蓮華岳 秋の針ノ木雪渓と後立山連邦南端からの大展望【day1】

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長野県大町市と富山県立山町にまたがる蓮華岳(れんげんだけ)に登りました。
後立山連邦の最南端に位置しており、北アルプスの山の中では比較的マイナーな穴場的な存在の一座です。扇沢を起点とした通称針ノ木サーキットと呼ばれる縦走コースのすぐ隣に位置してますが、ルートからは僅かに外れているため訪れる人は稀です。
テントを担ぎ1泊2日の行程でサーキットコースを巡って来ました。

2024年10月1日に旅す。

時は秋も深まって来た10月の初頭。北アルプスの通称針ノ木サーキットと呼ばれているコースを縦走してきました。扇沢駅を基点として周回するロングコースです。
針ノ木サーキット
世の中にはこのルートを日帰りで踏破する豪脚のハイカーも存在するようですが、ゆるふわ週末ハイカーである私は、無理をせずに1泊2日の行程で歩いて来ました。

今回は縦走1日目の記録です。初日は針ノ木峠にテント張り、針ノ木サーキットのルートからは少し外れた位置にある蓮華岳まで足を伸ばしました。
針ノ木峠のテント場
なお針ノ木峠に立つ針ノ木小屋は9月末までの営業で、10月に入ると小屋は閉鎖されています。テント場は使用できますが、売店の営業は無いため、必要な水と食料を全て自分で担ぎ上げる必要があります。

あまりキャパシティが大きくなく、夏山シーズン中の週末土日には大混雑するテント場ですが、オフシーズンの平日と言うこともあって空いていました。

日帰り勢にはスルーされてしまうことの多い蓮華岳ですが、北アルプスの中ほどに位置する山であるため、山頂からは周囲の名だたる名峰たちを一望する大パノラマが広がります。
蓮華岳の山頂部
貸し切り状態の山頂から、大展望を思う存分に満喫した縦走1日目の記録です。

コース
針ノ木サーキットのコースマップ
扇沢駅からスタートして、既に雪は無くなった針ノ木雪渓ルートを登り針ノ木峠へ。テントを張った後に蓮華岳を往復します。

翌日は針ノ木岳から針ノ木サーキットを縦走して扇沢駅に戻ります。

1.蓮華岳登山 アプローチ編 平時でも大混雑する扇沢駅

6時50分 JR大宮駅
さて、本日は平日の火曜日です。平日朝の大宮駅新幹線ホームは大混雑の極みにありました。普段は平日に新幹線に乗る機会など滅多にないため把握していませんでしたが、こんなにも混むものでしたか。
大宮駅の新幹線ホーム
始発の東京駅から乗車すればこれほどの混雑に巻き込まれることも無いのですが、何故か長野方面に行く時は大宮から乗車する場合よりも特急料金が千円以上も高くなるのです。

上越新幹線の場合は、東京から乗車した場合と大宮からの乗車では200円少々の差額しか発生しないのに、なんだかよくわからな運賃形態です。

8時5分 長野駅に到着しました。次に乗車する扇沢行きのバスは8時15分発です。乗り換え時間にあまり余裕が無いので、テキパキと行動しましょう。
長野駅の新幹線ホーム
なお、はくたかではなく全席指定の輝いているやつに乗ってくれば、こんなにギリギリではなくもっと余裕をもって行動できます。

バス乗り場には既に長々とした行列が出来上がっていました。平日でもこれほどまでに混んでいるとは想定外もいいところです。恐るべし紅葉シーズン。
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既に並んでいる人たちはみな、輝いているやつに乗って来たのでしょうか。僅か千円ちょっとをケチったがために出遅れようとは。

8時15分発の便は既に満席状態であるとことで、アルピコお交通のおっちゃんに次の9時のバスを待つようにと、何故か英語で一生懸命説明されました。インバウンドの外国人にでも見えたのでしょうか。
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同様の事が割とよく起こるのですが、私そんなに外国人風の顔つきをしてますかね。顔と言うよりは、体形体格でそう判断されてしまうのか。

10時49分 予定よりもだいぶ遅れて扇沢駅に到着しました。まあ本日は針ノ木峠まで行けばよいだけなので、この時間の出発でもなんとかなるでしょう。
扇沢駅
扇沢駅は黒部ダムを経て立山室堂へと至る立山黒部アルペンルートの出発地です。山登りの格好をしている人よりも、ラフな格好した観光客の姿の方が多く目につきます。

駐車場も既に満車状態です。室堂は今ちょうど紅葉が見頃を迎えつつあるタイミングなので、1年で一番混む時期だろうからまあ当然か。
扇沢の駐車場

2.針ノ木沢の周辺に広がるブナ林の中を行く

11時 室堂行きのバス乗り場に並ぶ観光客達からは1人離れて、針ノ木岳登山口へと移動します。入り口は電気バスが通る道のゲート脇にあります。
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登山届の投函ポストがあるので、まだ提出していない人はここで出して行きましょう。用紙と筆記用具も備え付けられています。
針ノ木登山口

右手に扇沢駅の裏側が見えています。駅と名乗ってっていますが、軌道は無く発着しているのは電気バスです。昔はトロリーバスだったので、その時代の名残で駅と呼ばれているのかな。
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森の中を進んで行くと、すぐに舗装道路に合流しました。これは針ノ木沢の砂防工事のための道であるようです。本日歩く登山道は、この針ノ木沢の谷沿いを源頭まで遡って行きます。
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目の前を明日歩く予定の尾根が横切っているのが見えます。ぐるっと1周して扇沢に戻ることが出来るルートとなっていることから、サーキットと称されています。
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大きく蛇行を繰り返す作業道の真ん中を突っ切るようにして登山道が続いています。
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やがて大きなトンネルが現れました。先ほど見上げた稜線の下を貫いて黒部ダムへと通じている、関電トンネル(針ノ木隧道)の入り口です。電動バスはこの坑口とは別の入口から出入りしており、トンネル内部で合流しています。
関電トンネルの第2坑口

ここまで道のりは言ってみればウォーミングアップのようなもので、トンネルの脇からようやく本格的な登山道が始まります。
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針ノ木峠まではずっと沢沿いに登って行くことになるのですが、途中までは沢からは少し離れた山腹を高巻き気味に進んでいきます。
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何回か支流の沢を横断します。秋にもなると水量は全体的に少な目で、完全に干上がっている沢もあります。
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ブナ林が美しい。北アルプスの山にあまりブナ林のイメージはありませんが、針ノ木沢の周辺にはかなり広域な森が広がっています。この辺りの標高付近はまだ紅葉するには早く、緑一色の状態です。
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もう何度目かも分からない沢の横断がまた現れました。今度の沢は少し幅が広そうです。
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ここは水が枯れておらず、僅かな水流がありました。徒渉と言える程ではなく一跨ぎです。とても10月のものとは思えないような陽射しの強さで、既にだいぶ暑さにやられつつあったので、頭から水を被ってクールダウンしました。
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見上げると、稜線上に雲が沸き立ちガスに覆われつつありました。そちらではなく、私の頭上を覆ってくれませんかねえ。
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やがて森の中に小屋らしき人工物が見えて来ました。
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12時20分 大沢小屋まで歩いて来ました。針ノ木峠にある針ノ木小屋と同じ系列で、収容人数30人ほどの小さな山小屋です。2024年は営業自体を休止しており、小屋の入り口は厳重に封鎖されていました。
大沢小屋

針ノ木峠まではまだ4kmほどあり、ここから本格的な登りが始まります。気合を入れていきましょう。
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3.雪の無い季節の針ノ木雪渓を登る

大沢小屋を過ぎて以降も、もう少しだけ山腹を行くトラバースが続きます。ほとんど水平移動に近いような勾配で楽に歩けますが、見方を変えるとなかなか標高は上がりません。
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左手の眼下に針ノ木沢の谷が見て来たところで、道は緩やかな下りに転じました。いよいよこの谷底に下りる時がやって来たようです。
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木階段が完全に崩壊してしまっている個所がありました。南アルプス南部の山ならいざ知らず、北アルプスでこの状況は珍しい。やはり、あまりメジャーだとは言い難い山域なのだろうか。
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針ノ木谷は7月の中旬ごろまでは完全に雪に覆われており、針ノ木雪渓と呼ばれています。今の季節には当然もう雪は無いので、夏道を歩くことになります。
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8月まで雪が残る白馬大雪渓と比べると、針ノ木雪渓は雪がなくなる時期がずっと早く、雪渓歩きを楽しみたければ6月下旬から7月上旬ごろがベストな訪問時期です。

私も本当はそれくらいの時期に訪問したかったのですが、2024年の夏は梅雨明けが非常に遅く、天候待ちしている間に雪は無くなってしまっていました。

雪がある時期なら谷の中心を歩けば良いだけですが、無雪期だと谷底には沢があるため、夏道は崖際に沿ったトラバースになっています。結構際どい箇所もあるので焦らず慎重に参りましょう。
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谷底に降り立ちました。行く先には見上げる角度の急峻な谷が続いています。やはり雪がある時期に歩いてみたかったな。一直線に登るだけなので、夏道よりも全然歩きやすいだろうと思います。
秋の針ノ木谷

かつてはお花畑であったのであろう枯草が茂っていました。うーむ、やはりどう考えても訪問する時期を間違えてしまっているような気がします。
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完全にドライフラワー状態になってしまっていますが、これはカラマツソウなのかな。高山植物としては遅めの時期の8月以降に咲く花です。
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ここまでずっと針ノ木沢の右側を登って来ましたが、ここで対岸へと移ります。
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針ノ木沢の本流は流石に水量が多く、一跨ぎと言う訳には行きませんが、なんとか飛び石伝いに渡れました。時期によっては靴を脱がないと渡れないかもしれません。雪解け水なので、凄く冷たいと思います。
秋の針ノ木沢

対岸に移って以降も、谷底を微妙に外してトラバース気味の道が続きます。前半の道がが緩やかだった分、なかなかの急勾配でグイグイと標高を上げていきます。
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見るからに落石の巣であろう険阻な谷です。ヘルメットを装着すべきなのかもしれませんが、持ってきてはいません。あまり長くはとどまらない方が良さそうなので、足早に進みましょう。
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至るとこからアルプス天然水が染み出してきています。なお、本日の宿泊予定地である針ノ木峠には水場がないため、明日の分までを含めた水を途中のどこかで調達しておく必要があります。
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荷物が重くなってしまうので、水を確保するタイミングはなるべくギリギリまで先送りにしたいところです。ここは一旦、手持ちのボトルに少量を補充するだけで先へ進みます。

谷の幅が狭まり、いよいよ歩けそうな場所が無くなって来ました。ここで道は再び本流を渡って対岸へ戻ります。と言っても、対岸も崖のように見えますが、はて。
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なるほど、ここをよじ登れと言う事らしい。白馬大雪渓も同様ですが、雪渓ルートの夏道は基本的にどこも急峻で結構危ない道であることが多い印象です。そもそも雪があるからこそ登れるのであって、本来は歩行に適さないはずの地形です。
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ちょい岩場ではなく、割としっかり登らされます。トラロープやクサリが整備されているので、ありがたく活用しながらよじ登ります。
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よじ登った岩の上から谷を見下ろすと、日影の部分に僅かに雪が残っていました。こうして見るとかなりの急勾配ですが、ここを直登するとなると、前爪があるアイゼンを履いていないと厳しいのではなかろうか。
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谷が一番狭くなっていた箇所を抜けると、傾斜が緩んで安心安全な道になりました。先ほどの岩場が、針ノ木谷夏道の核心部であると考えて良さそうです。
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背後を振り返ると、サーキットコースの稜線が沸き立つ夏雲に覆いつくされつつありました。もう10月なのだから厳密に言えば夏雲ではありませんが、気温と雲の湧き方はまだまだ夏のようです。
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ここで横から合流してきたレンゲ沢という沢を渡渉します。その名の通り、この後に登る蓮華岳を源頭としている沢です。
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最終水場がどの辺りにあるのか正確な位置が分からないため、ここで水を確保していくことにします。翌日分を含めて合計4Lを調達しました。

荷物がズシリと重くなり、足取りも重く進みます。いつしか針ノ木沢の本流にも水流が無くなりました。そろそろ針ノ木谷の源頭が近そうです。
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おそらくはここが最後だろうと思われる僅かな水流がありました。針ノ木小屋の営業期間中には最終水場の位置を示す立て看板が立っているらしいのですが、小屋閉めのタイミングで撤去されています。
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ここで遂に、私のいる周囲もにガスが沸き立ち始めました。今日のうちに蓮華岳に登ってしまうつもりでいたのですが、この様子だと展望は望み薄か。
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既に綿毛も散って草紅葉と化した、チングルマらしき葉が目につきます。この辺りも雪解け直後の花の季節に歩いたら、さぞ華やかな光景なんでしょうね。
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ガスの中から薄っすらと峠らしき場所が見えて来ました。谷から峠へと取り付く最後の登りは、ザレていてかなりの急勾配です。
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丸太によって短いスパンの九十九折れの道が整備されていました。いつ頃に整備したものなかはわかりませんが、かなり老朽化が進んでおり、至る所で崩れています。登る分にはどうとでもなりますが、下る際には足元要注意です。
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峠に立つ針ノ木小屋の屋根が見えたところで、うまい具合にガスもとれ始めました。今日は何もかもがうまくいってしまう日か。
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15時15分 針ノ木峠に到着しました。雪渓が無い時期の針ノ木谷は、なかなか急峻な登り応えのある道程でした。整備状況もあまり良好とは言えず、一般的な北アルプスの登山道とはちょっと趣が異なります。
針ノ木峠

針ノ木峠に立つ針ノ木小屋です。2024年の営業は9月末までで終了しており、厳重に小屋閉めされていました。
針ノ木小屋
稜線上にある小屋のため、もともと水場はありません。売店が営業していない今の時期は、すべて自分で担ぎ上げる必要があります。

針ノ木小屋のテント場は、小屋から針ノ木岳方面に少し登った地点にあります。稜線上と少し下がった位置にもテントサイトがありますが、あまりキャパシティが大きくはなく夏山シーズン中の週末は大混雑します。
針ノ木小屋のテント場

本日は既にシーズンオフでしかも平日であるため、混雑とは無縁で悠々と眺めの良い場所にテントを張ることが出来ました。
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雲が多めですが、槍ヶ岳らしき山がちょうどの正面に見えています。素晴らしいロケーションではありますが、かなり狭くて平らな場所も少なく、あまり快適だとは言い難いテント場ではあります。
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4.蓮華岳登山 登頂編 北アルプスの名だたる名峰を一望する静かなる頂

15時50分 もうだいぶ時間も遅くなってしまいましたが、サクッと蓮華岳を往復してきましょう。蓮華岳は針ノ木峠を挟んで針ノ木岳の向かいに立っている山です。
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針ノ木サーキットを歩こうとしている登山者からすると、針ノ木岳とは反対方向にあるためスルーされてしまう事も多いという、不遇の山です。

その点、日帰りではなく1泊2日の行程であれば、余裕をもって訪れることが出来ます。

ナナカマドが良い感じに紅葉しています。蓮華岳周辺の稜線上はハイマツが主で、紅葉に関してはそれほど見ごたえはありません。やはりどう考えても、訪問時期を間違っているような気がする。そのおかげでテント場が空いていたとも言えますが。
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最初から急勾配の登りです。針ノ木峠から蓮華岳山頂までの道は、サクッと軽く往復できる感じではなく、割としっかり登らされます。扇沢からの日帰りで蓮華岳と針ノ木岳の両方に登るは、結構しんどい行程なのではなかろうか。
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背後のガスも抜けて、明日登る予定の針ノ木岳(2,821m)とスバリ岳(2,752m)の姿が見えました。
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眼下に針ノ木小屋とテント場の様子が良く見えます。針ノ木峠の両側はかなり鋭く切れ落ちており、僅かなスペースしかないのが良くわかります。
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前方の視界が開けました。頂上はすぐそこのようにも見えますが、今見えている最高地点はまだ山頂ではなく、手前にある偽ピークです。
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このハイマツの中に白い岩が突き出した光景は、どことなく中央アルプスの空木岳を思い出します。一見すると花崗岩のように見えるこの白い岩は、流紋岩と呼ばれる岩です。

成分的にはほぼ花崗岩と同一の岩石ですが、形成されるプロセスに違いがあり、火山岩の一種であるらしい。

大きくザレた箇所の脇をかすめるように道が続いています。恐らくはここが、先ほど水を汲んだレンゲ沢の源頭だと思われます。
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ガラ石が散乱した、いかにも北アルプスの高山帯らしい光景になりました。この辺りは、初夏のシーズンになると一面にコマクサが咲くらしいのですが、当然ながら今の季節には一輪も残っていません。
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うむ、やはりどう考えても、訪問時期を間違っているような気がする。(3度目)

右手には裏銀座方面の山並みを一望できます。だいぶ雲が多めですが、今のところ天気は上り調子なので、この後晴れてくれることに期待できそうです。
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反対側には後立山連峰の山並みがずらっと並んでいる・・・はずですがこちらも雲が多めです。
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白馬岳(2,932m)の頭だけが雲の上にぴょっこりと頭を突き抱いています。この山は山頂部のシルエットが特長的なので、遠目にも同定がしやすい。
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偽ピークの頂上まで登って来ると、ようやく本当の蓮華岳山頂が姿を見せました。まだ意外と奥行きがありました。
蓮華岳の山頂部

既に太陽は大きく傾きつつあります。10月に入ってもまだまだ暑い日が続いていますが、陽はすっかりと短くなりました。
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背後に明日歩く予定の尾根が見えています。小刻みにアップダウンがあり、なによりもかなりの長さであるように見えます。意外としんどそうですな。
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まあきっと、明日の私が頑張って何とかしてくれるでしょう。

針ノ木岳の稜線の向こう側に、剱岳(2,999m)の頭だけが見えています。山頂部だけでも一目でわかる、この異様なまでの存在感よ。
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山頂直下最後の登りです。西日が射しこむ中をゆるゆると登って行きます。スタートした時間が遅かったとはいえど、少々のんびりし過ぎましたな。帰路はヘッドライト確定かな。
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今度こそ着いたと思ったら、お社が立っているだけで山頂標柱はさらに奥にありました。最後まで勿体ぶってくれましたね。
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17時 蓮華岳に登頂しました。もう時間が時間だけに、山頂は貸し切りの状態でした。もっとも、ここはもとからそれほどに混みあう山頂ではありませんけれどね。
蓮華岳の山頂標識

すぐそこに麓の大町の市街地があるはずですが、薄曇りの雲の下に隠れていて見えません。雲の上に影蓮華岳が写っていました。
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5.蓮華岳からの大展望

思いのほか時間がかかりましたが、山頂からはその苦労に見合うだけの大パノラマが広がります。早速見ていきましょう。

まずは南側の展望です。隣接する北葛岳(2,551m)の先には、やれ表銀座だの裏銀座だのと呼ばれている北アルプス中心部の山々が連なります。
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蓮華岳からさらに尾根沿いに南下した、北葛岳(2,551m)や船窪岳(2,459m)と言った山は、北アルプスの中でも特に歩く人の少ない一帯となっています。

槍ヶ岳(3,180m)はどこから見ても本当に目立ちます。槍ヶ岳の左にあるのが奥穂高岳(3,190m)で、さらに左の尖ったピークが前穂高岳(3,090m)です。ここから見ると、前穂は穂高連峰の一部と言うよりは、完全に独立したピークのようにも見えます。
蓮華岳から見た槍ヶ岳

北側の展望です。先ほどまでは見えていた白馬岳が見えなくなったかわりに、鹿島槍ヶ岳が雲の中から姿を見せました。
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似たようなシルエットの双耳峰が二つ並んでいますが、右が爺ヶ岳(2,670m)で左が鹿島槍ヶ岳(2,889m)です。この2座は、見る角度によってはこんなそっくりな姿をしていたんですね。知りませんでした。
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爺ヶ岳の右後方に、頚城山塊(くびきさんかい)の山が薄っすらと見えています。頚城山塊と唐突に言われてもピンとこない人も多いかもしれませんが、妙高山(2,454m)などがある辺りの山域の事です。
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裏銀座から黒部川源流域に至る辺りの山もすべて見えているのですが、ちょうど逆光が直撃するタイミングなため良く見えません。まあとにかく、どちらの方角を見ても絶景が広がる山であることに間違いはありません。
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名残惜しくはありますが、日没が目前に迫ったこの状況で、あまり長居しているわけにもいきません。10分少々の山頂滞在時間で下山を開始します。
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大した登りではありませんが、始めから約束されていた偽ピークへの登り返しがあります。
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日没とともに再び雲が沸き立ち始めて、眼下の針ノ木谷を覆い始めました。雲滝と言うほどではありませんが、なかなか画になる光景です。
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日中は汗ばむような陽気だったというのに、陽が沈むなりいきなり寒くなりました。

雲の上に頭だけを出している後立山連邦の山並みがカッコいい。針ノ木峠の直下でガスに覆われた時にはどうなるかと思いましたが、思わぬ大逆転でした。
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夕闇に染まって行く山並みが余りにも美しくて、ついつい同じような写真を何枚も撮ってしまいます。おかげで一向に歩みが進みません。急いで下らないと、間もなく周囲は真っ暗になってしまうと言うのに。
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燕岳(2,763m)や大天井岳(2,922m)などがある辺りです。パノラマ銀座の山小屋は11月頭まで営業しているので、今頃は大勢の宿泊客で賑わっていることでしょう。それに比べて、我らが蓮華岳はなんと静かなことか。
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裏銀座縦走路の先には水晶岳(2,986m)。黒部川源流域にある山の中でも、盟主的な存在と言えそうなのやはりこの山か。
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雲が取れて立山(3,015m)の姿も良く見えます。明日はもっと近くから、それこそかぶり付きで眺めることが出来るはずです。期待しておきましょう。
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周囲がかなり薄暗くなってきたところで、ヘッドライトを点灯します。ここから先は、写真を撮らずに真面目に下りました。
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18時10分 無事にテントまで戻って来ました。この後は手早く夕食を済ませて、明日に備え早々とシュラフに潜り込みました。明日も良い天気に恵まれすように。おやすみなさい。
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蓮華岳は北アルプスの山の中でもかなり不遇と言える立ち位置の山です。この山自体を目的として登ってくる人は極めて珍しく、針ノ木岳を目指す登山者にも時間の都合でスルーされてしまうことが多いのではないでしょうか。
実際に登ってみれば良くわかることですが、この山が持つポテンシャルはかなりのものです。まず立地からして素晴らしい。周囲の名だたる名峰秀峰たちを一望する絶好の展望台です。雪渓ありお花あり展望ありと、非の打ち所の無い隠れた名山であると思います。
当の私自身も、針ノ木サーキット縦走のついでくらいのつもりでいたのですが、すぐにその見解をあらためることになりました。日帰りの行程だとここまで足を伸ばすのは少々難しいのかもしれませんが、是非とも針ノ木峠に1泊して登ってみてほしい一座でした。

<コースタイム>
扇沢駅(11:00)-大沢小屋(12:20)-針ノ木峠(15:15~15:50)-蓮華岳(16:55~17:10)-針ノ木峠(18:10)

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2日目に続く

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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