黒金山 秩父往還の傍らにひっそりと佇む、奥秩父主脈の展望台

ササ原下展望台付近から見た黒金山
山梨県山梨市にある黒金山(くろがねやま)に登りました。
甲府と秩父地方を結ぶ秩父往還(現在の国道140号線)の傍らにに立つ、奥秩父前衛の山の一つです。山梨百名山に名を連ねている一座ですが、隣接する乾徳山や景勝地として名高い西沢渓谷と比べて知名度が低く、ほとんど注目されることの無い静かなる頂きです。
麓の青笹集落から登る破線ルートを辿り、地味で静かな奥秩父のマイナーピークを訪問してきました。

2022年8月11日に旅す。

黒金山は乾徳山と西沢渓谷との間の尾根上にある山です。ピラミダルな美しいシルエットを持つ山ではありますが、交通アクセスが良好とは言い難い深部にあるため、訪れる者のあまりいない極めてマイナーな山となっています。
鶏冠山から見た黒金山
この山へ単体で訪れるだけの訴求力にはイマイチ乏しい山であるため、お隣の乾徳山とセットで登られることが多いようです。乾徳山とは尾根で繋がっており、縦走することが可能です。

私も当初はこの縦走の方向で計画を温めていました。しかしこの乾徳山から黒金山への縦走ルートは、公共交通の利用を前提とした登山者には全くもって易しくありません。

縦走計画としては最も一般的であろう、乾徳山登山口から西沢渓谷入り口へと抜けるコースの標準コースタイムは、堂々の10時間越えとなります。
乾徳山から黒金山縦走のコースマップ
それに対して、始発のバスが乾徳山登山口に到着するのは9時で、最終バスが西沢渓谷入口を発つのは16時25分です。行動可能時間は7時間20分しかありません。

となると、トレランに片足を突っ込むようなペースで駆け抜けるのか、もしくは行き帰りのどちらかをタクシーにするしかありません。そんなに速くは歩けない私は、必然的にタクシー利用しか選択肢がありません。

どうもここ最近の私は、事あるごとにすぐにタクシーに頼ってしまう、すっかり腑抜けて怯懦な登山者と化してしまった感があります。昔のお前はもっと挑戦的だっただろう?環境意識高い系ハイカーとしての矜持を失ってしまったのか?

否!断じて違う。この溢れんばかりのタクシー代をケチりたいと言う強い想い高い環境意識は、今もなお我が身を熱く焦がし続けているのです。

そこで今回私が目を付けたのが、国道140号線沿いの青笹集落から登るルートです。標高差が1,400メートルを超えるタフな行程ではありますが、コースタイム的にはバス利用でもギリギリ日帰りでピストンが可能です。
青笹集落の入口
深い考えも無しに青笹ルートを選択した私は、このルートが山と高原地図上では破線扱いとなっている事実には、さほど関心を払ってはいませんでした。大したことは無かろうと、端的に言ってしまえば少し舐めていました。

破線ルートを甘く見た私を待ち受けていたのは、お約束とも言える道迷いでした。沢沿いに作業道が複雑に絡みあうこの青笹ルートは、取りつきからしてとにかく道がわかり辛い。
青笹川沿いの作業道
道迷いによるタイムロスもあって、もともとギリギリであったコースタイムは極めて綱渡り的なものとなっていまいました。

何とか帰りのバスには間に合ったものの、時間にまったく余裕の無い苦しい山行きでありました。ヘロヘロになりつつ青笹ルートピストンで黒金山に登って来た一日の記録です。
牛首のタル付近から見た黒金山

コース
220811黒金山-map
天科(あましな)バス停から黒金山を往復します。標準コースタイムで6時間20分の行程です。青笹集落から黒金山登山口までの道は、山と高原地図では破線扱いとなっています。

少々ややこしいのですが、山梨交通と山梨市営バスの天科バス停はそれぞれ別の場所にあります。往路は国道上にある山梨交通のバス停からスタートし、帰路は山梨市営バスを利用します。

1.黒金山登山 アプローチ編 秩父往還上の小集落、青笹を目指す

6時55分 JR高尾駅
塩山駅でのバスの乗り継ぎ時間の都合もあり、いつもよりも少しゆったりとした時間に始動します。早朝の時間帯の電車に比べると、明らかに乗客の数が多く混雑していました。
高尾駅のホーム width=
私は普段から始発電車での始動に割とこだわりますが、それは行動時間を少しでも長くとるためであると同時に、空いているからと言うのも理由の一つです。

8時23分 塩山駅に到着しました。到着と同時に大勢の登山者が一斉にホームへと降り立ちます。はて、奥秩父と言うのはいつからこんなに人気の山域となったのでしょうか。今日はバスが混雑しそうです。
塩山駅のホーム

バスロータリーが工事中であったため、バス停の位置がいつもとは違う場所に移動していました。
塩山駅のバスロータリー
ぞろりと行列を作る登山者達に、山梨県警の警察官が登山届を出すようにと注意喚起をして回っていました。暑い中、お勤めまことにお疲れ様です。

8時30分発の西沢渓谷行きの始発バスに乗り込みます。臨時便が出て合計2台となりましたが、それでも足りず立ち客が何人か出ました。かくいう私自身も、ギリギリ座席にはありつけませんでした。
西沢渓谷行きのバス
始発バスが8時30分発と言うのはいかんせん遅すぎで、利用者の大半が登山者であるにもかかわらず、あまり登山の都合は考えられていないような時刻表設定です。

せめて始発があと1時間早くに出発してくれれば。そして欲を言えば最終バスがもう1時間遅ければ、甲武信ヶ岳を始めとした奥秩秩父のいくつかの山への日帰り登山のハードルがグッと下がるはずなのですがね。

9時25分 天科バス停に到着しました。「アイツは一体どこへ行く気なのだろう?」と言う、他の乗客からの好奇の眼差しを受けつつ、一人バス停に降り立ちます。
天科バス停

先ほども少し触れましたが天科バス停は2ヵ所に存在します。山梨交通のバス停は、集落の中心からは少し外れた国道140号上にあります。
国道140号上にある山梨交通の天科バス停

国道からは歩行者用のスロープが集落の中心へと続いていました。しかし利用者はほとんどいないと見えて、雑草が好き放題に繁茂していました。
天科バス停のスロープ

スロープを下り集落の中心に進むと、もう一つの天科バス停がありました。こちらのバス停は山梨市営バスのものです。
山梨市営バスの天科バス停

帰路ではこちらのバス停を利用する予定です。最終バスがここを通るのは16時36分です。それまでに標高差おおよそ1,400メートルを登って下ってしてくる必要があります。
天科バス停の時刻表

集落の中を道なりに進み、左手にこの赤い鉄橋が見えたら、左折して笛吹川を渡ります。
天科の鉄橋

奥秩父主脈の山々を源頭に流れ下る笛吹川です。上流にある西沢渓谷は、この笛吹川の源流の一つです。
青笹集落を流れる笛吹川

下流側に目を向けると、大きく傾いてしまった吊り橋がかかっていました。既に橋としての機能が失われていることは明らかです。危ないと思うのですが、撤去したりはしないものなのでしょうか。
青笹集落の吊り橋

目指す黒金山はこの先にあるはずですが、どんよりとした雲に覆われていました。果たして私が登頂するまでに、この雲は取れてくれるのでしょうでしょうか。
220811黒金山-018

笛吹川を渡った所で、青笹集落の入口であることが掲げられていました。笛吹川支流のその名も青笹川の周囲に広がる、極めて小さな集落です。
青笹集落の入口

署名は入っていませんが、恐らくは温絵文(ぬくえもん)氏の作と思われる鳥瞰図が掲げられていました。
青笹集落の鳥瞰図
この作品を描いたのであろう温絵文氏はもともと山梨市の職員で、現在はイラストレイターとして活動しています。西沢渓谷のネトリ広場や大弛峠などにも作品が展示されており、目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

街中にさり気なく、黒金山の登山口である案内がありました。それでは張り切って、登山を開始しましょう
青笹の黒金山登山口

2.破線ルートで盛大に道を間違える

青笹川に沿って奥へと道が続いています。この先はしばしの間、この川に沿って進むことになります。
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道は川沿いにまっすぐに続いているように見えますが、右側へ進むようにとの道標が現れました。ここは素直に道標の導きに従います。
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案内に従って進むと、林道と思われる舗装された道に出ました。下手に頭上が開けているせいで、先ほどから陽射しが厳しいです。はやく樹林帯の日影に逃げ込みたい。
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この舗装された道はどうやら砂防堰堤の工事のための道であったらしく、すぐにまた山道に復帰しました。
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あまり歩かれてはいないらしく道はやや荒れ気味です。それでも今のところは踏跡もしっかりと明瞭で、特に破線ルートらしさは感じられません。
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川を挟んだ両岸に石垣が残っており、かつては橋が架かっていたのであろうことが伺えます。西沢渓谷のようなトロッコ軌道でもあったのか、かなり人の手が入っていた痕跡を感じる谷です。
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広々とした広場状の空間に出ました。道はまっすぐに続いているように見えますが。ここは右上に進むのが正解です。
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良く見ていないと見落としそうになりますが、この通りしっかりと道標もあります。
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この青笹ルートを歩いてみようと言う人に一つアドバイスするとしたら、歩いている間はとにかく右上方向に注視し続けてください。川沿いに真っすぐに進む道は全てトラップで、正しい道は常に右上の斜面上にあります。

崩落気味の高巻きのトラバースを進みます。繰り返しになりますが、沢沿いにある道はトラップです。絶対にそちらへ進んではいけません。
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途中で右側から流れて来た地図には記載の無い小さな沢を渡ります。・・・実はこの時既に私は罠にはまって道を間違えていたのですがね。正しいルートは、この沢を渡らずに右上の斜面を高巻きます。
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まだ間違いに気づいていなかった私は、これまで明瞭だった踏跡が途絶えたことに違和感を抱きつつも、この崩れかけた石垣を強引に登って前進を続けてしまいました。
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地図を見る限りでは、沢沿いを外れて北側へ進路を転じて急登が始まるはずなのですが、一向に沢から離れる気配がありません。進むにつれて踏跡がどんどんと怪しくなって行き、流石に何かがおかしいと勘づきました。
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あらためて現在地を確認すると、進行方向から見て右側の尾根上に取り付くのが正しいルートであるように思えます。しかしいくら引き返しても、北側へ取り付く分岐らしきものが現れません。
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どこまで戻れば良いのかもはっきりせず、時間ばかりが空費されて行きます。であればここは少々強引に、道なき斜面を這い上がって正しいルートへの復帰を図りましょう。

※あなたの生命と財産にかかわる重要な警告※
正規の登山道を外れて強引にルートに復帰しようと言う試みは、滑落などを誘発しかねない大変危険な行為です。自分の事は100%棚上げにして言いますが、絶対に真似をしないでください。この場合は、見落とした分岐地点まで引き返すのが唯一の正解です。

急斜面をかなり強引に登り尾根に取り付くと、すぐに正規の登山道と合流しました。やれやれな展開ですが、この一連の道迷いによりすでに30分以上の時間を空費しています。
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これによりもともとあまり余裕の無かったコースタイムは、完全にバッファがゼロの状態となってしまいました。先を急がないといけませんねえ。

さっくりと間違った顛末を地図で示すとこのようになります。堰堤があった辺りの右側に高巻きの登山道の取り付きがあったはずなのですが、それを見落として沢沿いに進んでしまったのが敗因です。
黒金山 道迷いした場所の地図
繰り返しになりますが、道に迷った時は迷った地点まで引き返すのが鉄則です。このような強引な復帰は推奨しません。

YAMAPとかジオグラフィカなどのGPSアプリを導入していれば、このような間違いはしないで済むのかもしれませんが、生憎と使ってはいませんでした。

何故と問われても特段の理由はなく、今まで紙の地図とコンパスで事足りていたからなのですが、考えを改めるべき時なのだろうか。

3.胸を突く急登が続く、黒金山登山口までの道程

正規ルートには合流したものの、踵が痛くなるような急勾配な道が待ち受けていました。かつては林業に使われていたのであろう、残置ワイヤーが多く目につきます。
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薄暗い杉の植林帯を抜けると、周囲はクヌギやコナラなどの自然林に変わりました。かなり不明瞭ではあるものの、踏み跡もしっかりと続いています。
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さらに標高が上がると、周囲は明るいカラマツ林に変わりました。この辺りの雰囲気は、大菩薩嶺の周辺の山ともよく似ています。
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目指す黒金山の姿がようやく視界に入りました。まだまだ先は長そうです。やはり標高差1,400メートルと言うのは、一筋縄ではいきませんな。
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すぐ下に未舗装の林道があるのが見えます。この林道は一般車の通行も可能で、車でお越しの人はこの先にある黒金山登山口まで入ることが出来ます。マイカー利用だと、実は驚くほどあっけなく登れる山なんですよね。
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荒れ放題の林道と合流しましたが、先ほど下に見えていた林道とはまた別の道です。やたらと林道だらけな山域ですね。
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12時 黒金山登山口まで登って来ました。前述の通りここまで車で入れます。言ってみれば、ここまでの道程はすべて、アプローチでしかなかったと言う訳です。やけに苦労するアプローチでしたな。
黒金山登山口
広々とした駐車スぺ―スには、一台だけ車が止まっていました。黒金山の圧倒的な人気の無さ加減が伺えます。

目の前にドーンと見えているこの山が黒金山なのかと思いきや、これはお隣の乾徳山でした。黒金山はもっと右の方にあり、ここからだと姿は見えません。
黒金山登山口から見た乾徳山

反対側には奥秩父主脈の山並みが連なります。奥に見ているいのは笠取山(1,953m)なのかな。いかんせん、地味すぎて良くわかりません。
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ここから山頂までは、まだあと2時間ほどの道程です。既にだいぶお疲れ風味ではありますが、頑張って後半戦へと突入しましょう。
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4.黒金山登山 登頂編 奥秩父主脈の山並みを一望する静かなる頂へ

周囲の森はいつしか、ブナが目につくようになって来ました。ここまで登ってくると、急登は鳴りを潜めて緩やかで気持ちの良い登山道です。
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小さな沢や沼地が点在する、しっとりとウェットな空間です。ぬかるんでいる場所もあるので、足元には要注意です。
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まとまった水流があったので、ここで顔と言うか頭全体を洗ってクールダウンしました。冷たくて気持ちがいい。
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水浸しエリアを抜けると、黄色い花の咲く笹原の急登が始まりました。
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やたらと沢山咲いていましたが、この花は一体何でしょう。黄色い花は全般的に識別が難しい気がします。
220811黒金山-049

背後の展望が開けました。見えているのは雁峠付近の光景だと思うのですが、イマイチ同定に自信が持てません。この付近の奥秩父主脈山並みは、いかんせん外見的特徴が乏しすぎるのですよ。
ササ原下展望台付近からの眺望

この辺りは一帯は、ササ原下展望台と呼ばれているようです。なるほど、名前の通り笹原の広がる展望の良い場所です。
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ここまで登って来て、ようやく目指す黒金山がお目見えしました。左ののっぺりとしたピークが黒金山で、右の尖った山が牛首と呼ばれるピークです。登山道は牛首の山頂は通らずに脇を巻いています。
ササ原下展望台付近から見た黒金山

ということで、牛首を巻くトラバース地帯へと入って行きます。このトラバース地帯は全般的に足元が狭く歩きにくいので、慎重に参りましょう。
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一部視界が開けており、本来であらばここで富士山が正面にドーンと見えます。残念ながら本日は雲隠れを決め込んでしまっておりますが、何となく裾野らしきものだけが見えていました。
220811黒金山-053

牛首の本体に取り付くと、何時しか周囲はいかにも奥秩父らしい苔生すコメツガの森へと変わりました。奥秩父の山はどこも、大体標高が2,000メートルを超える辺りからこの光景に変わります。
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これまた奥秩父らしく、シャクナゲも多く自生していました。花の季節はとっくに終わっており、緑々とした葉だけが生い茂っていました。これはもしかしなくても、完全に訪問すべき時期を間違っているのではなかろうか。
220811黒金山-055

長々としたトラバース地帯を抜けたところで、ようやく黒金山の本体が目の前に姿を見せました。
牛首のタル付近から見た黒金山

13時20分 牛首のタルに到着しました。その名の通り、黒金山と牛首との間の鞍部となっている場所です。
牛首のタル

ここからも視界が開けて、正面に富士山がみえます。・・・今は見えていませんが、晴れていれば見えます。
牛首のタルからの展望

このピョコっと突き出しオデキみたいな場所が乾徳山の山頂です。最大望遠で覗いたら、山頂に居る人影らしきものも小さく見えました。
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登山の対象としてはほぼ無名に等しい黒金山とは違って、乾徳山の方はそれなりに人気のある山です。私も遥か大昔に一度登っています。

山頂まではあと30分程の道程です。ラストスパートをかけて行きましょう。
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山頂の直下には、これまた奥秩父らしい苔生す森の光景が広がっていました。主脈からは少し外れた位置にある前衛部の山であっても、こうしてしっかりと奥秩父らしさがありました。
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フカフカのコケに癒されます。すでに帰りのバス時間が結構ギリギリで、ゆっくりと癒されている暇などは無いのですが、それでも立ち止まらずにはいられない光景です。
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山頂が見えて来ました。
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13時50分 黒金山に登頂しました。道迷いで浪費してしまった時間を差し引いてもなお、なかなか骨のある山でありました。
黒金山の山頂

国師ヶ岳(2,592m)が目の前にあります。奥秩父の山の中でも最大の山体容量を持つと言うこの山は、確かに圧倒的なまでのマッスの持ち主です。・・・マッスと言ってみたかっただけです。はい。
黒金山から見た国師ヶ岳

国師ヶ岳の右手には、甲武信ヶ岳(2,475m)や木賊山(2,469m)の姿が見える・・・はずですが、こちらは生憎と雲隠れを決め込んでいました。
金山から見た甲武信ヶ岳

左手には甲府盆地越しに南アルプスの山並みが見える・・・はずですが、こちらもすっぽりと雲の中です。まるで黒金山の周辺だけが、何かの力に守られているかのように晴れている状態でした。
黒金山からの眺望
展望の無い地味山なのかと思ききや、意外にも眺めの良い頂でした。であるにもかかわらず、全くと言って良いほどに人気がないのは、恐らく単純にどこから登るにしても遠いからなんでしょうな。

5.黒金山登山 下山編 バス時刻が迫る中を駆け下る怒涛の下山行

名残惜しい気もしますが、僅かな滞在時間で山頂を後にします。
黒金山の登山道

14時25分 駆け足気味に下って、あっさりと牛首のタルまで戻って来ました。ちなみにここを尾根沿にまっすぐに進むと、西沢渓谷へと下る縦走路が続いています。もう時間が無いので当然行きはしませんがね。
牛首のタル

結局最後まで富士山は姿を見せてはくれませんでしたな。まあ、夏山は正午を過ぎたらこうなってしまうのは致し方ありません
220811黒金山-070

往路でも少し触れましたが、牛首直下のトラバース地帯は足元があまりよろしく無いので、特に下りでは注意を要します。
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サクサクと下って、ササ原下展望台まで戻って来ました。この先はもう特に危険な個所も無いので、ペースを上げて行きます。
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黄色い花の咲く水浸しエリアを通り抜けつつ、再び頭を洗ってクールダウンします。これぞ坊主頭の特権。
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15時10分 黒金山登山口まで戻って来ました。登って来た時に一台だけ停まっていた車は、既にいなくなっていました。
黒金山登山口
最終バスの時間までは、残すところあと1時間26分です。さて果たして間に合うのか。

西日が差し始めた急坂を、半分駆け足のようなペースで下ります。途中に紛らわしい枝尾根があったりするので、くれぐれも迷い込まないように注意を要します。
220811黒金山-075

往路で強引に正規ルートへ復帰した地点へ戻って来ました。左側から登ってくるのが正しい道なのですが、私は正面から無理やり登って来ました。
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正しいルートに沿って下ります。往路に間違って渡ってしまった小さな沢を見下ろす位置に、本来の登山道がありました。
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国土地理院の地形図を見る限りでは、この砂防堰堤のある辺りが、間違えたルートとの分かれ目であったはずです。なるほど下を通ってしまっていた訳なのですが、しかし分かれ道がどこにあったのかよくわかりません。
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結局具体的に間違えた地点がどこなのか分からぬうちに、いつの間にか往路と同じ道に復帰していました。それくらい分かり難い分岐だったと言う事なのでしょうが、答え合わせが出来無かった事に何となくモヤモヤしています。
220811黒金山-079

集落まで戻って来ました。ふうやれやれ、何とか帰りのバスには間に合いそうです。
220811黒金山-080

青笹の集落を後にします。青笹ピストンはなかなか骨のある行程でありましたよ。
220811黒金山-081

16時25分 天科バス停に戻って来ました。バス時刻の11分前と言う、ギリギリの綱渡り状態なゴールでありました。
天科バス停
とりあえずバスが来るまでの間に、着替えを済ませつつ体をアルコールティッシュで拭って、公共交通機関利用のための最低限の身だしなみを整えます。全身が汗まみれですからね。

本当は温泉に寄って行きたいのですが、最終バスでの撤収となるとそれはかなわぬ夢です。

ピッタリと時刻表通りに現れたバスで撤収します。西沢渓谷で乗せた客を満載しているのかと思いきや、意外にも空いていました。朝2台のバスに分かれて乗っていた大勢の登山者たちは、一体どこへ消えてしまったのでしょうか。
山梨市営バス

山梨市営バスの行き先は、塩山駅ではなく山梨市駅になります。いろいろと寄り道をするため結構時間がかかり、駅に着いた時には17時20分を回っていました。
山梨市駅

行きと同様に鈍行列車に揺られて、帰宅の途につきました。
山梨市駅のホーム

破線ルートを甘く見ていた。今回の山行きの感想はそれにつきます。道が分かり難いらしい言う事前情報は得ていたにもかかわらず、それでも間違えてしまったのは、コースタイムに余裕が無く若干の焦りがあったことも少なからず影響していたと思います。
黒金山に公共交通機関を利用して登ろうと思った場合、乾徳山からの縦走にしろ西沢渓谷からピストンにしろ、標準コースタイムよりも早いペ-スで歩かねば最終バスには間に合わない計算となります。そのため、たとえどんなに道が分かり難かろうと、この青笹ピストンが最も現実的な選択肢になろうかと思います。いずれにせよ、公共交通機関利用の登山者にとっては、あまり優しくはない山であると言えます。
牛首のタルや山頂から眺めは素晴らしいものがありますが、やはりあえてこの山を行き先に選ぶ訴求力には欠けている山であると思います。人気の山の喧騒を避けて、静かな山行きを楽しみたいと言う人におススメです。

<コースタイム>
天科バス停(9:30)-黒金山登山口(12:00)-牛首のタル(13:20)-黒金山(13:50~14:05)-牛首のタル(14:25)-黒金山登山口(15:10)-天科バス停(16:25)

黒金山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. AK より:

    去年と一昨年はオリンピック用の特別カレンダーで山の日がどっか行ってましたけど、今年3年ぶりの8月11日山の日はなかなかお天気に恵まれたな〜と思ってましたら、オオツキさんはこんなマイナーどころへ!いらしてたんですね〜笑
    道迷いとバスのタイムリミットで焦る心、しかもひとりぼっち…ドキドキしながら読みました!私も何度か経験ありますので…(ひとりで登山者の少ない道で焦ってると、かなりの確率で間違えてしまいます…)
    バスにギリ間に合ってよかったですね。破線はホント要注意なんですね〜
    あわせて乾徳山レポートも読ませていただきました。地図を忘れず持って、いつか必ず行ってみたいと思います!…黒金山じゃなくて、乾徳山へ笑

    • オオツキ オオツキ より:

      AKさま
      コメントをありがとうございます。

      破線ルートと一言に言っても、破線扱いにするしないの厳密な基準があるわけでもなく、地図の執筆者の主観によるところが大きいようです。

      実線ルートと全く遜色がないようなグレードの道な事もあれば、今回のように注意していても迷ってしまうようなわかり難い道の事もあります。こればかりは、実際に歩いてみないことには判断がつきません。

      乾徳山はとても良い山ですよ。首都圏近郊でクサリ場のある山をお探しの人には大いにオススメです。

  2. もうもう より:

    オオツキ様

    これまでのブログにGPSの話が出てこなかったので不思議に感じていましたが、地図読みできるとヤマップなんかは不要なんですね。

    自分が本格的な登山を始めたときには登山GPSが存在していましたので、残念ながら地図読み能力は備わっていません。川沿いの登山道は川を渡るのか、高巻きするのか、そのまま進むのか悩むことが多いです。

    地方のバス会社はHP見ても分かりにくかったりしますが、オオツキさんは事前の調査が良くできていますね。

    • オオツキ オオツキ より:

      もうもうさま
      コメントをありがとうございます。

      普段破線ルートを歩くときや雪山に登るときなどは、保険としてガーミンのGPSレシーバーを持ち歩くのですが、今回はそれすら持っていっていませんでした。大したことはなかろうと言う慢心があったのは否めません。

      地図は読めるにこしたことはありませんが、バックアップとしてGPSも大いに活用すべきであると思います。地図はどちらかと言うと道に迷わないためのものであって、迷ってしまってから広げても、あまり意味はありませんからね。

      • アオイ より:

        初めまして、こんにちは。
        8年ほど前、友人と登山デビューしたてのころにこの山に登りました。まったく同じコースで登りましたが、当時は若さゆえ体力ももつだろうと安易な考えで登りましたが下山は体ガタガタでした^^;

        写真の通り、倒れた伐採がとてもおおく下山途中道を外れてしまい友人と一度引き換えしたのを覚えております。
        来月、大嶽山神社にいくので調べていたらまさか過去にいった青笹の場所でした。当時を思いだして楽しくブログ拝見しました。(^^)

        • オオツキ オオツキ より:

          アオイさま
          コメントを頂きましてありがとうございます。

          登山を始めて間もない時期に青笹ピストンとはまた、マニアックな登山を楽しんでおられますね。このルートを普通にこなせるのであれば、その後はもはや怖いものなし状態だったのではないでしょうか。

          また気軽にご訪問ください。

  3. MM より:

    オオツキさん、こんばんは。
    山梨百名山はマイナーなところとメジャーなところの差が激しいですね。山梨県さんも百名山に選出しているなら、破線ルートはもう少し整備されてもいいのに(^^;

    テレ東のバス旅番組がコミュニティバスを駆使してバスルートを繋ぐのですが、僻地登山をいかにして繋ぐかという番組があったら間違いなくオオツキさんが勝つと思います!

    • オオツキ オオツキ より:

      MMさま
      コメントをありがとうございます。

      西沢渓谷側から登るか、乾徳山から縦走すれば道はそこまでひどくはないようです。(なお、バス時間。。)

      アプローチについては事前にかなり調べましたが、車をデポしておいて帰りはバスかタクシーで回収するなどの変則的な縦走をしている人がほとんどで、青笹から往復している人は極めて少数派でした。

      バス停の位置関係の事前リサーチはgoogle street viewさまさまです。前もって下見をしていなければ、これだけスムーズな移動はできなかったと思います。

  4. がおたん より:

    山と高原地図を見ても確かに破線ですね。また、途中で駐車場に遭遇するのはテンション下がります。よくこのコースを選ばれたと感心しました。
    仰るようにバスの時間は検討して欲しいですね。臨時バスを運行するくらいなら、もう一本前後に設定してくれれば需要も広げられると思います。

    • オオツキ オオツキ より:

      がおたんさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      苦労して登った先に駐車場があると興ざめするのは、公共交通機関利用の登山者にはありがちな光景ですよね。バスの利用を前提とすると、現状は西座渓谷ピストンですら時間的にかなり厳しく、好む好まざるにかかわらずこのルートしか選択肢がありませんでした。