黒槐山 奥秩父主脈上にひっそり立つ標高2,024メートルの年の山

黒槐山の山頂標識
埼玉県秩父市と山梨県甲州市の境界にまたがる黒槐山(くろえんじゅやま)に登りました。
奥秩父主脈上に連なる小ピークの一つで、多摩川源流の山として知られる笠取山のすぐ近くにあります。奥秩父主脈縦走路からは僅かに外れた位置にあるため、ほんと訪れる人はいない極めてマイナーな存在です。
標高2,024メートルの年の山であると言う理由で訪れた先には、人の気配が全く感じられない笹原が広がっていました。

2024年9月20~21日に旅す。

黒槐山と唐突に言われて、どこにある山なのかすぐにわかるという人は、よほどの物好きに限られるのではないでしょうか。奥秩父主脈上にある極めてマイナーなピークです。
黒槐山の山頂
縦走路からは少し外れた位置にあり、特に展望が良い訳でもありません。そんな山に私が目をつけた理由は、今年は西暦2024年なので、どこぞに標高が2,024メートルの山が無いものかと探していた時に目に止まったからです。

まあ要するにただのゲン担ぎです。2024年になってから既に9カ月以上が経過しており、若干の今更感もありましたが登って来ました。

場所としては「ちいぶん」こと小さな分水嶺や、笠取山などがある近くになります。・・・と説明しても、やはりわかる人にしかわからないであろうマイナーエリアでしょうか。奥多摩湖よりもはるか上流の多摩川源流がある一帯です。
小さい分水嶺
マイカーがあれば作場平から日帰りでも届きそうな山ですが、車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーである私は、笠取小屋でテント泊して1泊2日の行程で歩いて来ました。

2日目は奥秩父主脈縦走路のなかでも未踏破だった、雁峠から雁坂峠の区間を繋げて歩いて来ました。奥秩父主脈の中でも特に歩く人の少ない一帯を、ゆるりと巡り歩いて来た2日間の記録です。
240920黒槐山-004

コース
240920黒槐山-map
西沢渓谷線の新地平バス停からスタートして、亀田林業林道を登り奥秩父主脈に取り付きます。笠取山を経て目指す黒槐山に登頂したのち、水干経由で笠取小屋まで下りテント泊します。

翌日は雁峠から雁坂峠までの区間の奥秩父縦走路を歩いた後に、西沢渓谷に下山します。

1.黒槐山登山 アプローチ編 山梨市駅から行く新地平への道程

9月20日 7時25分 JR高尾駅
本日は平日の金曜日です。週末になれば多くの登山者でごった返す高尾駅のホームも、平日は通勤ラッシュの動線とは逆向きであることから至って空いていました。
JR高尾駅のホーム

9時7分 山梨市駅に到着しました。新地平バス停に行くには、塩山駅から出ている西沢渓谷行きのバスに乗るのが最も一般的なのですが、季節運航で9月中旬は平日朝の便がありません。そのため本日は、山梨市営バスによりアプローチします。
山梨市駅のホーム

若干雲が湧いてはいますが、まずまずのお天気です。駅の窓から小楢山(1,712m)が良く見えました。本日は格好の登山日和となりそうです。
山梨市駅から見た小楢山

9時12分発の西沢渓谷行きのバスに乗車します。こちらの市営バスは、平日も土休日もまったく同じ時刻表で運行しています。車両が足りていないのか、やって来たのは路線用ではない観光バス車両でした。
240920黒槐山-008

停車ボタンなどの設備が無いため、乗車時に運転手さんに行き先を告げる方式です。当然交通系ICカードにも対応していないので、あらかじめ小銭を用意しておきましょう。新地平までの運賃は800円です。
240920黒槐山-009

10時 新地平バス停に到着しました。貸し切り状態になるだろうと思いきや、意外にも同じバス停で降りた登山者がいました。
新地平バス停

バス停の脇に、だいぶ年季の入っていそうな付近の登山道の地図がありました。この地図上には雁峠に雁峠山荘と言う小屋が描かれてれていますが、山と高原地図には記載がありません。昔はあったと言う事なのかな。
240920黒槐山-011

2.広川沿いの道を緩やかに登る亀田林業林道

10時5分 身支度を整えて本日の行動を開始します。この鶏冠荘の看板の先にある脇道を右に入って行きます。
240920黒槐山-012

歩き始めはしばしの舗装道路歩きです。緩やかな上り坂になっており、ウォーミングアップにはちょうど良い感じです。
240920黒槐山-013

10分少々歩いたところでゲートが現れました。亀田林業所の私有地につき立ち入り禁止と書かれた看板が立っていますが、登山者の通り抜けは許されています。ただし、登山競争やトレイルランニングは禁止とのことです。
亀田林業林道

ゲートは閉まっているので、脇を通ります。しっかりと踏み跡になっていますが、右側は崖なので通行時には十分ご注意ください。
240920黒槐山-015

ここから先は広川沿いの亀田林業林道を緩やかに登って行きます。雁峠まではひたすら長い道程ですが、道中の雰囲気がとても良いので退屈はしません。
240920黒槐山-016
この道については過去にも一度レポートしているいので、今回は軽くさらっと流します。

途中に何度か渡渉があります。前日が雨だったため水量は多めで、なんとか靴を脱がずに渡れましたが難儀しました。
240920黒槐山-017

上流部まで登って来ると、谷が枝分かれしてルートがかなりわかりづらくなります。周囲をよく観察して、踏み跡の気配を感じてください。
240920黒槐山-018

倒木に完全に道を塞がれてしまっている場所もありました。跨ぐのも潜るのも難しい倒れ方だったので、やむおえず沢の中を歩きました。
240920黒槐山-019

沢沿いをはなれて、峠に向かって標高を上げ始めました。この辺りは道の痕跡が完全に笹に覆われつつあり、かなりルートがわかりづらいです。わかりづらいと言うか、思いっきり道に迷いました。
240920黒槐山-020
その後何とか復帰できましたが、大幅なタイムロスです。本日は別に先を急ぐ旅でもないので、問題ないと言えばないのですが。

思わぬ苦戦を強いられましたが、ようやく雁峠の下まで登って来ました。道迷いしている間に、朝の時点よりもさらに雲が湧いてきてしまいましたね。
240920黒槐山-021

13時 雁峠に到着しました。これで奥秩父主脈の上に乗ったことになります。正面に見えているのは笠取山で、この後登ります。
雁峠
照り付ける陽射しはまだまだ暑いですが、稜線上を吹き抜けていく風は、すっかりと秋に香りになっていました。こうして着実に季節は移ろっていくのですね。

根元が腐ってしまったのか、倒れてしまった標識が笹の中に横たわっていました。
240920黒槐山-023

3.絶景が広がる多摩川源流の笠取山

雁峠の周辺は笹原になっており、周囲が良く見渡せます。正面に見えているのは乾徳山(2,031m)から黒金山(2,232m)に至る、奥秩父主脈前衛部の山々です。
雁峠からの展望

バス停の脇にあった地図に描かれていた雁峠山荘は、今もしっかりと存在はしていました。だいぶ年季が入っていそうですが、これは造林小屋なのかな。
240920黒槐山-025

一応はメジャールートであると言えなくもない奥秩父主脈縦走路に入ったことにより、頼りなかった踏み跡は明瞭明快になりました。
240920黒槐山-026

雁峠から10分程緩やかに登ったところで、小さな分水嶺に到着しました。
240920黒槐山-027

荒川、富士川および多摩川の3つの河川の分水嶺になっているという、小高い丘のような場所です。ここを訪れたのは自身2度目ですが、かなり印象深い場所だったのでよく覚えています。
小さな分水嶺
荒川と多摩川はどちらも最終的には東京湾に行き着きますが、富士川は駿河湾に注ぎます。この一点に降り注いだ雨水が、僅か数センチの差でそれだけ違う道を辿ると言うのが何とも面白い。

本日の宿泊予定地である笠取小屋は、小さな分水嶺から少し南へ下った場所にあります。先にテント張ってしまおうかとも思いましたが、割と距離があって往復するのも面倒なので、このまま黒槐山を目指すことにしました。
240920黒槐山-029

黒槐山に向かう前に、まずはこの笠取山を乗り越えます。実のところ巻き道もあるのですが、そうそう気軽に来れる場所でもないし、せっかくの機会なので登って行きましょう。
240920黒槐山-030
しかし、何度見ても絶壁感のある山頂部です。防火帯に沿って一直線に登ります。

鞍部まで下ると、林業用の索道の残骸だと思われる機材が打ち捨てられていました。恐らく植林に用いたものでしょう。
240920黒槐山-031
この多摩川源流部一帯に広がる山々の土地は東京都が所有しており、水源林として手厚く保護されています。

かつてはこの一帯の山林の多くが、焼き畑などにより失われて禿山状態になっていました。上水道の大部分を玉川上水から得てた東京都はその状況に危機感を持ち、大量の土地を買い入れて森林の再生に乗り出した歴史があります。

見た目通りの急登が始まりました。一応は小さく九十九折れを繰り返す道になっていますが、それでもかなりの急勾配です。息を整えてゆっくりと登りましょう。
240920黒槐山-032

13時50分 笠取山に登頂しました。信頼と実績の山梨百名山でございます。以前はしっかりと直立していた標柱が、思いっきり傾いてしまっていますな。
笠取山の山頂
実はこの場所は笠取山の最高地点ではないのですが、ここが一番眺めが良いので山頂と言う事にしてしまっているらしい。

山頂(ではない)からの展望はこの通り大変素晴らしいです。山座同定を始めるときりがないので割愛しますが、富士山やら大菩薩嶺やら丹沢山地やらがすべて見えております。
笠取山からの展望

西側には明日歩く予定でいる、雁坂峠へと続く奥秩父主脈の山並みが連なります。地味であることにかけては定評のある(?)奥秩父主脈の中においても、特に歩く人の数が少ない一帯です。
240920黒槐山-035

先へ進みましょう。山頂(ではない)付近は岩場になっており、切れ落ちている場所もあります。真面目に手も使って慎重に進みましょう。
240920黒槐山-036

岩場を越えて進んでいくと、両脇からシャクナゲにビンタされる状態になりました。これもまた、奥秩父らしいと言えばらしい光景ではあります。痛い痛いシャクナゲナゲ痛い。
240920黒槐山-037

北側に見えているこの岩々しい山は白泰山(1,794m)かな。殆ど世に情報が出回っていないマイナーな山ですが、一応は一般登山道が存在するらしい。
240920黒槐山-038

こちらが笠取山の最高地点です。先ほどの山梨百名山の標柱があった地点よりも、約10メートルほど高い標高です。
笠取山の最高地点

ここからも一応は展望が開けていますが、やはり先ほどの標柱があった地点からの眺めよりは一段落ちます。
240920黒槐山-040

4.黒槐山登山 登頂編 静かなる2024年の山の頂

最高地点を過ぎるとすぐに道は下りに転じました。道の両脇には相変わらずシャクナゲびっちりと生い茂り、こちらの顔面をひっぱたこうと待ち構えています。
240920黒槐山-041

シャクナゲのビンタを躱しつつ下って行くと、水干経由の巻き道と合流しました。ここを左折して将監峠方面へ進みます。
240920黒槐山-042

先ほどまでよりも目に見えて道が藪っぽくなりました。奥秩父主脈縦走路は一応メジャールートと呼んでいい道だと思っていたのですが、この様子を見るに案外そうでは無いでしょうか。
240920黒槐山-043
笠取山まで歩く人はそれなりにいるけれど、縦走する人は圧倒的に少数派なのか。

目指す黒槐山は奥秩父主脈上にあるピークなのですが、登山道は尾根を少し外した位置にあるため山頂を通りません。事前調査によれば、途中に分岐があり微かな踏み跡はあるらしい。
240920黒槐山-044

位置的にそろそろかなと思っていたところで、道の脇にピンクテープの巻かれ木が現れました。ここから取り付けと言う事か。
240920黒槐山-045

確かに獣道かと思うくらいの微かな踏み跡があります。この様子では、黒槐山のピークを踏んでいく人はよほど少ないと見えます。
240920黒槐山-046

脇道に入ってからすぐに山頂らしき場所が見えました。あははははは、これはまたとびっきり地味な山頂ですねえ。だがしかしそれが良い。
黒槐山の山頂

15時5分 黒槐山に登頂しました。もしこの山の標高が2,024メートルでなかったら、恐らくは目に止まることも無かったであろう頂です。
黒槐山の山頂標識

山頂からの展望は・・・無し。何か見所と言えそうなものは・・・無し。とまあ無い無い尽くしな山頂ですが、だがしかしそれが良いと思うもの好きな方には大変オススメです。ええ、私は大いに気に入りました。
黒槐山の山頂

5.多摩川源流の水干を経て笠取小屋へ

年の山に登るという目標は無事に達成されました。だいぶ時間も押して来ているので、ボチボチ本日の宿泊地である笠取小屋へ向かう事にしましょう。
240920黒槐山-048

帰路では笠取山を経由せずに巻き道をから戻ります。この巻き道の途中に、水干と呼ばれている多摩川の最初の一滴が染み出す場所があります。
240920黒槐山-049

山腹をトラバースするほぼ水平移動の道を進んで行くと、石垣の積まれた小さな谷が現れました。
240920黒槐山-050

ここが多摩川の源頭とされている地点です。東京湾まで138kmと書かれた標柱が立っていました。
多摩川源流の碑

その肝心な多摩川最初の一滴ですが、涸れてしまっています。当然季節にもよるのでしょうが、どうやら水流は無いことの方が多いようです。
240920黒槐山-052
もし水流があったら、本日の夕飯は多摩川源流水ラーメンにするつもりでいたのですが、願いはかないませんでした。残念。

水干の周辺だけは東京都水道局の予算で登山道を整備しているらしく、先ほどのまでの笹薮に埋もれかけている道とは違って明瞭です。どうせなら飛龍山に至るまでの、すべての登山道を整備してくれませんかね。
240920黒槐山-053

もう花の季節はとっくに終わっていますが、綿毛化したマルバタケブキがポツポツと残っていました。
240920黒槐山-054

いつの間にかすっかりと陽が傾いていました。まだまだ厳しい残暑は続いていますが、それでも日照時間は着実に短くなって来ています。
240920黒槐山-055

16時40分 ちいぶんまで戻って来ました。ベンチがあるので一休みしていきます。
小さい分水嶺

宿泊予定地の笠取小屋は、森の中にあるため夕日は見えません。このままここで夕焼けが始まるまで待機しようかとも思いましたが、まだまだ時間がかかりそうです。
240920黒槐山-056

一度小屋まで行ってテントを張り、その後にまたここへ夕日を見に戻ってくることにしましょう。
240920黒槐山-057

笠取小屋は小さな分水嶺から10分少々下った場所にあります。小屋までずっと、足元が木道になっていました。お金かけてますな。
240920黒槐山-058

笠取山が見えて来ました。平日であるしきっと貸し切り状態だろうと思っていましたが、意外にも先客のテントが2張りありました。
240920黒槐山-059

16時50分 笠取小屋に到着しました。もともとは東京都の水源林を管理するために作られた造林小屋でしたが、現在は登山者を受け入れる山小屋として運営されています。管理人は主に週末しか山には入らないらしく、本日は無人状態でした。
笠取小屋

管理人の不在時は、料金をこのポストにを投函します。テント泊の料金は800円です。
240920黒槐山-061

テント場は小屋の裏手にあります。小屋の前も広場になっていますが、そこには張らないようにとの注意書きがありました。
笠取小屋のテント場

水場もありますが、道標などの案内が無くて少々不親切です。小屋の入口を背にした状態から見て左側に下って行くとあります。
240920黒槐山-063

そこそこ急な斜面を下ることになるので、水汲みは暗くなる前に済ませておいた方が無難です。所要時間は往復で5分以上10分未満と言ったところでしょうか。
240920黒槐山-064

やがては多摩川となる水が、音を立てて大量に流れていました。夏でも冷たくておいしい水でしたよ。
笠取小屋の水場

水汲みを済ませたら、夕焼けを眺めにちいぶんまで登り返します。日中は蒸し暑くて半袖Tシャツ1枚で過ごしていましたが、この時間ともなると流石に少し涼しくなって来ました。
240920黒槐山-066

こうしてわざわざ登り返してきたというのに、ちょうど陽が沈む辺りに雲が出てしまって夕日を見ることはできませんでした。あれま残念。
240920黒槐山-067

でもこうして黄昏時の富士山を拝むことが出来たので、ひとまずは良しとしましょうか。この後はテント場まで戻り、笠取小屋水で作ったラーメンを啜った後はすぐに就寝しました。
240920黒槐山-068

6.雁峠から奥秩父主脈の未踏地帯へと足を踏み入れる

明けて9月21日 5時30分
2日目となる本日も特に先を急ぐ旅路ではないため、周囲が十分に明るくなってから、のそのそと始動します。
240920黒槐山-069

空が何とも言い難い不気味な色にやけています。本日の天気は曇りの予報となっており、今はまだ晴れていますがこの後下り坂になるはずです。
240920黒槐山-070

ゆっくりと朝食を済ませて、6時25分に行動を開始します。まずは昨日登って来た雁峠まで戻ります。
240920黒槐山-071

今回これで通算4度目となる、ちいぶんまで登って来ました。予報の通りにすっかりと曇り空に覆われてしまいましたが、高曇りであるため問題なく周囲は見えそうです。
240920黒槐山-072

この通り富士山もしっかりと見えています。吊るし雲が大量に発生している辺り、上空ではかなりの強風が吹き荒れていそうです。
240920黒槐山-073

今日は土曜日ですが、しかしこの天気では登って来る人はそう多くないことでしょう。昨日に引き続き、本日もほとんど人とすれ違う事が無い静かな一日となりそうです。
240920黒槐山-074

6時55分 雁峠まで戻って来ました。ここから先は自身にとって初めて歩く未踏の領域となります。
240920黒槐山-075

結構な急勾配の笹に覆われた斜面です。踏み跡はしっかりとありますが、地面の柔らかさ加減からして、ほとんど歩かれてはいなさそうです。
240920黒槐山-076

すぐ隣に昨日登った笠取山が見えています。あちらの急登に比べればまだいくらかマシではありますが、こちらの道も十分過ぎるほどに急登です。
240920黒槐山-077

ヒイヒイ言いつつ、なんとか尾根上まで登って来ました。正直なところ大した期待はしていなかったのですが、この先には思ってもいなった好展望の尾根道が続いていました。
240920黒槐山-078

7.ほぼ無名の隠れた好展望地古礼山と、登っても特に良いことは無い水晶山

この先は雁坂峠までずっと尾根沿いの道となります。踏み跡は至って明瞭であり、特に危険と言えるような個所もありません。何も考えずに気持ちよく歩ける道です。
240920黒槐山-079

奥秩秩父主脈は森林限界を超えるほどの標高ではなく、稜線上の大部分は樹林帯に覆われています。それでもこうして所々に開けた場所があり、眺めはすこぶる良好です。
240920黒槐山-080

緩やかなアップダウンを繰り返しつつ進みます。やがてピークとも言えないような小さな突起が現れました。
240920黒槐山-081

8時5分 燕山に登頂しました。標識が掲げられていなかったら、山頂だとは思わない様な尾根上の小ピークです。こうしてわざわざ名前があると言う事は、麓から見るとしっかり山のように見えるのだろうか。
燕山の山頂

木の隙間から僅かに展望があり、麓の甲府盆地が良く見えました。山梨県と埼玉県の境界上にある山ですが、見える景色的には完全に山梨県の山であるように思えます。
240920黒槐山-083

どんどん行きましょう。行く先の尾根が、モリモリと大きくアップダウンを繰り返しているのが見えます。なかなか歩き応えがありそうです。
240920黒槐山-084

雁坂峠周辺の山で多く見られるシラビソの立ち枯れ現象が、ここでも大変目につきます。隣接しているエリアなので、環境的に似たり寄ったりの状況なのでしょう。
240920黒槐山-085

富士山を横目にしつつ鼻歌混じりに進みます。立ち枯れ現象の結果こうして展望が開けている訳なのですが、果たしてこれを手放しに絶賛して良いのかは複雑な気分です。稜線の禿地化が、水源林の環境にとって良いことであるはずはないのですから。
240920黒槐山-086

しかしこれだけ眺めが良いとなると、このエリアの人気の無さ加減がむしろ怪訝にさえ思えてきます。やはりアクセス難な奥地にあることが影響しているのか。
240920黒槐山-087

森の中に入ると、しっかりと奥秩父らしさのある亜高山帯の光景になります。同じ稜線上なのに、立ち枯れしてしまっている場所と、こうして鬱蒼として苔生している場所との違いは、一体何処にあるのだろうか。
240920黒槐山-088

小さく登って降りてを繰り返す状況から脱して、稜線が大きく標高を上げ始めました。
240920黒槐山-089

9時10分 古礼山(これいさん)に登頂しました。雁峠と雁坂峠のほぼ中間地点に位置しているピークです。
古礼山の山頂標識

登山の対象としてはほぼ無名に等しいようなマイナーピークですが、笠取山にもまったく引けを取らない大展望が広がっていました。素晴らしい。
古礼山からの展望
これほどの展望の山がほとんど存在自体を知られることも無しに埋もれていようとは、奥秩父主脈縦走路は侮れません。いったい誰ですか、奥秩父は地味だとか言ったヤツは。

稜線のある高さにまで、だいぶ雲が湧いて来ました。予報の通りではありますが、そろそろ好展望タイムは終わりかな。
240920黒槐山-092

古礼山からは一度勿体ないくらいに大きく標高を落とします。
240920黒槐山-093

大きく下ってしまった後は、当然ながら今度は大きく登り返します。縦走登山とはそういうものでございます。
240920黒槐山-094

ピークらしき場所まで登って来ました。
240920黒槐山-095

9時40分 水晶山に登頂しました。登っても特に良いことは無い、至って地味なピークです。何気にここが、今回の山行きにおける最高地点となります。
水晶山の山頂

雁坂峠まではまだあと2.1kmとそこそこの距離がありますが、現在地が最高地点である以上、この先は基本的に下り基調となります。
240920黒槐山-097

水晶山から下って行くと、周囲はいかにも奥秩父らしい苔生す森に変わりました。
苔生す奥秩父の森

これぞThis is okuchichcibuな光景です。フカフカのコケに癒されます。
苔生す奥秩父の森

ここで遂に稜線上がすっぽりとガスに覆われました。これは始めから約束されていた事なので、特に落胆はありません。むしろここまでよく持ちこたえてくれました。
240920黒槐山-100

山梨県側から立ち上って来た雲を奥秩父主脈の稜線が防いでいる状態で、埼玉県側にある和名倉山の姿はまだ見えています。近いうちにあの山にも登りに行かなくては。
240920黒槐山-101

このまま雁坂峠までずっと下りなのかと思ききや、何故か登り返しが始まりました。どうやら峠は最低鞍部ではない場所にあるようです。
240920黒槐山-102

登り返したところで、見覚えのある場所に飛び出しました。
240920黒槐山-103

10時10分 雁坂峠に到着しました。この先もう何度も歩いたことがあり、無事に未踏破区間は埋まりました。
240920黒槐山-104

この雁坂峠もなかなかの好展望地なのですが、すっかりとガスに覆われつつありました。ガスが抜ける瞬間が無いものかと少し粘りましたが、状況はむしろ悪化しつつありました。
240920黒槐山-105

8.西沢渓谷に向かって旧県道を下る

10時40分 いい加減諦めて下山を開始します。これから前方に見えている谷底へと下って行くのですが、峠の直下はかなりの急勾配です。ゆっくりと慎重に参りましょう。
240920黒槐山-106

踏み跡は明瞭ですが、道そのものが細くて際どい場所もあります。ここでもやはり、あまり歩かれてはいない感じがします。
240920黒槐山-107

サクサクとテンポよく下って、谷底まで下りて来ました。この先は沢沿いの道となりますが、ここからがまた結構長いです。
240920黒槐山-108

何回か渡渉があります。昨日に引き続き水量は多めで、渡るのになかなか難儀しました。
240920黒槐山-109

ちなみに今歩いているこの登山道は旧国道です。現在国道140号線となっている雁坂トンネルは平成10年に開通しましたが、それ以前の時代は、車両通行不能区間として国道に指定されていました。まさしく酷道ですな。
240920黒槐山-110

延々と2時間近く下り続けたところで、ようやく林道の終点が見えました。
240920黒槐山-111

12時35分 林道終点まで歩いて来ました。なにやら達成感に満たされそうになる瞬間ですが、この後まだ1時間以上の林道歩きが残っております。
240920黒槐山-112

橋の上にあるガードレールを見ると、ここにも亀田林業所の名前がありました。どうやらこの辺り一帯にある林道のすべてを取り仕切っているらしい。
240920黒槐山-113

昨日歩いた亀田林業林道と同様に、この旧国道も既に車両の往来は無くなって久しいらしく、路面は荒れつつありました。
240920黒槐山-114

雁坂トンネルの料金所のすぐ脇を通ります。このトンネルは国道でありながら自動車専用となってり、徒歩や自転車の通行はできません。歩いて通り抜けたい人は、旧国道で峠を越えてください。
240920黒槐山-115

このまま道なりに進んでも最終的には西沢渓谷まで行けますが、最後に少しだけショートカットのできる登山道があります。
240920黒槐山-116

ゲートがあり、ここでもことさらにトレイルランニング禁止との注意書きがありました。過去になにかトラブルでもあったのでしょうかね。
240920黒槐山-117
気になって帰宅後に少し調べてみたところ、まさに揉め事の痕跡らしきPDFの文章を発見しました。

何があったのかおおよその察しは付きましたが、憶測の域を出ない部分もあるので詳細については触れません。興味がある方は自分で調べてみてください。

13時50分 道の駅みとみまで歩て来ました。帰路のバスはここを通るのですが、大した距離でもないので始発の西沢渓谷入口まで歩きます。
240920黒槐山-118

西沢渓谷が最も混雑する紅葉シーズンにはまだ早いですが、それでも土曜日ともなればバスはそれなりに混雑するはずです。並んでおかないと、恐らく座れないだろうと言う予感がありました。
240920黒槐山-119

14時5分 西沢渓谷入口バス停まで歩いて来ました。予想通りバス停には既に行列が出来ていました。塩山駅まではおよそ1時間ほどの長丁場なので、立って行くのは結構辛いと思います。
240920黒槐山-120

何とか無事座席にはありつけて、帰宅の途に付きました。
240920黒槐山-121

恐らくは誰の何の参考にもならないであろう、黒槐山の訪問記はこれで終了です。ご覧頂いた通り、標高が2,024メートルであるという以外には、特にこれと言った特記事項の無い地味な山です。だがしかしそれが良いと思う物好きな方以外には、特にオススメはしません。笠取山に登ったついでに、気が向いたらちょっと足を伸ばしてみる。くらいの位置づけがちょうど良い山であると思います。
2日目に歩いた雁峠から雁坂峠までの区間については、予想に反してたいへん素晴らしい良ルートでした。重厚な奥秩父らしさがしっかりとありつつ、富士山を横目にしながら歩ける気持ちの良い縦走路です。アクセスに少々難がある場所ではありますが、穴場として大いに推奨します。

<コースタイム>
1日目
新地平バス停(10:05)-雁峠(13:00)-小さな分水嶺(13:10)-笠取山(13:50~14:05)-黒槐山(15:05~15:30)-水干(16:15)-小さい分水嶺(16:30~16:40)-笠取小屋(16:55)

2日目
笠取山(6:25)-雁峠(6:55~7:15)-燕山(8:05)-古礼山(9:10)-水晶山(9:40)-雁坂峠(10:10~10:40)-林道終点(12:35)-道の駅みと(13:50)-西沢渓谷入口(14:05)

240920黒槐山-122

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. デイビッド より:

    おっしゃる通り、黒槐山以降の道は草木が生い茂っていますね。ともかく、黒槐山を紹介してくださってありがとうございます。これまで何度かその下を通ったことがありますが、その存在には気づきませんでした。

    • オオツキ オオツキ より:

      デイビッドさま
      コメントをありがとうございます。

      前もって情報を得ていないと、あの分岐の存在に気が付くのは相当難しいだろうと思います。奥秩主脈にはこの黒槐山の他にも、登山道からは少し外れた場所にある無名のマイナーピークが数多く存在します。それらを探しながら歩いてみるのも一興だと思います。

  2. つっしー より:

    奥秩父には、だがそれが良い山頂がたくさんあって本当にそれが良いですよね!
    古礼山も良いですね、私も近いうちに行ってみます。

    ところで、(本筋では無いのでそこを掘るのも憚られるところではあるのですが)実は私も以前PDFの怪文書(ですよね……?)を目にしたことがあります。

    感想としては、「何があったのかおおよその察しは付くものの、憶測の域を出ない部分もあるので詳細については触れるのはやめよう(興味がある方は自分で調べてみてください。。)」としか言いようもないなあ、という感じでそっ閉じしたので、その若干のモヤモヤを共有できて良かったです。

    電力の線路とかもそうですが、山林や登山道の利用と保全って自治体行政とインフラとハイカーの玉虫色で曖昧な不文律によって共存が成り立っているような部分があるんですよね。環境意識高い系ハイカーとして共存共栄していきたいものですね。

    • オオツキ オオツキ より:

      つっしーさま
      コメントをありがとうございます。

      入口のゲートに「私有地につき立ち入り禁止」と「入山される皆様へ」というおもいっきり矛盾する内容が書かれている時点で、厳密に言うと入ってはダメなんだけれど、お目こぼし的に黙認されているだけなのだとわかりそうなものなんですけれどね…