経ヶ岳－仏果山　宮ヶ瀬湖畔の山から望む関東地方の大展望

神奈川県愛川町と清川村にまたがる経ヶ岳（きょうがたけ）と仏果山（ぶっかさん）に登りました。
丹沢山地の東外れにある、宮ヶ瀬湖の傍らに立つ里山です。標高1,000メートルにも満たない低山ながらも、山頂に高さ13メートルの展望台を持ち、関東地方の眺望が大変すばらしい山であります。
ようやくにして訪れた本格的な冬の寒空の下、関東平野の展望と巨大ダム湖の湖畔風景を楽しんできました。

２０１８年１２月９日に旅す。

異様とも言える温かさが続いた２０１８年の冬ですが、１２月も中旬になろうかと言うこの時期に至って、ようやく西高東低の気圧配置が完成しました。

これにより暦の上だけでなく、実態としても冬の到来と相成ったわけであります。

極めて重篤な好山病患者である私の場合、冬になったから言っても、山に行かないと言う選択肢はありません。標高の高い山が軒並み雪と暴風に閉ざされるこの時期は、もっぱら低山歩きのシーズンとなります。

そんな訳で今回は、神奈川県の水瓶、宮ヶ瀬湖畔にたつ経ヶ岳＆仏果山に登ります。標高およそ700メートルほどの低山です。

宮ヶ瀬湖周辺の東丹沢と呼ばれる一帯は、丹沢山地の中でも特にヤマビルの生息数が多い一帯になります。そういう意味でも、仏果山は冬にこそ歩くべき山です。

ちなみにこの写真は過去のものです。１２月ともなれば、さすがにもうヤマビルは活動していません。足元に神経を尖らせることもなく、安心して歩くことが出来ます。

低山であるにも関わらず、仏果山は非常に展望の良い山です。その秘密は、この山頂にある高さ13メートルの展望台にあります。首都圏のすぐ脇にある丹沢山地ならではな都心部の展望を得ることが出来ます。

終日ピリッとしない天気ではありましたが、冬の冷たく引き締まった空気により、天気は良くないのに遠くがよく見えると言う不思議な状態での山行きでありました。

コース

半僧坊前バス停より、経ヶ岳、仏果山、高取山をへて宮ヶ瀬ダムへと下る。標準コースタイム４時間３０分ほどの行程です。

１．経ヶ岳　アプローチ編　電車とバスで手軽に行ける相模の秀峰

なんやかんやで、かなり久しぶりとなる丹沢訪問です。丹沢へ行くには小田急線に乗り換えなければならない訳ですが、京王線ユーザーにとって小田急線と言うのは微妙に乗り換えが面倒です。

永山から新百合ヶ丘と遠回りをしたのち、本厚木駅へと向かいます。新宿や下北沢まで行くのもやはり遠回りで阿呆らしいし、多摩都市モノレールを町田まで延伸してくれませんかねえ。

７時１０分　本厚木駅へ到着しました。
晴れると言う予報だったのに、なんだかどんよりとした空の色です。そして、言うまでもなくとても寒い。

駅前にハンマー投げの銅像が設置されていました。「若い力」と言うタイトルで、特定のモデルは存在しないそうです。それよりも何故フンドシ一丁なのかがとても気になります。

ここから半原行きのバスに乗車します。宮ヶ瀬行きと言うバスもあり、そっちに乗れば良いのかと思ってしまうかもしれませんが、宮ヶ瀬湖の真ん中付近に連れて行かれてしまうので、間違えないように要注意です。

７時５５分　半僧坊前バス停に到着しました。
ここまでの運賃は470円です。スイカ・パスモに対応しています。

経ヶ岳の登山口に向かうには、バス停からもときた方角へ少し戻ります。

経ヶ岳と仏果山とをめぐるコースは、首都圏近郊在住のハイカーにはすっかりお馴染みの、関東ふれあいの道に組み込まれています。古くから親しまれてきた定番のハイキングコースだという事です。

前方のバス通りが大きくカーブしている地点が、登山道の入り口となります。

登山口に猟師と思われる一団がいて、猟犬に思いっきり吠えられました。なにもそんなに歯を剥かなくてもいいじゃないか。

２．登山沢山地の山並みを一望できる経ヶ岳

陽の差しこまない薄暗い林道へと入って行きます。路面は荒れ放題で、すでに自動車が侵入しなくなって久しいことが伺えます。

倒木のトンネルが出来ていました。まだ葉が青く茂っていることから、最近になって倒れたものと思われます。

南国風な見た目の植物が植わっていました。ぱっと見でバナナの木のように思えます。いくら温暖化が進んでいるとはいえど、関東地方の平均気温では結実はしないでしょう。

すっかり枯れ葉となってしまった紅葉が、寒風に吹かれていました。バナナの木とのギャップが凄い。

沢に沿って山の中へと分け入って行きます。大きな砂防ダムに行きあたった所で林道が終わりました。どうやら、この堤の工事のために作られた道だった模様。

堤を一つ越えたところで、また次のが現れました。この付近は土砂災害の多い場所なのでしょうか。

沢沿いを外れて本格的な登りが始まります。登山道に一部崩落箇所ありとの警告です。

崩落箇所とは恐らくここのことを言っているのだと思います。かろうじて持ちこたえていますが、そう遠くない将来に迂回路か木橋に置き換わることでしょう。

まるで奥多摩のような杉の植林帯に入りました。奥多摩に比べれば杉林の面積は少なめな丹沢山地ですが、里に近い一帯にはしっかりと植樹されています。

途中に休憩ポイントがありました。一部の木が刈り払われており、眺望が開けます。

どんよりとした曇り空ではありますが、冷たく澄んだ空気のおかげか、都心部の高層ビル群が驚くほど明瞭に見えました。

平野の先にポツンと佇むこの山は、方角的に筑波山でしょう。とても1,000メートル未満の低山とは思えないくらいよく目立ちます。

休憩所を過ぎると、すこし道の傾斜が増してきました。相変わらずの奥多摩のような杉林の中を登って行きます。

途中で一度林道を横断します。落石が放置されており、あまり手入れはされていない感じの道です。

１０メートルほど北に進んだところで、再び山道に突入します。

背後の展望が開けました。この辺りから夜景を眺めたら、さぞや壮観でありましょう。

既に用をなしていない鹿よけのゲートを抜けて、再び杉林の中へと入ります。

杉の根っこが張り出した尾根道という、低山以外の何物でもない光景が広がります。

途中で何度か偽ピークに騙されつつ、ようやく本物の山頂が見えて来ました。

９時２５分　経ヶ岳に登頂です。
標高638メートルの純然たる低山です。地元の人に愛される、お手軽なハイキングコースといったところでしょうか。

山頂の様子
テーブル付きのベンチが４と三角点があります。展望は西側のみが開けています。

これは愛川町のマスコットキャラクターである、あいちゃんです。なんと言う安直なネーミング。。

丹沢山塊の東の外れに位置する経ヶ岳からは、東丹沢の山々を目の前に一望することが出来ます。こちらは丹沢の前衛峰である大山（1,252m）です。

大山の右手には、丹沢主脈の山並みが連なります。

拡大＆名前入りを一枚。

３．急登と痩せ尾根を越えて、好展望地の仏果山へ

９時３５分　仏果山に向かって縦走を開始します。関東ふれあいの道となっているルートであるため、ルートは明瞭です。

登山道を塞ぐかのような場所に、大岩が横たわっていました。

経ヶ岳の名の由来となった経石です。弘法大師がこの岩の下に教文を収めてと言う伝説があるのだそうです。

弘法大師にまつわるエピソードと言うのは、それこそ日本全国津々浦々の山に存在します。空海こそが、日本最古のアルピニストなのではないだろうか。

半原峠に向かって、勿体ないくらい大きく高度を落とします。かなりの急勾配である上に、枯れ葉が堆積して非常に滑りやすい状態でした。

目の前に見えているこの山が仏果山なのかなあと、この時は漠然と思っておりました。残念がらハズレで、この山は仏果山の手前にある川籠石山（かごいしやま）です。

森の切れ目から、相模湾と彼方に浮かぶ伊豆大島の姿が良く見えました。天気が悪いのに素晴らしいまでの空気の澄み具合です。

経ヶ岳から２０分ほど下ったところで、半原峠が見えてきました。ちなみに車でお越しの人は、ここまで入ることが出来ます。

仏果山に向かってリスタートです。

ここでも鹿よけのゲートが用を成さない状態になっていました。もう神奈川県は、シカの食害から丹沢を守ることを諦めてしまったのしょうか。

あまり高低差の無い尾根を進みます。

リッチランドですってよ。そこへ行けば、誰でもリッチになれるのでしょうか。

※キャンプ場の名前です。

木の間から、宮ヶ瀬湖の姿がわずかに見えて来ました。

土屋峠との分岐地点までたどり着きました。丹沢名物の机のような椅子が置いてあるという事は、ここはすでにヤマビルの出没地帯だと言うことです。

紅葉の僅かな名残が残っていました。

分岐を過ぎたところで、一気に標高を上げ始めます。眩暈を起こしそうになる階段地獄を前にして、ここが丹沢だという事を思い出しました。

１０時４５分　川籠石山に登頂しました。
５万分の１スケールの山と高原地図には、その名が記載されていないピークです。登っている間は、てっきりここが仏果山なのだとばかり思っておりました。

すぐ隣にもう一つのピークがあります。今度こそあれが仏果山かと思いきや、またも外れでした。

仏果山だと思い込んでいるピークに向けて、またもや階段地獄を登ります。

一見山頂っぽい場所に出ますが、頂上はまだ先です。

ここから先は、痩せた尾根伝いの道となります。山と高原地図にも、山頂直下に危険アイコンが描かれておりますね。ふれあいの道なのに。

まあ確かに痩せていると言えば痩せておりますが、取り立てて危険を感じるほどの道ではありません。対面通行が可能なだけの幅はキープされています。

何かの拍子で咲く季節を間違えてしまったらしいヤマツツジが、花を付けていました。

この周囲では最も標高が高いと思われる地点につきましたが、ここにも仏果山山頂の標識が見当たりません。あれれ？仏果山は何処や。

少し離れた場所に展望台らしき櫓が見えます。明らかに今立っている地点よりも低い場所のように思えますが、最高地点ではない場所が山頂扱いになっているのでしょうか。

ここですれ違ったおばさま達のグループが、「もう怖い場所は過ぎたね～」という会話をしているのが耳に入りました。それはつまり、この先には怖い場所があるらしいということですね。

ということで、ここがその怖い場所だと思われる地点です。見事にナイフリッジになっておりますな。

クサリもあるので、特に難しい要素はありません。よそ見しながら歩きでもしない限りは問題ないでしょう。

横を向けば絶景です。・・・だからよそ見するなっつうの。

こんどこそ本当の山頂です。２度も偽ピークに騙された稜線歩きでありました。

１１時２５分　仏果山に登頂です。
仏果禅師という高名な層が、ここで座禅修行に励んだと言うのが名前の由来だそうです。経ヶ岳と言い、この界隈は宗教色の強い地名が多いですね。

山頂の様子
丹沢名物の机のようなベンチが一つあるだけの、割と狭い空間です。

山頂で何よりも目に付くのが、この高さ13メートルの展望台です。なかなかお金のかかっていそうな、立派な鋼鉄製の櫓が立っていました。

という事で、早速登ってみましょう。山頂の木よりも高いので、360度全方位の展望が開けます。

目の前に広がるは、関東平野とその先にある筑波山。

都心部も良く見えます。

江の島の先には三浦半島と房総半島が一望できます。

最後に宮ヶ瀬湖方面の展望です。右手前に見えているピークは高取山です。今日この後は、あの山を越えて宮ヶ瀬ダムへと向かいます。

真下を見下ろすとこんな感じです。結構な高さであることがお分かりいただけるでしょうか。

４．高取山から望む宮ヶ瀬湖の展望

１１時４５分　本日の縦走登山最後の山である高取山に向かって出発します。

高取山への道は、ほぼ下りであると考えて差し支えまりません。山頂直下に僅かな登り返しはありますが、大した距離ではありません。

宮ヶ瀬乗越と呼ばれる地点を通過します。かつてこの峠をこえて、人の往来があった場所なのでしょう。

宮ヶ瀬乗越からは、ほとんど水平移動のようなものです。

・・・なんだかひどく既視感のある山頂が見えて来ました。

１２時１５分　高取山に登頂しました。
仏果山からは実にあっけなくたどり着けます。

山頂の様子
ベンチがいくつか用意されており、広々とした山頂です。そして、仏果山にあったものと全く同じ展望台があります。

展望台からの光景はと言うと・・・仏果山から見える景色と大差はりません。

これはつい先ほどまで居た仏果山です。この通りすぐ隣にあります。

それにしてもこの展望台は、かなりのお金がかかっていそうな造りです。それをこんな近距離に二つも作ると言うのは、かなりの贅沢と言えるでしょう。

ひょっとすると、宮ヶ瀬ダムの水没補償の一環として作られたものなのでしょうか。ダム湖の底に沈んでしまった故郷を眺めるために作ったのか。。

宮ヶ瀬湖の眺望に関しては、仏果山からよりも高取山からの方が断然良く見えます。

本日のゴール地点である、宮ヶ瀬ダムの堤体も見えました。

ダムに向かって下山を開始します。

途中で送電鉄塔の脇を通ります。低山歩きにおいては、鉄塔のあるところに展望ありです。さあ、ここはどうでしょう。

思った通りの、見るからに展望がよさそうな空間が平がっていました。

うーむ、電線が邪魔だな。電線のおかげで眺望が良いのに、電線が眺望の邪魔をすると言うこの矛盾。

湖畔へと下る最後の斜面は、結構な急勾配なうえに崩壊気味でした。転落すると最悪そのまま水面へ一直線なので、ここは慎重に下ります。

１３時２５分　宮ヶ瀬ダムへと辿り着きました。無事にゴールです。

５．迫力満点の巨大ダム、宮ヶ瀬ダム

日本ダム湖百選なんてものがあるのですね。かく言う私も、ダムもダム湖も眺めているだけでワクワクするくらい大好きです。ダムカードとか集め始めるとキリがなさそうなので自重しておりますが。

1億8300万立方メートルの水圧に耐えると言う堤体には、相当な厚みがあります。そもそも、1億8300万立方メートルと言われも全然ピンと来ません。風呂桶何杯分くらいなのでしょうか。

遊覧船「ミーヤ丸」が湖畔の３ヵ所を結んでいます。ちょうど見ている目の前で出航して行きました。

ダムの下へ降りるには、このエレベーターを利用します。ちなみに無料で乗ることができます。

エレベータとは別に、インクラインと呼ばれるケーブカーの一種もあります。もとももとはダム建設の資材運搬のために設置された軌道で、今は一般客に解放されています。

こちらは片道200円、往復で300円の料金がかかります。

たとえタダで乗れるエレベーターがすぐそこにあろうとも、ここはインクライン一択です。男と言う生き物は、いくつになってもこういう乗り物が大好きなものなのです。

という事で出発進行！下までの所要時間は僅かに４分です。

高さ156メートもあると言う堤体は、横から見ると迫力満点です。大きいことはいいことだ。

あっけなく到着です。たかが200円なので、エレベータよりもこちらを断然オススメします。

宮ヶ瀬ダムは下から見るとこのような姿をしております。日本のダムとしては６番目の高さだそうです。

ちなみに、宮ヶ瀬ダムの下まで直通する路線バスは存在しません。最寄りのバス停である愛川大橋からは、１５分ほど歩くことになります。

その代わりに、あいかわ公園の敷地内を巡回する愛ちゃん号という乗り物が存在します。まあ、わざわざ待つほどの距離ではないとは思いますが。

丹沢湖に注ぐユーシンブルーと同様の青味がかった水です。これは丹沢水系全般に共通する特徴なのでしょうか。

まるで絵具を流したかのように真っ青です。こんなに青く見えるのに、すくってみると透明だから実に不思議です。

言っているそばから、謎の乗り物愛ちゃん号がやって来ました。なるほど、よく見るパークトレインそのものですな。

愛ちゃん号には乗らず、このまま歩いてバス停に向かいます。

少し下ったところにある副ダムの石小屋ダムでも、これまた見事な宮ヶ瀬ブルー（？）を見ることが出来ました。

市街地の中を道なり進みます。

１４時１５分　愛川大橋バス停に到着しました。狙いすましたかのようなちょど良いタイミングで、２１分のバスがあったのでそれを待ちます。

愛川大橋から眺める中津川の水は、青くはない普通の色をしていました。さっきまであんなに青かったのに、ホントに不思議です。

時刻表よりほんの少しだけ遅れて現れたバスに乗り込み、帰宅の途につきました。

仏果山を含む宮ヶ瀬湖周辺の山々は、丹沢山地の中でも外れにあることもあってか、人気知名度ともにあまり高くはありません。極めてマイナーと言える存在ではありますが、山頂にある展望台のおかげもあって、低山らしからぬ大展望を手軽に楽しめます。下山後にダム見物を組み合わせることによって、より満足度の高い休日を過すことが出来るでしょう。
本文中でも述べた通り、宮ヶ瀬湖の周辺はヤマビルが極めて多く生息する地域です。このエリアへの暖かい時期の訪問はお勧め出来ません。
そんな訳で、冬の低山歩きの予定に、丹沢の外れへ訪問を組み込んでみてはいかがでしょうか。

＜コースタイム＞
半僧坊前ＢＳ（8：00）－経ヶ岳（9：25～9：35）－半原峠（9：55）－川籠石山（10：45）－仏果山（11：25～11：45）－高取山（12：15～12：35）－宮ヶ瀬ダム（13：25）

完

最後までお読みいただき、ありがとうございました。