茨城県つくば市にある筑波山(つくばさん)に登りました。
言わずと知れた、関東地方を代表する名峰です。標高の低い平野部に存在する山であるため、12月に入ってからもまだ遅い紅葉を楽しむことが出来ます。人気の山故に紅葉シーズンともなると多くの人でごった返しますが、穴場のルートからであれば静かな山行きを楽しむこともできます。
2018年最後となろう紅葉見物をすべく、北関東へと繰り出してきました。
2018年12月2日に旅す。
今回は関東地方きっての名峰の呼び声の高い、茨城県は筑波山へ行って来ました。標高1,000メートルにも満たない低山ですが、平地にあるため眺望が良く人気の山です。
筑波山にはケーブルカーからロープウェイまで完備されており、簡単かつ手頃に登ることが可能です。半ば観光地化しており、言うなれば高尾山と同じカテゴリーの山です。
年間を通じて多くの訪問者で賑わう筑波山ですが、特に紅葉シーズンともなると人が殺到し、麓には果て無き道路渋滞が引き起こされます。
そこで今回は人の多い筑波山神社を避けて、麓のつくし湖からスタートする薬王院ルートを選びました。登山口までのアクセスが少々面倒なマイナールートではありますが、その分あまり人の居ない静かな山行きを楽しむことが出来ます。
生憎のどんよりとした曇天の下、晩秋の筑波山で紅葉を楽しんできた一日の記録です。
コース
つくし湖からスタートし薬王院を経由して男体山と女体山の両ピークを踏みます。下山は御幸ヶ原コースを下ります。
1.筑波山登山 アプローチ編 市営バスを乗り継ぎつくし湖へ
7時 つくばエクスプレス 秋葉原駅
まずは地中深いこの駅より、終点のつくば駅を目指します。一体地下何メートル位なんでしょうか。
つくば駅に到着したら、お次はつくバス北部シャトルと呼ばれる路線バスに乗車します。スイカ・パスモが使えます。
すでに長蛇の列が出来上がっている筑波山神社行きとは違い、こちらはガラガラです。乗り込もうとすると、運転手さんがわざわざ「筑波山神社には行きません」と教えてくれました。
それだけ間違える人が多いのでしょう。確かに紛らわしい行き先名ではあります。
40分ほどバスに揺られ、終点の筑波山口に到着しました。
この場所はかつて筑波鉄道と言うローカル私鉄の路線があった場所です。筑波鉄道は昭和62年に廃線となり、現在その跡地の大半がサイクリングロードとなっています。
目指す筑波山は、この通り目の間にデンと立ちはだかっています。今や中腹にある筑波山神社までバスが乗り入れているため、ここから山頂を目指す人は至って少数派となっています。
ここから今度は、桜川市のコミニュティバスやまざくら号に乗車します。ちなみに、こちらのバスもペンギンやロボットのカードが使えます。
9時38分 つくし湖入口バス停に到着しました。ここらつくし湖へ行くには、来た道を引きかえして坂を登って行きます。
※2019年9月1日より桜川市バスの運行経路が変更されて、現在つくし湖入口と言うバス停は存在しません。すこし歩く距離が長くなりますが、隣の紫尾団地バス停からアプローチ可能です。
バス停からは徒歩でおよそ5~6分ほどで到着します。つくし湖と言うのは通称で、正式な名前は南椎尾調整池と言います。霞ケ浦から水を引いている農業用ため池です。
この時点ではまだ空は晴れ渡っており、見事な逆さ筑波山を見せてくれました。この後すぐにどよーんと曇ってしまいましたがね。
山腹の紅葉が良い感じに色づいているのが見えます。これは今年最後の紅葉見物に期待できそうです。
湖のある所に水鳥の姿ありです。という事で、見ている目の間でとこからともなくサギが飛来しました。
何故か2羽が並んで水面を見つめています。左にいるグレーのサギは、アオサギの子供でしょうか。
これはカルガモです。水辺のある所であれば大抵は目にする、もっともありふれた水鳥です。
この徒党を組んでいる鳥は鵜(う)ですね。悪食な事で知られる比較的大柄な水鳥です。長良川から集団で脱走してきたのでしょうか。
思わず水鳥ウォッチに励んでしまいましたが、本日の主題はここを目指すことにあります。脱線はそこそこにして出発しましょう。
2.紅葉最盛期を迎えた薬王院
桜川市は日本最北端となる温州みかんの栽培地です。小ぶりでやや酸味の強いミカンだそうです。でもそれってつまり、酸っぱいてことですよね?
一応道標も出ていますが、薬王院へ向かうにはこの分岐を左です。
こんなところにまでミカン畑が広がっていました。梅園があったりミカン畑があったりと、里に近い山だけに筑波山は実に様々な用途に利用されているのですね。
10時30分 薬王院に到着しました。
天台宗に属する寺院です。筑波山の表玄関とでも言うべき筑波山神社の喧騒とは全く異なる、ひっそりとした静な場所です。
紅葉はまさに今が見ごろのド真ん中と言ったところです。背景が曇り空でなければもっと良かったのですが。
山寺には付き物の石の階段ですが、やたらと1段の段差が大きくて少々戸惑いました。人によっては登れないんじゃないかな。
境内にあるこの三重塔は、よくある取ってつけたような鉄筋コンクリート製の偽物ではありません。県の重要文化財にもなっています。
たとえ汚れていなくとも何故か無性に手洗いがしたくなる、この手水舎の不思議な魅力。
俗物オーラ全開な観光地と化している筑波山神社に比べて、ここは静かで風情のある場所です。この雰囲気は大いに気に入りました。
どうやら「筑波山の紅葉は見頃です」と言う情報は、麓の筑波山神社の紅葉のことを言っていたようです。登山口でこれだけ見頃迎えているという事は、上の方ではもう散ってしまっていることでしょう。
10時40分 筑波山登山口へとやってきました。
登山開始時刻としては少々遅い時間ですが、どうせ曇っていて眺望には期待できないのだから、気にせずゆっくり登ることにしましょう。
3.筑波山登山 登頂編 静かなる薬王院コースと、喧騒に包まれた山頂
登り始めはシダの生い茂るまるで南国のような光景です。湿気が多い場所なのでしょう。
あまり傾斜のない緩やかな道が続きます。歩きやすい道ではありますが、なかなか標高は上がりません。
一度林道を横切ります。良いのかどうかは知りませんが、路駐してここから登り始める人もいるようです。
前半が緩やかだった分、後半になって一気に標高を稼ぎ始めます。面食いそうになる圧倒的階段です。
筑波山は純然たる低山ではありますが、平地にあるためスタート地点の標高も低く、山頂までの標高差は結構馬鹿になりません。ケーブルカーを使わずに周回すれば、ガッツリとした山歩きもできます。
階段地獄を登りきると、ようやく平坦な場所に出て人心地つけました。思った通り山頂付近はすでに落葉しており、冬枯れの殺風景が広がっていました。
山頂部がお目見え。そして相変わらず空はどよーんとしています。・・・晴れるという予報だったんですけどねえ。雪でも降りそうな空の色です。
分岐地点まで登ってきました。左に進めば男体山の山頂を巻いて御幸ヶ原に直行できます。しかし当然ここは右です。何故ならば、そこにピークがあるから。
自然探索路と称しているけれど、その実態は只のトラバース路を回り込んで男体山の山頂へ向かいます。
途中に展望所があります。眺望を何よりも尊ぶ私としては、展望所があると聞いて素通りするわけにはまいりません。たとえどんな曇り空であったとしてもです。
展望所からは関東平野のほぼ全域を見晴らすことが出来ます。晴れていればね!
筑波山は好展望であることで知られた山なのに、一度も快晴の日に登ったことがありません。この山とはイマイチ相性が良くないようで。
遠くに霞んで見えるこの湖は霞ヶ浦です。日本で2番目に大きいと言うこの湖は、たしかに地平線よりもさらに先まで続くほど広大です。
つい3時間ほど前に筑波山本体を見上げた筑波山口が、眼下に見えました。そして、こうして見ると、やはり紅葉のピークが麓の一帯にあることが良くわかります。
道草はこれ位にして山頂へ向かいましょう。男体山山頂は、展望所からは5分とかからない距離にあります。
12時10分 男体山に登頂しました。
筑波山は二つのピークを持つ双耳峰であり、ここはその片割れです。
男体山の山頂からの展望はと言うと、無いこともありませんがさほど良くもありません。
もう一つのピークである女体山の方が断然眺望は良いので、周囲を眺めるのはあちらからにした方が良いかと思います。
山頂から、両ピークの鞍部に御幸ヶ原に下ります。ここまでの静寂が嘘のように、登山道には人があふれていました。
御幸ヶ原まで下ってきました。筑波山神社からここまで、ケーブルカーで登ってくることが出きます。そんな訳でここは、ハイカーよりも観光客のほうが多く目につきます。
もう一方の女体山についても、一応はピークハントして行きましょう。展望が駄目なのはもうわかっていて、少々むなしい感じはしますがね。。
通行人から執拗な投石を加えられるガマ石。石を口の中に投げ入れると良いことがると言う触れ込みですが、傍で見ていてなんだか可哀そうになってきました。
12時40分 女体山に登頂しました。
一般的にはこちらの方が筑波山山頂と見なされています。
女体山の山頂は岩場となっており眺望が開けますが、それしても凄い数の人です。まさに立錐の余地なしと言ったところ。
まさに関東平野全体を見晴らす好展望地です。晴れて空気が澄んでいれば、富士山も良く見えるそうです。・・・私はまだ一度もここから富士山が見えたことがありませんが。
眼下に筑波山神社の大鳥居が見えます。この後の下山は、ひとまずあの場所を目指します。
次々と人が押しかけて押し合いへし合い状態の山頂を辞去し、御幸ヶ原まで戻って来ました。ここでお昼にします。
焼けた醤油の香りの誘惑に屈して、330円の団子を食す。観光地化されている山であれば大抵は何処でも売っている、定番のおやつです。
4.筑波山登山 下山編 急坂の御幸ヶ原コースを下り筑波山口へ
下山はケーブルカーを使って楽をしたい気もしましたが、この通り長蛇の列です。寒い中待つのもなんなので、歩いて下ります。
地図上に水場のマークがありますが、この日は完全に涸れていました。
そもそもこの水、本当に飲めるんでしょうか。これだけ里に近い山だと生水は少々不安です。
ほぼ全域でケーブルカーと並走する御幸ヶ原コースは、かなりの急勾配です。低山だと思って甘く見ると痛い目にあいます。
お金で標高を買った観光客を満載したケーブルカーが、轟音と共に颯爽と登って行きます。樹林帯の下山なんてつまんないから、やっぱり乗れば良かった。
これだけの急勾配を登っているわけですから、並走する御幸ヶ原コースが急峻なのも当然と言えば当然です。
ケーブルカーの山麓駅付近がちょうど紅葉最盛期と言ったところでした。紅葉が目当てで来たのならば、登る必要は全くありませんでしたな。
足元にはフカフカの紅葉の絨毯が出来上がっていました。もういよいよ、秋も終わりです。
この辺りは見事に真っ赤です。朝夜の気温の差があるていど大きくないと、このように真っ赤にはなってくれないものらしい。
14時20分 筑波山神社まで下って来ました。
穴場の薬王院とは違って、ここはいつ来ても人でいっぱいです。
なにやら大規模な工事中でした。新しい御堂を立てようとしているのでしょうか。ますます俗っぽくなりますね。
とここでゴールするつもりでおりましたが、案の定と言うかバス停は長蛇の列です。しかもここに到着するバスは、既ににつつじが丘で人を満載した状態で降りてきます。
そういう事であれば、このまま筑波山口まで歩いて行くことにしましょう。大鳥居から30~40分程度でたどり着けるので、大した距離ではありません。
バス通りが大きくカーブしている地点から脇道に入ります。この小道は、かつての参道だったルートです。
途中から市街地の中を歩くことになりますが、このように所々に道標があるので迷うことは無いかと思います。
もう12月に入ったと言うのに、秋の花のはずのコスモスがまだ頑張っていました。意外と花期の長い花ですな。
途中にあった名もなきため池から、見事な逆さ筑波を拝むことが出来ました。最後の最後に良いものを見せもらいました。青空だったらもっと良かったのですが。
15時15分 見覚えのあるホーム跡が見えて来ました。筑波山口に到着です。
行きと同様にガラガラの北部シャトルに乗りこみ、帰宅の途につきました。
2018年最後の紅葉登山はこれにて終了です。ピークはもう山から麓に移ってしまった後ではありましたが、それでも十分に最後の残光を目に刻めました。
高尾山などと同様にすっかり観光地されている筑波山ですが、穴場のルートを選んだおかげで静かな山行きを楽しむことが出来ました。バスの乗り継ぎがあって少々面倒ではありますが、薬王院コースには手間をかけて訪れるだけの価値が十分にあったと思います。
薬王院コースの他にも、北側のキャンプ場から登るルートも穴場であるようです。もっともそちらは、車がないとアプローチできませんが。。
最後に、下山後は筑波山神社からギュウギュウ詰めのバスに乗って帰るよりは、筑波山口まで歩くことを強く推奨します。大した距離ではありません。空いているバスで余裕をもって帰れます。
<コースタイム>
つくし湖(9:45)-薬王院(10:30)-筑波山登山口(10:40)-男体山(12:10)-女体山(12:40)-御幸ヶ原(13:00~13:15)-筑波山神社(14:20)-筑波山口(15:15)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
「つくし湖入口」というバス停は路線変更の影響で現在は存在しないらしい。
kreasさま
情報提供をいただきましてありがとうございます。
本文中に脚注を追記しました。