長野県と岐阜県の境界にまたがる乗鞍岳(のりくらだけ)に登りました。
北アルプスの南端に広大な裾野を広げる、なだらかな山容の火山です。山頂直下の標高2,700メートル地点にある畳平までバスで乗り入れることが可能であり、最も簡単に登頂することの出来る3,000メートル峰として知られています。
今回はそんな手軽さが売りの乗鞍岳を、あえて麓から登って来ました。
2020年10月6日に旅す。
乗鞍岳は北アルプスの山の中でも、際立って大きな山容を持つ山です。その広大でなだらかな山腹には、乗鞍岳エコーラインと呼ばれる舗装道路が山頂のすぐ下にある畳平まで伸びています。
この道はもともと、戦前に航空機用エンジンの高所試験を行うため作られた軍用道路を前身としています。
現在では純粋に観光目的に用いられており、バスで労せず標高2,700メートル地点まで登ることが出来ます。山頂までは1時間半もあれば到達可能であり、最も簡単に登ることの出来る3,000メートル峰です。
しかしそんなこの山の際立った長所をあえて無視し、わざわざ麓から歩いて登ろうと言うもの好きも一定数存在します。
乗鞍岳の山腹に広がる広大な原生林には、見事な黄葉の光景が広がっていました。こればかりは、自らの足で麓から登ったものにしか見ることの出来ない光景です。
途中まではどんよりとした高曇り天気でしたが、山頂では狙いすましたかのように青空が顔を覗かせてくれました。紅葉と絶景を存分に満喫した、会心の山行きでありました。
物好き系ハイカーが行く、乗鞍岳を下から登って来た記録をお届けします。まあ、帰りはバスに乗ってラクラク下山しましたけれどね。
コース
三本滝レストハウスよりスタートし、三本滝を経由しつつ乗鞍岳最高地点の剣ヶ峰を目指します。帰路は畳平へ下り、バスで下山します。
1.乗鞍岳登山 アプローチ編 夜行バスと路線バスを乗り継ぎ、乗鞍高原を目指す
10月5日 22時10分 バスタ新宿
さて今回は休暇を取得しての平日登山です。長野方面へお出かけの際に毎度お馴染みのさわやか信州号で、現地へと向かいます。
休みは1日しか取れなかったので、夜行発の日帰り弾丸登山です。
ちなみに、東京から乗鞍方面へ直通してくれる夜行バスは存在しません。一旦上高地行きのバスで新島々駅まで行き、そこから乗鞍方面行きの路線バスに乗り換えます。
明けて10月6日の4時5分 新島々駅に到着しました。下車したのは私一人だけでした。夜行バスで乗鞍岳に登りに行こうと言う人は、どうやら少数派であるようです。
夜の新島々のバスターミナルには、アルルピコカラーのバスがズラリと大量に居並んでいました。もうあと1時間もすれば、沢渡と上高地のピストン輸送を始めるのでしょう。
従来、発乗鞍高原行きの始発バスは5時18分発でした。しかしその始発便は、コロナ渦の影響により今年は運休となっています。よって、その次の6時5分までバスはありません。
それはつまり、バス発車時刻まで2時間ほど、ここで時間つぶしをする必要があるという事です。
利用者が減っている以上、減便すること自体はやむなしかと思います。とは言っても、始発の時間を遅らせるのは勘弁してほしいのですがね。
この時間帯からすでに待合室を解放してくれてるので、バスの時間まで中で待機することが出来ます。コロナ対策の一環なのか、この待合室は戸が文字通り解放されており、室内の気温は外と変わりません。さささっ寒い。
あまりにも寒かったので、ツエルトに包まって始発時間になるのを待ちました。
周囲がすっかりと明るくなったところで、ようやくバスの乗車案内が始まりました。
当初温めたていた計画では、バスで鈴蘭橋バス停まで行き、そこから登り始めるつもりでした。しかしこの6時5分発の便は、鈴蘭橋より手前のスキー場前バス停までしか行ってくれません。
そのため、乗鞍高原観光センターから畳平行きのバスに乗車し、途中の三本滝レストハウスから登り始める計画に予定を急遽変更しました。
6時55分 乗鞍高原観光センターに到着しました。ここから山頂直下にある畳平行きのシャトルバスが運行されています。平日だと言うのに凄い数の人で、すでに3台のバスがほぼ満席状態でした。
チケット売り場で三本滝へ行きたいと述べると、乗務員に直接支払うようにと言われました。三本滝までの運賃は960円と、結構なお値段でした。
目指す乗鞍岳山頂は、この通り最初から真正面に見えています。こうして見ると、なだらかな山容の山であることが良くわかります。
7時20分 三本滝レストハウスに到着しました。駐車場がありここまでは車で入ってこれます。この先はマイカー規制が敷かれてるため、バスとタクシー以外は立ち入り出来ません。
ちなみにこの三本滝レストハウスがあるのは、乗鞍高原スキー場の中腹です。このカモシカリフトにはなんとなく見覚えがあります。
そう思って、以前冬に登った時の写真を見返したら、やっぱりありました。この上にある斜面は上級コースのゲレンデです。
2.趣の異なる3つ滝が集結する、名勝三本滝
7時30分 身支度を整えて登山を開始します。まずは名勝として名高い三本滝を目指します。
歩き始めて早々から、ゲレンデに沿って下ります。せっかくバスが稼いでくれた位置エネルギーが、無駄に費やされていまう。。
すこし下ったところで、ゲレンデから外れて登山道が始まります。
小さな沢に沿って進みます。ひんやりとした、冷たく湿った空気が実に心地よい。この早朝の山独特の空気感と言うのは、登山を嗜む者にしか体験できない特権です。
しっとり苔生す癒しの空間。この標高付近は、奥秩父の森の雰囲気に近いように感じます。
分岐地点へやって来ました。山頂方面へ向かうには右ですが、その前にサクッと三本滝を往復して行きます。
目の前に轟々と激しい音を立てる滝が現れましたが、これは三本滝ではなくその手前の名もなき滝です。
この吊り橋は割と大きく揺れます。なお私は断然、吊り橋は揺れる方が楽しい派です。揺れない吊り橋だなんてただの橋です。
・・・そもそも、吊り橋の揺れに関する派閥争いなんてものが、果たしてこの世に存在するのかどうかはさておき。
二段の釜(滝壺)があり、中々の迫力です。背後に三本滝が控えていなかったら、きっとこの滝に何らかの名称が与えられて名所となっていたのでしょうね。
ナナカマドが良い感じに紅葉していました。紅葉が始まるには昼夜で大きな気温の差があることが重要で、こういった頭上が開けて日当たりの良い場所から進んで行きます。
7時50分 三本滝までやって来ました。この滝は、水源の異なる3つの沢が、合流する地点で滝になっていると言う大変珍しいものです。
早速見てみましょう。おおー、これは凄い。確かに3つの滝が並んでいます。
なお、立地的に引いた位置からは眺められないため、三本の滝を一枚の写真に収めたければ、超広角のレンズが必須です。焦点距離20mmでもこの通りギリギリでした。
右の滝はナメ滝と呼ばれるもので、スラブの表面を舐めるように水が流れています。
中央の滝が一番滝らしい滝と言うか、水流がまっすぐと落ちるごくごく一般的な姿の滝です。
左の滝は、まるで糸の様にか細い水流が流れ落ちる枝垂れ滝です。三つの滝がそれぞれ全く異なる姿をしているのが、この三本滝の最大の特色です。
わざわざ寄り道した甲斐があるだけの、素晴らしき名勝でありました。乗鞍岳にわざわざ下から登ろうと言う気概のある人は、是非とも立ち寄って行くことを強く推奨します。
3.紅葉が見ごろを迎えた、乗鞍岳中腹に広がる原生林
先ほどの分岐地点まで引き返し、今度は山頂方面へと向かいます。
三本滝から尾根上の登山道に合流するまでの道は、まるで取って付けたかのような急斜面でした。滝のある谷底から這い上がろうとしているわけですから、当然と言えば当然です。
急坂をヒイヒイ言いながら登るうちに、ほどなく尾根が見えて来ました。当初の計画で歩く心算だった、鈴蘭橋からの道とここで合流します。
さあ、ここからは緩やかな尾根歩きです。と思った矢先に、いきなり木道がちゃぶ台返しされたかのような現場に行き当たりました。
いったい誰ですか登山道をひっくり返したのは。先生は怒っていないから素直に手を上げなさい。
ちゃぶ台返し現場を過ぎると、その先は思い描いていた通りのゆるやかな道となりました。
恐らくは入山者の9割以上が畳平からスタートするであろう乗鞍岳において、ここを歩く登山者の数はさほど多くは無いものと思われますが、それもで踏み跡はしっかりとしており明瞭でした。
標高が上がるにつれて、紅葉の色好き加減が良い感じになってきました。頭上がどんよりとした曇り空であるのだけが、少々残念なところです。
ちなみに本日の天気予報は、午前中はずっと高曇りであるけれど、ちょうど山頂に到達するであろう正午から晴れるという事になっております。
しかしこの厚ぼったい灰色の空が、果たして本当に晴れてくれるのでしょうか。
足元の小さな草までもが黄葉していました。うーん、秋ですねえ。
前方に無粋なガードロープが現れました。畳平へと続く乗鞍エコーラインのものです。
登山道はこの後も、幾度となくエコーラインと交差しながら続いています。大きく九十九折れを繰り返して高度を稼ぐ車道の中心を、まっすぐ一直線に突っ切って行くイメージです。
陽当たりが良好な道端から紅葉が始まっていました。それはつまるところ、紅葉は登山道から眺めるよりも、バスの窓から眺めた方が良い感じなのかもしれません。
ほんの少し車道を歩いたところで、すぐにまた登山道へと分け入って行きます。
水捌けの悪い所は木道化されており、思った以上にしっかりと整備が行き届いた登山道です。
わざわざ下から歩いて乗鞍岳に登ろうと言う、ほんの少数なもの好きためだけに、こうして登山道を整備してくれている人達にはまこと頭が上がりません。
徐々に周囲の色づき度合いが増してきて、華やかな光景になってきました。
またもやエコーラインにぶつかりました。地図によれば、荒田沢橋と呼ばれる地点です。
ヒルクライム中の自転車乗りの姿を多く見かけました。帰る時はさぞや快適なのでしょうけれど、登りではみんな辛そうにしていました。
畳平から降りてきたバスと行き違います。この時間から下山する者はまだいないと見えて、空気だけを運んでいました。
9時35分 冷泉小屋に到着しました。この小屋は現在営業しておらず、休業中であるとのことです。
小屋の前を流れるこの沢には、小屋の名前にある通りに冷泉が含まれているらしく、周囲には仄かな硫化水素臭が漂っていました。
特にまだ疲れは感じなかったので、休憩は取らずに行動を続行します。
この冷泉小屋付近は斜面の傾斜が少々大きいらしく、エコーラインがかなり短いスパンで蛇行しています。
針葉樹林の黄葉がとても良い感じです。どうやら今いる標高付近が、ちょうど紅葉の最盛期であるようです。
背後の眺望がかなり開けて来ましたが、相変わらずのどんよりとした空模様です。この調子で本当に正午から晴れてくれるのか、少々不安がよぎる展開です。
再び小屋が現れました。人の話し声とディーゼル発電機の音が聞こえてきたため、今度はしっかりと営業中の小屋であるようです。
9時55分 位ヶ原山荘に到着しました。乗鞍岳の中腹の立つ山小屋です。特記事項として、この小屋は冬にも営業しています。
乗鞍岳は3,000メートル峰の中では、冬季であっても比較的的登りやすい山です。
その理由としては、滑落の危険が少ないなだらかな山容であることと、途中まで乗鞍スキー場のリフトを使って登れること。そしてこの小屋の存在があげられます。
宿泊できる他に、売店も営御しており軽食を頼むことも出来ます。ここにも、多くの自転車乗りの姿がありました。なんなら、登山者よりもぜんぜん多いくらいです。
4.森林限界を超えた先に続く、肩の小屋までの後半戦
体感的には、この位ヶ原山荘が登りの行程のほぼ中間地点と言った所です。という事で、後半戦に行ってみよう。
この奥に小さく見えているのが山頂です。まだまだ結構距離がありますな。乗鞍岳は大柄な山であるだけに、横方向への歩行距離が結構長めです。
エコーラインを離れて、再び登山道へと分け入ります。この先は、ここまでの道程に比べると急坂続きとなります。いっちょう気合を入れて行きましょう。
枯れ沢の上を直接登って行きます。岩の間に結構水が溜まっていたりするので、ズボッと行かないよう足元には要注意です。
まあつまり、当の私自身がズボッと行ってしまったと言うだけの事でありますがね。
何時しか周囲に背の高い木が無くなりました。森林限界を超えたようです。
背後に穂高連邦と槍ヶ岳が姿を現しました。相変わらずの高曇りな空ではありますが、空気は澄んでおりまずまずなお天気です。
振り返ると、見事な黄葉の絨毯が広がっていました。ちょうど位ヶ原山荘のある標高付近が、紅葉のピークを持迎えていました。
ガラ石が散乱する、歩きにくい道がしばしの間続きます。いつの間にか、山頂がかなり大きく見える位置まで登ってきていました。
またもやエコーラインに合流します。ここで、お金で標高を買った観光客を満載したバスが、目の前を何台も横切って行きました。
最高地点の剣ヶ峰を、ようやく真正面に捉えました。もうあと一息と言いたいところではありますが、山頂まではここからさらに1時間30分ほどを要します。
つい先ほど目の前を通り過ぎたバスが、もうあんなに頭上高くを走っていました。そりゃみんなバスで登りたくもなるよね。
何時しか周囲は、いかにも火山らしい溶岩石が散乱する光景へと変わっていました。そして何よりも嬉しいことに、いつの間にか頭上に青空が広がりつつありました
背後の北アルプス中心方面も、青空が広がりつつありました。これはもしかしなくても、すべてがうまくいってしまうパターンなのでは。
足元には、綿毛と化したチングルマの残骸が、チラホラと残っていました。意外と長い事残っているものなのですね。
11時10分 肩の小屋口まで登って来ました。この付近には夏の初めごろまで雪渓が残り、バックカントリースキーを楽しむ人で賑わう場所です。秋口ともなると、流石にもう雪は残っていませんでした。
ここまで登ってくると、はっきりと空気の薄さを感じられるようになってきます。普通に歩くとすぐに息が上がってしまうので、意識してゆっくりと小股で歩きます。
頭上に稜線が見えて来ました。この辺りから風が強くなってきて、少し肌寒さを感じます。
ようやく稜線まで登って来ました。ここで畳平から来た登山者たちが合流するため、いきなり周囲に人の数が増えました。
11時40分 肩の小屋に到着しました。登山口から延々4時間と10分を費やしての到着です。ラクラクな3,000メートル峰として名高い乗鞍岳も、まとも登るとなるとなかなか骨のある道のりでありました。
5.乗鞍岳登山 登頂編 3,000メートルの頂から望む大絶景
肩の小屋から山頂までは、標準コースタイムで50分の道程となります。いよいよ最後の登りです。頑張って行きましょう。
平日だと言うのに、登山道が渋滞するくらいの大盛況です。乗鞍岳の人気のほどが伺えます。もしこれが土日だったら、いったいどういう事になってしまうのでしょうか。
眼下に、ここまで歩いてきた道程のすべてが一望できました。しかしこうして見ると、本当に大きい山ですね。
すり鉢状の、まるで絵にかいたような噴火口跡です。火口にあるこの池は権現池と呼ばれています。
ようやく頂上を視界に捉えました。もう目の前なのですけれど、すぐに息があがってしまい、なかなか足が前に出ません。
さきほどから高山病の予兆だと思われる、微かな頭痛を感じます。登山が趣味なくせにこんなことを言うもなんですが、私は高度順応力があまり高い方ではありません。
その日の体調にもよりますが、いつもだいたい標高2,400メートル位から高山病の症状が現れ始めます。
山頂直下最後登りです。いつの間にか雲一つないパーフェクトなドピーカンとなった空に向かって、駆け上がります。
山頂の直下に小さな小屋があります。この小屋は売店の営業のみで、宿泊は出来ません。
ここまでずっと山頂の背後に隠されていた、御嶽山(3,067m)の姿が見えました。乗鞍岳ほどではありませんが、ロープウェイがあるおかげで、あちらも比較的的簡単に登れる3,000メートル峰です。
12時20分 乗鞍岳に登頂しました。いやはや疲れました。乗鞍岳でも、意外としっかり3,000メートル峰らしい骨太な登山が出来ました。
眼下には雲海が広がっていました。下界は相変わらず曇りのままで、乗鞍岳の上空だけが晴れている状態です。まるで私の登頂を待ってくれていたかのような絶好のタイミングでありました。
山頂に立つ朝日権現神社です。冬に登った時には、ちょうど良い風よけになって大いに助けられた記憶があります。
山頂からは、視界を遮るものの一切ない360度の眺望が得られます。
先ほどから良く見えていた、みんな大好き槍・穂高連峰です。この名峰の中の名峰と言うべき山域は、やはり存在感が頭一つ抜き出ておりますな。
山頂からは直接見えませんが、このドーム状のコロナ観測所がある背後に、畳平バスターミナルがあります。畳平スタートだと、山頂までは2時間とかからずに登頂できます。
東に視線を転じると、南アルプスこと赤石山脈が居並びます。富士山もこちらに見えるはずですが、どうやら雲に隠れてしまっているようです。
南アルプスの右手には中央アルプスこと木曽山脈が連なります。南アルプスと違いあまり顕著なピークが無いため、中央アルプスの山は山座同定が難しい。
眼下に広がるは噴火口です。なお環境保全のため、火口の底へ降りることは禁止されています。
6.乗鞍岳登山 下山編 畳平からバスで楽々下山
13時 絶景を一通り堪能し満足しました。ボチボチ下山に移りましょう。帰りはバスを使って楽に下ります。
まずは一旦、肩の小屋まで元来た道を引き返します。山頂付近はザレていて滑りやすい道なので、ゆっくりと慎重に参りましょう。
13時畳平発のバスが、続々と肩の小屋口付近を下って行くのが見えます。次の便は2時間後の15時発なので、ここで急いでも全く意味はありません。
すぐそこのように見えて、肩の小屋までは意外と時間がかかりました。足元があまり良くないのと、やはり空気の薄さも関係しているのでしょう。
13時40分 肩の小屋まで戻って来ました。ここからは、元来た道を戻らずに畳平方面へと向かいます。
畳平バスターミナルから肩の小屋までは、自動車の通行可能な道が続いています。この光景は、まさにスカイラインと言う言葉通りの道です。
振り返って見た乗鞍岳の山頂です。畳平から登った場合、山頂までの標高差は300メートルちょっとしかありません。つまりは高尾山以下の標高差しかないという事です。
山頂からは隠れて見えていなかった一帯には、成層火山の山頂らしく複雑な地形の溶岩台地が広がっていました。
ゴールの畳平のすぐ脇に、富士見岳と言う名の小ピークがあります。どうせ15時になるまでバスは来ないのだから、せっかくなので立ち寄って行くことにします。
登り始めて10分とかからずに、あっけなく富士見岳に登頂しました。その名の通り、きっと富士山が見えるのでしょうけれど、生憎とは曇っていて見えませんでした。
畳平バスターミナルが眼下に見えました。噴火口にすぐ脇にあります。こんなところによう作りましたな。
振り返って見た乗鞍岳の山頂です。手前のドーム付きの建物があるのは、摩利支天岳と呼ばれているピークです。
眼下には、ここまで歩いてきた中腹の道のりのすべてを一望出来ました。
彼方に見えるこの街並みは、松本駅付近です。そういえば確かに、松本駅からも乗鞍岳の姿が良く見えていたように記憶しています。
14時30分 畳平バスターミナルに下山しました。すでにバス待ちの長蛇列が出来上がっていました。人数に合わせてバスを出してくれるので、別に慌てて並ばずとも乗りそこなう事はなりません。
15時が近づいてきたところで、続々とバスが下から登って来ました。
あれほど一生懸命に登った道も、バスで下ると実にあっという間です。
およそ1時間ほどで、スタート地点の乗鞍高原観光センターまで下って来ました。ここまで運賃は確か1,650円だったかな。若干うろ覚えです。
さて、本当はここで温泉に立ち寄りひと風呂浴びて行きたいところですが、残念ながらバスの乗り継ぎがあるため、立ち寄れる時間はありません。このまま撤収に移ります。
本来は、ひと風呂浴びてから帰るのにちょうど良い16時40分バス便が存在したのですが、生憎とコロナ渦により運休にされてしまっています。
どういう基準で運休対象の便を決めているのかは存じませんが、この便は残しておいて欲しかったな。
新島々で電車に乗り換えて、終点の松本に向かいます。松本から特急あずさに乗り込み、帰宅の途に付きました。
手軽に登れることが最大の特徴である乗鞍岳へ、わざわざ手間をかけて下から登って来た物好きな系登山は、これにて無事に終了です。自ら長所を潰しに行くような無意味な振る舞いの様にも思えますが、しかし非常に満足度の高い山行きでありました。
この日歩いたルート上には、知る人ぞ知る名勝地である三本滝や、中腹に広がっていた針葉樹の原生林などなど、畳平スタートの登山では決して知ることのない、数多くの魅力的な要素が散りばめられていました。
山へ登るのは好きだけれど下山が嫌いな私にとっては、ガッツリと登りつつ下山時に楽が出来る乗鞍岳は、ある意味理想の山であると言えるかもしれません。
ラクラク3,000メートル峰へ、あえて手間をかけて登ってみては如何でしょうか。
<コースタイム>
三本滝レストハウス(7:30)-三本滝(7:50~8:00)-冷泉小屋(9:35)-位ヶ原山荘(9:55~10:05)-肩の小屋口(11:10)-肩の小屋(11:40)-乗鞍岳(12:20~13:00)-肩の小屋(13:40)-富士見岳(14:05)-畳平バスターミナル(14:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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