名所です。本日は花見客の姿も見られず、閑散としていました。
丘陵地を利用して作られた公園であるため、園内には割と高低差があります。
うーん、眺めはさほど良くもありません。先ほどよりも幾分か雲が多くなってしまった、奥多摩の山並みが僅かに見えました。
登ったあとは当然下りです。まあ、大した高低差ではありません。
少し小腹が空いてきたので、ベンチに陣取り土方歳三まんじゅうでおやつタイムをとりました。
この鬼の副長は、今やすっかり日野の観光資源と化している感がありますな。なお、中身の方は至って普通の饅頭でした。
私の土方歳三と言う人物に対する知識は、主に司馬遼太郎と浅田次郎の小説の内容によって構成されています。よって、どこまでが史実でどこからがフィクションなのかは、正直よくわかっていません。
「斬れッ―!」と叫びまくっていたと言うのは、本当の事なのでしょうか。
フライング気味にヤマツツジが咲き始めていました。まだ3月なのに。
これはコブシですね。本当に拳ほどのサイズがある大きな花で、強めの芳香を放っています。
なかなか良い雰囲気の空間が広っていました。例年なら、きっと多く花見客が訪れるのでしょうね。
稜線上の窪地に、猿渡の池という名の小さな池たまりがあります。ただの雨水だまりのような小さ池ですが、僅かながも湧水があり、沢蟹なども住んでいるそうです。
入口方向に向かって登り返します。この道は桜の路と銘打たれており、その名の通りの多く桜を目にすることが出来ます。
公園の入口までやって来ました。ここから平山城址公園駅へ下ることも出来ますが、尾根道はもう少し先まで続いているので、終点まで行ってみましょう。
ここが終点です。七生丘陵そのものはこの先にもまだまだ続いていますが、ここからは東京農工大学の私有地となるため、中には入れません。
6.浅川沿いの桜並木を見物しつつ平山城址公園駅に戻る
公園の入り口に、見事な桜の巨木がありました。この日目にした桜の中では一番見栄えのする木です。
東京農工大学の敷地を迂回して、この先にある長沼公園まで歩くコースも存在します。本日はもう十分過ぎるほどたくさん歩いて満足していたので、足は延ばさずにこのまま撤収します。
丘陵の下までおりて来ました。このまま真っすぐに進めば駅に辿り着きますが、その前に橋を渡って少しばかり寄り道をして行きます。
多摩川なのかと思うかもしれませんが、これは支流の浅川です。この浅川の河原に桜並木があると言う事前情報をキャッチしていたため、見物に立ち寄りました。
かくして、見事な桜並木が立ち並んでいました。ここも良い感じに満開です。
桜のアーチの下を歩ける小道が整備されていました。これまた良い雰囲気ですね。家の近所にもこういう場所が欲しいくらいです。
12時55分 平山城址公園駅に到着しました。おおよそ3時間半ほどの花見お散歩でありました。
その後さしたる待ち時間もなくやって来た鈍行列車に乗り込み、帰宅の途に付きました。
駅から駅へと歩いた、お手軽なお花見お散歩はこれにて終了です。
多摩地区ローカルの極めてマイナーな散策路ではありますが、長すぎず短すぎないほど良いスケールのお散歩コースでありました。運動不足解消のためちょっと歩きたい、といった用途にはうってつけの場所であると思います。ベストな訪問時期は桜の咲く頃ですが、その後もしばらくは、道端に咲く様々な野草の花に巡り合うことが出来るでしょう。
<コースタイム>
高幡不動(9:25)-南平東地区センター(10:25)-七生公園(11:05)-平山城址公園(11:35)-平山城址公園駅(12:55)
完
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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