山梨県山中湖村にある石割山(いしわりやま)に登りました。
山中湖の湖畔に立つ、ゆるやか山容をした山です。その立地上、当然ことながら富士展望に優れた山として知らています。石割山の山頂からは、11月25日頃と2月13日頃の年に2回、富士山に向かって陽が沈むダイヤモンド富士を見ることが出来ます。
ダイヤの輝きを求めて、晩秋の山中湖畔へと繰り出して来ました。
2018年11月25日に旅す。
富士五湖周辺にある山の多くは、さも当然のごとく富士展望台として扱われます。山中湖畔に立つ石割山もまた、そうした山の一つです。
石割山の標高は1,413メートルありますが、山中湖自体が標高1,000メートル近い高地に存在するため、登山口からの標高差は400メートルほどしかありません。
1時間もあれば山頂に立つことが可能であり、言ってみれば高尾山レベルの山です。それでいて眺望は抜群とあって、富士山近郊の山の中でも、特に人気の高い山です。
石割山は富士山の東側に位置しており、冬至を挟んで年に2回ほど、富士山の山頂に向かって太陽が沈む、通称ダイヤモンド富士と呼ばれる現象を見ることが出来ます。
理屈の上では、ダイヤモンド富士は365日いつでも、必ずどこからか見えているはずです。その中でも、石割山くらい富士山の間近でかつ視界を遮るもののが何もない場所から見るダイヤは、格別な光景となることでしょう。
かくして訪れた晩秋の石割山。期待していたダイヤの輝きとはまた少し違った光景が目の前で繰り広げられました。
コース
石割山山頂へは山中湖平野からアプローチするのが最短ではありますが、せっかくなのでホテルマウント富士前からスタートして、お隣の大平山とセットで登ります。行動時間4時間程度のゆるい登山です。
1.石割山登山 アプローチ編 高速バスで白鳥の湖山中湖へ
9時5分 バスタ新宿
本日はダイヤタイムの15時45分までに山頂に到達できていればよいので、朝はゆっくりとした始動です。
山中湖・平野行きのバスに乗車します。富士五湖方面へ行く中央高速バスは本数も多く、とても便利です。
バスは満員御礼です。周囲から聞こえてくる会話は、すべて異国の言葉でした。
そして山中湖行きのバスなのに、乗客の9割は途中の河口湖で下車しました。富士五湖の人気の格付がどうなっているのかは知りませんが、山中湖と言うのはあまり人気が無いのでしょうか。
11時50分 予定より少し遅れて、ホテルマウント富士前バス停に到着しました。
ここまで運賃は2,050円です。電車と路線バスを乗り継いでくるよりかは、いくらかお安く済みました。
石割山の山頂を最短で目指すのであれば、終点の山中湖平野からスタートするのが一番早いです。
本日はダイヤ目当てなので、あまり早く山頂に着きすぎてもしょうがないので、少しばかり手前からのんびり歩いて行きます。
目の前に広がるは、富士五中湖最大の面積を持つという山中湖です。冬になると遠路はるばる多くの白鳥が飛来する、白鳥の湖であります。
交通経路の都合により先週も山中湖へ訪れているので、これで二週連続の山中湖訪問となりました。
正面にあるこちらの山は、これから立ち寄る予定の大平山です。見るからに展望がよさそうな姿をしており、大いに期待が高まります。
大平山から石割山までは稜線沿いに道がつながっており、そのまま縦走して行くことができます。
山頂部を拡大してみましょう。吉田ルートの道筋と、雪に埋もれつつある山小屋がクッキリと見えております。最高地点の剣ヶ峰は、ちょうど反対側になるため、こちらからでは見えません。
湖畔沿いに整備された道を、長池公園に向かって歩いて行きます。
湖面上に白鳥が姿を見せました。
先週の訪問時には、望遠レンズを携行していなかったため、満足に写すことが叶わなかった相手です。こんなこともあろうかと、今日は始めから高倍率ズームをつけて来ました。
よく話に聞く「一見優雅に見えるがその実は水面下で必死に足を動かしている」と言うあれは、事実ではないそうです。白鳥の足には水かきが付いており、軽く動かすだけでも十分な推進力が得られているのだとか。
山中湖の白鳥は餌付けされており、水際に近づくと向こうから寄って来ます。
どうやら餌をよこしそうにないなとわかるや、踵を返して遠ざかって行きます。まったく現金な鳥ですな。まあ、しょせんは畜生ですからねえ。
逆さ富士スポットだと言う長池公園まで歩いて来ました。なにやら空気を読まない雲が、富士山の中腹を覆いつつあります。勘弁してくださいよ。今日は年に数日しかない特別な日なんですから。
これは山中湖ライブカメラでしょうか。
湖北34番と言う看板がある場所が、大平山登山口への目印です。ここを左折します。
別荘地と思われる区画を登って行きます。全国津々浦々にある別荘地には必ずテニスコートがあり、しかも必ず雑草ボーボーで放置されているのは何故なのでしょう。
12時40分 大平山登山口に到着しました。ここからようやく登山道へと入って行きます。
2.一面のカヤトが広がる好展望地の大平山
もうすっかり冬の様相となったゆるやかな登山道を、枯れ葉をザクザクと踏みしめながら登って行きます。
すっかり枯れ葉に埋もれてしまっているため、踏跡がかなり不明瞭でした。
こういう場面においては、足の裏の感触が非常に重要となります。地面が柔らかければ、それはルートから外れてしまっている証拠です。長年に渡って踏み固められ来た道と言うのは、感触だけで何となくわかるものです。
途中で一度林道と交差します。この林道沿いに登っても山頂に到達できますが、少しばかり遠回りです。
林道を横断すると、少しばかり道の傾斜が増して来ました。相変わらず踏跡は不明瞭なままですが、徐々に背の高い木が少なくなり展望が開けてきます。
やがて木はなくなり、背丈を超えるような高さのススキが生い茂る一帯へと入ります。
ここで山頂部がお目見えです。実に気持ちの良い草原です。これは間違いなく良い山頂である予感がします。
ススキ越しに富士山が姿を見せました。これ以上無いくらいに、秋の終わりを感じさてくれる光景です。
13時30分 大平山に登頂しました。
登山口から1時間とせずに登頂です。ここは手軽に登て、とても良い山だと思います。
山頂の様子
広々とした広場になっており、多くの登山者で賑わっていました。山頂に立つアンテナは地上波テレビ関連のものです。
山頂からは、山中湖の全容を一望することが出来ます。ここからではクジラ型には見えませんね。
湖を挟んでお向かいに見える山は鉄砲木ノ頭(1,291m)です。あちらもカヤトの広がる、見るからに展望のよさそうな山です。
遠く彼方には南アルプスの山並みが連なります。11月も下旬だと言うのに、まだあまり白くなっていません。今年は暖冬だという事なので、南アだいぶも冠雪が遅れているのでしょう。
東には、これから向かう石割山へと続く稜線が連なります。ふむ、これは間違いなく良い稜線です。
石割山の右手には丹沢山地の山並みが連なります。普段見慣れた姿とは反対向きなので、どれがどの山かよく分かりませなんだ。
そして言うまでもなく、大平山もまた最高の富士展望台であります。現時点での太陽は、富士山頂よりもかなり左の方にあります。これから右斜め下に向かって落ちて行くのでしょう。
大平山からの眺望を、十分満足するまで堪能致しました。ボチボチ次へ向う事にしましょう。ここから先の道は、首都圏近郊在住のハイカーにはすっかりお馴染みの、東海自然歩道となります。
3.石割山登山 登頂編 ススキの草原が広がる爽快な稜線を歩き、石割山の山頂へ
正面に道志山塊最高峰の御正体山(1,681m)の姿が良く見えました。この山は一言で言うと、とても地味な山です。
夜中に一度凍結した地面が融けたらしく、道が泥濘状態となっていました。転んだら大惨事なので、平坦な道といえど油断は禁物です。
勿体ないくらい大きく高度を落として行きます。縦走と言うのはそういうものです。
そして直後に登り返し。縦走と言うのはそういうものです。大事な事なので二度言いました。
登山道は別荘地のすぐ脇を通っています。こんな山の上に作ったら、そこに至る道を維持するだけでも大変でしょうに。
目の前に平尾山が姿を見せました。大平山ともよく似た、なだらかな丘のような山容をしています。
東海自然歩道という事もあって道は大変よく整備されていますが、土がすっかりえぐれてしまい、浮き出た階段が障害物競走状態になっている箇所もありました。登山者の多い山にありがちな光景ですね。
14時20分 平尾山に登頂です。
この通り、この場所もまた最高の富士展望台の一つであります。
山頂の様子
大平山ほどではありませんがそこそこ広く、ベンチも二つ用意されています。もっとも、うち一つは壊れていてシーソー状態でしたが。。
平尾山より大平山を望む。どちらも山名に平と言う文字が含まれているだけの事あって、のっぺりした姿をしております。
さあ、あまりのんびりしすぎてダイヤタイムに遅れても笑えないので、次へ行きましょう。
石割山に近づくにつれて、ススキの代わりに熊笹の姿が目立ち始めました。刈り払いが行われていなければ、登頂自体が困難な藪山なんでしょうね、きっと。
山頂直下は割と急峻です。すっかりえぐれて剥き出しとなった土の斜面は滑りやすく、特に下る際に注意を要します。
特に急な場所にはロープが張られているので、ファイトーいっぱーつな感じで登って行きます。
14時55分 石割山に登頂しました。
平尾山から僅か35分での到着です。このエリアの標準コースタイム設定はかなり甘めですね、老若男女が訪れる、半分は観光地のような場所だからでしょうか。
4.石割山からのダイヤモンド富士を鑑賞する
時刻はまだダイヤタイムの45分前でしたが、お目当ては一緒と思われる先行者が既に2名待機していました。
本日は珍しく気合を入れて、三脚を担いできました。という事で準備万端整いたりです。さあ落ちてこいダイヤモンド。カマーン!
うーん。薄い雲が出ていますが、それが陽の光を拡散してしまうらしく、実際の輪郭よりも大きな光の玉のような見た目になってしまっていますね。
これでも目一杯絞り込んでいるのですが、光芒が出てくれません。これではダイヤにはならないのかな。
ダイヤタイムが近づくにつれて、徐々に山頂に人が集まって来ました。
いよいよその瞬間が目前に迫って来ました。ダイヤと言うよりはむしろ超元気玉富士とでも銘打った方がしっくりきそうな見た目です。
完全に重なったところで、何となくですが光芒っぽいものが出てくれました。鈍い輝きではありますが、一応ダイヤになってくれたのかな。
という事で、この後はトワイライトタイムが始まります。この後の光の変化をずっと眺めるのもまた面白くはありますが、素直に陽があるうちに引き上げることにします。
5.石割山登山 下山編 日没後の闇が迫る前に、足早に平野へ下山
16時 そそくさと山頂を辞去し、足早に下山を開始します。
下山を急いでいるのには理由があります。暗くなる前に下山したいと言うのも確かにありますが、もう一つの理由としては、山中湖平野を発つバスの時間が、17時6分発の便を逃すと次が18時30分まで無いからです。
本当は帰りも高速バスを使いたかったのですが、すでに満席で予約できなかったのです。
石割山の山頂直下は割と急峻です。そういう意味でも、ヘッドランプ下山ではなく、暗くなる前に下ってしまった方が無難だと思います。
中腹付近に石割山神社があります。今は先を急いでいるので、参拝はせずに素通りします。
分岐の東屋まで下りて来ました。最短で平野を目指すなら右へ。左に進めば石割の湯方面です。
温泉にゆっくり浸かってから18時30分のバスで帰ればいいじゃない。と言う悪魔のささやきが脳内で聞こえた気もしますが振り切ります。
と言うのも、18時30分のバスだとその後の接続がイマイチで、帰宅時間が驚くほど遅くなってしまうからです。
右に進むと、全部で403段あると言う石段地獄が姿を現します。思わずうへーとなる光景ですが、ここを行くのが最短とあっては仕方がありません。
この石段がまた、微妙に歩幅と合わないせいで極めて歩きにくい代物です。
途中で90度方向転換して、すぐに第二弾が始まります。眩暈を起こしそうになるこの高度感。
下りきってから振り返るとこんな光景です。こちらから登らなくてよかったと心底思う光景でありました。
という事で、ここが石割神社の表参道となります。多少遠回りですが、登るときは石割の湯方面から回り込んだ方が楽だと思います。
見かけると何故か必ず写真に収めたくなる、狛犬のこの不思議な魅力よ。
16時50分 山中湖平野に到着しました。
山頂からここまで、標準コースタイム通りに歩いたので間に合わない時間でしたが、実際は10分以上の余裕がありました。やはりこのエリアの標準コースタイムは甘めです。
せっかく急いで戻ってきたのに、結局バスは10分以上も遅れてバス停に現れました。渋滞しているのばかりはどうにもなりません。
18時5分 富士山駅まで戻って来ました。
次の大月行きの電車まで30分以上の空きがあります。この時間でも乗り継ぎはイマイチです。
電車を待つ間に、駅ビルの地下にある食堂でご当地名物の吉田うどん頂きました。コシの強い麺がとてもおいしい。
駅のホームから2週連続で同じ光景を眺めつつ、鈍行列車に乗り込み帰宅の途につきました。
ダイヤモンド富士観察日記はこれにて終了です。雲の影響で、富士山頂に燦然と煌めくダイヤモンドの光芒とはまいりませんでしたが、それでも幻想的で大変貴重な光景を目の当たりにすることが出来ました。
ダイヤを見ることのチャンスは日数が限られており、なかなか思うようには休日かつ快晴に行き当たるのは難しいのかもしれません。冬至を挟んで2月中旬にもう一度チャンスがあるので、うまい具合に休日と重なってくれるようであれば、再戦を挑むかもしれません。
ダイヤモンド富士は別として、石割山が最高の富士展望台の一つであることに疑念の余地はありません。コースタイムも手ごろで、あらゆる人にオススメの山です。晩秋から冬にかけての空気の澄んだ季節に、白鳥と最高の富士展望に出会いに山中湖畔へと繰り出してみては如何でしょうか。
<コースタイム>
ホテルマウント富士前バス停(11:50)-大平山ハイキングコース入口(12:40)-大平山(13:30~13:50)-平尾山(14:20)-石割山(14:55~16:00)-山中湖平野(16:50)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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